【小説】
天使が舞い降りた話
今日は何処と無く騒がしかった
というより、胸騒ぎがしていた気がする
暇な俺は保健室のベッドを借りて
所謂"ズル休み"をしていた
仰向けになって
頭上の窓を見上げた
清々しい風が部屋いっぱいに広がり
のんびりと日向ぼっこをしていた
暖かくて
いつの間にか眠ってしまった
次に目が覚めたときは
とても明るかった
でも眩しくない
暖かい日差しが
俺を包み込んでくれてるような
そんな気がした
そんなとき
天使が舞い降りた
俺の見間違えかも知れないが
とても綺麗な天使が舞い降りた
次の瞬間、グシャ...と
ものが落ちた音がした
一瞬にして目が覚めた
俺は思わず起き上がり
窓の向こうを覗こうとした
「見ない方が良いと思うわ」
後ろから声をかけられた
後ろを振り向くと
黒髪長髪で切れ目で黒マスク
ちょっとおっかない人が立っていた
「...どうして?」
嫌な予感はしてるが
本能的に聞かずには居られなかった
「...あなた、何も知らないの...?」
「ああ、朝から騒がしいな、ぐらいにしか...」
俺の発言を聞くと
黒髪の子は分かりやすく溜め息をついた
「いいわ。彼女...、柊さんのことを教えてあげる」
黒髪の子は落ち着いた態度で
淡々と述べた...___
ー約一時間前ー
「いってきます」
朝の木漏れ日が満ちている頃
一人の少女は教室を出ていった
少女の身形はボロボロで
制服も何かによって汚れていたり
少女の机は油性ペンで落書きされてたり
所謂イジメを受けていた
少女の様子を見て
くすくすと笑うクラスメイト
止めようとしない担任
少女を無視して
ホームルームを始めた
それから数分して
通りすがった先生は聞いた
「柊さんは何処にいるのでしょうか?」
イジメは学校側に報告されていたが
校長や教頭が頑なに否定している
不祥事を公の場に晒したくないのだろう
「...柊は、お手洗いに行くと...」
「そうですか。行ってみます」
彼、松元先生は淡々と述べると
近くのお手洗いに行った
生徒は不審に思う人と
きしょ...、と呟く声が聞こえた
松元先生は、以前から柊のことを気にしていた
柊の所属している部活_華道部_の顧問であり
担任の次に身近にいる存在といっても
過言ではないと思う
そんな典型的な、いい先生だった
お手洗いに行っても
誰もいなかった
全ての校舎を見てみても
柊は何処にもいなかった
念のため教室に戻ってみても
いなかった
「柊さん、何処にもいないじゃないですか...!」
「...さ、ぁ?...サボりでもしているのでは...、」
「何故、自分の生徒が行方を眩ましても
探そうともしないんですか!!」
松元先生は教室の電話を取って
職員室に電話を繋げる
「1年3組の柊さんが行方を眩ましてます。探して下さい!!」
電話を放り投げると
急いで教室を出た
「柊さーん。何処ですかー」
松元先生は授業中にも関わらず
大声で探した
事情をあまり知らない三年の先生
二人も賛同してくれて
一緒に探した
廊下に響く声
一向に見付からない生徒
残りは屋上しか思い浮かばなかった
屋上へ行くには
二重ロックされた扉がある
が、全部壊れていた
「なんで壊れてるんですか!!」
「知りませんよ!!」
松元先生は逆ギレすると
三年の先生の一人も逆ギレした
完全なる管理不足だろう
「柊さん!」
屋上への扉を開けると
柵の向こうに柊はいた
声は届いているはずなのに
振り向きもしない
感情を失ったかのように
『死にたいが 生きろと言われ~
生きたいが 死ねと言われ~』
曲は知らないが
綺麗な歌声が聴こえた
三年の先生の一人は
屋上に行かず
後ろから電話をして応援を呼んだ
刺激しないように
そんなことを考えながら
柊と話をしようとした
「柊さ...」
止めようとした
でも止めれなかった
歌声に耳を奪われたからではない
こんな局面に遭遇して
足がすくんだわけでもない
私は気付いてしまった
「(柊さんは、もう死んでるんだ...)」
心ここにあらず
まさに今の彼女のことを表す言葉だった
後ろから声をかけられた
「今、他の先生達が下にマットを引いたりしてるみたいです」
準備完了まで
もう少しかかるらしいですけど
とも言われた
他にも後ろから声が聞こえた
「柊さん!」
生徒たちだった
それもイジメの主犯だった
他にもゾロゾロと集まっていて
先生達も止めようと頑張っていた
「柊さん!死なないで!」
「柊さん!ごめんなさい!!」
後ろから聞こえる声の大半は
謝罪だった
『君と~防空壕で~呼吸する~』
柊さんはクルッと振り返った
「...先生、私、疲れたんです」
「うん...」
「全部嫌いです...」
「うん...」
「...先生のことは、嫌いじゃないです...」
「うん...」
「...ありがとうございました...」
「...まだ生きてみてくれないか...?」
暫く、柊は口を閉ざした
「______......お断りします」
「...そうか...」
「...ご免なさい、でも___」
彼女、柊は屋上から飛んだ
「俺が寝てる間にそんなことが...」
俺は天使の話を聞いていて
そういえば一年にイジメを受けている
生徒がいると聞いたことがあった
「そもそも、何故お前はそんなにも話を知ってるんだ...、?」
こういう話のオチは
だいたい彼女が死んだ本人だったりする
「...彼女の親友、親友の死ぬ姿を見たくなくてね...」
仲のいいことを知っていた
黒髪の子に松元は電話を繋げて
会話を聞いていたらしい
「柊の亡霊じゃなくて悪かったわね」
「別に望んでないけど」
人が後ろで飛び降りたと知ってるのに
こんなにも人は冷静になれるのかと思う
「ちなみにだけど、彼女は骨折だけですんだらしいわ」
さっきからスマホをいじってると思ったら
松元先生とLINEをしていたらしい
「よかったな」
「...さぁね。私には分からないわ...」
彼女が呟いた意味が
俺には分からなかった
【あとがき】
久々の小説となりまーす
誤字脱字があれば教えて下さい!直します
感想&テーマ下さい!