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#エンゲージリング

読んでると、
思わず胸がギュッとしめつけられる、
そんなポエムを集めました。

全4作品・

❨短編小説❩
15年目のアオライト




毎年のお祭り。



炎天下のアスファルト。


反射した日光に


道の向こう側が


ゆらゆらと揺れていた。




カランコロンと


下駄を鳴らせて


悠平とふたり


街中を歩く。



小さな頃から


ずっと変わらない


幼馴染みの私たち。



生まれた時から


家が隣同士。




赤ちゃんの頃から


培ってきたもの。



成長しても


変わらない、


ふたりの絆。





それは15年目の



夏のことだった。




「由乃」



「ん?」



「お前、すぐに迷子になーよな」



「いつの話しちょーのよ、失礼しちう」


悠平はケラケラと


可笑しそうに笑うと


やがて、私に


大きな手を差し出して言う。



「ん、手」


「さーすが悠平は心配性だに」


「迷子ならん言うなら手離せぇか」


「嫌だにっ」



私は、手では飽き足らず


悠平の腕に絡みつく。



「そいならそいで、最初から素直にならええのに」



えへへ、と、笑った、


私はすっかり


背の高くなった悠平の


横顔を仰ぎ見る。



きりっとした眉。


すっとした鼻筋。


広い肩幅。


大きな背中。



「悠平ぇ」


「んー?何だがね」


「いつの間にそげ大きんなったの?」


「由乃が小せぇんだがよ」


「女の子らしいてええだに」


「何処が女らしいんだがね、悪垂れもんだし、よう食うし」



悠平は、からかうように笑んで


私の頭に手を乗せた。



心地いい、悠平の手のひら。


その重みに、思わず身が震う。


ときめきが、体中に


伝わってくみたい。



「なんてひでぇこと言うの」


思ってもいない悪態をつくと


悠平の真っ直ぐな目が私を下げ見て


やがて彼は頬をかきながら言う。



「こりゃ俺ん特権だけんな」



特権。


なんだか二人だけの


秘め事みたいな、響き。



その言葉に心は踊る。



喜びを胸にして


私は、悠平と


毎年恒例の道を歩いた。



「あーおまつりの匂いだねぇ」


「祭りん匂い言うか、食い物の匂いに反応しちょーんだら」


「またそげなこと言うんだけん。私はね、この祭りの匂いを好いちょるん」


「食い意地の張った奴よな」


「違ぁのに!悠平、特権の乱用だに」


「バレたが」



私たちは顔を見合わせると


口の中まで見せ合って笑った。



尽きない話。


この空気が好きだ。



悠平のことは


もっと、もっと好きだ。



その笑顔に


想いが溢れれば


悠平の顔も見られない程


照れくさくて敵わない。



私は大きく開けていた口を閉じ


悠平を引っ張って


出店へと駆けていく。


「下駄ぁ、危なぇぞ」


「悠平こそ気をつけなぃ」



飛ぶようなステップ。


絶えない笑顔。


長年、片想いしていると


辛くなることも


苦しくなることもある。


やきもちだって妬くけれど


毎年、この日だけは


悠平とふたりで


じゃれ合いながら笑える。



まるで、恋人同士みたいに。




だから私は


このお祭りが大事だった。




わたあめに、金魚すくい。


くじ引き、クレープ。


焼きそばと、射的。



たくさんの醍醐味を


ひとつひとつ堪能していくと


見慣れない露店が


出ている事に気が付いた。



通りすがりに


覗くだけのつもりが


完全に目を奪われる。



「わぁ、きれい」



そこには天然石の


アクセサリが並んでいた。



中でも目を引いたのは


青い石のついたリングだった。


まるで石の中に


宇宙が詰まってるみたいだ。



じっと見つめていると


店番をしていたお姉さんが


私に話しかけてきた。




「この石は、アオライト言うんだがね」


「アオライト…可愛ええ名前」


「はじめての愛って意味があーのよ」


「は、じめての……愛」



ますます気に入って


食い入るように


見つめていたけれど


ふと気付いた。



悠平とは


恋人じゃない。


こんなの長く見ていたら


買って欲しいって言ってるみたい。


図々しいにも程がある。


後ろ髪引かれながらも


私はつまらなそうに装って


声を張った。



「か、可愛え石だけど……うちらには関係なぇね。だって…彼氏彼女じゃなえけん」



黙り込む悠平の顔を見上げると


悠平は我に返ったように


眉を下げて笑う。




「そうだな、俺共にゃ関係なぇ」



関係……ない


そう言われた、“はじめての愛”



本当は叫びたかった。





“私はずーっと悠平が好きだに”



でも、言えない。


悠平がいない暮らしなんて


考えられない。



ずっと一緒にいた。





この気持ちを伝えて


幼馴染みの関係が


壊れてしまったら私…


死んでしまうかもしれない。




「悠平……行かぁこぃ」


「おう」



カランコロン


寂しく響く、下駄の音。



変わらず手のひらは


結んであるのに



なんだか悠平が


遠くに感じた。




じんわりと涙が浮かんで


アスファルトの上の


揺らめきが更に潤む。




その時だった。




「あれぇ?由乃に悠平だわや」


「また二人で居ー。あんたら、ほんとに仲良しだに」




私たちの前には


クラスメートの


萌香と真波がいた。



いつもだったら


堂々としてる悠平が


繋がれた私の手をパッと離す。



「おおー、お前らぁ女だけで寂しなえのか」


「余計なお世話だにー」


「そーだに、そーだに」


悠平は二人を


からかうように笑った。



そして


楽しげな悠平の手は


真波の頭の上に


ぽん、と置かれた。



「いやぁ、やめてごしなぃ!」


兼ねてから悠平のことが


好きだという真波は


顔を紅潮させて


黄色い声をあげる。



さっきまで


私の頭の上にあって



さっきまで


私と繋いでいた、手…。




涙に潤んだ瞳を


悠平に注ぐ。



そうして見上げた悠平は


私と居るよりずっと楽しそうで


ずっと嬉しそうに笑って見えた。



落ちた私の手は寂しそうに


宙をだらんと泳いでる。



萌香と真波に眼差しを送る悠平は


今にも涙が溢れそうな私には気付かない。




悠平、


悠平…?



ねえ、


気付いて?




心の中で語りかけても


悠平はその眼差しを


私に向けてはくれなかった。



今日は


ずっとふたりで楽しんできた、


お祭りの日なのに



なんで私こんなに


切ないんだろう。




「あ!」


耐えきれず私は声をあげる。


必死に演技した。


「私、用事思い出した!」


「由乃?お前、何言っちょーんだ」


悠平はやっと私を見下ろした。


不思議そうな視線が私を刺す。




「悠平は真波たちと一緒に出店回ったらええよ。もうここで別行動せぇなし。さいならぁ」


「おい、由乃!?」



悠平に離された手のひらに


ひりひりとした痛みを感じながら


私は踵を返して足早に歩き始める。



一歩、一歩と踏み出すたび


悠平との距離が生まれた。



堪えきれなくなった涙が


ぽろぽろと零れ落ち


それは新調した浴衣を濡らす。


人混みの中に


わざと身を隠し俯いて歩いた。



誰にも見られたくない。




こんなの、ただの嫉妬。


かっこわるい。



「私…何しちょーの…大馬鹿もんだに」



小さく独白したその時だ。


ぐん、強い力で私の腕は


後方に引かれた。



驚いて振り返れば


そこには眉間に


皺を蓄えた悠平の姿があった。



「よ、用事ってなんだがね!」


悠平は、吃驚するほど


声を大きく張った。


言い訳を考えていなかった私は


口から出任せる。



「は、花火見に……」


「まだ真昼間だぞ」


「う…そりゃ、そうね」


「つーか、何…泣いちょん」



悠平が私の頭に優しく手を乗せる。


私のところに


帰ってきてくれた悠平の手のひら。



「悠平ぇ……何処にも行かんで……?」



思わず本音が絞られた。



涙を堪えると、息があがった。


絶え絶えに伝えた言葉に


悠平は腰を折って私と視線を合わせ


眉を下げて笑った。



「何言っちょーの、ずーっと居ーぜ?」


ずっと居る


その言葉が嬉しくて


涙が溢れる。




「よし、由乃。ちいと付き合え」


「え…?何処に?」


「ええから、行くぞ」



しっかりと握られた手。


頼れる、強い力で手引きされる。


悠平の手は相変わらず大きい。



成されるがまま、


ついていくと


さっきの出店の前で


悠平はピタと足を止めた。



アクセサリーショップだ。



「お姉さん」


「あらぁ?さっきのおふたりさんじゃなぇの」


「このアオライトの指輪、ごしなぃ」


「ちぃさいのとおおきいの、あるよ」


「……大きえのが欲しえところだけど、あんま金持っちょらんけん小さえのでええ」


バツが悪そうに呟く悠平を


目を細めて微笑んだお姉さんは


「1800円ね」と言った。



目の前で


何が起こっているのか


理解が出来ない。



「小そぅても高ぇじゃん!」


悠平は懐から財布を取り出すと


1000円札を一、二と数え


指輪を袋に


入れようとしていたお姉さんに


「すぐ使ぁけん、そのままでええよ」


と、伝えた。



むき出しのまま


手渡された指輪を持って


人通りの少ない裏路地に入る。



薄暗い路地。


振り返った悠平の顔は


僅かばかり赤く染まっていた。



その顔を見ていたら


私の顔だって赤くなる。





「……由乃が悪いんだがね」


「え……?」


「彼氏彼女じゃなぇなんか言うけん」


「そりゃ…どげなこと?」


「にぶちん。まぁ、由乃らしわ」



真っ直ぐな眼差しが注ぐ。


悠平は呆けた私の顔を眺めると


噴き出すように笑いながら


手をとった。



「俺、由乃のこと好いちょるけん、姿見えんよーなると、どげしてええか分からんようなる」


「ゆ、うへいが、私んこと好いちょる……?」


私、夢でも、見てる?


悠平を好きなのは私だけのはずだった。



私が動かなきゃ


変わるはずも


終わるはずもない絆だった。


それでも悠平は


私を真っ直ぐに見つめてる。



「頼むけん…、俺ん前から勝手に消えんで。俺の初めての愛は……由乃にしかやらんよ」



切なそうにそう言うと


私の右手の薬指に


アオライトのリングをはめる。



少しだけ、緩めのリング。



その中央に座する石の中

星のような金のつぶが

日光をためこんで輝いた。



「由乃は、俺ん事…どげ思ぉちょん」



夢にまで見た瞬間が



信じられないことに



今、私の目の前で



繰り広げられている。



「わ、私…私、わたたたし」



溢れ出す涙と緊張で


うまく言葉が伝えられない。




やっとの事で



「わた、私もっ、悠平んこと好きだに」



小さい頃からずっと



ずっとずっと秘めてきた、



想いを悠平に伝えた。



悠平は嬉しそうに笑う。



「両想いだったんだがね」


「うん…っ」


「まぁ、分かっちょったけどな」


「わ、分かっちょった!?」



悠平は私をぎゅっと抱き締めると


耳元で低い声を響かせた。



「そりゃあな。由乃ん事は、俺が一番分かっちょらにゃ嘘だら?」



なぁんだ。


ずいぶん前から


知られてたのか。



だったらもっと早く


新しいいっぽ


悠平とふたりで


歩み出せばよかった



なんて、たらればを思うけれど


今日からはじまる、


悠平との甘い日々を思えば


目頭も、身体すらも熱くなる。



悠平の温もりが愛しい。






15年目のその日のこと


悠平からはめてもらった、


アオライトのリングは


大人になって悠平との


“永遠の愛”を誓う指輪が


この指にはまるまで、ずっと


私の御守りだった。






***


まりさんとLINEで


お喋りしていると...♪*゚



あれあれ??


全然違う場所で


生まれてるはずなのに


なんだか方言が似てるぞ?



という事で...♪*゚



突然コラボ決定(*´ω`*)笑




コラボテーマは



The方言♡笑笑



楽しんでいただけたでしょうか



何より作者は



すんごーーーーく


懐かしくって


楽しかったっすー...♪*゚



まりさんありがとうございます


まりさんの今回の小説


また一風変わった


仕上がりとなっていて


俺のお気に入りなので笑


是非是非足を


運んで見てください


(*´ω`*)


幸介

ひとひら☘☽・2020-05-21
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この銀杏かき分けたら

エンゲージリング出てこないかな💕

気まぐれ𝓐𝓵𝓲𝓬𝓮ʕ๑•﹃•๑ʔ トーク🆖・2018-11-18
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アリスのつぶやき

ベタかもしれないけれど

クリスマスプレゼントに婚約指輪って嬉しいね

サプライズも良いけど、

僕は一緒に選ばせて貰えたことが一番嬉しかったなぁ

早く届いて欲しいな

猫じゃらし・2021-12-17
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