変わらない日々の繰り返し。他愛もない会話。
言うつもりなんてなかったのに、なんの前触れもなく溢れだした僕の感情は、どうやらきみに伝わってしまったらしい。
時が止まる。感情の整理がおいつかないのか、意味を理解するのに時間がかかっているのかは不明。
数秒に一度、瞬きをしながら僕をみるきみの瞳を黙ってみつめることしかできなくて。
もう何度瞬きをしただろう。鼻から息を吸って吐くだけの時間がひたすらに流れ続けている。
答えなんか求めていないのに、リアクションすらしてもらえないなんてね。
だけどおかしいな。こんなに沈黙が続くことってある?
いい加減、僕から目を逸らしてほしい。
瞬きはするくせにひとことも話してくれないなんて、どう考えてもおかしいよ。
なんでもいいからお願いだ。なにか、なにか話してくれ。
いや、最悪なにも話さなくたっていい。僕から逃げるように背を向けて歩きだしてくれたって構わない。
求められてもいないのに、感情を吐露した僕からは逃げることができないんだ。逃げれば最後。根性なしと思われておしまいだから。
そうだ、これはきっと耐久戦なんだ。いますぐ逃げだしたくなるほどのこの重たい空気を最後まで耐えぬいた方が勝ち。
もしくはどう反応したらいいかわからなくて困っているうちに時間が経ちすぎちゃって、後に引けなくなったとか。
ああ、それならたしかにありそうだ。ならこちらから助け舟をだした方がいいだろう。
僕は言った。
「な、なんで黙ったままなんだよ」
僕が話しかけているんだから、反応するはずだよな。
それなのにいつまで経ってもそのままで、いよいよ意味がわからなくなってきた。
もしかして時が止まったとか。そんな漫画みたいなこと起こるのか?
それに瞬きはずっとしてるんだ。時が止まったわけじゃない。
じゃあどうして。
「……う……嘘だよ……」
なかったことにしようとした。僕がきみを困らせてしまったと思ったから。
これでなかったことになるわけがない。わかっていても、ここまで無反応では撤回せずにはいられなかった。
「なぁんだ、びっくりしたぁ」
あれほど止まっていた時が動きだす。僕はそれが答えなんだと思った。
うっかり聞こえなかったふりすらできなかったきみは、沈黙を貫くことで僕がいつかその言葉を撤回することをまっていたんだ。
ならもう決まりだな。僕はもう、二度と言わない。心の奥底に秘めたまま。
いや、それすらも埋めてしまおう。
二度と蓋が開かないように、厳重に鍵を閉めて閉じ込めるんだ。
畜生。
いやならいやって断ってくれればよかったんだ。
言うんじゃなかった。言わなければ、いつまでもきみを想い続けられたのに。