秋に包まれた公園の芝生には
枯れ葉が沢山落ちていて
芝生の上を歩く度に
カシャ クシャ と音が鳴る
駅の近くにある公園で
君が来るのを待っている
そんな午後2時半過ぎのこと
ただ芝生が広がっているだけの
広々とした公園で
子供たちは色んな遊びをして
楽しそうに笑っている
親御さんたちも楽しそうで
その輪の中に入りたいなぁなんて
叶いもしない思いを抱える
近くで シャクシャク と
落ち葉を踏む音が聞こえ
来たのかなと振り向けば
知らない人と目が合った
数秒間見つめあってしまい
"すみません…"と先に私が言った
君との約束の時間から
もう25分も過ぎそうだ
先程まで青々しかった空は
少しづつ灰色の雲に隠されていき
今はもう今すぐにも
雨が降りそうな状況が伺える
雨が降ればこの落ち葉たちは
シナシナ になっていき
最後は音もしなくなるだろう
そう考えたりしていると
ぽつぽつ と私の手に何かが落ちた
そこに目をやれば雨粒に見えた
嗚呼とうとう雨が降ってきてしまう
君はもう来ないだろう
君と会えるのが嬉しくて
ついつ新しく買ったこの靴で
来たのが間違いだったかもしれない
雨に濡れて一番に無くなるのは
この赤いヒールの靴だ
君が来ないなら仕方ない
雨が強くなる前に帰ろうか
そうベンチを立った瞬間
カシャ シャク と落ち葉が踏まれる音
その音は私の前から聞こえた
顔を上げれば
申し訳なさそうな顔で笑って
黒い傘を差している君がいた
「 ごめんね、雨降ってきちゃった 」
「 いいよ、全然。大丈夫。 」
「 今日は君の言う通りにするから
何を言ってくれてもいいよ 」
「 なんでもいいの?
今ハッキリ聞いたからね 」
「 うん、君の好きなようにして 」
「じゃあ…君の家に行きたい 」
「 え、、そんなのでいいの? 」
「 そんなのがいいの。
なんでもいいんでしょ? 」
「 それで君が満足するなら 」
「 別に一個だけなんて
言われてないから、
何個でも聞いてくれるよね? 」
「 え…うん。 」
「 手、貸して? 」
「 こう? 」
「 ん、はい、できた 」
「 こ、恋人繋ぎ… 」
「 ヤダなんて言わないよね? 」
「あはは…やっぱり敵わないや 」
降参したように眉を下げて笑う
君に追い打ちをかけるように
傘を深く下に沈め
君がよろけたところで
口におまじないをかけてあげた