伊田よしのり・2023-12-27
ねるねるねるね
魔女
お菓子
子供の時、練れば練るほど色が変わって、こうやってつけて食べた。
大人になってからは、色が変わらなくなってしまった。ブラウン管の魔女も消えてしまった。
あの時の色も、忘れてしまった。
涙ぐんだ目で夜空を見上げると、渦巻銀河がねるねるねるねになって、涙はキャンディチップになった。魔女が笑うと、僕の心は青色に染まった。
シンセサイザーが奏でるファンファーレ。放射状に点滅する電飾の中心には、いつもあの魔女がいた。不敵な笑みを浮かべて。
魔女がいなくなって、ねるねは自由になった。
しかし、あの頃の色は出せなくなってしまった。
今では、ねるねは魔女の帰りを待っている。
練っても練っても、
私の心の空隙は埋まらない。
明日も私は練り続ける。
もう一度あの魔女に会うために。
あの魔女が、また夢に現れた。
魔女はいつもどおり、妖しく笑った。
そして、ねるねるねるねを作って、口に運んだ。
暗転した次の瞬間、電飾が光り輝き、シンセサイザーが鳴り響いた。
そこで僕は目を覚ました。
今は2024年、大丈夫、あの魔女はもう存在しないのだ。
はじめ、人々は魔女を歓迎した。
しかし、魔女の魔法が思ったほどは役に立たないことが分かると、しだいに人々は魔女を疎むようになった。
魔女は人里を離れ、一人で研究に没頭した。
そして、ねるねるねるねが誕生した。
インターネットがなかった時代
情報を発信できるのは、
一部の特別な人たちだけだった。
令和の現代では、誰もが、スマホという放送局を
ポケットに入れている。
それでも今度は、情報過多な時代だ。
インターネット空間における個人の発言は、
ほとんど意味を成さない。
それでも、あるいは……
僕は今夜も、インターネットで、
あの魔女を探している。
ウイッチ
"魔女"に変身するの?
ブラックキヤット
"黒猫"に仮装するの?
ボクはキミから目が離せないよ
Can you see huh?
落ちた一滴 drip 透明な私の中に混ぜる
何事もなかったかのように keep on moving
Impurities show you my impurities
欲を出して like a witch show you real me
黒くなる光が眩しい程に輝いて glittery things
Impurities show you my impurities
少しずつ踏んで、境界線を越えていく
黒く包まれた deep sign
苦労だらけの道で傷だらけになっても
驚くほどに So natural invincible
Ooh yeah don't wanna hide
Ooh yeah 大胆に fight
傷だらけの堅い不透明が so natural で美しいの
I can see 鮮明に見える君の desire
So here's my key
平気だよ no matter what you say
Can you see huh?
落ちた一滴を drip 透明な私の中に混ぜる
何事もなかったかのように keep on moving
Impurities show you my impurities
欲を出して like a witch show you real me
黒くなる光が眩しい程に輝いて glitter things
Impurities show you my impurities
Impurities/LE SSERAFIM
誤った情報が氾濫する世の中
ネルネの魔女だけが
私たちを
正しい色に
導いてくれる
「ネルネに関する最終報告書」
論理的に、そういうものは存在し得ない。
なぜなら、練ることに関して、終わりはない。
最終報告書の提出は、あの魔女に敗北宣言したのと同義なのだ。
孤高、孤独、孤立。
一人を表す言葉はいろいろあるけど、
僕は一人は楽だと思う。
僕は孤高か孤独になりたい。孤立というとちょっとネガティブなイメージだけど、愚かな集団よりは、孤立のほうがまだいいんじゃないか。
そう考えると、ネルネの魔女はすごいと思う。
あの魔女は、一人で色を変えられるのだ。
"色を変化させる" という、あの魔女の能力を、最初は誰もが甘く見ていた。
ねるねるねるねが評価されたのは、魔女が去ってからのことだった。
みんなで魔女を探したけど、見つからなかった。
ねるねるねるねを支配するのは魔女です。
私は、シャーマンがねるねるねるねを支配していなくて、本当に良かったと思います。
シャーマンがねるねるねるねを支配したとしたら、
言葉と色を支配する、驚異的な存在となります。
一方、あの魔女は、研究の邪魔さえしなければ、われわれに危害を加えることはありません。