はじめる

#note文庫

読んでると、
思わず胸がギュッとしめつけられる、
そんなポエムを集めました。

全384作品・




『図書館の案内係』



__夕雁さんとコラボ





私は昔から本が好きだった。

古びた匂い、インクの匂い、

小説、絵本、全てが好きだ。


だから今日も、隣の市にある

大きな図書館へ行く。



(あれ……どこだ……)



分類番号シールをなぞる指が止まる。

前に見かけて

借りようと思っていた本が

見当たらないのだ。


諦めて、この本棚にある本を

借りようと思ったその時…



(ん…?)



空いている本棚の隙間から、

白いなにかの尻尾が

揺らめいているのが見えた。


どうしても気になるので、

見に行くことにした。


左側に回ってみると、

真っ白な毛並みをした猫がいた。

その猫はどういうわけか、

身体が半透明だった。


白猫は私の顔をじっと見て、

歩き始めた。

まるで"ついてこい"と

言っているようで、

私は思わず後を追った。


歩く度にチリンチリン、と

青い首輪についている鈴が

鳴っている。


周りの人は、そんな音が

聞こえていないかのように

本棚を眺めていた。


白猫がひとつの本棚の方を向き、

その場に座った。


この本棚になにかあるのか?


そう思い、

題名を確認しながら

本をなぞっていく。



「!」



そのなかのひとつに、

私の探していた本があった。



(まさか、案内してくれたの?)



白猫がいた方を向くが、

すでにいなくなった後だった。



(お礼を言おうと思ったのに…残念)



私は残念な気持ちに

なりながらも、

カウンターへ本を借りる

手続きをしに行った。


美人な司書さんは、

私の借りようとしている本を

じっと見つめていた。



「あの…どうかしました?」


「あ、いえ…お客さんもしかして、白い猫に会ったりしませんでした?」



図星を突かれて私は驚いた。



「なんで……」


「会ったんですね…本に白い毛がついていたのでそうじゃないかなと思いまして」



そう言って司書さんは

白い毛を指で掴んでみせた



「なんで猫の毛だって分かるんです?」


「昔、私が白猫を飼っていたんです。ルウという名前でした」



司書さんは話し始めた。


自分が七歳になった時に

祖父母からプレゼントで

もらったのが、

動物愛護センターから

引き取ったルウだということ、

昔、祖父母がこの図書館を

管理していたこと、

だが、自分が十五歳になった時に

二人とも認知症に

なってしまったこと、

七年後に他界してしまったこと、

後を追うように

ルウも旅立ってしまったこと、

そして…

幽霊のルウは今、

この図書館に

住み着いていること。

私が見た白猫は、

ルウだということ。


半透明だったのも説明がつく。



「実はルウにあった人はあなたが初めてじゃないんですよ」


「え?」


「毎回必ず決まって、探したい本が見つからない人の前に現れて案内するんです。全ての本の場所を熟知しているのでしょうね。あまり噂にするとここの評判が落ちてしまうので、ルウを見た人にだけこのことを話しているんです」



司書さんはそう言って

本のバーコードを読み取り、

本の間に、貸し出し締切日が

印刷された紙を挟む。



「司書さんは、ルウにあったことないんですか?」


「……ええ、一度も。残念ながら私もこの図書館の本を熟知しているので、案内されることはないんです。いつか会ってみたいのは山山なんですが…」



司書さんは俯き、

眉を下げて溜息をつく。



「じゃあ、新しく本を仕入れる時に、その仕事を全部他の司書さんに頼んだらどうですか? そうしたらどこにあるか分からなくなって、ルウが出てくるかもしれませんよ!」



我ながら

いいアイデアではないかと思う。



「それいいですね! 今度やってみます!」



司書さんの顔が明るくなる。

私は本を鞄にしまい、

図書館を出た。


なんだかほっこりした。

幽霊は

お話の中だけの話だと

思っていたけど

考えが変わった。


私が借りた本の題名は……

【優しい泥棒猫】





















-------------------------------------

偉大なる夕雁さんとコラボです!

この続きは、

夕雁さんが書いてくれます。

小説のタグを検索して

スクロールしたら、

夕雁さんの投稿があるので、

そこから

プロフィール欄に飛んだら

お気に入りクリックして

この続きの小説の投稿を待とう☆((

それが嫌なら

下のタグから飛ぶことだな☆((

筧 沙織・2020-10-05
図書館の案内係
優しい泥棒猫
小説
物語
図書館
白猫
図書室
幽霊
司書
司書さん
NOTE小説部
ユメビカリ出版
note文庫
独り言

小説
 ̄ ̄






青に
消えた
君の声













































シャカシャカと上着が音を立てる。
赤くなった鼻先が痛い。


マフラーに隠れた口の代わりに
鼻で冷たい空気を吸う。


鼻にツーンと、わさびを
口に含んだ時のような痛みが走る。


その痛みに自然と涙が滲む。



「うー……」



仕方なくマフラーを捲る。
口から出た白いそれは、空に溶けた。


息をする度に肺が凍りそうだ。
酸素が薄い。


藍色の空に、
白い水玉模様がついたようだ。


最近よく雪が降る。


冷たく無機質な灰色の地面に
雪が数センチ積もっていく。


年を越してもまだまだ寒い。


私には同性の恋人がいた。
五年ほど前、高校生の時。


そうか、もう五年か。
君がこの世を去ってから。



「寒いね。へへっ」



聞こえるはずのない声を聞きながら
悲しみに浸るのは何度目か。











次の日は、酷く晴れていた。
上着を一枚脱いでもいいほどに
暖かかった。



「今日はいい天気だね。どこか散歩しようよ」



濃く色づいた青の空に
私の脳だけに響く、
優しい声が溶けて消えていった。



「うん、そうだね」

筧 沙織・2021-01-20
青に消えた君の声
赤に消えた君の声
小説/from:沙織
短編小説
小説
物語
創作
NOTE小説部
ユメビカリ出版
note文庫
レズ
レズビアン
LGBT
青空
未練
故人
独り言


〈コラボ小説〉

Sena×沙織




『恋の始まりは』








「バカ女。」



目の前には怖い顔をした貴島さんの姿があった。



逆上ること一時間前、
私は、またカフェ、ひよっこに来ていた。



「いらっしゃい、秋穂さん。」


「こんにちは、貴島さん。
また来ちゃいました 笑」



相変わらずのまぶしい笑顔。
この人なら……



「今日は何にします?」


「メロンソーダ、お願いします。」



五分ほどすると、メロンソーダが出てきた。
緑色のソーダの上にアイスが乗っていて
すごく美味しそうだった。





* * *





私達は世間話を楽しんだ。



「ありがとうございました。」


「また来ますね!」


「はい、ぜひ!」



私はカフェを出た。
そして家へと続く細い路地に入った。



「よー、ねーちゃん。俺達と遊ばねぇー?笑」



タチの悪いナンパ男三人だ。
今すぐコイツらの股を蹴り上げたくて堪らない。



「イマドキナンパって流行らないですよ?」


「あー?ちょっとこっちに来てもらおうか?
なあ、あの倉庫空いてたっけ?」


「ああ、女の子を無理やり襲うところですよね、
はい、空いてます。」


「お前っ…!!」



真っ黒確定……


逃げなきゃ、でも腕を掴まれてるし
どうすればいいの…



「うわぁー引くわー…」


「っ、誰だ!?」


「いやあ?ただの通りすがりの元ヤンですよ。」



貴島さんだ。


助けに来てくれた…!



「なあ、秋穂さん。
俺、ヤンキーの血が騒いでしょうがないんだけど
こいつらやっちゃってもいい?」



そう言いながらも、
貴島さんはポキポキと拳を鳴らして
やる気満々だった。

ヤンキー部分が出てるよ、貴島さん…



「別にいいですよ。」



私はニコニコ笑顔で答えた。



「ちょっと、おねーさん助けてよ!」


「貴方たちを助ける理由なんてありません。」


「ってことで、ボッコボコにしていい?
まあ、ダメって言ってもやるけど 笑」


「ちょ、まてやめてくれ!」


「男なら堂々と勝負しようぜー!?」



貴島さんは思いっきり男達に飛びかかった。
そして、一分ほどで三人全員を倒してしまった。



「つ、強い…」


「ふー、楽勝。」


「ヤンキーだったのは昔の話なんじゃ…?」



私は震える声で尋ねた。



「まあな、今はちょっと更生した。
てか、角曲がる前に
もうちょっと警戒しろよバカ女。」


「ばっ!?馬鹿じゃありません!
ほとんど更生してなくないですか!?」


「うるせーな。はぁ………好きだ。」


「え?今なんて…」


「あ……あ、本音が、あ、っち、違うなんでもない!!」


「好きって言ってましたよね?」


「お、お前のことじゃない!」





* * *





半年後……なんやかんやで
私にはツンデレな彼氏ができた。

貴島 健さん。

あの元ヤン黒縁メガネだ。


そして今、私達は
姉の協力のおかげで同棲ができている。

私も仕事をやめて、
カフェ、ひよっこ で働いている。



「く、苦しいよ健さん。」



今私は苦しいほどに
後ろから抱きしめられている。



「充電だ、充電。」


「はいはい、甘えたい気分なんですよね。」


「違わい!」


「健さん、大好き。」



こうやって突然愛情を示すと…



「なっ、えっ、何言ってんだっ」



意外と言われ慣れていないのか、
めちゃくちゃ照れる。


健さんは私の首に顔を埋めた。
顔の熱が首に伝わる。



「照れるからやめろっつってんだ」


「はいはい、分かってますってば。笑」



私達は今でも仲良くやっています。

































-------------------------------------

下手ですね、分かってますよ、はい。


言い訳させてください。


これが私の実力なんです!!


ね?


これが、私の、実力なんです!!(((二回目


下手すぎて自分でも泣ける(´;ω;`)w



Senaさんのご期待に


応えられましたかね…?


またコラボしたいな、


なんて思っています。


Senaさん、


コラボありがとうございました!

筧 沙織・2020-08-03
Sena×沙織❁コラボ小説
コラボ小説
小説
物語
元ヤン
黒縁メガネ
恋愛
NOTE小説部
ユメビカリ出版
note文庫
独り言
それでも君と

これらの作品は
アプリ『NOTE15』で作られました。

他に384作品あります

アプリでもっとみる




ー君のいない世界で、僕は息をするー







君のいない世界。


それは神の悪戯か天罰か











「次の小説は君を題材にしてもいい?」



キッチンで食器を拭いてる彼女に問いかけた。



「えー…私?恥ずかしいなぁ、」



優しく、花が芽吹く様に君が微笑む。



「最愛の彼女が世界から居なくなる話。その恋人たちのモデルを僕達にしようかなって」



「うわぁぁ…私消えちゃうんだ、かなしぃ~」



「別に君は消えないよ、君をモデルにするだけ」



「ふふっ、わかってるよもぅ!!」


狭い部屋に響く笑い声。肌を撫でる暖かい風。どれもが僕達の平和を祝福してるみたいで



こんな平和が続くと思っていた。














数ヶ月ぶりのデート。

同棲してるのにデートはどうしても現地集合がいいなんて君が言うから先に家を出た。


待ち合わせ場所で待ってる姿を見るのが好きらしくどうしてもこれだけは譲れないらしい。


9時15分


約束は9時30分。15分も早くついた。
日差しが強くなってきた。こんな中外で待ってるのもなんだから近場にあるカフェをみつけ入る。


君が好きそうな雰囲気だな、なんて思いながらカフェラテを頼む。


1度彼女にカフェラテを勧めたが甘くない!!!と怒られたことがあった。
それ以来僕が飲むものを勧めても飲んでくれなくなったなぁなんて思い出しては胸が擽ったくなる。



注文したカフェラテを啜りながら本を開く。



『赤毛のアン』





昨日君に読んで欲しいと渡された。読書が嫌いな君に僕が贈った本。読み切った後にすごくいい笑顔で面白かったと言われたのを昨日のように思い出す。そんな大事な本を丁寧に捲っていく。まるで君に触れるかのように。





そろそろ頃合だろうか、時計を一瞥する。


9時40分



しまった。10分過ぎている。

急いで残りのカフェラテを喉に流す。
すぐさま会計を済ませ店をとび出た。


折角君が待ち合せ姿を楽しみにしてたのにこれじゃあ逆になるじゃないか。



いつもの銅像の前に来たが彼女の姿が見えない。
…遅刻だろうか。いやそれは無い、彼女が遅刻をするなんて滅多にないしする時は必ず連絡をくれる。


アプリの不具合で通知が届いてないのかもしれない。
君とのトーク画面を開くがなんのメッセージも送られてきていない。


いや、もう少しだけ待ってみよう。何か考えがあるのかもしれない…




だがしかし、人は待つという行為に慣れなていないからか、数分でさえ苦痛に感じてしまう。

何度も時計を確認するが長針は一向に進まない。



…いや考えてみろ。何を不安に思ってるんだ。彼女が突拍子もない行動をするのは珍しいことじゃない。それに家からここまでの道危険な場所だってなかった。


遅くなるのにはなにか理由があるだけで、僕は過保護になりすぎなんじゃないだろうか、、


彼女から着いたと連絡が来るまで少しぶらぶらしよう。
この嫌な感覚を払拭したくて足を進める。


近くにあった本屋に入ったり、ディスプレイ用品を眺めては君に似合いそうだ、なんて考えたり…
過ごそうと思えば時間はいくらでも過ごせた。




ただ頭から君のことが離れなかったけど。






本日二回目のカフェラテを飲む。
喉の乾きを潤すのに最適とは言えないが程よく苦いこの味が僕の心を落ち着かせてくれた。



もう半日が経った。なのに彼女はまだ姿を現さない。


刹那電話がかかってきた


発信者は君の母親の名前。

…電話?滅多にかけてこない相手に戸惑いながらもスマホを耳に押し当てる。





「あ、もしもし、、、」










来て欲しいと言われた場所は市内でも1番大きい病院。理由がわからなかった。なぜ急に呼ばれたのか、



脳の奥底で最悪な事態を想像した自分が許せなくて必死に違うと言い聞かせる。



だって彼女はあんなにも元気だったじゃないか。
何も無い。あるわけが無い。





指定された病室の戸を開ける。




ベッドに横たわる君の姿。
いくつもの管がつけられている。今朝の明るい笑顔など微塵もない。



「…え、」




「あぁ、来てくれたのね」


目元を腫らして涙声のお義母さん。理解ができない。いや、したくなかった。



「これ、、どういう、、事ですか?」



「あの子、頑固よね、病気のことを話してないなんて、」



病気?そんなの1度も聞いたことない。


「昔から…心臓が弱かったのよ、」



「…そんなの、初めて聞きました」



「今日、デートの日だったんですってね、あの子から昨日メールが送られてきたのよ。久しぶりのデートだからおめかししなくちゃって、」



「…そう、なんですか」



「でも、急に発作が起きたみたいで…誰もいない道で倒れてたらしいの。それを……ランニングしてた方が見つけてくれたらしくて……でも、もっと早く見つかってたら、、、助かったかもしれないのにって……」



「そん…な」




「もっと…あの子と出かければよかった、こんな事になるなら、、やりたいこと全部やらせてあげればよかった…不甲斐ない母親で…ごめんなさい…」



「…」



なんて声をかけたらいいのか分からなかった。
ただ頭に霞がかかったかのようにぼんやりしていて


頬に鈍い痛みが走った。
足がよろける。頬を、叩かれたのだ。


「君が…君がいながらなぜ娘がこんな目にあった…!」


「何故そばにいてやらんのだ。傍に、居てくれれば死ななかったのかもしれないのに…まだ…未来があったのに、」



「…お父さん、彼は悪くないでしょ、」


口の中に血の味が広がってきた。
その通りだ。僕が、僕が先に家を出なければ…君の異変に気づいていれば、全部、僕のせいだ。





気づいたら朝を迎えていた。昨日あれからどうやって家に戻ってきたかは覚えてない。ただ、枕が湿っていたからきっと泣いていたのだろう。



隣にない君の温もり。キッチンから香る朝食の匂い。何も無い。


心に大きく穴が空いた気分だ。



喪失感?虚無感?どれも当てはまるようで違う気がする。この物足りなさは何にも変えられない。




重い足をベッドから下ろしてキッチンに向かう。


慣れない手つきで料理を始める。君が作ってくれたご飯を教えてくれた手順を思い出しながら、、、



「…しょっぱいや、」



1人の食事。いつもとは違うしょっぱさに顔を顰める。
味付けのせいなのか君のいない悲しみから来るものなのか、はたまた両方か。



食器洗い、選択、掃除、昼食の準備、おやつ、


どの時間にも君がいて笑いあってたんだ。
思い出して零れ落ちた。心がひとつ、ふたつみっつと零れ落ちてくる。とめどなく溢れる。



1人が、こんなに寂しいものだなんて知らなかった。


いつの間にか君のいる生活が当たり前に変わってたんだ、









あれから数ヶ月が経った。

時間が経てば悲しみは薄れるなど言うがそんなことあるわけがなく今も尚君のいない世界で君を探し続ける日々。


突如鳴り響く電子音
静寂を切り裂く音に肩を震わせながら耳に押し当てた。



『彼女さんのお話、聞きました。心中お察しします。…それで、こんな中聞くのもどうかと思うのですが一応仕事なので、原稿の方どうですか……?』




担当編集者からの電話。
今の今まで忘れていた。いつも彼女の方から進捗状況を聞いてくるからその時間が好きで自然とパソコンに向かっていたが、今は違う。何もしたくない。書きたくない。


そんな衝動に駆られながら虚ろな瞳でパソコンと向き合う。


書きかけの小説。


『僕の世界から君が崩れ落ちた』



あの日君と話した「最愛の彼女が世界から居なくなってしまう物語」…本当に、本当に居なくなってしまったじゃないか。なんでだよ、なんで…






真っ暗な画面に映る写真立て。
京都旅行に行った時の写真だ、幸せそうな君の笑顔が胸を締付ける。

しばらく触っていなかったからか埃が少しついている。落とそうと思い持ち上げた時1枚の便箋が床へ舞った。



「…手紙?」



大好きな彼氏様へ




丸っこい文字。間違いなく君の文字だ。
急いで、でも破れないように慎重に封を開ける。



大好きな彼氏様へ


私がお星様になってからどのくらい経ったかな?
君のことだからすぐ見つけてくれたかな?


えっと、まずはごめんね。

勝手に死んじゃって、まだ小説のモデルになってないのに…

笑もっと、早くに言えばよかったかな。

でも君との今を失いたくなかったの。

私が病気だって言ったら君はきっと過保護になるし

優しい君は悲しそうな顔するでしょ?

そんな顔はさせたくなかったから…見たくないから

だから黙ってました。本当にごめんなさい。

最初で最後の我儘ってことで許してくれると嬉しいなあ笑

ねぇ、ちゃんとご飯食べてる?

君の料理の腕は壊滅的だったからなぁ…笑笑

なんでもいいから必ず食べてね。栄養失調で倒れたりしたら

許さないから!!

あと、小説最後まで書ききってよね。私が死んだのは

私が負けちゃっただけで、君は関係ないんだから。

私は君の小説が好きなの。いや、小説は嫌いだけど

君が話して聞かせてくれる物語が大好きなの。

だから最後まで書いて、それで私に教えてよ。

幸せになってください。


世界一幸せものだった私より



最後の方は視界がぼやけて文字を潰していってしまった。

何が幸せになってください、だ。

君のいない世界で、君を抱きしめられない日々で幸せになれるわけないだろう。永遠に君を愛すって約束したじゃないか。
馬鹿な事を言わないでくれ。



「…会いたい。会いたいよ。まだ、約束果たせてないじゃんか。ハワイに新婚旅行行きたいって、ペットは犬を飼うって、庭のある家で子供は3人。バーベキューしながらみんなで笑うって、全部…これから叶えるって約束したのに…ずるいよ、自分勝手すぎる…許すわけないだろ、バカ。ずっと、ずっと、許してやらない…」


声が震え、嗚咽が漏れてくる。声にならない叫び声が部屋の中に溢れる。











「お義父さん、お義母さん、今日はお墓参りについて来て下さりありがとうございます」



今君がこの状況を見たら笑うかな、
無愛想なお義父さんと幸せそうに笑うお義母さん、そして真ん中にいる僕。不思議な組み合わせでしょ?僕も心底そう思う。



「…もう、自由になってもいいのよ」


「いえ、僕は彼女のことを生涯愛すって約束しましたから」


「…くだらん。だが、その思いは認めてやる」


「ふふっ、本当に頑固なんですから」



そういえば最近気づいたんだけど君のよく笑う性格はお義母さん似で少し頑固なところはお義父さん似なんだね。


あと、物語の話。先週完成したんだよ。
少し物語は変えた。
せめて小説の中では僕達幸せになるべきだからね、君は死なないんだ。

え?それじゃ彼女はどうなるのか?


そこは僕の腕の見せどころだよ。

彼女は死なない。けどね、記憶を全て失ってしまうんだ。だから僕の世界から君は消えてしまう。でも最後は思い出してまた結ばれる。

ちょっと大雑把に説明しすぎたかな、、、?まぁ君相手だしこれぐらいでいいか。

陳腐な内容かもしれないけどそれでもこの物語の結末は不幸にしたくなかったんだ。

君を失ってから気づくことが沢山あったけど、1番大きかったのは


会いたいと願っても君に会えないこと、かな。



…そろそろ行かないと。お義父さんに怒られちゃうからね、




お線香の匂いに混じって一瞬君の匂いが鼻腔をくすぐった。
まるで私はここにいるよ、とアピールするかのように。







君のいない世界、僕は君のために生きる

茜色の詩 ✲・2020-06-04
小説
創作
長編小説
物語
note文庫
恋人
別れ
長いです。本当に長かったです。
書けてよかった…疲れた。
しばらく寝たいです。
ポエム
彗星が尾を引くように





『海月少女』








嗚呼、クラゲのように


消えてしまえばいいのに。



クラゲが生息する海が見える


大きな屋敷から


私は満月の夜に願った。



私はその場に崩れ落ち、


深い眠りについた。



夢の中で、


謎の男は私の頭を撫でた。


貴方は、一体誰なの?



つまらない朝がやって来た。


でも、違和感がある。


体がなにかに包まれている。



こぽこぽ



二酸化炭素が私の口から出てゆく。


私は確信した。



ここは、海だ。



履いていたスカートが


透明になっている。





私、海月になったんだ。

筧 沙織・2020-08-09
海月少女の結末
ぴったり200文字で小説書いてみようチャレンジ
短編小説
小説
物語
クラゲ
海月
屋敷
二酸化炭素
スカート
透明
NOTE小説部
ユメビカリ出版
note文庫
小説/from:沙織
独り言








小説



テクトゥム



























ここは学校、?


ああ…屋上か。



空は紅に


染まっている。



この空には


見覚えがある。



既視感、デジャブ


というやつか。



「な、」



耳鳴りがする。


高いとは


言えないけれど、


不快な音だ。



「……くだ。ぜっ いにな」


「えっ? 何を言っているんですか…」



優しい。


優しい男性の声に


包まれる。



途切れ途切れで


聞き取れないが、


何か言っている。



私の口は


勝手に動いている。



コン、…コン



男は、


少し離れた


ところの手すりに


両足を乗せ、


バランスを取る。



「駄目!!」



そう叫んだ瞬間、


支配されているような


感覚が無くなり、



私は右手を


力いっぱい


伸ばした。



あと一歩


というところで


男の手を


取り損ねた。











夢のはずだった。



それなのに、


これでもかと


いうほどの


強い罪悪感が


押し寄せる。



汗ばんでいる


右手は震えている。



日光で部屋は


暖かいのに、


冷や汗を


かいている。



「はは……」



もう何回目だろう。



前の時は、


男の手を掴んだが


力は足りず、


男は真っ逆さまに


落ちていった。



他にも


何パターンか


体験した。



今でも鮮明に


覚えている。



みぞおち辺りから


吐き気が込み上げる。



「もうすぐご飯よー? 休みの日だからってぼーっとし……どうしたの!」



これも何回か


体験した。



心配性の母が


私の背中をさする。



この状況にも


吐き気がする。





何故こんなにも、


ただの夢に


影響されるのだろう。



全部、全部


消えてしまえば


いいのに。



ベットが底なしに


なったようだ。



闇の中


落ちていく。



吸い込まれる


という表現が


正しいのかも


しれない。



「……ここは…?」


「さぁね」



その女は机に座り、


私を見下げている。



服からちらちらと


見える足は


白く滑やかだ。



「!」


「あたしはアスカ。ここは学校みたいね」



アスカさんは


腕を組んで


辺りを見回す。



釣られて私も


窓に目をやる。



外は真っ暗。


明かりは


点滅している


この教室の


電気のみ。



「さぁ、私は名乗ったわ。貴方も名乗りなさいよ」



いつの間にか私は、


六人の男女に


囲まれていた。



「私は……タマキ……タマキと言います」



「ふふっ」と


どこか見下すように


一笑いすると、



アスカさんは


手を私に差し出した。



「よろしく。タマキさん」



ピーンポーンパーンポーン



〈探しましょう。どこかに繋がる鍵を〉

筧 沙織・2021-02-15
続きは迷い中。
テクトゥム
小説/from:沙織
連載小説
小説
物語
創作
NOTE小説部
ユメビカリ出版
note文庫
教室
学校
制服
放送
独り言

小説
 ̄ ̄続






赤に
消えた
君の声

















































高校三年生。
医者から余命宣告を受けた。


残りの人生半年。膵臓癌だ。


三ヶ月前、
同性の親友と恋人同士になった。


お互いに自分が抱いている気持ちに
気づいたのが付き合うまでに至った
きっかけだ。


空の色が変わり始めた。
はっきりしないが、
青色ではないことは確かだ。


真っ白でつまらない部屋が
少し色づいてきた。


ぼーっと外を眺めていると、
ドアがゆっくりと開いた。


大人っぽい君は
優しく私に微笑みかけた。



「……空が赤いよ」


「そうだね」


「……っう!」



耐えられないほどの痛みが
私を貫く。


急な発作により、私は予定より早く
あの世へ行くことになってしまった。


少し桃色がかった赤色の空に
君の泣き声が溶けて消えていった。

筧 沙織・2021-01-20
赤に消えた君の声
青に消えた君の声
小説/from:沙織
短編小説
小説
物語
創作
NOTE小説部
ユメビカリ出版
note文庫
恋人
レズビアン
レズ
余命宣告
病院
泣き声
独り言





『私達なりの恋愛』






『明日、あの公園に

暗くなった頃に来て。

水澪』
ミレイ



親友が私の下駄箱に、

ルーズリーフの

一ページを破って

横に入った線に沿った

綺麗な文字で

手紙を残して行った。


なんの用だろう?


ちなみに"あの公園"とは、

私達がいつもブランコで

おやつを食べる場所だ。


とりあえず、言ってみるか。






***



ざっ ざっ ざっ


公園の地面の砂を

私の靴が踏む。



「遅いよ、笑美」



ブランコに座って

若干苦笑いを浮かべて

私、笑美(エミ)の名を呼ぶ。



「ごめーん!」


「っていうのは冗談で、

私もさっき来たとこ!」


「それはそうと、何やるの?」


「それはねー…これ!」



水澪はブランコの後ろから、

水の入ったペットボトル、

ライター、ロウソク、

線香花火を取り出した。



「二人でやろうと思って!」



そして

足元にあった砂をかき集め、

その中心に、

ライターで火をつけた

ロウソクを立てた。


線香花火に火をつけると、

私に手渡してくれた。


パチパチと弾ける火に

見とれていると、

何故か青春だなと思った。



「笑美、こっち向いて」


「何、みれ……」



私が名前を呼び終わる前に

水澪は自分の唇で

私の唇を塞いだ。


線香花火が落ちると、

水澪は私から離れて

ブランコに座り、

新しい線香花火に火をつけた。


そして、

線香花火を見たまま

話し始めた。



「ここに呼び出したのは、

こういう理由があったんだよね。

でも笑美は女で、私も女だから

なかなか言いづらくて

ほら、私って真剣に

なにか言うの嫌いじゃん?

だからこうするしかなかったんだ

私、笑美のことが、

出会った頃から好きだった。」



光が消える。

水澪はそのまま項垂れた。



「あの、えーっと…」


「……ごめん。

申し訳ないって思ってる。

気持ち悪いよね…本当にごめん」



辺りは暗くて

よく見えないけれど

水澪は多分、

泣きそうになっている。



「……泣かないで。

気持ち悪いなんて

一ミクロンも思ってないから」



私がそう言うと水澪は、

「ありがとう」と言って笑った。






***



帰り道


水澪は何も言わずに

白線の内側を歩いていた。



「水澪。こっち向いて?」


「……なに…」



私はそっと、

水澪に口づけをした。



「さっきの告白の返事。

ダメだったかな?笑







私も水澪が、好きだよ」

筧 沙織・2020-09-04
私達なりの恋愛
ただ写真なくなりそうだからて理由で四十分くらいで書いた小説です
短編小説
小説
物語
GL
百合
レズビアン
レズ
線香花火
高校生
NOTE小説部
ユメビカリ出版
note文庫
小説/from:沙織
独り言



鬼はなづめど、我は眠る


ー第四話ー






あれから、狐崎くんとは
何度か二人で作業するようになった。


狐崎くんは愛想がよく、
仕事もできる。



「そーいえば有紀ちゃんって彼氏いるの?」



小さな飾りを貼っている最中、
狐崎くんが話しかけてきた。


手を動かすだけでは口が暇で
話しかけてきたのだろう。



「うん。いるけど、それがどうしたの?」



飾りに目をやったまま、
私は耳を傾ける。



「どんな人なの?」



「不器用だけど…、素敵な人だよ」



朗茉のくしゃっとした
可愛い笑顔が脳裏に浮かぶ。



「……へぇー…残念。
僕、有紀ちゃんのこと好きなのにな」


「え…? はっ?」



突然の告白に私は手を止めた。
顔が一気に熱くなる。


狐崎くんは
私を試すようにじっと見つめる。


口角が微かに上がり、
私を面白がっているようだった。



「あ、……え、えっと…続きやろっか」



何年か前の"トラウマ"が蘇った。
せっかく忘れかけていたのに……。











高校生の私は、
今よりずっとネガティブで暗い
いわゆる"地味子"だった。


友達は一応いたが、
充実した毎日とは言えなかった。


そんなある日…



「松山さんが好きです。俺と、付き合ってください!」



学校一の人気者の先輩に告白された。


夢かと思うくらいに嬉しかった。
先輩は当時の私の憧れだった。



「…はい」


「マジ? くくっ、あははっ! あんたまじウケる!」



先輩はお腹を抱えて笑う。
まるで私を見下すような笑い方だ。


私の知っている先輩じゃない。



「え…?」


「俺みたいな人気者が、お前みたいな地味子と付き合うわけねーだろ?」


「それは、どういう…」


「分かんねーかなぁ!? 嘘コクだよ、うーそーコーク!」



片手で両頬を掴まれ、
はっきりと言われ


私のメンタルはズタボロになった。


偶然通りかかった友人が
スマホで先輩の発言を
録音してくれていたらしく、


先輩は退学まで行かなかったが
このことが学校中に知れて
皆から避けられるようになった。


結局気まずくなったのか、
卒業する前に先輩は引っ越していった。


でも私の傷は、消えなかった。
男性不信になったのだ。


大学生。イメチェンをして投稿した日
キャンパスで大勢の女子に囲まれる
男の人がいた。


それが朗茉だ。


あの先輩と重なるところがあったが
朗茉は先輩と違って謙虚だった。


いつもちょっと戸惑っていて、
プレゼントを貰った時は
感謝の言葉を忘れない。


私はそんな、真面目で優しい彼に
惹かれていったんだ。


恋人同士になった後も、
私がトラウマを抱えていることを
受け入れてくれた。











失礼だと分かっているが、
狐崎くんは悪い意味で
先輩と重なる部分が沢山ある。


優しい同僚だと分かっているけど…


やはり、朗茉とその友達以外の男性は、
なかなか心の底からは信用出来ない。



「僕、諦めませんから。
貴方が僕を好きになってくれるまで」


「……うん。…残りの飾り持ってくるね」



関係者用扉を開け、
飾りが積まれた車へ向かう。



「お願いしまー…」



ガチャン



ドアが閉まり
足音が遠のくのを確認すると
天井を見上げ狐崎は笑った。



「……ふふっ…可愛いな。鬼無の前でこれ言ったら怒るだろうなー……さあ、僕の可愛い有紀ちゃん…僕の所へおいで…次会った時、君を落として見せるよ」



狐崎は黄土色と白色の耳を生やし、
成功を想像して笑っていた。







続く >>>>
















------------------------------------

有紀ちゃんのトラウマが明らかに。

斎睦くんはそれを知らずに

有紀ちゃんを

朗茉くんから奪おうとします。


びんさんにバトンタッチ

筧 沙織・2020-12-16
鬼はなづめど、我は眠る
コラボ小説
小説
物語
創作
NOTE小説部
ユメビカリ出版
note文庫
ファンタジー
現代ファンタジー
恋のライバル
恋人
独り言







【 雲の速度を見ていた 】



原作 和歌:零宮 縒

作:沙織



























「もう、こないで…」


「っ!」



ピピッ ピピッ



どこか無機質な音で


夢から覚める。



今日も同じ夢を見た。



なかなか開かぬ


目の変わりに、


手探りでスマホを探す。



適当に画面を押すと、


やっと音が止まってくれた。



今日は休みだから


起きなくていいや、と


もう一度布団に潜るが


もう目が覚めて


しまっていた。



少し不機嫌なまま


体を起こす。



この体が重たいのが


嫌いだから


朝が嫌いなんだ。



一人暮らし。


なんとか家事を


こなしている。



いい加減に、


この生活を変えたい。



あれからもう一年半、


だっけか。


スマホの日付を


見て実感する。



温まったシーツから


体を離す。



気づけばもう二十歳。


高校卒業後、新卒で就職。


普通に会社員をやっている。


恋人は、人生で


一人だけ


できたことがある。



カーテンの隙間から、


完全に締めきって


いなかった為か


細く温かい光が


差し込んでいた。



その光を


全身に浴びるべく、


厚いカーテンを


勢いよく開ける。



光が、まるで自分と


対照的な物のようで


気分が沈むばかりだ。



できればあの時、


十七歳の時のまま、


時が止まっていて


くれればよかった。



朝ご飯を簡単に済ませ、


パジャマから着替える。



とんとん、


靴の爪先を


玄関の床に


打ちつける。



「いってらっしゃいっ」



そう、弾んだ声が


聞こえた気がした。



勿論、あくまで


"気のせい"だが。



「……行ってきます」



今日は、適当に


散歩をするつもりだ。











十七歳の俺は、


ある廃ビルの屋上で


光が無い目で


空をただ見つめていた。



何が嫌なことが


あった訳でもなく、


ただなにも起きない


平凡な人生が


つまらなくて。



俺は、錆びた手すりに


体重をかけて、跨いだ。



空に背を向けて、


空に身を任せた。



ダッダッダッダッ


パシッ



すごく早い


足音が聞こえて、


両手首を掴まれた。



「え?」


「はぁ、危なかった!」



俺と同じくらいの


年齢だろうか。



ネクタイに


ブレザーの制服を着た


長い黒髪の少女だった。



「……なんで、死なせてくれなかったんですか…俺にはこの世にいる意味がないんですよ」


「意味なんて作ればいいじゃないですか」



当たり前のように


澄んだ声で言われる。



「俺を生かした理由はなんですか」


「理由なんて、私が助けたかったから、それでいいじゃないですか」



あまりにも


明るい笑顔で


言うものだから、


怒りがふつふつと


湧いてくる。



「ふざけないでください! なんで死なせてくれないんですか!?」



パン!



一瞬何が起こったのか


分からなかった。



少ししてから、


左の頬に鈍い痛みが走る。



平手打ちを


されたのだ。



「目の前で人が死んでいくのを黙って見てろって言うの!? 貴方こそふざけないで!!」


「ぁ……ぇ……」



清楚系女子が


声を荒らげるのは


なんとも


不思議なもので、


反抗する声も出ない。



あれ、俺、


怒られてる?



「……あ、ごめんなさい! 私なんてことを…!」



それが、出会いだった。



その後、


あの廃ビルに訪れるも、


俺が着く前に


必ず先に彼女はいる。



俺が死なないように


見張る為、らしい。



段々と俺達は


距離を縮めていった。



そしてやがて、


恋人同士になった。



ある日



「ねぇ、今度デートでもしない?」


「いいね。どこにしよっか」



たわいもない会話。



「そうだなぁ、遊園……」



最後まで言う前に、


力なく倒れた。



「え……?」



癌。


彼女の両親から聞いた。



俺は元気になることを強く願って、


毎日お見舞いに行った。



大切な人が、日に日に


痩せ細っていくのを見るのは、


こんなにも辛いものなんだ。



「今日は花だ」



高校三年生、十八歳。


十一月、風が少し


冷たくなってきた。


今日もお見舞いに来ていた。


俺は彼女に、


一輪の赤い薔薇を買った。



「…ありがとう」



彼女はずっと、


花を見つめていた。


どこか悲しい顔をしていた。


微かに眉間に


皺が寄せられたように


見えたのは


気のせいだろうか。



「どうした? なんか元気ないね…?」


「頼みがあるの」


「俺が叶えられるものならなんでも」



彼女が望むものなら…


本当にそのつもりだった。



「もう、お見舞いにこないでくれるかな」


「え……?」



そこからのことは


よく覚えていない。



唯一、覚えていることは


細い背中を向けられて


「もう、こないで…」


と、彼女の


懇願するような


声がしたこと。


俺はそれに、


従ってしまったこと。











あれから俺は


一度も見舞いに


行っていない。


無理にでも


行くことはできた。


何故そんなことを言うの?


そう、問うことも出来た。


分かってる。


俺は、そうやって


行動することで


彼女に嫌われるのが


怖かったんだ。



彼女の生死さえも


分からぬまま


一年と半年の時間が過ぎた。



家の近くを散歩して、


カフェに寄ったりしていると、


空が橙色になってきていた。



「はっ、」



あまりにも


何も無い休日で


笑えてくる。



せめて、久しぶりに


あの場所に行こうか。



丁度、目の前にあった


駅の方へ行く。



どこか懐かしい


市の名前が入った


切符を買い、


所々使い古した跡がある


電車に乗る。


窓沿いに立つ。


暇つぶしに景色を


見ようと思う。



ガタン、ゴトン、



リズムよく


揺れる車両。


灰色のものばかりで


つまらなく


なってきた頃、


視界が広がった。



それは、湖だった。



水面には、


まだ少し青い空と、


ゆっくりと動く橙色の雲と


列車が映っている。



その中には俺もいて、


「臆病者」


そう言っている気がする。



……そんなことくらい


分かってるよ。



そう言い返したくなる。



そんな俺の


気持ちも知らずに、


水面は


今まで見たことが


ないほど、綺麗に


夕日に輝いていた。











「……うん」


「っ!」



ピピッ ピピッ



どこか無機質な音で


目が覚める。



またあの夢を見ていた。



私が突き放した時の夢。



もうこれ以上、


醜くい醜い姿を


見られたくなくて。



今でも後悔している。


頼れば良かった。


なんで、嫌われるのが


怖くなったんだろう。


優しく受け止めて


くれるって、


分かってたのに。



あれから私は


順調に回復した。



彼が今、どこで


何をやっているのか


それさえも分からない。



私は今でも彼氏を


作らないでいる。


人生で彼氏は一人だけ。


……あの人だけ。



今日は、久しぶりに


あの廃ビルに


行こうと思う。











廃ビルは


まだあったらしい。



錆びた階段を上り、


屋上の入口へ着いた。



ドアノブをひねる。


押すと、


ギギギ…音がした。



コンクリートに


踏み込むと、


懐かしい風の


匂いがした。



「うー……さみっ」



ポケットに入れた


両手を手すりにかける。



あの時みたいに。



あの澄んだ声が


聞こえてきそうだ。



「まさか、飛び降りないよね?」



微笑み混じりの


懐かしい声がする。



そう、まさにこんな感じの…



え?



「!!」



振り返ると、


マフラーをめくって


笑っている彼女がいた。



「久しぶり。ふふっ」



二人の嬉し涙は、


コンクリートに滴り落ちて


静かに消えた。


























二人の髪を揺らした風は、


雲の速度を上げていった。







筧 沙織・2021-01-17
雲の速度を見ていた
コラボ小説
小説/from:沙織
長編小説
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NOTE小説部
ユメビカリ出版
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再会
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鬼はなづめど、我は眠る


ー第二話ー





私は考えた。あれはなんだったんだと。
何度考えてもありえない結果にたどり着く。


非現実的でも実際に起こっているので
信じざるを得ない。


朗茉に直接聞くのは気が引ける。彼にもきっとなにか事情があるのだと思ったからだ。


そこで、彼をつけてみることにした。


雪が降るのではないかというくらいの寒空の日、朝早くに朗茉が住むマンションの玄関を見張った。


五分ほどすると玄関が開き、朗茉が少し寒そうに首を沈めて出てきた。


玄関の鍵を閉めると、身震いをして姿勢よく歩き始めた。


時々電柱などの物陰に隠れながら、彼の背中を追う。


やっていることはストーカーと同じだと承知の上だ。


朗茉は繁華街をしばらく歩くと路地へ入っていった。


ここからは隠れる場所が少ないので、用心しなければならない。



「ふぁぁ……」



あくびをすると、左へ曲がっていく。
私はそっとあとをつける。


さらに左、また左、
気がつくと元の場所に戻っていた。


朗茉は突然ピタッと足を止める。



「くくっ…なあいるんだろー、有紀?」



朗茉は含み笑いをすると私の名前を呼ぶ。


胸がどくん、と悪い意味で高鳴った。
脂汗が額に滲み出るのが分かった。



「……気づいてたんだ」


「なんのつもりか知らないけど、人のあとをつけるとは趣味が悪いぞ~」



ぐぐっと顔を近づけ私を睨む。



「あはは、ごめんねー。びっくりさせようと思ってー…」



下手な演技ながらも、震える声で
怪しまれないよう必死に誤魔化す。



「ふーん? それならいいけど。俺これから買い物なんだ、よかったらお前も一緒に来る?」


「いや、私はそこら辺で歩いてるよ」


「そうか。じゃ、なんかあったら連絡しろよな~」



朗茉は手を振ると、路地を出ていった。


危ない危ない……



「(やっべ、俺のことバレたかな……それに、あいつが有紀のこと見ちまったかも……)」








「ふーん、あれが鬼無の彼女ねー…結構可愛いじゃん。タイプかも…奪ってやろっと。彼女ちょろそーだし……ふふっ」























------------------------------------

びんさんとコラボ小説です´ω`*

第一話はタグから飛べます。

最後のセリフが気になりますね…

なんか嫌な奴だってことは分かる。((

へっへっへ←

筧 沙織・2020-12-11
鬼はなづめど、我は眠る
コラボ小説
小説
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ユメビカリ出版
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独り言





『不老感覚』






息を深く吸う度に
私の肺は冷たい空気で満たされた。


目を開けていることすら
眉毛や眼球や睫毛が
凍りそうでままならない。


更に深く吸う 空気を吸う


集中して全神経を集中させた。



「こっちですよ」



耳元で声がした瞬間、
視界だけがぐらついた。



「この程度で死ぬとでも?」



私は呆れる。


またこれだ。
いつもワンパターンじゃないか。


私は自分の頭を拾い上げると、
元の場所へくっつけた。



「刻んでもよろしいでしょうか」



淡い光を放つ包丁を持った君が
にっ、と笑顔を見せる。



「できるものなら、ぜひ」


「では、御遠慮なく」



君は思いっきり飛びかかるが、
私は避けずにただそれを見ていた。


その瞬間私は、複数の肉塊になった。
それでも私は死なない。


うねうねと地面を這う私の肉。


これを初めて見た者は
必ず吐くか気を失うだろうな。



「気持ち悪いですね」


「見慣れてるだろう?」


「いつ見ても慣れないですよ」


「五百人を殺めた奴が何を言っている」


「そっちは五千でしょう」


「まあな。だが油断は禁物だぞ? これで五千一だ」


「え?」



ぐちゃあ

カミカゼ・2020-10-21
狂った歯車は周り続ける
タグ使用/from:沙織
サオリの小説
短編小説
小説
物語
NOTE小説部
ユメビカリ出版
note文庫
短編小説/from:沙織
独り言
サオリ


「また遅れました…ごめんなさい」


何食わぬ笑顔で君は本と貸出カードを渡して来たが、返却遅れはこれで3回目だ。しかも連続で。

一体どういうつもりなのか。


「…なんでいつも遅れるの?
これが初めてじゃないだろ?」


流石に、いつまでも許してあげられる訳がない。


「…すみません」


「…いい加減、返却期限くらい守れよ」


自分でも吃驚するくらい、
吐き捨てるように呟いていた。


「…はい」


君がいつも浮かべるへらへらとした笑顔が、

危機感を覚えたのか、強ばっていた。





それから1週間以上_貸出期限が確実に切れた時、

君はまた、のこのこと返却に来た。


自分があの時吐き捨てた言葉は
無駄であったと悟ると、いっそう馬鹿らしく思えた。


君の姿を捉えた僕の視界は、
再び読みかけの本へと落ちた。


簡単に君の言うことを聞くまいと
謎のプライドが働いたのだ。



「あの、すみません!」

君の声が、本のページの向こう側から
何度も聞こえてきたが、気づかないふりをした。


しばらくして、また君の「すみません!」が飛んでくる。
が、その声は今まで聞いたことのない
潤みを含んでいた。


はっと顔を上げる。


「風邪で寝込んでしまったんです…今回はちゃんと返そうと思ったんですけど……信じてください…」

君の色素の薄い目から、
綺麗な透明の雫がぽろぽろと落ちていく。

君の持っていた貸出カードにまで、それは及んでいた。


『魔法使いの日常』
『絶品_毒草料理_』
『超魔法入門』


全部全部、そこに書いてあるのは、魔法に関係する本ばかりなのだ。


君は何故か、いつも、僕の担当しない日に
本を借りて、僕の担当する日に本を返しに来る。


この行為は、僕への当てつけなのか。



_僕が魔法使いで、君の兄であるということを
君はとっくに知っているのか。


一年前、君が入学して間もなく、
そのことを知ってしまった僕は
自分の運命をひどく恨んだ。


物心ついた頃からそれを知っていたら。

あるいは、最初から君が妹として
当たり前のように側にいたら。

そもそも、魔力なんか持たずに、
君と血縁上でも、関係上でも
他人のままでいられたら。


君の存在を意識することなんてなかったのに。


_僕が君に恋をすることもなかったのに。



「1週間じゃ読み終えられなくて、」


涙を食指で拭いながら、君は笑った。






「そこまで熱心に、
魔界のことを知る必要なんてなかったのに」


君に聞こえないくらい、小さな声で呟いた。

ふぇるまーた.・2020-04-28
五線譜と原稿用紙
小説
note文庫
日常
叶わない恋
運命
葛藤
図書室
魔法
日常
ファンタジー
いい具合に混ざってる
書けたぜ→
泡沫を捕まえる
1日クオなんです許して
ところどころ辻褄合ってないだめだ
いつか書き直そう







短編小説






__ガチャン。


1LDKの部屋に無機質な音を残して、
俺は去っていった


……じゃあな。爺さん婆さんになって、
お互い幸せになったらまた会おうぜ


俺のことは忘れろ







「爺さん…」


「なんだい? 婆さん」


「私達結局、
あのまま別れませんでしたね」


「そうだな」

筧 沙織・2020-10-09
誰も知らない僕の世界
瀬音さんに見てもらいたいわ((KIMOI☆
言食べ残像
短編小説
小説
物語
NOTE小説部
ユメビカリ出版
note文庫
小説/from:沙織
独り言






❨曽祖父の形見❩





さっき、お父さんから


外側に白と黒の糸が


編み込んである上着を貰った。


お父さんは、自分の母の


お父さんのものだと言っていた。


つまり私の


ひいおじいちゃんのものだ。


お父さんも、大学生の時に


着ていたらしい。


パイプ(たばこ)を


吸う人だったらしいので、


数ヶ所に焦げ跡が残っていた。


治すこともできるらしいが、


私はこのままにしておきたい。


結構"いいもの"らしい。


重くて、温かくて……、


どんな人だったんだろう。


でも私の頭には


木製のロッキングチェアに座った


優しそうな人が思い浮かんだんだ。

筧 沙織・2020-10-09
実話
ノンフィクション
短編小説
小説
物語
曽祖父
曽祖母
ひいおじいちゃん
木製
パイプ
たばこ
煙草
形見
上着
NOTE小説部
ユメビカリ出版
note文庫
小説/from:沙織
独り言

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