はじめる

#僕と主役と先輩

読んでると、
思わず胸がギュッとしめつけられる、
そんなポエムを集めました。

全183作品・


ヒュールさんが居らんくなってから1ヶ月。
情報処理室にナキ君が手伝いに来てくれとった。

「手伝わせてしもうて、ゴメンなぁ。」

『いえいえ。役に立てて良かったです。』

昨日隊員の数人が体調を崩したって
連絡してきて手が足りてへんかったから
ホンマに有難い。

にしてもや。
かれこれ5時間座りっぱなしなんに
全くナキ君は休もうとする気配があらへん。
ヒュールさんやソルティさんもやけど
うちの軍には珍しい位のホリックワーカー。

「なぁ、休憩せぇへん?
 …相談とか乗ったるから。」

下手やって分かってるけど
どうにかして休憩してもらう。

コーヒーを2人分淹れて机に持っていく。

「ナキ君は悩み事とか無いん?」

『悩み事…ですか…。
 そういえば情報処理隊長様には
 昔、悩みを解決して頂いた事がありますね…。』

「何それ!?俺知らんねんけど!!!!」

するとナキ君は子供らしい笑みを浮かべる。

『直接ではありませんけど…。
 僕の背は情報処理隊長様よりも低くて
 入隊した最初の頃は困ってました。
 でも、
 リバトルで初めて御目にかかった際に
 体格差を感じさせない戦い方に
 勝手ながら勇気を貰ったんです。』

いつも「小さい」って弄られとったのが
苦手やったけど、
そんな事になっとたんやな。

『他の隊の方は情報処理隊長様を[小さい]って
 仰りますが、背なんて関係無いと思います。
 …戦場で総統閣下様に負けず劣らず
 的確で通る声、
 沢山のモニターを見る集中力
 幹部としての立派な戦い様。
 言葉も出ない程、素晴らしいと思います。』

あまりナキ君と関わる方では無いはずなのに
俺の事をよく見とるなぁ、と感心した。

「さよか…。」

報われた気がしたなんて
口が裂けても言えんわ。

成瀬 做欺(赭海)@共同垢・2021-08-03
尊敬する先輩へ格別な感謝を...。
僕と主役と先輩
???


いつも通り仕事をしていたら
大きな音がして店の扉が開いた。

「ちょっと!
 まだ開店前なんですけど!」

『…お久し振りですね…。
 《白の情報屋》さん。
 否、ぴく兄やん…。』

えっ!?碧!?
何で居るの!?

『やってくれましたね…。』

「状況が何も分からないんだけど!?
 えっ?俺なんかした?やってないよ?!」

あからさまに溜め息を付く碧。

『《蒼音》についての報告書、
 って言ったら分かりますか?』

「あっ!」

やべっ。
思ってたより碧、怒ってる。

「ごめん!
 すっかり忘れてた!」

『だと思いましたよ…。
 …僕の[お願い]聞いてもらいますからね。』

お願い!?
でも、借りがあるから叶えてあげるか…。

成瀬 做欺(赭海)@共同垢・2021-09-26
尊敬する先輩へ格別な感謝を...。
僕と主役と先輩
碧の堕天使
???


今日は何時にも増して夢見が悪かった。
訓練中に体調に出始めてしまって
城内の人が来なさそうな場所で
ある程度回復するまで休む事にした。
此処なら人は滅多に来ないし、
監視カメラの範囲外だから
軍医様に見つかることもない。

『…後少しだけ…。』

その時だった、硝子の割れる音がしたのは。

『……音の方向的に…幹部棟の会議室?!』

行きたいのは山々だけど
此処で隠れて休んでる手前、
万が一があっても向かえそうにないな…。

耳に入る音が騒がしくなって行くと
同時に眠気に襲われる。
少しの息苦しさを感じつつ
誰にも見付からない事を願って意識を落とした。

成瀬 做欺(赭海)@共同垢・2021-08-25
尊敬する先輩へ格別な感謝を...。
僕と主役と先輩

これらの作品は
アプリ『NOTE15』で作られました。

他に183作品あります

アプリでもっとみる


一般兵なら訓練中であるはずの昼下がり。
この時間は幹部の皆さんも図書室には
滅多に来ない。
本を整理していると扉が開く音がして
振り替えると、そこにはナキさんが居た。

「おや、今は訓練中では?」

『訳あって抜けてきたんです。
 他の幹部様方には内緒にして下さい。』

「そうでしたか…。」

ナキさんとはヒュールの事以外で関わる事が
あまり無かったようにも感じていた。

『参謀様に質問しても宜しいでしょうか?』

ナキさんから話し掛けられるとは
思いもよらず驚いた。

「えぇ。どうぞ。」

『参謀様は最期に人の記憶に残るのは
 楽しかった思い出だと思いますか?』

ナキさんから問い掛けられたのは
哲学的で倫理的な話やった。

「そうですね…
 人によりますが走馬灯は
 感情に左右されないようなので
 その中から当人が記憶をピックアップして
 残るのであれば、
 楽しかった思い出なのではないでしょうか?
 私は楽しかった思い出の方が嬉しいですね!
 ……ナキさんは、どうお考えですか?」

聞き返されると思っていなかったのか
驚きと苦笑いを浮かべるナキさん。

『自分が死ぬのであれば、
 教授様の考えには一理あると思います。
 ただ…。誰かに死なれるとしたら
 一番記憶に残るのは嫌な記憶だと思います。
 《好き》よりも《嫌い》の効力は強い。
 [好き]は感覚的に覚えていますが
 [嫌い]は記憶的に覚えているものだと思います。』

ナキさんらしさ溢れる回答やと思った。

「ナキさん…。
 紅茶をご馳走しますので
 私の相談に乗っては頂けませんか?」

『僕で良ければ。』

ナキさんなら私の気づかない所に
気付いてくれそうな気がしたんや。

「私は軍には不向きだと思うんです。
 グルッペンさんの様なカリスマ性も無い。
 ゾムさんの様に戦える訳でもない。
 オスマンさんの様に的確な頭脳も無い。
 知識だけで実践や実力が伴っていない。
 こんな私が軍に居ても良いのか
 考えてしまうんです。」

ナキさんは紅茶を飲んだまま
黙ってしまっている。
やっぱり無闇に頼るべきとちゃうかったかなぁ。

「あの!
 無理に言葉を出さなくても
 全然大丈夫なので!」

『いえ。参謀様、
 僕の一人言として聞いてくださいね。』

ナキさんは伏し目がちに話始めた。

『僕も実践より知識の人間です。
 知識は複合すれば武器となるからです。
 それに貴方様は戦争において重要な人です。
 なぜなら、貴方様は
 参謀として軍に所属する者としての考え方と
 教授として国民生活をする者としての考え方。
 その、どちらも知っているから。
 参謀様の作る爆弾は脅威様も
 誉めるほどの素晴らしい代物です。
 [戦力になれない]と仰いますが
 ご自分を過小評価し過ぎではありませんか?
 この図書室に仕掛けてある対内ゲバ装置を
 ここの幹部様以外の人間が突破出来るでしょうか?
 教授様が普段当たり前の様に関わっている皆様は
 仰る通り戦いのプロです。
 そのプロを研究し敵への対策へ変えることは
 貴方様の頭脳であれば容易いことでしょう?
 それに総統閣下様は使えない人材は
 この軍に入れたりしないと思いますよ。』

どこか宙を見ているかの様な語り口調が
妙にストンと自分の中に落ちてきた。

「ありがとうございます!
 少し考えが落ち着きそうです!」

『それなら良かったです。
 では、そろそろ点呼があるので失礼します。』

成瀬 做欺(赭海)@共同垢・2021-09-07
尊敬する先輩へ格別な感謝を...。
僕と主役と先輩
?????


最近ナキ君の表情が微妙に暗い様に見える。
それに気になる事もあるし、
ってことでお茶に誘っためぅ~♪

「急に誘って、ゴメンな?
 今日は変わったお茶を用意したんよ!」

そう言って紅茶を差し出すと
一瞬驚いたような顔をしたナキ君。

「《アンチャン茶》
 って言うめぅ~♪
 ハーブティーやねんけど
 青いお茶で綺麗やと思わへん?」

『…凄く綺麗な青色ですね…。』

お茶の名前を出して
口調を変えて観察していると
ナキ君の先程の驚きの表情は
何かを懐かしむような表情に変わっとった。
やけど俺の視線に気づくと
いつものポーカーフェイスに戻ってしまった。

『本題は何でしょうか?』

「君は何を隠してるん?
 ……教えてや、蒼音さん。」

ナキ君は飲んでいた紅茶を啜って
呆れたみたいな顔しとった。

『…どこで調べたんですか?』

「ずっと気になっとったんよ。
 左手首の火傷跡なんて瓜二つや。
 それに君が[お兄さんのお見舞いに行く]って
 休暇を取った時、ナキ君のお兄さんは
 《碧》って呼んでのも知ってんで。」

『僕みたいな一般兵の事をよく調べましたね。』

ポーカーフェイスを貫いてるつもりなんやろうけど
《お兄さん》の話をした時、瞳の動きに反応が見えた。
もう一押しやな。

「[一般兵]だから、やで?
 出身地に聞き込み行ってん。
 そしたら教えて貰ったで、
 …お兄さんと弟さん居るって。
 ナキ君の個人情報書類には
 お兄さん居るなんて書いてなかったはずやんな?」

『…血縁関係の無い人を
 《兄》と呼ぶことは
 許されない事なのでしょうか?』

「つまり、血の繋がってないお兄さんね…。
 じゃあ、何で廃教会に3人で暮らしてたん?」

この発言でナキ君のポーカーフェイスが
一気に崩れ落ちた。
やけど紅茶を見て右往左往しとった視線が
落ち着きを取り戻し始めた。

『…成る程。
 それで僕から何を聞きたいんですか?』

「何で言わんかったん?
 ナキ君は何を隠してるん?」

『…一緒に暮らしてた2人は
 血の繋がらない兄と弟です。
 言わなかった理由は[疑われるから]です。
 それぞれの道を歩んでいる兄と弟の邪魔を
 僕の言葉1つでする訳にはいかないんです。』

確かに観光客を調べるための関係者調査はある。
でも其れは敵国民かどうか等を調べるはずや。
調べられると不都合な事がナキ君にはあったんか?
そこで不意に思い出した。

「何で周りを頼らなかったん?
 ゾムから聞いたで。
 お兄さんとの病室での会話。
 ナキ君の周りに居る人等は頼りないん?」

ナキ君のお兄さんは
「連れ戻されるなよ」と言っていたらしい。
つまり[何かを隠し通したい]ナキ君には
何処かへ連れ戻される"危険性"があるってことや。
つい感情的になってしまった俺を見て
ナキ君は苦しそうに笑った。

『忠誠を誓った国だからこそ、
 尊敬する先輩方や幹部の皆様だからこそ、
 言えない事もあるのです。
 ………どうか"頼りない"等と言わないで下さい。』

「それがナキ君の答えなんやね?」

『……はい。』

「分かっためぅ~♪」

この子等は揺るがへんな。

成瀬 做欺(赭海)@共同垢・2021-09-10
尊敬する先輩へ格別な感謝を...。
僕と主役と先輩
????


帰ってきたヒュールに手合わせしよ、って
声掛けたんやけど、
後でって言われてもうたから
城の中を歩いとったらナキを見つけた。
そや!ナキと手合わせすればええやん!

「ナキ!遊ぼうや!」

ナキを抱えて遊べそうな場所を探す。
今は殆ど使わへん訓練場に決めた!
だってトントンに怒られたないもん。
ここやったら簡単には見つからへんし、
場内にカメラが無いからロボロから
チクられることもない。

『僕では、つまらないと思いますよ。
 隊長幹部様の相手が出来るほど強くないです。』

「まぁ、ええやん!
 僕が怒られへんように黙っとってくれるやろ?」

僕の記憶が正しかったらナキは
隠密活動の実績は確かや。
せやからナキと手合わせしたら
楽しくなりそうやねん!

「本気で相手してな?
 そうやないと面白くないからな!」

無言で構えるナキ。
僕から動き始める。
僕のナイフを防ぎながら何かを考えとるナキ。
次の瞬間、ナキが防いどる力を抜いたせいで
前側に倒れそうになった所を投げ飛ばされる。
体勢を立て直したと同時に顔の辺りに
ナイフが飛んでくる。

「…面白くなってきたやん!!!!!!」

他の幹部よりは全然やけど
ゾクゾクして楽しいねん!

僕も本気で《やりたいな》っと思っとったら
意識が浮く感じがした。
シッマやヒュールと手合わせするときみたいな
感覚がしてワクワク!ゾクゾク!した。
―――――――――――――――――――――
気が付くとナキの上に跨がって絞めてる
喉元にナイフを突き立てようとしとった。
咄嗟にナキの首から手を離し、
ナイフも別の場所に投げ捨てる。

「あ、ごめ、ん。
 また、僕…制御、出来ん、かった。
 やって…もうた…。ごめんな…。」

自分が何をしようとしとったかを
はっきりと理解した。
発作が抑えきれずに本気で殺そうとしてもうた。
焦りながらも目の前でグッタリするナキを見て
ぺ神に連絡せな、と立ち上がろうとした時やった。
弱々しい力で服を引っ張られる感覚がした!

『ゲホッゲホッ…大丈夫ッ、ですので…。
 ゴホッ…、泣かないで、下さいッ…ね?』

酷く咳き込みながらナキが笑い掛けてくる。
僕が、殺そうとしてもうたのに…。
インカムから連絡しようとすると
無い力でナキに止められた。

「ホンマ、すまん。
 …ちょっと、身体起こすから触るで…。」

冷静になってきて、出来ることせな
って呼吸しやすくするために
ナキの身体を起こすことにした。
軍に入った最初の頃、大先生に肩とか
触られるん避けとったら嫌なんやろうな
と思って一応、声かける。

『発作が、起きたこと位、
 分かるから大丈夫ですよ…。
 寧ろ、自力で止まってくれて、
 ありがとうございます…。』

ホンマは僕が誰かと手合わせする時は
幹部の誰かが居らなアカンねん。
でも、怒られたなくて誰も呼ばんかった。
場内にカメラが無いからロボロにも
気づかれへんって思っとったのが仇になった。

「ホンマに申し訳無い…。
 苦しかったやんな…。」

『大丈夫です。
 だから僕と隊長幹部様の2人だけの
 秘密にしましょう…。
 御互い怒られたくないじゃないですか…。』

そう悪戯っ子の様に微笑むナキの首には
僕の付けた忌々しい手形。

結局「御互い言わないようにする」と
言うことでナキの回復を待って
それぞれ部屋に戻った。

ホンマに、これで良かったんかな…。

成瀬 做欺(赭海)@共同垢・2021-09-19
尊敬する先輩へ格別な感謝を...。
僕と主役と先輩
??


ヒュールが居らんくなってから1ヶ月と2週間。
訓練の休憩中にナキと会った。

「お疲れさん!
 なぁ!奢ったるから自販機行かん?」

『お疲れ様です。
 良いですよ…。』

自販機で自分の炭酸と
ナキのオレンジジュースを買ってベンチに座る。

「1個、聞きたいねんけどさ。
 お前、何人かの兵に
 悪口言われとるやん?
 嫌やなぁ…、って思わへんの…?」

俺の奢ったジュースを飲んどるナキに
聞きたい事を暈しながら聞く。

『…何も感じない訳じゃ無いですけど
 所詮赤の他人の価値観なので
 気にしないようにしてますね…。』

俺は《不人気》って言われとるん
めっちゃ嫌でナキの意見聞こう思ったら
まるで始めから俺の質問の意図が
分かってたような返しが来た。

「ナキ、お前…口固いやんな。」

『誰かに公言する程の事でも
 無いのなら態々言いませんよ。』

コイツなら黙っとってくれるやろ。

「俺な《不人気》って言われるん嫌やねん。
 好きで不人気になっとる訳ちゃうし
 俺やって人気者になりたいねん!!!」

『失礼ですが、馬鹿ですか?』

「は?」

俺今、何で急にDisられたん?

『迎撃班隊長様、
 少し都合良く考えてみては如何でしょう?
 貴方様が本当に《不人気》なのなら
 迎撃班の隊員達は何故貴方に着いていくのですか?
 国民は何故貴方を幹部と慕うのですか?
 投げ掛けられる無神経な言葉がツラいのなら
 ご自身を支えてくれる言葉だけを聞けば良い。
 総統閣下は有能な人材しか集めません。
 貴方様は選ばれた逸材だとお忘れ無きよう。』

何か気持ち楽になった気がする。

「話聞いてくれて、ありがとな!!!」

俺はナキと別れて訓練所へと戻った。

成瀬 做欺(赭海)@共同垢・2021-08-13
尊敬する先輩へ格別な感謝を...。
僕と主役と先輩
?????


私の所へナキ君が来ていた。

「…それで[頼みたいこと]とは何だね?」

『…薬を作って欲しいんです。
 これは僕個人の願いとして。』

神妙な顔をして「薬を作って欲しい」
というナキ君。

「薬なら少なからず君にも
 作れるのではないのかい?」

少し、からかってみたくなって言った。

『クラレ先生に作って頂かなければ
 信用出来るモノが作れないんです。
 …僕が作ってしまったら
 情が湧いてしまうから…。』

そう言った彼の顔は哀しげに微笑んでいた。

「そこまで言うなら作ってあげよう!
 …但し、副作用の事を加味して
 使用すると約束出来るかね?」

『勿論です。
 …幹部の皆様には内密にお願いします。』

本人達には言わないが
彼は先輩達に似た強い眼をしているね…。

私は彼に頼まれた
《記憶を消す薬》を作る作業に取り掛かった。

成瀬 做欺(赭海)@共同垢・2021-07-24
尊敬する先輩へ格別な感謝を...。
僕と主役と先輩
???


僕の小説を見て下さる皆様へ。
この度、時期を見て現在書いている
軍パロを終了します。
そこでアンケートです。

エンディングは
どちらが良いですか?

①平和エンド

②戦いエンド

③バットエンド

成瀬 做欺(赭海)@共同垢・2021-07-28
成瀬のお知らせ!
僕と主役と先輩
N/N


今日は生憎の雨。
ホンマ、煙草が湿気ってまうわ。

ここ最近何となくな、嫌な予感がしててん。
せやから、予感が当たらへん事を
半分願ってナキちゃんを部屋に呼んでんねん。

『失礼します。』

「汚い部屋でゴメンなぁ?」

取り敢えずで少し片付けた部屋に
ナキちゃんを通し座ってもらう。

『お話とは、何でしょう?』

「ん~。何から聞こうかなぁ?
 じゃあ、…最近ゾムさんが訓練中
 元気無いらしいねんけど何か知っとる?」

ボクの勘違いかも知らんけど
訓練中に元気無さげなんよね、ゾムさん。
暗殺班の子に聞いてみたら特に
[暗殺部隊総括訓練]の時に元気無さげやって。

『…申し訳ありませんが、検討もつきません。』

「ほぉ~ん。そうなん。
 じゃあ、
 珍しくタートルネック着てるんは
 何~にも関係あらへんのやね?」

『…はい。』

ダウト。
視線が左右に動いとるし、
目を合わせようと無理にしとる。

「じゃあ、話変えるな?
 5ヶ月前の外交パーティーで
 何でヒュールちゃんにぶつかったん?
 蒼音さん、否
 …"クヴァール・ブルーノ"ちゃん…。」

『…成る程、辿り着いた上で
 聞いているという訳ですか…。
 …ぶつかった理由は
 単純にバレてしまうと思ったからですよ。』

「確かにヒュールちゃんなら
 ナキちゃんやって気付くやろなぁ。」

ボクの調べた中で気になった事を
聞くためにナキちゃんを呼んだ。
何も問題が無いなら報告も要らんやろ。

『何処で御気づきに?』

「瞳や。
 見覚えあるなぁ、思っとったら
 ナキちゃんの左目の色やんな?」

ボクに言われて自身の右目を触るナキちゃん。
その顔は何かを懐かしむ様な顔やった。

『でも、瞳の色だけでは証拠としては
 少々薄いような気もしますけど…。』

ナキちゃんの言う通り「瞳の色」だけやと
証明は厳しい。
せやから、
もう少し核心に迫った事を聞く。

「それだけと、ちゃうよ。
 なぁ、ナキちゃん。
 うちの軍に入るのに
 偽名使ったんは何でなん?」

これまでポーカーフェイスを貫いとった
ナキちゃんの表情が大きく動揺しとる。

『…その聞き方をするって事は
 本名は検討が付いてるって事みたいですね。』

「前にシッマと話してる時に
 ナキちゃんが
 "レイニーブルー"に反応したんが
 気になって調べてみたんよ。
 そしたら見事にヒットしたんよ、
 "レイニール"って名前の女の子が失踪した事件が。
 それと、もう一つ。
 マンちゃんが言ってしもうたかもやけど
 ナキちゃんの事を調べたときにな、
 教会に住んどる悪魔、って話が聞こえてん。」

『…悪魔、ですか…。』

「エミさんに聞いてみたんよ。
 [ディアブルー]
 それがナキちゃんの
 あだ名やったんやね。」

ここまで話すと強張っていた表情を
崩して苦笑いを浮かべるナキちゃん。

『流石ですね…。
 まさか本名までバレてしまうなんて。
 …偽名を使ったのは
 本名を使いたくないからです。
 《雨》は全てを隠してしまうんですよ…。
 …遠距離部隊隊長様も、そうでしょう?』

前言撤回やわ。
今度はボクが追い詰められる番やね。

『失礼を承知で申し上げますが。
 貴方様は軍でも有数の遠距離攻撃の名手です。
 普段とのギャップは女性なら靡くのも
 無理はありません。
 だから、貴方様自身を見て下さる方達と
 笑って居れば宜しいと思いますよ。
 幹部の皆様は貴方様を守れる位には
 強い方々ばかりだと一番理解しているのは
 僕ではなく貴方様じゃないですか…。』

何で、この子はボクが考えとることが
分かるんやろか…。

「…せやね。
 呼び出して、ゴメンな?
 お互い様っちゅう事で内緒な。」

『…勿論です。』

この後、ナキちゃんは
書類を片付けるって部屋に戻っていった。

成瀬 做欺(赭海)@共同垢・2021-09-22
尊敬する先輩へ格別な感謝を...。
僕と主役と先輩
??


ヒュールが軍を辞めて3ヶ月。
ここ最近ナキ君が中庭を覗きに来てる。

今日は外道丸にあげる人参の苗の
間引きで中庭に来たんだけど、
中庭の端で猫ちゃんが死んじゃってたんだ。
首輪は付いてないから野良猫だろうけど。
お墓を作ってあげようとして
気配がしたから振り返るとナキ君が。

「今日も覗きに来たの?」

『…すみません。』

俺が怒ってると思ってるみたい。
意を決して聞いてみようかな?

「謝らなくて良いよ。
 …何か気になるの?」

『…その猫…。
 )))間に合わなかった))ボソッ』

この猫ちゃんをナキ君は知ってるみたい。

「この猫ちゃんを知ってるの?」

『!?』

俺の質問に珍しくナキ君の動揺が見えた。
正直あんまりナキ君との関わりがあるとは
言えないけど、ここまでの動揺は初めて見た。

「何か知ってるなら聞かせてくれない?」

ナキ君は怒ってるような、
苦しんでるような表情で頷いた。
ナキ君と中庭のベンチに座って話を聞く。

『さっき一般兵が話してるのを聞いたんです。
 [実家から送られてきた果物の中に
 熟してない、まだ青い林檎が入ってた。]
 って。気になって見せてもらったんです。
 でも、林檎じゃなくてマンチニールって言う
 毒を含む実で更に詳しく聞いたら
 中庭に居た猫に1つ上げたって聞いて。
 元々、猫の親子が
 此所に居るのは知っていたので
 まさかと思って急いで来たんですけど
 …間に合わなかったんですね。』

「俺が来た時には死んじゃってたんだ。」

もっと早くに俺が気付いてたらって
悔しくて下を向いたら仔猫が
俺の足によじ登ろうとしてた。

『…お母さんを探しに来たみたいですね…。
 …ごめんね、助けられなくて…。
 でも君は食べてないみたいで良かった…。』

そう言って仔猫を抱き上げるナキ君。

「ねぇ、ここ最近よく来てたみたいだけど
 この子達以外に気になる事でもあったの?」

『実は……。
 中庭の端に内緒で植えた
 馬酔木の育ち具合が気になってて…。』

詳しく聞いたら、
仕事で使う植物を中庭に内緒で
植えたから誰かに処分されていないか
心配で見に来てたんだって。

「次からは、隠さないでね。」

『はい。
 特殊部隊隊長様、
 鈴蘭の毒には気を付けて下さいね。
 [純粋]な花ですから。
 では、失礼しました。』

そう言って去っていったナキ君。
その後、調べてみたんだけど
ナキ君の言ってた「純粋な花」って
花言葉だったみたい。

成瀬 做欺(赭海)@共同垢・2021-08-19
尊敬する先輩へ格別な感謝を...。
僕と主役と先輩
??????


夜。
珍しく長めに城に居られるから
城内の夜間巡回を久し振りにしていた。

西棟の端に屋上に昇る階段がある。
確認と外の空気を吸うがてら上がって
扉を開けると…ナキが居た。

「…こんな時間に何してるんだ?」

声を掛けると驚いたように振り返るナキ。

『…少し頭の中を整理しようと思いまして。』

「そうか」

あまり城に長く居ない俺は
深く関わりがある訳じゃないが
ヒュールが嬉しそうに話してた後輩、
という事は知っている。

「なぁ、少し話をしないか?」

『…どんな話でしょう?』

実は今回の一時帰宅はグルッペンに
頼まれたモノを届けるためだった。
だが、いつもと少し違った。
[白の情報屋からコンピューターウイルスを受け取ること]
[1番サイズの小さい黒のローブ]

「…遠回しなんは嫌だろうから
 はっきり聞くけど…。
 ナキ…軍を辞めるつもりか?」

『どうして、そう思われたんですか?』

ナキは俺の方を見ず空を見上げている。

「グルッペンに頼まれた物があってな。
 それは此の軍で使える奴は限られてる。」

1番サイズの小さなローブなんて
160㎝以下の身長じゃなきゃ着れない。
そうなるとグルッペンから頼まれる程の奴で
そのサイズに当てはまるのはロボロかナキ。
だがロボロは体格的に入らない…
つまりは…。

「そしてナキ、
 お前しか使えないサイズだった。
 どうだ?俺の推理、外れているか?」

『いえ。正解ですよ。
 辞める、というのは少し違いますが。』

濁したような肯定…
知られたくなかった、って事だろう。

『誰にも言わないでくれますか?』

「あぁ。」

あくまで独り言、と言ったところ。

『ヒュール先輩が辞めた時、
 僕は涙を流すこともなく仕事をしていました。
 でも、それは心配してないからじゃなくて
 ヒュール先輩なら大丈夫だって思ったんです。
 ヒュール先輩が本当に帰ってこないつもりなら
 総統閣下様に声を掛けなかったと思うんです。』

「何も言わないで、ひっそりと…。
 アイツなら、やりかねないな。
 正直、聞いて俺は悔しかったな。
 アイツに別れの言葉1つ言ってやれないで
 何がヒュールの兄貴だよ!ってな。
 でも、また笑ってるヒュールが見れて良かった。」

でも、それはヒュールだけじゃないだろ?
ナキも似た所があるからな…。

「なぁ、独り言なんやけどさ…
 ……アイツ等や妹達に何も言わずに行くのか?」

『…言ってしまったら、
 いつも通りの景色じゃなかったら、
 僕の決心は揺らいでしまうから…。
 だから日常を切り取った様に
 いけたら、良いなって思ってます。
 …まぁ独り言ですけど…。』

ナキが何隠しとるか詮索はしないが
ヤバい事だったら妹達は
処理しに行くだろうな。

「ナキはホンマに
 ヒュールとソルティが好きなんやな。」

『…貴方様程ではありませんよ。』

「勘の鋭い奴らにバレないようにな…。」

俺は、そう言い残し巡回に戻った。
…達者でな。
―――――――――――――――――――
兄様の話し方合ってるか分からんくて怖いbyナッキー

成瀬 做欺(赭海)@共同垢・2021-09-26
尊敬する先輩へ格別な感謝を...。
僕と主役と先輩
???


ヒュールさんが居なくなってから
もう2ヶ月が過ぎた。
訓練が終わって一般兵に囲まれてる時に
偶然にも廊下を歩いていたナキさんが
目に付いた。
俺が居る方をチラ見して会釈するだけで
訓練所には入って来へん。
ナキさんから声は掛けてくれへんし
心なしか眉間に皺が寄ってる。
その姿に興味が沸いて声を掛けた。

「ナキさん、この後って時間あります?
 良かったら談話室でオセロしません?」

『…良いですよ。』

何やねん!
話の切り口がオセロって!
と自問自答しとったら
ナキさんからレモネードを渡された。

『本当は冷たいハーブティーを
 御出ししたいんですけど
 訓練の後なのでレモネードです…。』

「ありがとう!」

その後オセロは
4勝6敗で俺が勝った。
負けた方は勝った方の願いを1つ聞く、
って罰ゲーム出したのに負ける訳には
いかなかったんや!!!!

「ナキさん、罰ゲームやね!
 うーん…。
 じゃあ、今日1日ナキさんは
 俺とタメ口で話してください!!!!」

『幹部様にタメ口は……。』

「俺とナキさん入った時期
 そんなに変わらないじゃないですか!
 実質、俺ら同期ですよ!だからタメ口!」

ゴリ押せば諦めたようにナキさんは
承諾してくれた。
これで少しは話しやすくなるやろ!

「ナキさん、俺の事見ると
 よく顔顰めとるやん?
 アレ、何でなん?何か理由あるん?」

ナキさんは気まずそうな顔しとる。

『…ある種の同族嫌悪ってヤツかな…。』

「《同族嫌悪》ねぇ~。」

その次の瞬間、ナキさんは
意を決したような表情になった。

『逆に質問するけど、
 四六時中笑うの疲れない?
 世渡りするには笑顔の方が都合良いのかも
 知れないけどチーノさんは人間でしょう?
 感情を全部押さえ込んで笑っていたら
 どこかで必ず限界が来る。
 僕は役に立たないかも知れないけど
 幹部の皆様になら相談出来るんじゃないの?』

気付かれとったんかぁ…。
グルッペンさんの部下になってから
1年は経つけど、未だに影口とかは言われる。
ショッピ君より実力も無いし、
エミさんみたいに頭が回る訳でもない。

「…ナキさん、よう見とるんやね。
 いつも笑っていたら、
 それが定着してもうたんよ。
 未だに影口とかも言われとるし。」

失礼やけどナキさんは兵の中でも
あまり人と関わるタイプやないから
どうせ愚痴っても公言せんやろ。

『チーノさん、
 貴方の武器は培ってきたモノだと思うよ。
 軍には当然、戦闘員が必要。
 その戦闘員を支える非戦闘員も必要。
 笑顔を武器にしても良いんじゃないの?
 多少の戦闘は出来た方が良いけど、
 何より培ってきた最大の武器は裏切らない。』

何となくやけど
モヤモヤしてた心にストンと落ちた。

「ありがとう!
 何か元気出たわ!」

元気貰ってもしもうたから、
《同族嫌悪》の事は見逃したるよ。

成瀬 做欺(赭海)@共同垢・2021-08-18
尊敬する先輩へ格別な感謝を...。
僕と主役と先輩
???


山積みの書類に目を通しながら
次々に、こなしているとノックが聞こえた。

『失礼します。』

入ってきたのはナキ君。
書類出しに来たみたいやな。

『…お節介かも知れませんが、
 少し休憩にしませんか?書記長様。』

「気遣ってくれるのは有難いんやけど
 休んどったら書類片付かんし、僕はええわ。」

『軍医様に怒られてしまいますよ。』

医務室行きは僕も勘弁やわ。
仕方なく少しだけ休憩する事にした。

『…美味しくないかも知れませんが
 リラックス効果のある
 ミルクティーです。
 それと、シフォンです。』

「ありがとな。
 …このシフォンケーキ
 見たこと無いけど
 どこのお店のやつなん?」

どこぞのサボり魔のせいで
国内のスイーツ店には詳しくなったが
このシフォンケーキは初めて見るモノやった。

『あー…。えっと…。
 ……僕が作ったものです。』

ナキ君が困ったように白状した。

「はえー。
 美味しく出来とるやん!」

正直、店に出しても良い位やった。

「そういえば、
 ナキ君は書類大丈夫なん?
 大変やったりせぇへんの?」

ナキ君、前に大先生の書類やっとったし
誰かの押し付けられたりしてへんやろか?

『大丈夫です。
 文字好きなので。』

ホンマに馬鹿総統とサボり魔共に聞かせてやりたいわ。

「さて、そろそろ再開するか。
 ナキ君も予定あるなら行きや。」

『予定の時間までお手伝いさせて頂きます。』

そう言ってナキ君、
ホンマに1束片付けて行ってくれた。

成瀬 做欺(赭海)@共同垢・2021-09-12
尊敬する先輩へ格別な感謝を...。
僕と主役と先輩
????


薬品を受け取りに先生の元へ来ていた。
粗方の確認作業が終わり、
先生から休憩がてら質問を受けた。

「大きな音が苦手な様だけど
 軍での差し障りは無いのかい?
 それとも、そういう仕事は避けてるのかい?」

確かに[特定]の大きな音は苦手。
でも軍での仕事に差し障りは無いし、
たまに聞こえてくる時は少し耐えれば終わる。

『平気なので…。』と
先生を困らせない程度で笑う。

『それより先生、
 頼んでいたモノは順調ですか?』

話を摩り替えたい気持ち半分、心配半分。

「順調ではあるけど
 君はそれで後悔しないんだね?」

《後悔》…。
後悔しないために先生の薬が必要。
果たして成功してくれるのかな?

その時だった、誰かの気配を感じたのは…。

成瀬 做欺(赭海)@共同垢・2021-08-30
尊敬する先輩へ格別な感謝を...。
僕と主役と先輩

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