はじめる

#伴侶

読んでると、
思わず胸がギュッとしめつけられる、
そんなポエムを集めました。

全23作品・

見つめ合って
ためらいあって

それでも
互いの手のひら
握り合って

不器用な愛を
伝え合って

ね、
一枚の紙を書き上げて
持っていったね

ぎゅっと何度も
手を握り直してくれる君が
痛いほど愛しかった



会社の後輩だった君は
あっという間に
私の心の中に入ってきて

会社の後輩から恋人に
そして今日からはついに
私の…伴侶だね。

君がいなければ
私は今もきっとね

恵ちゃんの影を追い求めて
どん底を生きていただろう

君の笑顔が
照らしてくれた道を
大事にしたいと心から思う

これからも
いろいろな困難が
待っているかもしれないけど

いっときでもね
君とこどもたちと私と四人で
笑い合えたなら私は
それだけでとてもとても幸せ


ううん
きっとそれは

それだけで……なんて
言ったらいけないくらいの
君の頑張りの賜物だよね

私を、恵ちゃんを
こどもたちをまるごと
受け止めてくれた。

カズ、本当にありがとう。
君が愛しくてたまらない。

君のこと
恵ちゃんと同じくらい
大切にしていきたい

今の私にはそれが
精一杯だけど
それでもいいかな?

これからも
末永くよろしく

2017/10/10
婚姻届提出日

まるちゃ・2017-10-10
報告
婚姻届
後輩
伴侶

【それは夕焼けだった】


総文字数5532文字



それは朝焼けだった。


君が生まれた日。
そして僕が生まれた日。


それは木漏れ日だった。


君と僕が出会った日。
そして共に歩み始めた日。



それは夕焼けだった。


君と僕が分かたれた日。
僕が笑って君が泣いた日。



君よ、笑え。




――――――――――――


僕は死んだのだ。


それは1ヶ月程前の事。



癌だった。



結婚してから18年。


互いに43歳の年だった。




こどもは発病まで頑張っていたが


結局出来なかった。




妻の紗香は、保育士だったのに


最後までこどもを


持たせてやれなかったことが


僕の唯一の後悔だ。




我ながら薄命だった。




僕はどうやら幽霊になったらしい。


だけど足がある事には笑ってしまう。



この一ヶ月


ずっと、紗香を見てきた。




きっと、生きていた頃より


正味ずっと長く、紗香の側にいた。



僕の遺影に縋っては


子どものように泣きじゃくる。




「なあ、紗香」
「僕はそこには居ないよ」



「僕は、ここだよ」



紗香の髪を撫でたくて


手を差し伸べる。




でも僕の手は


紗香をすり抜けてしまう。




当たり前の事だが


声も空気を震わせる事はなかった。




僕は肉親を無くしたことはない。




今、泣きじゃくる紗香と


泣きじゃくる紗香を苦しく思う僕とは


一体どちらが辛いんだろう。





「…芳樹さびしいよ……助けてよ」
紗香の涙が、手のひらに落ちていく。




「芳樹、芳樹…」
今紗香が蚊の鳴くような声で叫ぶ僕の名は
なんと、切ないことだろう。



僕は、拳をぎゅっと握った。





辛いね紗香。
僕も、辛いよ。





紗香は酒を飲まない女だった。




僕が幼い頃から見てきた、


父の酒に付き合う母の姿、二人の笑顔。



大人になって結婚でもしたら


僕もそうなるのだろうと勝手に思っていた。




だから僕は紗香をよく酒に誘った。



呑めないからといっては、


お猪口に酒を注いで寄り添ってくれた。




それが今はどうだろう。


僕が呑み残して死んだ一升瓶の中の酒を


僕の形見になったお猪口に注いで毎晩呑む。




一升瓶の中身がなくなると


わざわざ新しいものを買ってきて


僕の一升瓶へと注ぎ入れた。




シュンシュンとやかんが鳴る。


背中を丸めてこたつに入る紗香は


お猪口、三つで


顔を赤くしてウトウトしはじめた。





「ほら、ストーブ消さないと危ないよ」
僕は紗香の耳元で優しく囁く。



最近、声に想いを込めると


伝わる事を覚えた。




「…あ、そうだ、ストーブ…消さなきゃ」
紗香はふらふらと立ち上がり
ストーブを消しに行く。




よかった、これで火事になんてなって
こっちに来たって……
迎えは絶対いかないからな。



全く…。僕がいなきゃ紗香は何も出来ない。
これじゃあ、安心して行けないじゃないか。




時は刻々と過ぎ去る…。



もう時期、僕は…。





「きょ…うで、49日……」


その日、紗香は呟いた。


そうだよ紗香。
僕の為に伏した喪を明かす日だ。




なのに、紗香は泣きじゃくる。


今日もやっぱり泣きじゃくる。



僕の好きだった紗香の頬は


削げ落ちたように痩けていた。




栗色の艶めいた髪の毛は


闇のように黒くなり


ボサボサになっている。



あんなにお洒落だった紗香が


いつも同じ部屋着に身を包んだ。





そして、呟いた。





「私も……死ぬ」


紗香、待てよ
死ぬってどういう事だ




僕は慌てて声をあげる。


慌てているから、想いがうまく


言葉に乗せられない…。




紗香はキッチンへ進むと


包丁を手にふらふらと風呂場へと歩む。




紗香、紗香っ
死んだらだめだっ




いくら呼びかけても伝わらない。


こんなに肉体の無い身体を


呪ったことはない。





気付け、気付け
僕の存在に気づけ。


死してからもずっと
紗香の側にいた僕に気付け。


紗香、紗香っ




紗香の隣を歩き伝え続けた。




「まず何を…しなきゃいけないんだっけ」



まるで覇気のない声で紗香は呟く。




「紗香、思い出せよ、僕が病床で諦めかけた時、君が言ったんじゃないか…生きてって。お願いだから生きてよって…」




紗香に僕の声は聴こえない。


風呂にお湯が溜まっていく様子を


呆然として見つめていた。




僕の目からは涙が溢れ続ける。




とうとう、お湯が溜まりきり


しばらく漏れ出していた水道の蛇口を


紗香はようやくしめた。





浴槽に腕を沈め


手にした包丁をじっと見つめる。






「芳樹…今、行くね」





僕は……僕は……っ





こんなこと、望んでいないっ







一際強く叫んだ時


僕の真横にある、


バスカウンターに置いてあったシャンプーが


ガタンっと大きな音を立てて落ちた。




ビクッと肩を震わせて


紗香はカウンターを見つめる。




ころ、ころころと


シャンプーの容器が転がり


紗香の足にぶつかって止まった。





「どうして、落ちたんだろ…」



紗香は首を捻りながら、


シャンプー容器を持ち上げて


カウンターの真ん中に


それを戻しにやってきた。





ことんと静かに容器を置いて


立ち上がろうとした時だった。




鏡越しに紗香を見つめていた僕の目が


紗香の瞳と、ぶつかった。



紗香は目を見開いて、


何度も何度も後ろを振り返る。




目には涙がいっぱいだ。




まさか…




僕は紗香に近づいた。



鏡越しの距離がどんどん縮まっていく。




紗香も鏡の側へ寄り添い


僕の顔を見ていた。



そして、震える手で


近づききった僕の頬へ触れる。





温かい……紗香の温もりだ。





「芳樹……なんで……っ」



僕はまた泣きじゃくり始めた紗香の髪の毛へ


そっと触れてみる。




相変わらず、僕の手は透明人間で


紗香をすり抜けてしまうけれど




鏡に映る僕の手は


紗香の髪の毛をしっかりと撫でていた。





「……感じるかい?」



僕は、小さく耳元で囁いた。




「……感じるよ…っ」



紗香は僕の声に答えた。




死者の声が…届いた。



やっと、届いた。





僕は49日堪え続けた切なさを


出し切る様に声を上げながら泣き


紗香を強く、きつく抱き締める。




苦しい程に抱き締めて


「泣くな、笑えよ、頼むから」


そう、紗香に伝える。




「無理だよ…芳樹がいないと、私だめだよ」


「生きているんだよ、生きていけよ」


「一人でなんて…寂しすぎる、側に行きたい、連れてって」




僕は言葉の代わりに


紗香の首元へ顔を埋めた。




辛い…



こんな弱った紗香を残して


僕は行かなければならないのか





さっ、とどこからともなく風が吹く。



ああ、感じる…お迎えの時間だ。




僕の体は風に溶け始めた。


確かに感じているはずの


紗香の温もりも


感じなくなっていく。



「芳樹…?芳樹、やだ、やだよ、行っちゃいやだ!」
「紗香…よく聞いて」


僕はまだかろうじて残る指先で


紗香の頬に触れる。



紗香も最期の時を察したか


首を振って抵抗した。




頑固なところは昔からかわらない。


でもあいにく今は


頑固な紗香を微笑んで



見つめる時間もないようだ。




「紗香、聴いて」


声を大きく上げると


紗香はようやく静かになった。





「手付かずになってる病院から持ってきた僕の私物の中に、手帳があるんだ、それ、紗香にあげるよ。僕の命より大事なものが詰まってる…なあ、一体、なんだと思う?」




僕は一生懸命笑顔を作り


紗香の手のひらを握る。



僕の笑顔を記憶に残して欲しかった。






「芳樹っやだ……っ」
「紗香…、愛し」





そして、僕は完全に……風に溶けた。











夢を見ていたのだろうか。


亡くなった芳樹が家にいるわけがない。


紗香は思う。



でも、確かに残っている。


これは確かに夫の、芳樹の温もりだ。



紗香は涙を拭うと


先程まで手首を切ろうとしていた包丁を


置き去りにバスルームを出た。




「芳樹の……荷物」


手付かずになっている夫の荷物。


ダンボールにはガムテープが貼られたままだ。





西日が射し込む。
オレンジ色に輝いたダンボール箱。



ガムテープをぺり、ぺりと


恐る恐る紗香は剥がしていき、


とうとう蓋をあけるに至った。




中を探ると手の甲が


1冊の手帳にこつんとぶつかる。




手帳カバーは夕焼け色。


よく夕日を見ながら
河川敷を歩いたっけ。


涙が滲む…。




紗香は両手で手帳を


包むように持ち上げて、


息をつく。




「紗香にあげる…って、言ったよね」


芳樹の入院中、一度


手帳の中身が気になったことがある。




『 ねえ、その中、何が書いてあるの?』


そう聞くと夫はおどけてこう言った。


『初恋の女のこと書いてあるんだ、覗くなよ』





「やきもち…妬いたな。あの時」


とめどなく、流れ込んでくる思い出。


何度拭っても涙はきらきらと落ちていく。





「……芳樹の初恋、見ちゃうからね」


宙に投げかけた言葉。

承諾はとった、紗香は

手帳のベルトに手をかけた。




手帳を開くと、


芳樹の字が飛び込んできた。






『 2018年10月27日の紗香、赤のニット帽、白のブラウス、黒ニットカーディガン、オーカー色のスカーチョ、そこまで満点なのにブーツが合わない、そこが紗香らしくて可愛い』


紗香は、目を見開いた。


『 2018年12月24日の紗香、口紅の色が変わってた。昨日までの濃い色よりも今日の淡いピンクの方が僕は好きだ。キスしたかったけど、この間肺炎起こしたばかりだしな』


『 2019年1月1日、今年も紗香を想いながらはじまり、今年の暮れも紗香を想いながら終えたい』


『 2019年3月2日、今日は紗香の頬にチーク。化粧変えたか?なんて聞くのはあざとく思えて、言えず。本当は気付いてたよ、似合ってた』


『 2019年4月6日、とうとう常時車椅子…。落ち込む僕に紗香、芳樹がちっちゃくなって顔が良く見える、と励ましてくれた。久々に、紗香の唇を奪った、照れくさくて二人で笑う、幸せだ』


『2019年5月3日、紗香の誕生日。何処へも連れて行けない。それなのに紗香、優しく笑う。君の笑顔が僕の力になっていく。来年の誕生日は、夕焼けを見に日本海へ行こうか、紗香の好きな夕焼け、最高のロケーションで見たい』


『 2019年6月15日、紗香と喧嘩。最近喧嘩ばかり。泣き腫らした目を見るととても辛い。僕が苦しめてる…その事が暴言に拍車をかける…ごめん紗香、君が好きだ』




どこをめくっても


所狭しと書かれた文字。




どの行を見ても「紗香」


その名が飛び込んでくる。





最後のページには震える文字で


こう書かれていた。




『 2019年9月16日、さやかがぼくのたからもの、いのちをかけてまもりたかったひと、ぼくがしんでもいきてほしい』




死の、僅か二週間前の、日付だった。


芳樹の初恋の人は、紗香だった。


生命よりも大事なものは紗香だった。




「芳樹……っ、芳樹っっ」



してあげたいことは山ほどあった。
二人でしたいことも沢山あった。



うまくいかなくて
うまくできなくて


何度自分を責めたことだろう。



芳樹が亡くなってからも
毎日の様に後悔はやってきた。




「命…芳樹と半分こに…したかった」




そう、寿命が短くなっても
一緒に生きたかった。



でも、もう叶わない。
もう、叶わないから…



紗香は気が済むまで泣いた。
泣き疲れて眠ってしまうまで泣いた。






静かに朝は明け、紗香は目覚めた。



涙のあとをきれいさっぱり洗い流して


紗香は50日ぶりにドレッサーの前に座る。





芳樹の好きだった口紅をさした。


芳樹が褒めそこねたチークをいれた。





鏡の前で紗香は、笑顔を作った。








――それは朝焼けだった。


貴方が生まれた日。
そして私が生まれた日。


それは木漏れ日だった。


貴方と私が出会った日。
そして共に歩み始めた日。



それは夕焼けだった。


貴方と私が分かたれた日。
貴方が笑って私が泣いた日。




そしてまた朝が来た。



生きていくよ。
笑ってみるよ。



貴方が望むなら。

ひとひら☘☽・2019-11-23
幸介
HM企画STORY
HM夕焼け
夕焼け
朝焼け
ポエム
木漏れ日
死別
伴侶
幽霊
見守る
独り言
口紅
チーク
初恋
愛しさ
離れたくない
溶ける
消える
幸介による小さな物語
恋の足跡
小説
物語
幸介'sSTORY/死別
㊗オススメ㊗

君が横にいて
ほっとした様な顔で
「せーんぱいっ」
って犬みたいに

コロコロ
コロコロ
甘えてくれる
今この時は

私にとって
永遠より
尊い時間

大切な
一瞬一瞬
心に焼き付けて
君と一緒に
微笑み合うよ

まるちゃ・2017-12-02
輝き
後輩
伴侶

これらの作品は
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~ほんとのなかのうそほんと?~




「さな!さなっ!!」



同棲してる彼、優多が


眠りの中の私を呼んだ。



「んんぅん……?」



「寝ぼけてる場合じゃないって!!」



「なあによぅー…」



「さながエントリーしてた、セヴンの来日コンサートのチケット!!通ってるぞ!」


「えっ!?」


驚いて跳ね起きた瞬間


ベッドの上部にある棚に


思い切り頭を打った。



「うっつぅううー……」


「ひっでぇ落としたけど大丈夫?」


優多は苦笑して


私の頭を撫でてくれた。



それより、それよりだ!



「それより!!ほんと!?」


「え、なにが?」


「何がじゃないよ、セブンの来日コンサート!」



鼻息を荒くして


私が興奮気味に食いつくと


優多はヘラッと笑って告げた。



「ウソ!」


「はぁー!?なにそれ!」


「だって今日はーエイプリルフールだしぃ」


優多の低音ボイスが


語尾を伸ばした女子高生みたいな


喋り方をすると、とてつもなく腹が立つ。



私はがら空きになっている


優多の額をベチンと平手で叩いた。



「いでっ、なにすんの」


「言っていい嘘と悪い嘘がある!」


「えー?今のは大丈夫でしょ」


「ダメに決まってんでしょ!私がどれだけセヴンのコンサートに賭けてるか優多だって知ってるくせに」


「あー、そっか、ごめんね?」


優多はベッドの上に


ちょこんと座り直して


捨てられた子犬みたいな顔をした。



…こんな顔されたら


怒るに怒れない。



優多はこんな時


とてもずるい。


決して狙っているわけじゃなく


こんな風に母性本能を


くすぐるんだから。



「……ん、まあ、もうしないって約束してね」


「やった、さな、やっさしー」



優多は嬉しそうに笑い、


私に手を差し出した。



「ん?」


「そろそろ起きなよ」


「えー、せっかくの休日ぅ…」



「一緒にご飯食べよ」


「仕方ないなあ…、うんー…」


私はベッドを完全に起き上がり


夜に脱ぎ捨ててベッドに入った、


ルームシューズに足を通した。



ところがどうだろう。




つま先に


グニュッッとした


温かいものが触れたのだ。




「ぎっっゃあああああ!」



人間というのは


不思議なもので


得体の知れない物を


感じると叫び声も


あげたくなるらしい。



半泣き状態の私は


ルームシューズを蹴り上げて


優多にしがみつく。



「グニュッッッッてええええ…っ!」


「ん、こんにゃく」


「…ん!?こんにゃく!?」


「うん、わざわざゆでたんだ、こんにゃく」


「……なんで?」


「ドッキリ大成功♪エイプリルフール♪」


「ゆうぅぅぅぅたあぁぁぁぁ!!」


私が地を這うような声をあげると


優多はビクッと肩を竦めて言う。



「あ、あれ?怒ってる?」


「あったりまえでしょ!」


「なんで?問題ない嘘でしょ?」


「問題大あり!ルームシューズこんにゃく臭くなるじゃん!」


「え、こんにゃくって臭いの?」


「臭いよ!!」


「えー…マジか、ごめぇぇん」



自分で仕掛けておきながら


本気で落ち込んでいる。


救いようがない……。


でも、泣き出しそうな


優多の顔を見てると


またも母性本能がくすぐられて


「…まあ、次から気をつければ?」


そんな事、言ってしまう。


そしてきっと優多は笑うんだ。


「さな、やっさしー」って。



「さな、やっさしー♪」


ほおらね





優多との食事


いつもの隣同士の席。



「はい、優多、お醤油」


「さなもお醤油使いなよ」


「やだ、私はソース」


目玉焼きに何をかけるか


なんて、聞かなくてもわかる。



もうかれこれ


四年も、同棲してるのだ。



「はい、ソース」


「うん、ありがとー」



目玉焼きにはウースターソース。


田舎の母が目玉焼きの食べ方は


こう、と教えてくれた。



優多から


受け取ったソースの瓶を傾けて


目玉焼きに、とぷっとかける。



「いただきまーす」


お腹がすいた。


目玉焼きを笑顔で頬張る。



「ん!?」


「どーしたのさぁー」


口の中、しょっぱい…



「……醤油じゃん」


「へへー、エイプリルフール♪」


「もぉー、しょうもないっ」


今度の嘘は可愛いかなと思いきや


私はあることに気がついて


優多に声をかけた。



「ねえ、待って?」


「ん?」



「この瓶に入ってたウースターソースどこやった?」


「え、流しに捨てた」


「はぁぁぁぁ!?」


「え、駄目!?」


「食べ物無駄にしちゃ駄目に決まってんでしょ!」


「あ…っ、そか……ごめん」



すっかり意気消沈。



今日の優多、なんだかおかしい。



同棲前を含めたら


エイプリルフールなんて


過去五回も私たちの前を


通り過ぎてる。



3年前に1度だけ



タコ星人と人間の


戦いがはじまった!


と、言い張っていた事はあったけど


何度も嘘を捻り出して


実行するようなことする人じゃない。



私がしげしげと


優多を見つめていると


優多はスマホを見ながら


食事をはじめた。



「ねえ、ながらごはんするのやめて?」


「えー、もうちょっと」


「だめ!今、やめる!」


「鬼嫁ぇー」


「鬼でもなければ嫁でもないっ!」



あはは、っと声をあげて


優多は私に笑顔を向けた。


よかった、


落ち込みモード


解除されたみたい。



こんな漫才夫婦みたいな、


掛け合いも


実は、気に入っていたりする。




「え、あ!?うそだろ!!」


結局、ながらのスマホを


やめられない優多が突然


画面を見ながら大声を出した。




「え!?何?」


「すっげ!」


「ん!?なになに?」


「猿がちゅーしてる!ほら見てみ」



優多が画面を私に傾ける。


私は優多に身を寄せて


優多の手に握られた、


画面を覗く。



…その瞬間は


あっという間だった。



優多が私を覗き込んだかと思うと


私の唇に吸い付いたのだ。



ちゅっ、という音だけが


何度も部屋中に響く。



やけに生々しくて


恥ずかしい。



思わず身を引き


悪態をついた。



「目玉焼きand醤油の味のちゅーとか嫌だけど」


「えー?」


「画面…猿のちゅーなんか、どこにもないし」


「うん、エイプリルフール」


「ちゅーまでエイプリルフールにするの?」


優多は私の頭を優しく撫で上げて


急に真剣な眼差しを私に注ぎ



唐突な言葉を繋いだ。





「さな、結婚しよ?」



それはずっと待ち望んだ言葉。


ふいに涙が浮かぶけれど


今日はエイプリルフール。




また、優多の


くだらない嘘かもしれない。



涙、必死に我慢した。





「ねえ」


「うん?」


「それもエイプリルフール?」


「これは本当」


「……信じられない」


「信じて?」


眉を下げて笑う優多。



「だって、今日の優多、嘘ばっかり」


「それはほら、プロポーズの為に、本当の中の嘘の本当にしようっ、てさぁー?」



「なにそれ」


「大好きの中に、色んな嘘があって、その中のプロポーズ的な?」


「わかりにくいよ」



その回りくどいところが


実に優多らしくて私は


笑みをこぼした。



「んー、じゃあ」


「んー?」



優多はゴソゴソと


ポケットを探ると


「これなら、どう?」


そう言いながら


私の左手をとって


薬指に、指輪をはめた。



ピンクゴールドのハートに


小さなダイヤモンド。



「本気……で?」



「うん、俺のお嫁さん、さなしかいないよ」



優多は、照れくさそうに


声を漏らして笑う。


この4年間ずっと


低い笑い声が私の安らぎだった。





「私も……優多しかいない」




やっと私も、素直になれた。



涙が零れると


優多は優しいキスで


私の機嫌をとる……



普段から


いたずらばかりで


こどもみたいな彼氏だけど


そんな優多が大好きだ。







……それにしても


どうしてプロポーズが


エイプリルフールなのかな?



友達に報告したってどうせ


「それほんとに!?エイプリルフールのプロポーズありえなくない?調子に乗って嘘ついて引くに引けなくなってない!?」



なーんて、絶対言われるじゃん。




「でも、ま、いっか」


「ん?何が?」



優多は私の背中を


優しく包み込みながら


私のつぶやいた言葉を拾う。




私はリングの、はまった左手を


窓から漏れる陽射しに


かざしてみた。



「嘘で指輪はプレゼントしないもんね」


キラキラと、本物が光っていた。



「んー?」


「んーん、こっちの話」


ぎゅっと私を抱き締める、


優多の腕を私は優しく抱き返した。





-------------


エイプリルフールに

ちなんで短編投下です


(*´ω`*)


優多のしょーもないウソ


(とくにこんにゃくネタ)に


笑っていただけたら、と


思います笑





禁止用語厄介!



何度、特定するために



投稿し直しただろう…




会話文「うん、」




「この」


を繋げてしまうと



アウトです!



この禁止用語


二度も使ってました笑



物書きの皆さん



お気をつけて(OдO`)

幸介

ひとひら☘☽・2020-04-01
幸介
幸介による小さな物語
幸介の短編集
読み切り
ウソ
小さな嘘
アーティスト
こんにゃく
醤油
同棲
社会人
社会人の恋
小説
物語
プロポーズ
両想い
カップル
結婚
人生
伴侶
君と見たい景色
好きな人
エイプリルフール
独り言
好きな人
ポエム

どんな時でも変わらずあんたを想い続ける事。
他の人ならちょっと無理かなと思うけど
あんたなら絶対大丈夫と言い切れる。
それこそが伴侶の道。

秘密さん・2017-10-22
貴女へ
伴侶
想い続ける

出逢えた頃から

気持ちに変わりはない

君を連れ添い老いてゆくだけ

逢瀬 誠・2022-02-04
伴侶
結婚
ポエム

伴侶とは…一心同体で必要不可欠な人

やはり、愛です…

中でも最上級の愛情を持って

生涯ともに生きたいと願う人です

𝒹𝒶𝓇

dar・2022-04-24
dar
伴侶
生涯ともに
愛してる

大事な報告です。
私、彼からプロポーズされ、話し合った結果、人生の伴侶としてお付き合いしていく事を決めました。これからも暖かく見守れたらと思っており、先に報告して頂きます。

再乙女ちゃん・2024-05-22
プロポーズ
伴侶
報告
長い期間経て

「愛してるよ」

言われた私より
言っている彼の方が
幸せそうな表情をしていると思う。

不思議。

「あなたに愛されて幸せ」

そう喜ぶ私を見て
彼は更に愛しげに笑う。

そんなふうに笑うから
どうにも愛しくて仕方無い。

愛してる。愛してる。愛してる。

yuki・2021-06-15
愛してる
伴侶
恋愛とは

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