秘密さん・2023-02-02
祝福を――へ
實景社
千秋万歳の鐘
唐突やけど、
俺は煙草とバイクが好き。
『バージ二ア葉由来のほのかに甘く
華やかな香りへの拘りはまさに、
唯一無二の素晴らしい香りの原点。』
なんて見飽きた文字は
火をつけ、煙で掻き消した。
フィルターはなく、
肺に有害物質を回す。
と言っても、
俺はあまりピンと来んけど。
『77年変わらぬ姿。』
思い出が走馬灯のように
脳内を彷徨した。
そんな俺はうっさい先輩の招待で
あの人達と出会った。
初対面の頃はめっちゃ緊張しとって、
敬語も中々抜けんかった。
愛車に食べ溢されたり、
酔い潰れどもを家まで送ったり、
終いにはゲロ吐かれたりもした。
キレていいかな(怒)
最近は変わったと
よう言われるようになった。
笑いを取れるようになった。
苦手だった大喜利も...
上手くなった気はする。
丸なったなぁ(笑)って
先輩に言われた時はマジで手が出た。
当たり前やけど、実力差は必ずある。
少しでもその差を埋めたくて、
少しでも先輩達の役に立ちたくて、
隠れて練習して、
スムーズに話を進められるように。
俺はまだまだ5年目。
あの人達にだって、
先輩にだって、
全然届いてない。
素直やないし、
煽りスキルだってかなり高い。
「優秀な後輩」なんて
言われてるけど、
俺より優秀な人材が溢れ返っとるし。
何より、あの人の隣には…。
「何や?落ち込んどるんか」
「...くそ先輩には関係無いっす。」
「(いつも無鉄砲で、無頓着で、)」
「(そのくせ仲間が傷付くと)」
「(内心正気じゃない先輩。)」
「あんたも素直じゃないっすね。」
「俺もっすけど...ボソッ」
「ん?何か言うた?」
「何も言ってませんよ。
ほら、インカム呼ばれてますよ。」
「(俺は生意気な後輩っすけど、)」
「(俺にその背中、守らせ下さい。)」
今日は薄明弧の紫光が
よく映える日だった。
_2月2日