#糸電話

もしもし、お月さま

こちら、カナリアです

私、カナリアです

私、元気にしています

歌を少しお休みしてるだけです

また、歌いますね


フランソワ

2020年6月22日　15時50分

硝子越しの言の葉と共に舞う白い花

肌に染みる冷たさか

耳に溶け込む君と緊張か

僕の鼓動がいつもより早く感じる

手を伸ばしたあの頃を懐かしんで

白い花弁を掴んでは

僕の掌の中で消えてゆく

どうか僕らの此れは消えぬように

私がここに来た理由

私が「フランソワーズ」でなければ

ならなかった理由

今もやっぱり

「フランソワーズ」でいたい

理由

それは、カナリアの糸電話


2022年4月6日 22時02分

無限に広がる夜空よ

君にも見えてたのなら空を紡いで

誰にも捕らわれない

君とふたり糸電話を奏でよう

僕らを紡ぐのは一本の糸

雨や風で緩まれば

僕らを阻む誰かが切ってしまえば

聲どころか音さえ聴こえてこない

僕が耳を澄ませば君が

君が耳を澄ませば僕が

こんなやり方でしか届かないけど

だからこそ君のその一言が愛おしい

恋はまるで糸電話
















どちらも一方的に想いを伝えると
相手の声が聞こえなくなり















どちらも相手を気遣い
相手の声に耳を傾けすぎてしまうと
自分の気持ちを伝えることが
出来なくなる















喧嘩して
一度でも繋がりを絶ってしまうと
もう二度と完璧に元に戻すことは
不可能で

























もしもし、聞こえますか
















もしもし、聞こえてますよ
















あなたがとても大切です















君がとても愛しいです
















僕らの糸電話の中が
こんな会話で溢れかえるようになったら



















そうなったらいいのにね

もしもし、お月さま

もしもし、お月さま


こちら、カナリアです

わたし、カナリアです


もしもし、お月さま

もしもし、お月さま


聞こえますか？

わたし、カナリアです



私は

カナリアが

あまりにせがむので

糸電話を、カナリアのかごに

付けてやりました


もちろん

向こう側は

お月さまではありません

ベランダの手すりです


カナリアは

じっと、紙コップに

耳を傾けたり


一生懸命

呼びかけたり

しています


｢ねぇ、わたしの声

お月さまに届くかなぁ？｣


｢届くと、いいわねぇ。｣



もしもし、お月さま


今日は夕陽がとても

きれいでしたよ

疲れもとれるくらいに


お月さまも

夕陽を見ましたか？

わたし、もうすぐ寝ますね

お医者さまが

早く寝なさい

寒いから

ベランダに出ちゃダメですよって

おっしゃったの


もしもし、お月さま

だから

今夜は

おやすみなさい



明日になれば

友だちの山鳥たちが

ベランダの紙コップから

聞こえるカナリアの声に

喜んで、応えてくれるでしょう


きっと、カナリアも

少しは、気持ちが晴れるでしょう




フランソワ




*

"糸電話"みたいに

糸をピンと張らないと

気持ちは伝わらない。

「好きです」

言えてもどうせ、

糸が緩んでいる。

今日は

鳩とも、お話しもせず

カナリアのために

新しいドレスも縫わず

ぼんやり過ごしてしまいました


昨日

カナリアと、いっしょに

お月さまを眺めていました

初めは、薄い雲に

覆われていましたが

美しい輝きが見えていました


きれいね

私が言うと

うん、とっても

と、カナリアが答えました


でも、雲が次第に厚くなり

お月さまは、途絶えがちな

かすかな光になり

ついに、見えなくなってしまいました


カナリアは

今夜は、もう寝る

そう言うと

かごの中に

入ってしまいました



昨日

カナリアは

糸電話を、欲しがっていました

お月さまと話したかったのです

でも、私が

遠すぎて、無理よ

そう言うと

しょげてしまいました


その上

お月さまが

見えなくなってしまったので

がっかりしてしまったようです


糸電話

欲しいよね……

カナリアに

心の中で、話しかけました


…………………………………………………



あったら、いいのですのにね

見えない糸電話


教えて

貴方が、今日、何をしていたか

貴方が、元気か

貴方が、何を思っているのか


でも

同時に、何も知りたくないのです


私のことを

とても嫌いになっていたら……


そうなのかも、しれないと

思ってしまいます


今は、もう

自分のことを

慕われるのも

迷惑なのかもしれない


そうなのかも、しれないです

ゆうべ、姿を隠してしまった

お月さまのように


自分の方を

見て欲しくもないのかもしれない


今日の私は

元気がありません

寝たり、起きたりです



フランソワ




*

思い出の糸電話

まるで君と僕を表すように

プツンと糸が切れたまま_

遠くて
近くて
糸電話の糸が切れてしまうよ
雁字絡めにして
繋いでおこうか


薬指の光る輪で
繋がっているというのなら
この距離も悪くない

僕らの好きな本と

温かな飲み物

目の前に君は居ないけど

見えない糸を紡いで張って君の聲

夕焼け射し込むこの部屋で

ゆっくりと君を待とうではないか

運命の糸を糸電話みたいにしちゃえば

君への想いは届くのかな。

きっと話した時には

その糸が絆色に染まっていればいいな

絡まった糸を解くには
ハサミで切るしかないだとか

空を見上げても 何もない
散々絡まった糸は 今更何もできない

さあね わたしは知らないよ
悲しみの声 糸電話

糸電話を
作っていっぱい
はなしして
笑って
ケンカして
結局俺が怒られて
あの時は嫌だったけど
今じゃいい思い出だな。