はじめる

#小説

読んでると、
思わず胸がギュッとしめつけられる、
そんなポエムを集めました。

全5618作品 ・





『何も言わずに、抱きしめてあげれたらよかった』






「なにやってんだ」



声を掛けられて、彼女はぴくりと肩を跳ねさせた。



「・・・お墓は作ってあげられないから、せめて」



戦場に倒れる屍に、彼女は花を1本ずつ供えていく。


血を吸い上げ、花弁が赤に染まる。


それを見て、早く彼女をここから遠ざけなければならないと思った。


こんな場所にいてもなお、気高い彼女の魂が穢れてしまう前に。


その手を取って、どこか遠くに・・


そこまで考えて愕然とした。


どこかって、どこだ。


戦場で生まれた。だから、戦場で死ぬと信じて疑わなかった。


この場に転がる死体。もし明日、自分がそうなっても何らおかしくない。


きっと彼女は、死んだ俺に花を供えるだろう。


その光景をやけに鮮明に思い描くことができ、頭を振ってそれを掻き消した。


ああ、なんだ。この足元が崩れていくような感覚は。


「っ、おい!」


その場にいると安心したくて声をかけると、少し近くにいた彼女が目を丸くした。


その目から大粒の涙が流れていることに気がつき、ギョッとした。


「ないてんのか?」


腰を浮かして、彼女に近づく。


恐る恐る手を伸ばす。自分の手が震えていることにも気が付かなかった。


大きな瞳から、透明な涙が溢れてくる。


涙で拭う。それでも追いつけないほど涙が流れる。



う、と嗚咽を漏らす彼女。


袖が握られていたことに気がついた。


頼りない手だった。細くて、力を入れたら折れてしまいそうで。


堪らなくなって、思わず手を取った。そうしなければ、彼女が壊れて、消えてしまうと思った。


どこか遠くへ逃げ出したかった。そのまま彼女の手を引いて、さて、どこへ逃げると言うのか。


彼女がゆるりと笑う。



「脱走は粛清対象だよ?」


「・・・知ってる」



今日だって、何人もの仲間が逃げ出そうとした。それらを粛清したのは、俺たちだ。


彼女も同じことを思ったのだろう。頬に陰を落としながらも、彼女は微笑んだ。


「・・逃げ出したかったんだよ。ここに居たら自分が壊れてしまうって思ったから」



全てを赦すかのように、彼女はふわりと笑った。



それは、見事に美しく、優しさと慈愛に満ちた聖母を思わせる笑みであった。



「・・生きたいって思うことは罪じゃないと思うの」



それは、あまりにも重い言葉だった。俺は、何も言えない。



彼女が服の裾を捲って、川へと足を踏み入れた。


夜は冷えるというのに、バシャバシャと水飛沫を上げながら奥へ奥へと進む。



「・・なら、それを赦すことが出来ない私は」



ある程度のところで止まり、彼女はこちらを振り返った。


月を背負うようにして立つ。彼女の顔は、逆光で見えない。



ねえ、と君が問いかけてくる。頼りない声が、夜の空気を震わせる。



「彼らを赦せないことは、罪かな」



俺はその時、なんと答えたんだっけ。


















「こんなの、酷すぎるだろ」



吐き捨てた言葉は、誰の耳にも届かず、ただ闇に消えた。



横たわる彼女。そこに、黄色い花を供える。自分の手が震えていた。



彼女の顔は、穏やかだった。最期まで、彼女は笑っていた。


気づいてあげられなかった。微笑みを絶やさない彼女の内面が、音なく崩れていたことを。



「こんなの、あんまりだ」



彼女は、もう何も言わない。


黄色い花が、赤く染った。



















『「お前は、生きたくて逃げ出したわけじゃないだろう?」』

舞雪・3日前
小説
舞い落ちる雪のように
ちょっと意味分かんないけど許してください。3年くらい前に書いた小説を発掘しました。消すのもなんなんで、オチとタイトルだけ書いて投稿です。とてつもなく恥ずかしい。今の私には書けない話ですね。これは未だに執筆中の長編の短編です(?)5年くらい前から書き始めて未だに書き終わらないってなんなの?完結させる気あんの?ここに登場した女の子と男の子には、ちゃんとお名前があります。それにまだご存命です。なんなら長編の主人公たちです。番外編の方で死なせてごめんなさい(土下座)いつか長編の方も書き切るので許してください(全力土下座)

『今回の手術終えればもう

大丈夫だからね 』


君の言葉を聞きながらゆっくり

瞼を閉じた





何度も死のうとした


苦しい治療を受けてもなかなか


なおらない




絶望してた僕に手を差し伸べて

くれた君が




僕には必要不可欠な存在で__








『君が頑張ってるから私も頑張るね』


君の声が聞こえた気がした





僕が苦しい時

僕より苦しそうな顔をしてた君







僕が倒れた時

僕を1番に心配してくれた君







僕が諦めた時

僕を本気で叱ってくれた君







どんな顔で「___」を伝えよう










ただ真っ白な天井が目に入る


『お目覚めですか?』



「あ、あのあの子は?」



そう聞くと

看護師は気まずそうな顔をした







「申し上げにくいのですが__」







耳を疑った



言葉が出なかった




頬を雫が伝った




頭が真っ白になった







「え?」






「だから、あなたに臓器提供したのは

あの子なんです」












いつも笑ってた君が

本当は病にかかっていたこと







いつも励ましてくれてた君が

こんなに大きな決断をしていたこと







僕は、何も知らなかった












僕がこうやって涙を流していると


君はすぐにそばに来てくれた








でも、そんな君はもうここにいない








君にさ、どんな言葉を伝えていいのか


分からないけどさ






照れくさくてなかなか言えなかった


こと、今伝えるよ











【ありがとう】





君がいるから僕がいる



この言葉の通りだよ





だからさ、君の分まで楽しんでみるよ

瀬音 蓮叶_・2日前
By瀬音
小説
ポエム
ありがとう

「妻と別れようと思う」


彼の言葉に心臓が大きく打った。



「…そう、なんだ」


私はそう告げて


ワインを一口含む。



私より二十も年の多い彼は


無論のこと奥様がいて


私はずっと家庭の


あれこれの聞き役だった。



男と女の関係はまっさらな程ない。




だけど私は彼の強さも


弱さも見つめてきて


とっくに彼が好きになっていたし


きっと彼も


私の気持ちに気付いていたと思う。



そんな彼が19年連れ添った


奥様と別れると言い出したのだ。



私の見たところ


彼と奥様はずいぶん早くから


上手くいっていなかった。



ぶっちゃけてしまえば彼は


奥様の不倫に悩まされている。



それでも彼は今まで


奥様との関係を貫いてきたのだ。





「何があったの?」


そう問いたくなるのは当たり前だろう。




「そろそろ潮時なのかなと思ってね」


彼は私の意に反して


自然とそうなったのだと言った。



「本当に、それだけ?」


「ずいぶん攻めるね」


「だって今まで耐えてきたじゃない」



食い下がって私は、彼を覗き込む。


彼は「参ったよ」と息をついて


ワインで喉を濡らした。



「今まで妻と続けてきたのは幼くして亡くなった子どもに申し訳ないと思っていたからだよ。でもね、妻は先日の子どもの命日をすっかり忘れて二日酔いで一日中寝入っていた…我が子の命日といったって二人で線香の1本もあげてやれなかったら、二人でいる意味なんてあるのかなと」


「それで、別れを切り出そうって?」


「うん」


彼の視線がワイングラスに落ちる。


キャンドルの火が


彼の目をゆらゆらと照らした。



「辛くはない?」


「……まあ、長年連れ添った思い出もあるからね、それなりには」


そう言ってから彼は


「でも、思ったよりは」と付け加えた。



「でも、思ったよりは辛くはないよ。それは君のおかげだと思うんだ」


いつの間にか彼の目が私を捉えていた。


視線がぶつかる。


息もできないほどときめいた。



「え…?」


「あ、いや、こんな時にこんな事を言うのは、ずるいだろうね」



彼はごめんごめんと


目じりに皺をためて笑う。



「いいの……嫌でなかったら、聞かせて?」



私は小さく、呟いていた。


すると彼は僅かに唸り


考え込んだ後、こう切り出す。



「好き合って、したはずの結婚生活は闇だった。努力もしたつもりだったけれど、妻にしたら何か欠落していたのかもしれないね。だけど俺も死にたくなる程の時もあってさ、そんな時、君がいてくれて、俺の話を聞いてくれた。変に気のある素振りを見せたこともない。ただ真剣に話を聞いて、俺と妻がうまくいくようにアドバイスをくれた」



「そんな君はね」


彼は続ける。



「俺の光だったよ」



ああ、駄目だ。


涙が溢れ出す。



「どうして泣くの」


彼が目をむいて、私に問う。


何処までも鈍感なんだから。



「だって…あなたの光になんて一生なれないと思ってた…」


そうだ。


一生、彼の光は奥様だと思っていた。


終わることの無い彼と彼女の関係


永遠の運命を手助けする脇役が


私の運命なのだと思っていたのだから。



涙くらい止まらなくて当然だ。



彼は、向かいあわせの


椅子を立ち上がると


私の隣へと移動して


おずおずと髪の毛をすく。



はじめて


彼に触れてもらった。


彼の腕の重たさが


心地よかった。




「妻と別れられるまで何ヶ月かかるか分からないけれど」


彼の声が間近に聴こえるのは


耳が彼にくっついているから。


至近距離に心臓がうるさい。




「俺は正式に妻と別れたら君に想いを伝えようと思う」



誠実な彼らしい言葉に


涙と共に微笑みが零れた。



「あー…」


「ん…?」


「プレッシャーに思わないでくれ。待たなくていい、誰か好きな人が出来たら迷わずそっちに…」



なんて、可愛い人。



「ううん…、待ってる」


「…本当に?俺はこんなおじさんだよ」


「…あなたを待ちたいの」



私は目を細めて


今更歳の差を気にする彼に


そう告げた。




私達の未来は


どうやら動き出したみたい。



ここからだね


きっとここから


私達の物語は紡がれていく。



あなたの新しい未来は


私が幸せで彩りたい。




…おしまい…

ひとひら・2日前
幸介
幸介による小さな物語
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結婚
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【性と言う名の鳥籠】
虎太郎編⑤~虎太郎目線 ㊦



-Last episode-


「お前は男だ。女が好きだと思う。俺も男だ。今までは女が好きだった。でも今はお前が気になる。変態だと思われるかもしんないけど、仕草がすげえ可愛いと思う、タッパ俺よりでかいけど…本気で守りたいと思う。この一週間、ほんとに寂しかった。この一週間…死にそうだった」




これは、さっきの



夢の続きなの……?



涙が溢れる。




そして、紗季は告げた。



「びっくりさせてごめんな、でももうただの幼馴染みなんて嫌なんだよ」



私を真っ直ぐに見つめて


口をへの字に曲げて


少し潤んだ目で。




「お前に彼女出来るとか考えただけでズキズキすんだよ」




そして紗季はとうとう、



確信を


私がずっと言えずにいた想いを


はっきりと、告げた。





「俺はお前が好きなんだ」




もう、涙が止まらない。




「紗季ぃー……あー……」


おかしな声をあげて泣きじゃくる私に


紗季は今まで


見たこともないくらい戸惑っていた。




「な、泣くなよ、謝る!謝るから!邪な気持ち抱えたことは悪かったよ、なあコタ、ごめんな」



違う、違うんだよ紗季。


嬉しいんだよ紗季。



言葉にならない想いを


少しでも伝えたくて


紗季の制服の裾を小さくつまむ。



「コタ…?お前どうしちまったの?」


紗季は、やっと


私が嫌悪感で泣いているわけでないことを


わかってくれたみたい。



ためらいがちに


私の大きな背中に手のひらを置く。



拒絶されないことを確かめるように


ゆっくりと背中を撫でて


優しく、抱き締めてくれた。




やっと叶う?


叶うの?



気持ち、伝えても



いい?





男同士という想いを抱いての告白は


どんなにか怖かっただろう。


だからこそ、嬉しい。



その恐怖を乗り越えるだけの


価値が私にはあったんだと思えた。



今度は、俺の……ううん


私のことを知ってもらいたい。


どんなに恐くても


もう。逃げたくない。






「紗季……っ、俺、俺ね」



「うん」



「ほんとはね………っ」






「俺」は「私」なんだ


そう真実を伝えたら


紗季に好きと言われた私と同じくらい


あんぐりと口をあけて

驚いていたけれど


紗季はこっちが拍子抜けするくらい


意外とあっさり



「そうだったのか、辛かったろ?」


そう言って受け入れてくれた。




その上、



何故だかすごく嬉しそうに



私の手を握りしめる。




「不思議だな…。女だってわかった途端、こんなにでかい手なのに、か細く感じる」


でかい手、は余計だけど…紗季らしい。


思わず笑みが溢れると


目に溜まった涙も一緒に零れ落ちた。




私には紗季にもうひとつ


伝えなきゃいけないことがある。



私は深呼吸を何度も繰り返して


やっと、長年の想いを吐露しようと口を開いた。




「中途半端な、体だけど……っ、俺はちゃんと」



紗季が好き、伝えようとしたら紗季は



指先でちょんと私の唇に触れて言う。




「もう無理しなくていい、コタは女なんだろ、「私」でいいんだよ」



ああ


何も恐がる必要はなかった。


たとえ誰に受け入れてもらえなくても


幼い時からずっとそばに居てくれた


紗季を信じればよかったんだ。



紗季はいつ私が打ち明けても


きっとわかってくれた。



今更……そんなこと


しみじみ感じる。





目は酷く、腫れていると思う。


大造りな男の顔は可愛くなんてないだろう。


髭だってそのままだし


パジャマ姿で髪の毛だってきっと寝癖だらけ。


高い喉仏から発せられる声は


男のそれで間違いない。



夢のように理想の私じゃない。





だけど、伝えたい。



ちぐはぐな性という鳥かごに


苦しみながらも


紗季を一途に愛したんだという事。



私は口を開く。



飛びっきりの笑顔を向けた。




「私は、紗季が好き」





その瞬間、私はやっと


紗季にきつく抱き締められる幸せを得た。





性と言う名の鳥籠⑤

虎太郎目線~Last episode



-了-







------------------------------------

5回に及ぶ虎太郎編


ようやく完結です。


長い間、お疲れ様でした


(*´ω`*)




この後の後日談と


少し未来の4人のお話を


あかね編が完結したあとで


書く予定ではありますので


もうしばらくお待ちください。




この話はとてもとても


俺の中で大事に


大事に書いてきたお話です。



虎太郎は女の子になりたい男の子で


自分の体を嫌っていますが


同じような性に悩む人に


心の性別が体の性別に


成り代わることが


出来るのだということを


知って欲しかった。


そして性同一性障害に対し


最近ではメディアの介入で


だいぶ寛容な人達が増えていますが


やっぱりまだ理解は不十分です。



その人たちにも


知って欲しかった。



男の人が好きな女の人がいる。


女の人が好きな男の人がいる。


性別のちぐはぐな人がいる。


男の人が好きな男の人も


女の人が好きな女の人もいる。


男の人も女の人も愛せる人がいる。




怖いと思わないでください。


誰彼構わず好きになるわけじゃないんです。


みんなと一緒です。


ひとつの想いを大切にしている、


一人の人間なんです。




( ゚∀ ゚)ハッ!


あとがき長くなりましたが


読んでくれた方々に感謝します♪̆̈



あかね編もどうかお楽しみに!

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【性と言う名の鳥籠】
虎太郎編⑤~虎太郎目線 ㊥



-Last episode-




「な、なんで!?」


「おっ…と」


突然、開いたドアに


身をひいた紗季と目が合う。



幼馴染みとして育った。


物心ついた時から


一緒にいた。


幼稚園も小学校も中学校も高校も


ずっと一緒だった。



1週間も会わなかったことはない。



久しぶりに見る紗季の顔は


ほんの少し、やつれたように見える。




「コタ、やっと会えた」


照れくさそうに笑う紗季がいた。



「話したいから、中、入ってもいい?」


カーテンが締め切られた、


真っ暗な私の部屋を指差して


紗季は鼻の頭をかく。



その表情は安堵に満ちていた。


こんな顔されたら


断るわけにいかないじゃない。



「…いいよ」


私は部屋の入口に立ち塞がっていた身体を


少しだけ、ずらす。



紗季が部屋に入る。


ふわっと鼻をくすぐった紗季の匂い。


なんだか、たまらなく、恥ずかしい。



勝手に紅潮していく頬。



紗季に悟られる前に


僅かでも平常に戻そうと


紗季の後を歩きながら


熱い顔を両手で包んだ。





紗季は当たり前のように


私のベッドの枠に背中を預けて座る。



私の部屋に来た時の


いつもの紗季の居場所だった。




私は、机の椅子へと腰をおろす。


目の前の鏡に私のパジャマ姿が映し出された。




そういえば、パジャマのままだ。


お母さんが買ってきた、青の。


こんな色、本当は嫌い。


ピンクがいい。


紗季の前でパジャマ姿も恥ずかしいけれど


男、という枠組みにはまる自分も許せなかった。



きっと私は


苦虫を潰したような顔をしていたんだろう。



「コタ?」


我に返ると心配そうに


私の様子を窺う紗季がいた。



「ううん、なんでもない。ごめんね、こんな格好で」


「いや、仮病だろ、パジャマぐらい着とけ」



いつもの調子で笑う紗季に、心底ほっとする。


私は紗季につられて


1週間ぶりにやっと笑うことができた。




「それで、原田と別れたって…?」


「あー、うん」


「なんで?」


「ちょっと思うところあって」



紗季はそう、言葉を濁す。


私にはきっと、言い難いことなんだろう。



その心の内を読んで黙り込むと


紗季はあぐらをかいた足に


頭を寄せた。




「ごめん!」


突然、謝られて訳も分からず聞き返す。



「え?何?何で紗季が謝るの」



謝らなきゃならないのは


私の方なのに。



私のせいで紗季まで…


そう思った矢先、頭を下げ続ける紗季から


思いがけない言葉が飛んできた。





「黒板の相合傘、美紀の仕業だった」


「え…、なんで」


「俺が振った腹いせで」



驚いたけれどすぐに合点がいった。



あのルーズリーフも



私の靴箱に入れたのはきっと原田だ。



だから声をかけたあの時


あんなに焦っていたんだろう。



だけど、それでも腑に落ちない事がある。



「紗季に振られた腹いせであんなこと…するの?俺、原田の機嫌損ねるようなこと何か……」


「コタのせいじゃ…ない」



紗季はそれっきり、黙り込む。


沈黙が重い。


一体、どうしたっていうんだろう。




紗季は深呼吸を何度か繰り返す。



私にまで緊張が伝わってくるようで


落ち着かない…。



やがて紗季は私に告げた。





「俺が別れる時に、言い方悪かったつーか」


「言い方?」


「あー、でも、この言い方もあれか。本当のこと言っただけだし」


「本当のこと?」


いまいち要領を得ない紗季の顔を


私が覗き込むと、その瞬間


紗季の目に光が宿った気がした。



ドキッと一度高鳴った鼓動は


もう止められない。



切れ長なのに


瞳の大きい紗季の目に


吸い込まれそうだ。




「な、なに?」



「俺」



「うん」



「美紀に、コタが好きだって言って別れた」















え……?












なんて言った……?




私が、好きって



嘘…聞き間違い……?





言葉にならない。


唖然と口を開いた。


挙動不審に目が動き出す。




私の様子をしげしげと見ていた紗季は


私が嫌悪感を抱いているとでも


勘違いしたんだろう。



必死に想いを伝えてくれた。

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【性と言う名の鳥籠】
虎太郎編⑤~虎太郎目線㊤



-Last episode-




「虎太郎、学校、何時まで休む気なの?」

「……」

「もう7日よ、どうする気?何があったの」

「別にずる休みじゃないもん…」

「それならそれで病院行かなきゃならないでしょ」

「頭痛いだけだってばっ」

「それくらいなら学校行けるでしょ?」



上手く伝えられない。


考えてみれば当たり前だ。


私がお母さんにかける言葉は全て


「嘘」と等しい。


自分の一人称すら、まやかしだ。



お母さんにもし


「俺」は「私」なんだって話せていたら


靴箱に入っていたあの殴り書きの手紙の事も


相談できただろうか。




ううん



出来っこないよ……。


お母さんが傷つくもん。


思いを深めるほど、悲しみは溢れ出す。





「もう俺のことは放っておいてよっ!」



とうとう私は心配するお母さんに


苛立って声を捨てた。




「虎太郎…今日も紗季くん待っててくれてるのよ」


「…っ」


紗季…その名前を聴いただけで涙が浮かぶ。


会いたい。


会いたい。


でも


会いたくない。


会えない。



諦めたお母さんが


階段を降りていく気配を感じながら


私は布団をかぶって


パジャマの袖で涙を拭った。



スマホが鳴り画面が光る。


LINEだ。


何度も鳴る小刻みな音に


思わずポップアップを見ると


次々にメッセージが表示されている。




「コタ、学校出てこいよ」


「この間のこと気にしてんなら」


「もう誰もなんも言ってねえよ」


「俺も何も気にしねえし」


「コタも気にするな」


「コタがいねえと学校灰色笑」



しばらくの間。


紗季はきっと待ってるんだ。


放置された沢山の言葉


未読のLINEが既読になるのを。


LINE画面


紗季の名前、タップしようと思い悩む


親指が戸惑っては動きを止める。




「…俺、お前がいないと寂しいわ」



寂しいなんてそんな言葉反則。


心臓が抉られ、決心が揺らぐ。



『 俺とはいない方がいい』



確かにそう思ったし


確かに紗季にはそう伝えたのに


涙を零しながら


紗季とのトーク画面を開こうとしたけれど


あの日のクラスメートの言葉と


ルーズリーフの、赤文字。



男同士


変態


異常者



心無い言葉に当てこまれた私は


すっかり自信をなくし


自分がわからなくなっていた。





「学校……やめたい」


口にする想いは本音だろうか。


紗季がいない場所はきっとつまらない。



「独りでどこか遠くに行きたいな」


独りでなんて本当は嘘。



頭の中では紗季が笑ってるくせに。



痛む心を抱えたまま、


不眠気味の私はいつの間にか


夢の中へ誘われ、


ふわふわと舞うように


眠りへと落ちていった。






深い眠りの底で、夢を見た。


光の中で紗季が手を差し伸べている。


私はその手を迷わずとった。




「コタ、綺麗だよ」


魔法の言葉がかけられる。


するとどうだろう。



「俺」の真っ平らな胸は


ふっくらと膨らんで



死ぬほど嫌だった髭も


喉仏もなくなった。



コンプレックスの長身も


ありえないくらい小さくなって


あっという間に紗季を


見上げられる可愛い女の子になれた。



淡いピンク色の


可愛いワンピースの裾を


はたはたとはためかせて


つばの広い帽子を被っている。




「紗季」


高く細い声が


私の口から零れ落ちる。




夢にまで見た、


なりたかった「私」だ。



「コタ、可愛い」


紗季はそう言って


私を抱き締める…



今こそ


素直になれる


好き、やっと言える。



そこで目が覚めた。



幸せすぎる夢の余韻。



胸の膨らみはなくなり


朝には剃ったはずの髭も


不精に伸びていた。


喉に触れると喉仏の骨が出っ張っている。




「……「俺」だ……」



嘘をつき続けて生きる、「俺」だ。



何一つ、進まない現実に


夢の中で伸ばした指先が震える。




「も、疲れた…っ」


涙が浮かんでは零れ始める


その時だった。




インターホンがなったかと思うと



「失礼しますっ」



聞き覚えのある声。



聞き間違えるわけが無い。



紗季だ。




「ちょっと紗季くん!」


お母さんの言葉と共に


バタバタと階段を駆け昇る音がして


やがていっときの間ののち


戸惑いがちな紗季の声が


ドアの向こうから聞こえた。





「コタ…」


声が出ない。



私はベッドの上で体を小さく丸めた。




「コタ…起きてるか?」


「……帰ってよ」


「どうして」


「もう関わらないって言った…じゃん」


紗季は大きく息をついて、疲れた声を絞り出す。



「ここ…開けてくんね?」


「やだったら!」


今の私は

拗ねてわがまま言いまくる子どもみたい。


自分でも思う。


私、可愛くない…。


こんなだから神様は


私にちゃんとした体を


くれなかったのかもしれない。



そう考えたら


胸が苦しくなった。




「しかたないな、このまま話すから聞いてほしい」



ドア一枚隔てた向こうの


紗季の低い声が耳に響く。




「俺さ、美紀と別れたんだ」





は……



え?



別れた……?




唐突に突きつけられた事実


一瞬、頭がついてこない。



理解した瞬間


私はベッドを飛び抜けて


ドアを縋り開けていた。

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『ねぇねぇ』


ふたりで家に帰ってた。

たまたま一緒に遊んだ日の帰り道。

辺りは仄暗く、夜の帳が下りるのを静かに待っていた。


「なんだよ」


君は少し首を右に回らせ、私の目を見た。

君は綺麗な栗色の瞳をしていた。

切れ長の目の奥に光る双眸の色。

その高い背の先にある癖毛は真っ黒なのに、

瞳は澄んだ栗色をしている。

何度見ても綺麗だな、なんて。


『なんでもないや』


やっぱり言おうとした言の葉を飲み込んだ。

これで何回目だろう、自分に嫌気が差す。


「最近お前それ多いな、かまちょかよ。」


君はそう言ってころころと笑った。

君の笑顔を見るだけで、私は安心できた。

やっぱり、この“友達以上恋人未満”が一番心地よいのかもしれない。


『そーですよ、かまちょでーす。
かまってくれなきゃ病んじゃうかもー』


例えふざけだったとしても、こんなこと君に言ったら

君に迷惑掛けちゃうのかな。

彼女でもない私が。


「俺も言いたいことあるんだけど」

『なんだよ』


君は少し、俯いてから私の正面に立った。


「俺は、お前が________。」


その後のことはご想像におまかせします、とだけ。

🍙雛瀨🎧@病み中だからこそ恋愛ポエムを書く・3日前
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『拝啓、向日葵アイディール』






「目的地に到着しました」



遠い意識の中、機械的な声が響く。




少し間を置いて

バタっと扉が開く音が聞こえた。


一瞬、熱を帯びた風が頬を撫でる。



なんだ…?


ゆっくりと体を起こして、

朦朧としながら目を擦る。


寝不足を象徴する目のクマが

綺麗さっぱり消えている。

そんなに長く眠っていたのか?



「……え…」



ぼやけていた視界が鮮明になった時

目の前の世界に言葉を失いかけた。




瞳が映すもの、それは





雲ひとつ無い群青の空と

無限に広がる向日葵畑だった。





今、自分は相当動揺しているようだ。

シートベルトを外す手が覚束無い。

心臓がドクンドクンと脈打って騒がしい。



外れたベルトがしゅるっと姿を消す。

その数秒間、

脳内を様々な疑問が駆け巡った。




自分は何故ここに居る?

自分はどうやってここに来た?

ここは何処で、何なんだ?




考え出したら頭がパンクしそうだ。

取り敢えず、

このままじっとしている訳にはいかない。


頭の悪い自分にもそれだけは分かる。



扉をゆっくりと開けると、

歓迎するかのような爽やかな熱風に包まれた。

土に足を着き、くるりと振り返る。



白いワゴン車。我が家の車だ。

これに乗って来たんだ。



なら、運転手は何処へ?

そもそもこの場所は色々おかしい。



1台しか停められない

コンクリートの駐車場。


周りは向日葵に囲まれていて、

前にも後ろにも進めない。


人の影も感じなければ、

声も聞こえない。



「…誰かっ!いませんか!」



問いかけも虚しく、

自分の声が谺響するだけだった。


真夏だというのに

体がひんやりと冷たい。


微かに手が震えている。



あれほど鬱陶しがっていた

蝉の声が聞こえない。


非現実的なこの空間が

酷く恐ろしく感じた。






あれからどれほどの時が経っただろう。


相変わらず太陽は光を増し、

ギラギラと熱い矢を刺してくる。



時計が無いこの場所では、

今が何時なのか分からない。


ただ途方に暮れて、

しゃがみこんでいるばかりだった。



涙が零れ落ちた土も

カラカラと乾ききってしまった。



絶望、動揺、不安、孤独


胸に渦巻く感情とは対照に、


黄金の向日葵は

清々しいほど明るく自分を取り囲む。



「夢なら覚めてくれ」



どうしようも無い独り言を吐いた。

風がふわりと髪をすり抜けていく。




その時




歌声が聞こえた、気がした。




顔を上げ、立ち上がる。

辺りをぐるりと見渡して、

耳を澄ませる。



…確かに聞こえる。

右耳に微かに響く歌声。



誰かいる。




目を手の甲でぐいっと拭うと、

風が吹く西の方向へ駆け出した。

秋香る窓辺・3日前
#1
小説
創作
物語
あなたと私の物語
路地裏の思い出屋
初めての続きがあるお話です
語彙力、文章力皆無
時間がある方是非読んでってね!
もっと成長したいぜ、!

『君の大切な人になりたい』


愛しいほど透明な
青に満ちた夏の日


君に恋した


『ねぇ、好きな人いるの…?』
『さぁ。どーでしょ』


色んな想いが絡まって
本当の気持ちが見えなくなって
不器用に傷つけたあの日


それでも僕らは4人で
いつまでも笑いあっていたかった


『約束だよ』


さみしいさみしい、2人きりの夏
置き去りにされた君を
今度は3人で助けに行くよ

ワンコインピンチ💸( '-' 💸 )マネーチャン・2日前
小説
小説書いてみた
小説風
ポエム
ポエム?







放課後。


君に『塾帰り?』

と聞いた。


そうだよって君は答えた


塾大変?とか、ぎこちないことしか聞けなくて。


そんな僕の質問にもちゃんと答えてくれた君



君の顔は夕日に照らされてて


眩しくて、かっこよくて。



改めてあの日、


『あの人が好きなんだ』


って思った。

雛・2日前
好きな人
小説

【さよなら、僕のヒーロー】



たくさん助けてくれてありがとう

でももう大丈夫

お願いだから

僕のために泣かないでよ

透藍 彩葉 (とうら いろは)・2日前
さよなら、僕のヒーロー
傘村トータ
独り言
今日も空が綺麗だなあ
ポエム
小説

「君にまだずっと恋してるって


言ったら信じますか」

じぃら・2日前
ラストレター
好き
小説
セリフ

勇者様、巫女様、防人様に永遠の幸せを


勇者様             巫女様

乃木若葉様           上里ひなた様
郡千景様            
土居球子様           藤森未都様
伊予島杏様
                国土亜耶様
白鳥歌野様

鷲尾須美様
乃木園子様
三ノ輪銀様

結城友奈様
東郷三森様
犬吠埼樹様
犬吠埼風様
三好夏凛様


防人であり勇者様

楠芽吹様
加賀城雀様
山伏しずく様
弥勒夕海子様

砂風它@無理死にたい推し死んだ・3日前
勇者である
アニメ
ゲーム
漫画
マンガ
ノベル
小説
永遠
幸せ
大切

__貴方との思い出__


およそ3ヶ月前、ある場所で彼と出会った。

彼の名前は望月礼、見た目は少し怖いが

話してみると意外と話しやすく楽しかった

それからというもの私達はたまに会うようになり、

色んな所へ2人で行くようになった。

そしてその関係が1ヶ月過ぎ、私達は付き合うことになった

彼は、毎日日記を書いていた、理由を聞くと

「キミとの思い出を忘れたくないから書いてるんだ」

なんて無邪気な笑顔でこっちを見てくる。

この時間が、幸せがずっと続けばいいなんて

そんな事を思い始めていた

__あの日の事が無ければ__

付き合って2ヶ月のあの日、

彼は交通事故で空に旅立ってしまった。

大型トラックに跳ねられて

即死だったらしい

それを聞いた途端、身体に力が入らなくなった

もう、あの人の笑顔、声、姿さえ見れなくなると思うと

涙が溢れて止まらない、何で?何であの人なの?

あの人は何も悪いことしてなんかいないのに、

何で私じゃないの?

そう思いながら一日中泣き叫んだ

次の日、顔は酷く真っ赤になっていて

目の下には少しクマが出来ていた

皆から心配されたけれど

私は、皆が心配してくれているのに無視をした。

彼が亡くなって1週間が過ぎ

私は彼の家族に呼び出された。

渡されたのは2冊のノートだった

1冊目は色んな出来事が書いてあった

私と出会った日の事

私と色んな所へ行った事

2冊目は、私への事がずらっと書いてあった

喧嘩した時の想い、嬉しかった時の想い

色々書いてあったが、最後のページにはこう書かれていた

__◯◯へ__

これは、僕に何かあった時のための手紙です

これを見ていると言うことは、

僕はこの世にいるかもしれないし

いないかもしれないんだね

僕がもし、居なかった時のために、手紙を書きたいと思います

貴方と出会った日、僕は運命だと感じました笑

直ぐに話しが合い、色々な場所へ行って

2人で楽しんで、過ごしてたね。

もし、僕が空に旅立ったとしたら

僕は、大きな雲になって

キミを見守ってるから笑

住む場所、世界は違っても

心は繋がってると願っています

もし、貴方が寂しいと感じているのなら

幸せにしてくれる人を探して

幸せになってください

僕の願いは、貴方が幸せになる事です

僕の分まで幸せになってね

愛してるよ

僕の将来のお嫁__

ここで止まっていた

これを見た瞬間、また止めどなく涙が溢れて止まらなかった

最後まで私の事を考えてくれたなんて、

なんて私は幸せ者だったのだろう

それから数日後

私も日記を書き始めた

理由を聞かれたらすぐこう答えるだろう

__大切な人と話すために__

彼がいる場所に行ったら

この日記を持って

思い出を彼に話すんだ、

例え日記が何冊増えたとしても

彼と会えるのが何年後、何十年後になろうとも

私の心は貴方と繋がってるから__







下手ですね、ハイ笑
今回は彼を交通事故で亡くしてしまった
女性の話を書いてみました。

住む場所、世界は違っても

心は繋がってると信じて

前を向いて歩む女性を、書いてみたのですが……

下手ですね笑…上手と言われるようになるまで

頑張りたいと思います笑

のえる←小説書くの一旦辞める←下手すぎだから( '-' )…一言更新・2日前
短編小説
小説
_貴方との思い出_
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あなたと私の物語
下手かもです
別れ







『迷心』









「すみません。」


「はい。どうかしましたか?」


「僕の...
僕の心を見かけませんでしたか?」


「...?見てないですが。」


「そうですか...
ありがとうございます。」


「あ、あなたの心......
確かに透けてますね。」


「そうなんです。
どこかに置いてきてしまったみたいで...。」


「どうしてですか?
何かあったんですか?」


「え、えっと...。
実はよく覚えてなくて......。

とてつもなく疲れていたのは覚えていますがそれ以降はなにも。」


「そうですか...。
早く見つかるといいですね。
僕は忙しいのでこれで。」


「はい、ありがとうございます。
すみませんでした。」


「いえいえ、では。
さようなら。」


「さようなら...。」







「あのっ!
僕の心を見ていませんか?」


「知らないです。」


「すみません。ありがとうございます。」





「すみません。
僕の心を知りませんか?」


「何、言って......。あっ...!」


「え!もしかして知ってるんですか?」


「...いや、本当にないんだと思って
びっくりしただけです。」


「そうですよね...。すみませんでした。」







「...あの、すみません。
僕の心が見当たらないんですが、なにか知りませ......っ!?」



「え...?」


目の前の男が不思議そうに見つめるそれは
正しく今探し回っているソレだった。



「それ、僕の...。」


「これが君のかい?」


「はい。
あの、それ返して貰えませんか?」



その男が手に持ったソレを返すように訴えると、彼は手を後ろにまわした。


「...ごめんね。
ただではあげられないな。」


「え!どうしてですか...?」


すぐに返して貰えないことに絶望して
僕は跪いた。
ソレがないと僕は帰れない。
生きていけない。



「......。
こんな廃れたモノをもう一度君の中に戻すなんて、私の気が気でないんでね。」


ああ、確かにそうだ。
紫がかった黒に得体の知れない弦がトゲを生やして覆っていた。
でも僕はその治し方が分からない。

彼は知っているのだろうか。


「そんな顔しないで。
私のところへおいで。」


「...はい。」


それを確かめるために僕は彼について行くことにした。

柔らかな顔つきと口調の男だった。

だから不思議と吸い寄せられるように感じた。






しばらく導かれるままに歩いていると
木でできた一件の家が目に入った。

味のある趣深い家だ。


「ここが私の家だよ。
さあ、入って。」


「...おじゃまします。」


「おかえりなさい!
あら、お客さん?」


「道で拾ったんだ。
手伝ってくれるかい?」


そう言って女性に僕の心を見せると
彼女は微笑んで承諾した。
きっと妻だろう。

ふわふわと花が漂っているような
眠くなる雰囲気だ。



「...何をするんですか?」


どれだけ相手が柔らかくても、初対面であることに変わりはない。

なにか、裏があるのではないか。
僕の凝り深いところがでてしまう。


「あなたの心をキレイにするのよ。」


「なにも怪しいことは無いさ。
私たちが治してあげるよ。

君はそこに座ってリラックスしてくれればいい。

疲れているだろう。
眠ってもいいんだ。」



「ありがとうございます...。
では失礼しますね。」


やはりこのふたりは疑えない。
まだ無いはずの心がホッとした気がした。



僕が椅子に座ると、彼らが動き出す。
さあ、始めるか!という彼の合図で彼女が
何やら細々とした道具を持ってきた。
ピンセットや小さな布。
針と糸。

裁縫道具に似ているが、一体なにをするのだろうか。

説明もまだされていない。

整理が追いつかないでいると
ふいに、男の方がこちらを向いた。


「君、名前はなんて言うんだい?」


「な、なぎとです。
穏やかという意味の凪に北斗の斗で
なぎとって言います。」


名前を問われ、反射的に答えた。


「そうかそうか!
素敵な名前だ。
大切にするんだよ。」


彼は満足そうにリアクションをすると
次にこう続けた。


「さ、深呼吸して。

...これより凪斗くんの心の治療を始める。

力を抜いて、なるべくなにも考えないようにするんだ。」


「...分かりました。」


言われたとおり、リラックスして
力をぬこうとする。
上手くできているだろうか。
どうもソワソワしてしまう。


彼は僕の心に手をかざすと何やら呪文のようなものを唱えはじめた。


「あたたかな光よ。
この闇を拭い去れ。

あたためたまえ。
......彼に幸福を。」


「...っ......!」



かざした手から光が差した。
ゆっくりと包み込んでゆく。
それはとてもとても優しい光だった。

眩しすぎず、弱すぎず、だけどはっきりと
己の瞳に入ってくる。

そして美しかった。

その感情はもはや憧れに近いのかもしれない。

しばらく輝き続けるソレに目を奪われていた。


じわじわと温かくなっていくのを感じ
無意識に自分の手が心の辺りの触れている。



「...生命を灯し、力となりますように......。」


彼がそう告げると、緩やかに光は消えていった。



「よし!だいぶ柔らかくなったわねー。」


「良かった...。
じゃあ、あとはよろしく頼むよ。」


「ええ、任せてちょうだい。

今から傷や余分なモノを私が整理して
治していくわ。

でもね、これにはあなたの覚悟が必要なの。」


「覚悟...。」


「いい?よく聞いて。

あなた、傷の状態を見る限り、かなり辛い体験をして来たようね。

そしてそれを長い間放置してきた。

このトゲ、ところどころ自分の心にも刺さっててる。

体の傷も、小さなものから感染したり、膿んだりするでしょう?

これもそれと同じなのよ。

トゲを抜くときかなり痛みを伴うと思うけれど、あなたはそれに耐えられる?

途中で逃げ出したりしない?

自分がまいた種だもの。
自分で、決めなさい。」


僕が疎かにしてきた自分で決めること。
それが今、問い正すかのように
自分に降り掛かってきた。

眉をひそめ、真剣な眼差しを向けてくる彼女は出会った時よりも遥かに凛々しく見える。

彼女の言っていることは正しかった。
溜め込んだのは紛れもない自分であり、それを処理していなかったのも自分である。


分からなかった。
ずっと、疼いているこの痛みを
どうすれば消すことができるのか。

どうせ自分なんかと言い訳をして逃げてきた。


その罰として、僕は痛みに耐えなければならないのだ。
そうだ、この罰は受けるべきである。

さあ、YESと言え。
自分の中の弱さを認めろ。

僕はまだ、世界を知らないから。



「......大丈夫です。
絶対に逃げません。

僕、痛くてもいいです。

それで帰れるのなら。
世界が広がるのなら。

僕はどんな痛みにも耐えます。」




「そう...。

よく言ったわ。
あなたならそう言うと思ってた。

だって、ここに迷い込んでくる子たちは
強い子ばかりだもの。」



「...よろしくお願いします。」



「分かったわ。

じゃあ、これを持っていて。

強く握ればその分痛みが和らぐから。」


ゴム製のものだった。
握りやすいように形どられている。

心臓がうるさい。
脈が波打っているのがわかる。



「大丈夫。
君なら最後まで耐えられるさ。
私も支えよう。」


相変わらず柔らかな笑顔で言う彼に少し力が抜けた。



「ありがとう...ございます。」


「行くわよ。
ゆっくり息を吸って吐く。
それを忘れないで。」


「はいっ。」


歯を食いしばり痛みを待つ。
今まさに、彼女が1本目のトゲをピンセットで抜こうと集中している。

その先端がトゲに触れた直後、
僕の体に電流が走ったように痛んだ。


「いっ...!」


激しく体が反応した。
冷や汗が滲んでいく。

それでも自分で決めたことだから。



「ああ"ぁ!!
...っ、ぃたい......。
痛い...!」


「痛いな。
落ち着くんだ。
大丈夫。

大丈夫だ。」



「...っはあ、はぁ......。」



こんなに痛いのはもう一生無いかもしれない。
息が切れ、声も上手く出ない。
肺は必死に酸素を求めている。

なにか繋がっている訳でもないのに、なぜ痛いのだろうか。
苦しいのだろうか。

まるで拷問のようだ。

男が声をかけてくれることだけが唯一の救いだった。

ひとりじゃないと。
お前は大丈夫だと言って貰えている気がして踏ん張れる。


「はぁっ...、いっ...!....。」



きっと心は切っても切れぬ自分にしかない唯一無二の存在である。
だからこそ例え離れていても
痛くて、苦しいのだ。

そこに無いはずの心の在り処を握りしめる。



叫び、もがき、座っている椅子がガタガタと揺れている。

本来は自分で吐き出さねばならなかった行き場のない闇が、少しずつ退いていくのを感じた。



「あと1本よ、頑張って。」


「...っはい...。」


蚊の鳴くような声で返事をした。
もうすぐこの苦痛も終わる。
そう思うと、嬉しくてたまらなかった。


「あ"あぁああ...!!」


「よーし、終わったわよ!!
お疲れ様!」


「はっ...はぁ、はあ......。」


身体中が悲鳴をあげている。
髪が額にくっついて鬱陶しい。

「大丈夫かい?

よく頑張ったね。

立派だよ。」



そう言って彼は
僕の背中を摩ってくれた。



「あとは、傷ついたところに蓋をするの。

痛くないわ。
優しく縫うのよ。

彼の力も借りるから大丈夫。」


ポンっと彼の背中を叩き合図する。
彼はびっくりしながらも微笑んだ。


「安心してくれ。
疲れただろう。

寝ててもいいからね。」


「...わかり、ました。
ありがとうございます...。」



僕は睡魔に抗わず、ゆっくりと目を閉じた。




あぁ、なんて心地いいんだろう。
こんなに癒されたのはいつぶりだろうか。
マッサージを受けているようなそんな気分だ。

深く落ちてゆく。

それは決して暗くもなく、早くもなく
ただゆったりと沈んでいく。

意識はあっという間に夢の中へ吸い込まれていった。






「...くん。.....ぎとくん!!」



「......ん、ん?」


「おはよう!
どうやらかなり熟睡できたみたいだね。

良かったよ。

もう終わったからね。」


陽だまりのような彼がそう告げた。
いい目覚めだ。
あんなに疲れていたのが嘘のように
軽くなっている。


「あっ、ありがとうございました...!

あの、なんてお礼を言ったらいいか......。」



「はははっ。
お礼なんていいよ。

好きでやってるだけだからね。」


「でもっ...!」


「じゃあ、ひとつだけ。

もうこんなところに来ちゃいけないよ?

迷わず帰りなさい。

...これ、お守りとして持って帰って。

帰り道を教えてくれるんだ。」


それは木でできた懐中時計だった。
ボタンを押すとライトが行先を示してるようだ。



「ありがとうございますっ!
僕、あなたたちのおかげで救われました。

大事にしますね。

本当にありがとうございました。」


感謝の意を込めて頭を下げた。

嬉しくて、寂しくて涙が出そうだ。



「...いいから、もう頭をあげなさいよ。」

バレたくなくてずっと下を向いたままでいる
と女性が僕の頭を撫でながらやめるように促した。


「...っ.....。すみません。
なんか、泣けてきちゃって......。」


「あらまあ、顔がぐしゃぐしゃね!
もっと撫でちゃう!」


「えっ...ちょっと!
やめてくださいよっ...!


......もっと悲しくなるじゃないですか...。」


「こらこら、困ってるからやめなさい。

ほら、これで顔をふいて。

早く帰りなさい。」



ごめんなさいね。
可愛くてつい。

とこぼして撫でるのをやめてくれた。

でも嬉しかった。
とても、心が澄んでいる。

まともに撫でてもらったことがないから
だろうか。

きっと一生忘れない。
あの温もりと強さと優しさは
僕にとっての宝物だ。



「ありがとうございました...!!」



涙をふいて、背筋を伸ばし

大きな声で次へのスタートを切った。

小惑星・1日前
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