過ぎ去った過去のことを思い
虚しさに駆られる日々。
という訳でもなく、考えるのは
ロマンの欠片も無い仕事のことばかり。
そんな私にも
ささやかな幸せくらいはある。
駅の真ん中にあるピアノ。
私のほんのささやかな幸せの一時。
観客はいない。独りで。永遠と。
これが幸せだ。
なんて言ったら笑われるだろうか。
________________
今日も人の流れは目まぐるしい。
ただ一人を除いては。
そこだけ時間が
止まってしまったのだろうか。
それとも周囲の時間が速いだけなのか。
そこに佇むのは色白く、美しく。
今にも散ってしまいそうな人だった。
_________________
やはり私のピアノは
いつもと変わらず奏で続けられている。
変わったことといえば、
観客が一人現れてくれたこと。
会話を交わすわけでもなく、
ただ、私も、君も鍵盤を見つめるだけ。
開会を告げるアナウンスが
ある訳でもなく
2人だけのコンサートは静かに始まる。
__________________
今日もまた薄暗い階段を進む。
駅の真ん中にあるピアノに向かって。
いつも通りのはずだった今日に
聞き覚えのある音色が耳に入る。
気まぐれに弾く私でも
一日も欠かすことなく弾いていた曲。
それを弾いていたのは君だった。
やはり色白く、
美しく細い指が鍵盤を弾く。
音色は、
今にも消えてしまいそうだった。
観客はやはり、私一人。
その日だけ
青白く見えたのは気の所為だったのか。
__________________
君が奏でてくれたのはその日だけで
君が再び私の音色を
聞いてくれることさえも無くなった。
つまり、
もう君が現れることはなかった。
名も知らない君が
いてくれたからこそ幸せだった時間。
ここまであっけなく終わるのだと
誰が予想しただろうか。
後悔が身体中を巡る。
幾日も君を探し続ける。
やはり現れてくれるはずもなく。
最期に君が弾いてくれた曲。
これを弾けば君にまた逢える気がして。
今日もまた同じ場所で弾き続ける。
全ては君のために_____。