#くぐればそこは未知世界

あなたの影を見た気がして

後を追いかける

何か透明なトンネルを通り抜けたような気がする

いつもと違う景色

見たことない文字で書かれた看板

知らない言語

ここはどこだろう？

あなたの影をまた見つけて追いかける

今度はどの世界に行くんだろう？

あなたを見つけるよりも辿り着く世界にワクワクした

ねぇ、あなたはもしかして不思議の国のアリスに出てくる白いウサギさんなのかな？

遭難してもいい
なにかに襲われてもいい
なんて覚悟で一人山奥に入って
草花をかき分けて出たところは
山のてっぺんであろう草むらで
一息ついて寝転がる


青空を見て
なにもないな、とぽつり一声

雲が程よく広がる青空の下で
ピクニック用のレジャーシートと
お弁当を広げる

いただきますの合図で
何かを許したかのように
強い風がボクを碧に染めた


ご馳走様でしたの合図で
ボクの周りに風が吹いた

思っていた以上に
山に受け入れられているみたいだ


風の通った木々の揺れ音
遠く聞こえる鳥の話し声
程よく流れる風の音が
ボクを夢の中へと通し込む


頭が落ち着いてきたところで
少しだけ着込んで防寒対策

寝ている間に食われたり
盗られたらそこまでだ

今はゆっくり
寝ようじゃないか






瞼を開ければ
真上に広がるのは星の世界

星たちが瞬く空へと
ボクも導かれているようだ

ふと手を伸ばしてしまう
届かないことを知って落胆する


そろそろ起きようか、と
体を起こせばボクの周りには
ドングリがたくさん落ちていた

落ちていたというより
運ばれてきたが正しいだろう

ボクが寝る時には
こんなのなかったはずだから


やっぱりボクの思っていた以上に
山々に山の動物たちに
歓迎されていたようだ

それに気付いて口元が緩む


こんなに歓迎されているなら
もう少し居ても平気だろう

怒られたらそのときだ

久しぶりに実家に帰ってきた｡

親の遺品整理に費やした時間は半日で｡

太陽は西へ傾き､東は雲が固まっていて､家上の青空はキラキラと輝いているように見えた｡

遺品を詰め込んだダンボールをトラックに積んでいる時､白猫が前を通った｡

危ないよ､と声をかけようとするが､白猫はそこにはいなかった｡

見間違い…？と不思議に思いながらも､最後のダンボールをトラックに積んで鍵をかける。

運転席に乗り込もうとしてまた､白猫が前を通った｡

見間違いじゃなかった､さっき白猫が向かって行った方向からまた白猫が颯爽と現れたのだ｡

白猫を目で追えば､庭への入口で止まった。

さっきは消えたのに､今は消えないことを不思議に思い､その猫に近付く｡

白猫は振り返ってまた､柵を超えて走り出した｡

気になってそのあとを追った｡もちろん車の鍵は閉めた｡



家の裏側まで来て､気が付いた｡さっきよりも明るさがない｡

家に大きな木は生えていないから､青空が見えるはず｡なのに見えない｡

時計を見ても､まだ17時半｡おかしい｡

こんな時間にここまで暗いなんて､さすがに可笑しすぎる｡

引き返そうと思った瞬間､前にいた白猫が二足歩行をした｡

戸惑いながらも見ていれば、名前を呼ばれ｢着いてきてください｣と一言｡

追っていたのは知られているのだから､出ないのもおかしいと思い､白猫の後を着いていく。

白猫の等身サイズのトンネルだから､膝を付いて屈まないと入れなかった｡

白猫について行って出た場所は―

興味本位で通った道で、
見つけた木々のトンネル。

通り抜けたら、
どこに辿り着くのかな。

誰も知らないところに行けるかな。

誰もいない場所に、
ひとりで辿り着けるかな。

迷い込んだその先には
僕の過去と
　　未来の狭間があった

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