#お菓子売り場

ねるねるねるねは
子供のお菓子。

それでも
どういうわけか
大人になってからのほうが
お菓子売り場で
ねるねるねるねを
よく見かける。

ただし
大人の僕には
あの魔女は
見えないのだ。

たべっ子どうぶつは、動物園。
プラネタリウムは、ねるねるねるね。
夕食は、たのしいおすしやさん。

デートに必要なアイテムは、お菓子売り場で全て手に入るのだ。

あの魔女が

お菓子売り場に現れたという

噂を聞いた。

無論

風説に決まっている。

この暑さでみんな

おかしくなって

しまったのだ。

お菓子売り場に出現する、サラリーマンの亡霊…

練ることを諦めきれないまま亡くなった、哀れな中年男性…

もし彼を見かけても、声をかけてはいけない。

存在を認めないことが、彼にとって一番の供養なのだから。

もし、お菓子売り場でネルネの魔女を見かけても、あまりじろじろ見ないほうがいい。あの魔女は無邪気に見えるが、実際何を考えているか、分からないのだ。

中学生になってから私たちは
あの魔女の家に遊びに
行かなくなった。
あの魔女はお菓子売り場にも
現れなくなり、私は
いつしかあの魔女の
ことを忘れた。
―
先日、お菓子売り場で
「大人のねるねるねるね」
というお菓子を見つけたので、
手に取ってみた。
視線を感じたので顔を上げると、
あの魔女がそこには居た。
そして、ニヤリと笑った。

日曜の夜

誰もいなくなった

お菓子売り場で

あの魔女が

笑っているのだ。

深夜のお菓子売り場で

私はあの魔女に追われていた。

目を覚まし

安心したのも束の間

枕元には

ねるねるねるねが

置かれていたのだ。

お菓子売り場で、ねるねるねるねを見つけた。
子供の時はもっと輝いて見えた… というそのノスタルジーも、もしかしたら、あとづけの嘘の記憶かもしれない。
嘘の記憶も、色で上書きすれば、いつかは事実になってしまうのだ。

仕事を辞めた私は

酒を飲んで好きなものを食べて眠るという

自堕落な生活を続けていた。

ある日

酒とお菓子を買うために

近所のスーパーに出かけた。

お菓子売り場で

あの魔女を見た。

そして

私の色が

変わった。

あなたに練り残された
テーブルの上の
ねるねるねるねが
泣いている…

まだ役に立てると言って
泣いている。

それでも
あの人は
ルマンドを買いに
お菓子売り場へ
行ってしまったのだ。

練ることは諦めたはずなのに
私はどうして
お菓子売り場にいるのだろう。

私の中の魔女が
その答えを知っている。

お菓子売り場で、魔女の衣装を着て実演販売している女性を見た。

僕は、見て見ぬふりをした。

ほかの人だって、見て見ぬふりをするか、あるいは、苦笑いしていた。

無理もない。

彼女が本物の魔女だなんて、誰も、思いもしなかったのだ。

お菓子を買いにスーパーに行った。
昨日はバレンタインデーだったのに
そこには既に
ひな祭り🎎のコラボ商品が
置かれていた。
季節の流れが早すぎる。
いや、僕が遅すぎるだけなのかも
しれない。

お菓子売り場の雑踏の中で僕は
ねるねるねるねの場所を見失った。
そして
練り方さえ、忘れかけた。

あなたが練りかけたまま忘れてしまったねるねるねるねは、いまでも深い記憶の中で、色が変わる日を待っている。お菓子売り場を通り過ぎるとき、呼び声が聞こえないだろうか。それはきっと、ねるねるねるねが、あなたを呼んでいるのだ。