書くとココロが軽くなる
はじめる

助けてという声がした。
正確には、声がした……ような気がする。
空が暗くて視界が悪く、目を凝らしてみてもなにも見えない。耳を澄ましてみても同様に。
やっぱりいまのは気のせいだったのだろうか。私はまた歩きだした。

後日。あの日私が通った道の近くで、女子高生が性的被害に遭ったと知った。
私が聞いた声は気のせいではなく現実だった。あの場には私しかいなかったのに、女子高生の助けを求める声を気のせいだと水に流したのだ。
私が水に流さなければ、なんとかなったかもしれないのに。
私のせいで傷付けた。私の判断ミスで。

あれからずっと、私はあの道を通ることに怯えていた。
なんだかずっと声がするような気がして堪らなく怖いのだ。
ごめんなさい、ごめんなさい。
私はひたすら謝りながら走っていた。
突き当たりを曲がるまで走り続けた私の心臓は、もの凄い音で苦しみをアピールしている。
そんなに走ったらしんどいよ。いつまで走り続けるの?
私は息を整えると、家までの道程をまた走った。
ずっとだよ。引っ越すまでずっと。あの道を通る度に私は走るんだ。
足を止めたら女子高生が追いかけてくる気がして怖かった。
私は逃げたんだ。あの日もいまも変わらずに。
逃げるから追いかけてくるんだって、引っ越したいまならわかる。
なんて、あの場所から逃げてきたくせに説得力ないよね。
でも本当だよ。離れてみたらわかるんだ。私の考えすぎだった。
いまならもう怖くない。
そう自分に言い聞かせながら、私は今日も自分の道を歩いている。

真鶴。🐰・2025-03-01
後悔
恐怖心
逃げる
意味が分かると
ss