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#キケル文庫

読んでると、
思わず胸がギュッとしめつけられる、
そんなポエムを集めました。

全8作品・











【青い春に君と2人_】(上)




















「気持ち悪」



やめて、言わないで










「名前と顔、全然違うじゃん」



お願い、もうやめてよ










「あっち行けよ」



誰か、助けて…










「_れいちゃん」










さっきの刺さるような声とは違う










陽だまりのような温かい声










その声は微かに震えている










「れいちゃん、ごめんね」










君は、誰?






























「れーい、いい加減起きなさい



遅刻するわよ」










遅刻というワードで一気に目が覚める










「やっと起きたわね」










少し怒ったような顔をして



こちらを見てくるお母さんの口調は



いつも通り優しい










「おはよ、お母さん」










「おはよう、早く準備しなさいよ?



お母さんもう行くからね」










そう言うお母さんは



ビシッとスーツを着こなしている










お母さんは私が中学生の頃、



お父さんの浮気が原因で離婚した










シングルマザーとなったお母さんは



朝から夜までほとんど仕事だ










「うん、行ってらっしゃい」










「行ってきます」










そう言ってお母さんは部屋を出た










私は布団から出て洗面所で顔を洗う










目の前の鏡に映るのは醜い顔










まだお母さんとお父さんと



一緒に暮らしていた頃



車に轢かれて顔に大きな傷が残った










_らしい










私は事故の時の記憶がない



事故に遭ったことはもちろん、



事故に遭う前の



幼い頃の記憶まで失ってしまった










長く伸ばした前髪は醜い傷を隠すため



と言っても



さすがに髪だけで傷を隠すのは難しく



どうしても見えてしまう部分があるのが難点だ










軽くくしで髪をとかす










学校へ行く支度をして家を出た






























「おはよー」










「おはよ」










飛び交う挨拶が私にかけられることはない



高校に進学してから



友人と呼べる人はいないから










中学生時代、傷が原因で虐めに遭った



それ以来傷を見られるのが怖くて



人との関わりを極度に避けていた



その結果だろう










1番後ろの窓際の席で1人黙々と小説を読む



小説は好きだ



現実ではただの空気と化している私も



まるで物語の主人公になれた



ような気になれるから










「HR始めるぞー」










はぁ、もうそんな時間か










読んでいたページに栞を挟み小説を閉じる










「今日は転校生が来ている、入れー」










こんな中途半端な時期に



転校生が来ることは珍しい



まあ、私には関係ないことだ










「一ノ瀬 陵です。よろしくお願いします」










「一ノ瀬の席は、、神崎の隣だな」











げ、よりによって私の隣とか運が悪い










「…れいちゃん」










「っえ?」










今なんて言った?



私の名前はまだ知らないはずだ



それなのに彼は躊躇いなく私をれいと呼んだ



何処かで会ったことがある?



記憶の中をくまなく探したが


一ノ瀬 陵なんて名前は見つからなかった










「ではHRを終わる。



一ノ瀬、分からないことは


俺か神崎に遠慮なく聞けよ」










「はい、分かりました」










いつの間にかHRが終了していた



先生が教室を出たのを合図に



一ノ瀬くんの席の周りを囲むように人が集まる










「ね、何処から来たの?」










「東京」










「好きな音楽あるー?」










「ある」










一ノ瀬くんは次々に出される質問に



戸惑うことなく淡々と答えていった










簡潔すぎる彼の回答に



彼の席を囲っていた人は



興味を失ったかのように



自分の席に戻って行った










「…れいちゃん」










まただ



彼はなぜ私の名前を知っているんだ



この際、聞いてしまおうか










「なんで名前知ってるんだって顔してるね」










図星を突かれ目を見開く










え、そんなに顔に出ていただろうか



…と言うか今、彼は私の顔を見たのか



醜く大きな傷を見たというのに彼は



そんな傷は見えていないかのように


私に話しかけた



普通なら気まずい顔をしたり、


怯えたりするのに










「…私の顔の傷、


見たのに普通に話しかけてくれるんだね」










気づいたら口から漏れていた



そんな自分自身にびっくりする










「顔の傷なんて気にする方が変だよ



大切なのは見た目だけじゃないでしょ?」










当然のように言い切った彼の言葉が



傷だらけの心に滲んだ










「そっ、か。



そう言ってくれたの一ノ瀬くんが初めて



私自身もこの醜い傷が怖いくらいなの」










お母さん以外、初めてだった



私の傷を受け止めてくれた人は



私自身でも受け止めきれないほどの醜い傷を










「れいちゃんは醜くないよ。



それにその傷は、____」










「では授業を始めまーす」










最後の言葉が周りの声に


掻き消され聞き取れなかった



聞き返す前に授業が始まってしまい、



聞くタイミングを見失ってしまった



なんて言おうとしたのだろう



授業はその事を考えるので終わってしまった

桃薇 兎楼・2021-07-01
青い春に君と2人_
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【青い春に君と2人_】(下)






























「ねえ、れいちゃん。今日空いてる?」










放課後、一ノ瀬くんに話しかけられ



読み途中だった小説に栞を挟む










「んーと、うん、空いてるよ」










今日の予定を頭に浮かべ



用事がないことを確認する










「よかった。じゃあ俺とデートしよ」










「へ?」










いやいや、


今日初めて会ったばかりだというのに



デートは抵抗がある










1人で混乱していると



頭上からクスクスと笑う声が聞こえた









「ごめんごめん、冗談だよ



れいちゃんと行きたい場所があるんだ」










どうやらからかわれただけのようだ



むっとしたが私と行きたい場所という



ワードが気になり



そんな気持ちはどこかへ行ってしまった










「私と行きたい場所って?」










「ないしょ」










くだらない会話をしながら校舎を出て



一ノ瀬くんに着いて行った






























「ここだよ」










着いたのはごく普通の公園










_のはずなのに










「ここ、知ってる気がする」










なぜかそんな気がした










ブランコ、滑り台、鉄棒…










見慣れた風景のように映るのはどうして?










「…れいちゃん、ブランコ乗ろ」










もう既に乗っている一ノ瀬くんの



隣のブランコに座った










「ちょっと俺の昔話をしようかな」










昔話…?










一体この公園と彼の昔に



何の関係があるのだろうか










「…俺、幼稚園児くらいの歳まで



この町に住んでたんだ



その時にこの公園で



よく一緒に遊んだ女の子がいた



その女の子が…れいちゃんだよ」










は、彼はなにを言っているのだろう










私と一ノ瀬くんは今日初めて会ったんじゃ…










ズキズキと痛む頭を抑えながら彼の話を促す










「ある日、いつものように



君とこの公園で遊んでた



その日はボールで遊んでたんだ



俺の投げたボールが



道路の方に飛んでいっちゃって



道路側に居たれいちゃんが取りに行った」










ズキズキと頭痛が激しくなる










まるで彼の話を聞くことを拒否するかのように










「ボールを追いかけていたから



きっと車道に出ていたことに



気づかなかったんだろうね



君は…走っていたトラックに轢かれた」










ふっと頭の痛みが消え、体が倒れる感覚










最後に見えたのは雲一つない青空と



焦ったような一ノ瀬くんの顔だった






























…あれ、ここは?










あ、そうだった



りょーくんと遊んでるとこだった










りょーくんが投げたボールが



公園の外に飛んでいく










もうっ、飛ばしすぎだよ










追いかけて追いかけてやっとボールを捕まえた










りょーくんのとこに



戻ろうと思って顔を上げたら



今まで感じたことの無いくらいの衝撃と痛み










あれ、体動かないや










『…れ、いちゃん』










りょーくん?










なんで泣いてるの?










声を出そうとしても空気を吐くだけ










『れいちゃん、れいちゃんっ』










もう、泣かないでよ










なんでかな、りょーくんの顔が霞んで見える











『りょ、くん、だいじょぶ、だから』










力を振り絞って出した声とともに



意識を手放した






























…ん、あれここは










重い瞼を開けると真っ白な世界










ここ病院か










さっき倒れちゃったんだっけ










「れいちゃん?」










あぁ、思い出したよ、全部



君は一ノ瀬くんじゃない










「りょーくん」










「…れいちゃん、思い出したの?」










「思い出したよ、君はりょーくんでしょ?



おっきくなったなぁ」










体もがっちりしてるし背も伸びた



あの頃の君からは想像できないな










「…ごめんね」










少し震えた声で呟いたりょーくんの目は



濡れている










「…何に謝ってるの?」










純粋に分からなかった



君は何を謝っているのか










「俺のせいで、



顔に一生残る傷も出来ちゃったし



それに記憶も…」








傷…



顔の傷に手を当てる










今まで気持ち悪く感じていた傷跡も



今は何も思わなかった










「許すよ」










出来るだけ優しく呟いた










私は君を恨んでない、大丈夫だよ



という思いを込めて










「っ、なんで。ずっと後悔してた



あの日俺がボールを遠くに投げなかったら



あの日れいちゃんじゃなくて



俺がボールを取りに行ってたらって」










苦しげに叫んだ言葉はきっと



りょーくんの本音










「ばかだなぁ



りょーくんが記憶を失くして



顔に傷がついちゃったら



私の方が何百倍も辛いよ」










もしあの日、轢かれたのがりょーくんだったら



想像するだけで苦しくなる










「だから、いいんだよ



もう後悔はしなくていいんだよ



私が全部許すから」










だから










「もう、私の事で苦しまないで」










そう言った私の目の前で君は










一粒の雫を流した










その雫はただただ綺麗だった

桃薇 兎楼・2021-07-03
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《平安とか無理ゲーです!》 第2話




「さ、桜子!?」

俺は大事な片割れの名前を呼んだ。

さっきの謎の光のせいで

今まで一緒にいたはずの桜子とはぐれてしまった。

そして何より問題なのが

「ここ現代じゃねぇっ!!」

俺の目の前にあるのは寝殿造のでっかい邸宅。

広い庭には川とか池があるし、牛車が走ってるし、

明らかにここは……

「平安かよーーーーー!」






いったん状況を整理しよう。

俺たちは謎の光に包まれて、気付いたら平安の世界にいた。

おそらくここは現代ではない。

考えられるのはタイムスリップか

俺たちが死んで架空の世界に行ったかだな。

とりま前者だと仮定したとすれば、

平安時代の人とコミュニケーションはとれるのか?

俺は歴オタだからいいとして桜子は大丈夫なのか?

いや、桜子のおしりまである長い髪はめっちゃ綺麗だからな。

髪が綺麗なのは美人の条件だ。まあ大丈夫だろう。






「お主、何者じゃ。」

考えていると後ろから声がした。

振り向くと牛車から降りてきた男性がこっちを見ていた。

狩衣を着ているから野草でも摘みに行っていたのだろうか。

「大納言様、こんな怪しいものに話しかけて良いのですか?」

従者が心配そうに声をかけた。なるほど、この人は大納言か。

って怪しいものとは失礼なっ!

まあ確かにこの服は平安にはないもんな。

「だ、大納言様。」

俺は跪いた。大納言って結構いい身分じゃん。

「お主の纏っている装束はなんじゃ。そのおかしな髪型も。」

こ、こいつー!俺の自慢の黒髪マッシュを!

でも未来から来たってことは言わない方がいい気がする。

「実は……。昨晩誰かに捕まりまして、気付いたらこのような姿になっていたのです。おまけに記憶もなくなってどうすればいいのか分からないのでございます。」

俺は眉を下げて泣きそうな顔をした。

俺のスーパー演技で匿ってもらおう。

「なるほど。それは気の毒な。ここは私の邸宅だ。とりあえず中に入るがよい。」

「いいんですか!?」

「よいぞ。とにかくこの格好では人目に付く。おいで。」

大納言さんが優しく微笑んだ。

とりま何とかなりそうだ。でも桜子が心配だな。

そんなことを考えながら屋敷に入った。



















人物紹介

《藤原 薫》
・桜子の双子の兄
・歴史オタク&シスコン
・黒髪マッシュのイケメンだが中身は残念
・演技が上手い

月-runa-・2021-07-03
平安とか無理ゲーです!
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《平安とか無理ゲーです!》第1話



「ほぉー、ここが京都御所かぁー」

「歴史を感じるな」

私、藤原 桜子は、今京都御所に来ています!

双子のお兄ちゃんの薫と一緒にね

京都御所は平安から明治維新まで続いたんだっけ?

特に興味はないけど歴史好きのお兄ちゃんに付き添っている。






「確かここら辺が大内裏なんだよな」

京都御所に来て3時間。

お兄ちゃんは周辺を巡って感嘆の声を上げたり写真を撮ったりしている。

でも、私そろそろ疲れたよ。

「お兄ちゃんまだあー?早く帰ってゲームしたいよ」

少し上目遣いで頼む。私の顔には自信があるから。

「……分かったよ。帰ろう。」

やったー!心の中でVサイン。

お兄ちゃん、私には甘いからなぁ。

歩き出した私のカバンの横で、

お気に入りのゲームのストラップが揺れる。



それは一瞬だった。



ブワァッ

凄まじい金色の煙が私たちの間を通り抜けて言った。

その衝撃で、薫の体が道路側に傾く。

「お兄ちゃんっ!」

私は突発的に手を伸ばした。

でも、金色の煙でお兄ちゃんの姿が見えない。

「逃がさぬ!」

知らない男の人の声と、手を叩く音が聞こえた。

私たちの半径5mくらいが赤色のスノードームみたいなのに覆われる。

「えっ!?」

光が炸裂し、眩しくて私は目を閉じた。
























「んん……。」

気付いたら、あの光はもう無くなっていた。

目をパチパチしながら周りを見回す。

ふーん。なかなか昔っぽい街並みだな。

道路もアスファルトじゃないし、

なんか牛がいる。

…………………………え、牛?

「な、何ここーーーーー!?!?」

月-runa-・2021-07-02
平安とか無理ゲーです!
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🌈-*-🌈-*-🌈-*-🌈
 
 
 ⛅ 〔 キケルの図書室から新プロジェクトのお知ら𓂃◌𓈒𓐍 〕 🌥
 
 
 ☁️ つい先程、新企画を開始しました! 良ければそちらもご覧下さいね◎
 
 🌦 ということで新プロジェクトの発表に参りたいと思います(ᐡっ ̫ -ᐡ) 昨日発表する予定だったんですが、トラブルが発生してしまいました( ; ; ) 楽しみにされていた方ごめんなさい( ᵕ̩̩ ᵕ )
 
 🌧 それでは新プロジェクトの発表です! 本日から始動する新プロジェクトは、キケルの図書室オリジナル文庫です(꒪˙꒳˙꒪ )໒꒱
 
 ⛈️ 新しいタグを作成して、皆さんに自由に使って頂こうと思います◎ 詳しい内容について説明しますね⸜(๑⃙⃘'ᗜ'๑⃙⃘)⸝
 
 🌩 タグ → キケル文庫
 
 🌨 開始日 → なう(2021/06/28 18:54:42)~
 
 ❄️ 活動内容 → 好きなようにオリジナル小説を書いてください! それでこのタグをつけて投稿してくだされば、私が定期的に書評を書いて宣伝しようと思います◎
 
 ☃️ ルール → 18禁・グロNG( °×° ) 短編でもシリーズ物でも大丈夫です! 文字数は自由になります‎( ˶˙˙˶) ひとり何作でもOK(ˊo̴̶̷̤ ̫ o̴̶̷̤ˋ)♡ 二次創作はダメ!
 
 🌬 宣伝について → しっかり読んで書評を書かせて頂こうと思います‎߹‪ᯅ߹ 沢山宣伝して、色んな方に読んでいただけるように頑張ります! 趣味の創作で構わないので、是非、キケル文庫でオリジナル小説を書いてみてくださいね◎
 
 💨 質問や気になることはトークで聞いてください( ᐪ꒳ᐪ ) 沢山タグを使ってもらえると嬉しいです! よろしくお願い致します૮ o̴̶̷᷄ ·̫ o̴̶̷̥᷅ ა
 
 💧 ※ このプロジェクトは企画では無いので、締切や期間がありません。 好きなタイミングで、好きなだけ書いてください。 ※ 💦
 
 ☔️ ※ こちらのプロジェクトはキケルの図書室メンバー様限定です。 ※☂️
 
 
 🌈-*-🌈-*-🌈-*-🌈

え こ .・2021-06-28
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