Kuu・2021-12-05
迷宮
インスタントフィクション
『迷宮』
気が付いたら迷っていた
ここが何処なのか
何処に向かっていたのかさえ
何故歩き続けているのか
考えこむことすら恐くて
進んだ
前へ前へ
障害が現れる度に交わして
右へ左へ
なるべく真っ直ぐ進んできたつもりだ
今進んでる前が
あの時の前と同じ方向か
怪しくなってきた
道のりが覚えきれなくなると
不安が加速する
何も無いのだから
戻る必要も無いのだけれど
とりあえず何か見つけないと
進んでいようと
休んでいようと
迷子なのだから
「…こ、この後どうする?」
何となくの緩い時間に
其処はかとなく漂う気まずい空気
希望などは決まりきっていて
第二第三の案もしっかり握り締めているのに
どれも口にする事ができなくて
君の帰りの時間もしっかり把握しているけど
まだ素振りすら見せない君
ずっと一緒居られるなら
オレは何もしなくたって平気だし…
何てチキリ出す思考
個人的な欲望よりも君との時間を尊重したい
本心だ本心だからタチが悪い
それでも欲望は必ずあるし
君のどう捉えていいのか分からない態度さえ
もしかして待っているんじゃないかな
などと毒されていく
二人きりの特別な時間
目も合わせられない
全くもって
特別な時間