#あの頃

熱く重い風が髪を撫でる
水路から聞こえる涼しげな音
はやく帰りたいと早まる歩み
そんな私の足を止めた
太陽のような笑顔は
記憶を探らなくても浮かぶんだ

だいすきだった
あの頃は

しあわせだった
あの頃は


もう戻っては来ない




過去の幻想と
未来の現実との狭間で
私はずっと彷徨っている

「“あの頃”が一番幸せだったかも」

そんな妄想を繰り返すんだ

少し肌寒い秋の日の夕暮れ

落ち葉を踏みしめ肩を並べて

あなたと歩幅を合わせゆっくり歩く

あの頃はそれだけで本当によかった

君の香り、君の文字、君の好きなスポーツ

日常に溢れる色んなものに

君を感じていた

君の気配にすら胸が踊った

君自身には緊張しすぎて

気配くらいが丁度よかった

時間が経っても、あの頃の記憶は
まだ色褪せていないのです

今度また逢おうなんて

あの頃は曖昧な言葉を

何故信じていられたのかな

なんともない
日常を過ごす


それが幸せであることを
私は
もっと実感しなければならない


けれど
いつしか
風化してしまう


それが
どんなに怖いことか







私は
向き合うことができて
いるのだろうか

どうしても
向き合えてないと
思うのは
やっぱり
どこかで
あの日の記憶を
消したいとか
思っているから
なんだよね


年が経つに連れて
どんどん
向き合えなくなる
怖くなる

でも
私は生きている
だから
未来に
繋ぐ必要がある

そんな
使命感に駆られて
私は生きる


それでも
どうにか
強くなれるだろうか

いや
ならなければいけない
いや
なる

そんな決意を持って
私は生きる


生命という尊い
尊いことに対して
考えることを私は
やめることが許されない


呪縛のように
付き纏う




それでもいい
それでも私は生きているんだ

君の『隣』に

私の『未来』があるんだって

ずっとそう信じていたんだよ_

何も考えられなくなった私は

過ぎ行く日々に身を任せた_

しあわせ以外知らなかった

あの頃が想起できなくて

この現代社会の歪みに囚われている

あの頃

幸せな時間も確かにあった

でもそれ以上の苦しみに

ｼｱﾜｾ
欠片は埋もれてしまったの_

鮮明で眩しい想い出は、

私を掴んで離さない

この道を進んだ

あの頃の私に会いたい

言葉にはできなくて
何も伝えられず

あなたとの微妙な距離
埋めることできずに

出会った頃はたどたどしく
言葉ひとつにやきもきして

いつも味方だったあなたが遠く
私はやがて心閉ざして

今は遠い昔のことと
自分に言い聞かせて
　　　　　　　　　　かほ