透聖・20時間前
君とまだ生きていたかった
小説
ー第4章 突然の変異ー
今日は祝日で学校が休み 暇だから紫春の家に行こうと
スニーカーに足を通して 紫春の家にピンポンを押しに行った
だけど一向に出てくる気配がなく 紫春の部屋の窓を
ノックする 少し反応を待ってみたが 珍しく留守だった
家に帰るとお母さんが深刻そうな顔でこちらを見ていた
母「遼香 こっちおいで」
遼香「うん 手洗ったら行くね」
私とお母さんは向かい合って椅子に座った
母「紫春くんのことは知ってるよね」
遼香「幼馴染なんだから知ってるよ」
母「紫春くん もう長くないの」
お母さんは涙を流した
『紫春は長くない』 その一言に頭が追いつかなかった
正直に言うと受け入れたくなかった
そう考えてるうちに涙が自然と溢れてきて 止まらなかった
母「紫春くんは若年性認知症なの…」
遼香「……」
思い当たる節はいくつもある
中学の頃からの物忘れ 道に迷ったり 私の顔と名前を忘れたり
全てにおいて辻褄があってしまった 私は認めたくなかった
遼香「でも…死ぬわけじゃ…」
母「普通はね。紫春くんは徐々に末期になってて
食欲不振になってて 衰弱死するかもしれないの」
お母さんの口から出てきたものは残酷だった
認めたくなくて 受け入れたくなくて
あの笑顔も あの元気な姿ももう見れなくなるんだと思うと
また涙が溢れてきてしまった
お母さんに嘘だよね。と言っても首を縦に振ることは無かった
ー第5章 別れー
※ 弱 死ネタ
あれから私は学校に行けなくなってしまった
というか行けるわけがなく 唯一の幼馴染が
いなくなってしまうなんて聞いたらどんな顔で
学校に行けばいいのかわからない
どこの病院にいるか聞いたら お母さんの病院だった
お母さんは「会いたくなったらいつでもおいで」と
心得て了承してくれたが 中々行こうと思えない
そんなことを考えていると 電話がかかってきた
電話に出るとお母さんの声で その声は震えていた
母「紫春くんが、紫春くんがッ!!」
そんな声に私は嫌な予感がした
私は急いでお母さんの病院に行き 紫春の姿を見ると
体中にはチューブが何本も繋がっていて 意識が朦朧としていた
紫春はこっちに気付くと 苦しそうな表情を笑顔に直した
紫春「はる…さいご、までごめんね、」
遼香「紫春っ、!」
紫春「はる…げんき、でね…」
嫌な音が静かな病室に鳴り響いた
お母さんは泣きながら心臓マッサージをした
それでも紫春が息をすることは無かった
母「ごめんね。お母さんがちゃんとご飯を食べさせておけば
遼香ごめんね、紫春くんもごめんね、」
泣きながら謝るお母さん
いなくなってからようやく…いや 気付くのが遅かった
私は " 紫春が大好き " ってことにいなくなってから気付いた
元気で無邪気な姿も 誰にでも優しくて惹き付けられる魅力に
私は1番わかってたはずなのに…
ー第3章 様子がおかしいー
何故か食欲がわかず あまり朝ご飯が食べれなかった
行ってきますと誰もいない部屋に挨拶をして学校へ向かった
学校につき 教室を見回すと今日は紫春が自席にいた
遼香「おはよ~ 今日は道間違えなかったんだね」
紫春は黙ったままこちらを向く
遼香「何~?なんか気に障ることしちゃった?」
紫春「誰だよ」
私は一瞬何が起きたかわかんなかった
遼香「…え。」
紫春「あっはるじゃん~!」
私は演技なのだと気付いた
でも真剣な顔で言われると心配になる
紫春「ごめんごめん!」
遼香「びっくりした」
紫春「心配してくれたの?」
遼香「いや 別に」
紫春「なんでだよ~笑」
放課後また紫春と帰ることになった
最近ずっと紫春と帰っている
紫春「今日は寄り道してから帰ろうよ!」
遼香「いいけど 急だね笑」
紫春「はるにどうしても見せたい景色があるから」
遼香「そんなに?笑」
紫春「うん!」
少し歩いて海辺に来た 無言になったとき
堤防の上を歩いている紫春が口を開いた
紫春「はる 朝のこと覚えてる?」
遼香「誰って聞いてきたこと?」
紫春「そう」
遼香「覚えてるよ」
紫春「あれが演技じゃなかったらどしてた?」
遼香「どしてたって…」
紫春「一応聞いただけだからな」
紫春は笑いながら[一応]って言ってたけど
一応の意味がわからなかった 紫春は何を伝えたいんだろう
ここは素直に答えておこうかな なんか詮索されても嫌だし
遼香「心配するよ」
紫春「ありがとな やっぱはるは優しいわ」
遼香「ん 優しいのかな?」
紫春「優しいだろ~」
遼香「ありがと~」
今日の紫春はなんかおかしい
もしもの話なのに今なってますよみたいな話をするし
逆に不安になってくる
紫春「はる~夕日綺麗だよ」
遼香「ほんとだね」
紫春「はると見れて良かったな」
遼香「今日変だよ?どしたの」
紫春「どうもしてないよ笑 写真撮ろ!」
遼香「はいはい笑」
紫春は昔からずっと私と写真を撮ることを好んでいた
紫春と私のツーショットはどんどん増えていくばかり
紫春「現像して大事にするわ!」
遼香「いやそこまで?笑」
紫春「当たり前だろ~!これも1つの思い出だからな」
遼香「そっか笑」
そこから雑談をしながらゆっくり2人で家に帰った
家に帰るとお母さんが少し気分が落ちてるようにみえた
遼香「お母さんどしたの?」
母「仕事関係でちょっとね」
遼香「無理しないでね」
母「ありがとね」
私は仕事関係に関しては何も口を挟めない
だから無理しないでね。とだけ残して私は自分の部屋に籠る
でもお母さんの顔はどこが寂しげな顔をしていた
ー最終話 最後の日を君とー
紫春がいなくなってからどのくらい経っただろう
私はあれから不登校になり 食事もまともに食べていない
部屋はカーテンを閉め切った暗い部屋
母「これ。紫春くんから」
母から手渡しされたものは綺麗に梱包されていた
梱包紙の中からは1つの写真立てが入っていた
遼香「これって…」
母「紫春くんが無くなる数日前に渡されていたの」
遼香「なんで…」
母「大切な人との思い出を壊したくなかったのよ
亡くなったら遼香に渡してくださいって頼まれてね」
遼香「紫春…、」
そこにはあの日海辺で撮った写真が綺麗にしまわれていた
フィルムには油性ペンで " 大好きな人! " と書かれていた
あの日現像なんかしてどうするんだろうって
疑問に思ってたけど これを渡された今なら やっと理解出来たよ
私はまたあの堤防に行ったら 何かが変わるかもしれないと思い
急いで家を後にして 堤防へと走った
堤防に着いたが 紫春の姿はどこにも見当たらない 私は鞄から
写真立てを出した
そのとき 写真が落ちてしまった 写真に目を落とすと
何やらメッセージが書いてあることに気づく
遼香へ
この裏を見ているということは俺はこの世界にはいないんだろうな
遼香に直接言うつもりだったけど 言うタイミング失ってた
伝えたいことを綴ります 俺は遼香が好きだった
好きだから言えなかった 離れて欲しくなくて この当たり前が
無くなって欲しくなかったから 黙っててごめん
直接は言えなかったけど 大好きでした 俺の分まで生きてね
紫春より
遼香「…なんで、なんで置いていっちゃうの、!」
紫春「はる 泣かないで」
遼香「紫春…?」
紫春「大丈夫 はるならできるから」
遼香「絶対 紫春の分まで生きるから見てて、!」
紫春「見てるね お盆の日会いに来るからな」
遼香「うんっ、!」
そう言って 紫春は消えていった
私は彼奴と… 紫春の分まで生きていくと心に誓った
🤍 _𝙚𝙣𝙙_ 🧸
君とまだ生きていたかった
ー第1章 いつも通りー
秋になり まだ残暑が残る日のことだった
紫春「おはよ~!」
元気な声が教室に響き渡る
彼はクラスのリーダー的存在で
彼を嫌う人などいなかった
彼の名前は紫春(むつき)
私と紫春は幼稚園の頃からの幼馴染だ
紫春「はる~!おはよ!」
遼香「おはよ~」
紫春「今日もお願いがあって…笑」
遼香「いつもの?」
紫春「はる 察しがいいな~」
遼香「大体それしかないじゃん笑」
そろそろ自分でやってきて欲しいんだけどね
なんか向こうもよく忘れるから帰り道に言っても
あまり効果なかったんだよね
遼香「ここからここまでだよ」
紫春「あざっす!!」
遼香「HR前には返してね!この間怒られたんだから!」
紫春「わかってるって~!」
紫春は中学校に上がってから物忘れが激しくなった
それまではめちゃくちゃ真面目で担任からも好評だった
今では担任から怒られてばかりの毎日を送っている
そうしてHRが終わり 課題を取りに紫春の席に近づいた
紫春「あと少し待って!」
遼香「ねぇ~?もうおしまい!」
紫春「もう少しだから~!」
遼香「はぁ~…」
紫春「書けた!はるありがと!」
遼香「はいはい~」
担任に課題を出し 授業の準備をしていると紫春がきた
紫春「はるって意外と頭いいんだ」
遼香「意外とってなに笑」
紫春「俺に勉強教えてよ」
遼香「わかったよ笑」
紫春「やったね!優しい~笑」
遼香「普通でしょ笑」
そう言うと 紫春は笑いながら自分の席に着いた
時間はあっという間にすぎて 放課後になった
紫春「はる先生!お願いします!」
遼香「先生は要らない笑」
最初は分からないって言ってたのに
徐々にわかってきたと興奮気味に言う
紫春「凄い!スラスラ解けるよ!」
遼香「良かったじゃんっ!」
紫春「はるのおかげだね~!ありがと」
遼香「いえいえ!そろそろ時間だし帰ろ」
紫春「はーいっ!」
他愛もない会話で盛り上がってるうちに
いつの間にか分かれ道が来てしまった
紫春「今日はありがと!また明日ね!」
遼香「また明日~!明日は課題してきてよね!」
紫春「ん~わかんないわ!笑」
遼香「はぁ笑」
紫春といる時間は退屈じゃないんだよね
急に1人になるのなんか寂しい
そう考えてるといつの間にか家に着いていた
遼香「ただいま~」
母「おかえり~今日遅かったじゃないの」
遼香「紫春に勉強教えてたの」
母「遼香も勉強教えられるのね」
遼香「得意なとこだったから」
母「そう。お母さん仕事行ってくるからね」
遼香「わかったよ お母さんも無理しないでね」
母「はいはいっ 行ってきます」
遼香「行ってらっしゃい」
お母さんは小さい頃に離婚してかれこれ8年くらい
女手一つでここまで育ててくれた
だから夕方から看護師として働いている 忙しいのは承知の上
最初は家に1人なのが寂しかったけど 8年も経てば慣れる
ベッドにダイブして ふとスマホを見ると紫春から
今日の夜ご飯と一言日記みたいなのが書かれていた
紫春らしいな。と笑みをこぼして早めに眠りについた
遼香「おはよ~」
母「おはよ。支度しておいで」
私は支度をして 朝ごはんを食べ 家を出た
遼香「行ってきます」
母「行ってらっしゃい」
私は母の声に違和感を覚えた
いつも明るい声で見送ってくれるのに 今日はなんだか暗い
まあ夜勤で疲れてるんだろうな。そのときは誤魔化して
学校に足早に向かった
ー第2章 違和感ー
私は学校に着き 教室を見渡す
紫春がいないことに気がついた
紫春が遅刻をするこは珍しいことではなかった
中学の頃から遅刻は多かったから
高校に入ってからは初めてだけどね
朝のHR前に突然ドアが開いてふと目をやると
そこにいたのは紫春だった
紫春「すいません、!遅れました!」
先生「珍しいな。なんかあったの?」
紫春「なんか…道に迷っちゃって…笑」
先生「いつも通ってる道でしょ」
クラスの雰囲気が一気に笑いへと変わった
朝のHRが終わって紫春が話しかけにきた
紫春「はる!おはよ~!」
遼香「おはよ~」
紫春「なんでかなぁ~ 道を忘れちゃったんだよね」
遼香「遅刻に至ってはどんまい。笑」
紫春「ひどいな~ もっと慰めてよ~笑」
少し元気が戻ったみたいで笑顔になった
紫春「今日も頑張ろな!」
なんて張り切っちゃってさ
学校が終わって 家に帰った頃にはもうお母さんはいなかった
適当にご飯を食べて お風呂も歯磨きも済ませた
最近ハマってるスマホゲームをしようとスマホを手に取ると
今日は紫春から写真は送られてきてなかった
少し不安になったものの 忘れてるだけだと片付けて
スマホゲームに没頭する
気付けば深夜の1時を回っていて 焦って眠りについた