#あなたと私の物語

目覚ましの時間よりも
早く目覚めて
眠れないままNOTEを開く

昔の投稿を読み返し
懐かしさあふれて

あなたと私の物語
今は遠い記憶の彼方

それでも
確かにあった日々
あの日の涙は幻じゃない

ふたり生きていたよね
涙も笑顔も諍いさえも
大切な証

夜明け前のほんのひととき
あなたにこの手が
届きそうな気がするのです

「大好き」の言葉さえ

かけられず

夏が逝ってしまう

秋には進めない

私は囚われのお姫様

生きてきました
今日まで

色々なことが
ありました

声高に
話すようなこと
じゃなくて

誰にもあるような
ささやかで
ありふれた人生

喜びも
悲しみも
微笑みも
涙も

ただ
私の胸にあれば
いいのです

連れ合いが癌の告知を受けたとき
私の頭の中は真っ白になった

突然の理不尽な暴力に
為す術もなく立ち尽くした

それからの日々

辛い治療に耐えながら
頑張るあなたを
ただ黙って見守るしかなかった

本当に辛いのはあなた

分かっていても
悔しさに涙があふれた

悲しみは深く沈澱し
後悔は果てしない

笑顔の写真を見るたびに
今も心がえぐられる

カレは料理が得意で
私には面倒な凝った料理や
アウトドアっぽい料理を
よく作ってくれた

そういう時は
下手に手出しをすると怒られるので
下ごしらえだけして
あまりかまわないようにしていた

なので
私はカレのレシピを知らない

そんなカレが
自分の病気を知ってからは
娘に色々と伝えていたようで
娘はそれをレシピノートに書いていた


それを見ながら
時々カレの料理を作ってみる
カレみたいに上手くはできないけど

鍋だしの取り方
魚の煮付け
ローストビーフ
だし巻き玉子…

昨日 私が作っただし巻きは
表面が焦げ焦げで
形も不格好で
お世辞にも上手とは言えない

それでも
確かにカレの味だった
懐かしい味だった





＊

貴方と生きていく未来を
当たり前だと思っていました

もちろん人間だから
いつか終わりがくると
分かってはいたけど

こんなに早く
貴方が逝ってしまうなんて
ひとり残されてしまうなんて
誰が想像できたでしょう

やがて時が流れて
貴方は思い出となり
私は空を見上げて
雲の彼方に貴方を想う

隣に貴方がいないことに
慣れてしまう自分が
とても怖いのです

若い頃、連れ合いが
いつも言ってた

俺は多分長生きできないだろう
太く短く生きるからな、って

口ではそんな風に言っていても
本当にそうなるなんて
きっと思っていなかったよね

貴方流の強がりだった？
私への言い訳だった？

太く…かどうかは分からない
でも、本当に短かったね

62年の人生
貴方は本望でしたか

あなたとの縁を
何度も何度も
結び直して

切れないように
ほどけないように

絡まって
がんじがらめになって

それでもまた
結び直して

大切に大切に
繋いできたはずなのに

あの日
切れてしまった糸は
もう結べない

ほどけてしまった結び目は
もう直せないの

事故か何かでなければ
二人一緒に旅立つなんて
無理なこと

どちらかが先に逝き
どちらかは残される

私が貴方を見送れて
よかったのかな
貴方はどう思っていたのかな

今となってはせんなきこと

願わくは
もう少し長く
一緒にいたかったな

大阪へ出かけたら
我が家の定番お土産は
551の豚まんと
りくろーおじさんのチーズケーキ

チーズケーキは
連れ合いが大好きで
いつも買ってきてくれた

食道がんで
ほとんど何も食べられなくなって

最後に食べた固形物が
息子が買ってきた
チーズケーキだった

焼き立て
フワフワのチーズケーキ
美味しいね

食べると今も
あなたの笑顔を思い出す

私たちの結婚は
うちの両親に反対された

親戚は呼ばず
近しい友人と家族だけ
小さな教会で挙げた結婚式

結局母親は
式に出席してくれなかった
今もそれだけが心残り

誰もが
皆に祝福されて
結婚したいと思う

親ならば誰よりも
我が子の結婚を喜びたいと思う

…私は
親不孝だったのかもしれない

でも
幸せになったよ
ずっと幸せだったよ
お母さん



＊

時を重ね

愛を重ね

優しさを重ね

命を重ねて

いつか来る終焉まで

貴方と生きたい

体寄せあって ふたり

心寄せあって あなたと

ずっと一緒に生きていく

異常なほど多忙な日々
少しでも早く家に着きたいのに
きょうは帰りが遅くなって

見たよ！嘘クサイくらい
ヒカリ輝く満月を

遠距離だからこそ思い知らされる
同じ月を貴女も見ているかも
しれないことがまさか､これほど
有り難いだなんて、、

コスモス畑で笑うあなた

どんぐりを拾い見せてくる無邪気なあなた

木から降る楓とあなたの背中


秋は寒いけど大人っぽいあなたが

子供になるから心が温まるんだ