まるちゃ・2017-10-03
海の男
名前の由来
愛するあなた
「なー」
ってあなた。
「なした?」
ってわたし。
「まるの名前の
由来ってどんなだ?」
ってあなたが聞くから
「わかんないんだよね」
ってわたし、えんどうの
サヤとりしながら言って
「恵ちゃんは」
って聞き返した。
「恵みを
分け与えられる人に
なれるようにって
意味らしいわ」
ってあなたが笑う。
「…いい名前だね
わたし、恵ちゃんの名前
好きだよ」
ってわたし。
あなたは突然
わたしを後ろから
ぎゅって抱き締めて
「おい、名前だけか?
んー?な、まる?」
って珍しく甘い声で
ささやいたんだ。
「名前だけに決まってる」
ってわたし、笑って
それでも首に
巻き付いたあなたの腕を
ぎゅっと抱き返して
「でも名前に負けてないね
すげーな恵ちゃん」
って言った。
そうしたらあなたは
首筋にキスをしながら
「んー?」
って気のない返事をしたけれど
わたしは続けた
「ちゃんと恵ちゃんは
恵ちゃんの使命を
果たしてると思う」
って私が言ったら
「それはまるがくれる幸せとか
…そういうの返してるだから
別に俺の使命とかそんな
大それたもんじゃねーんだよ
恥ずかしいやつ」
ってあなた、ひひひって
癖のある笑い方したんだった。
お互い素直じゃなかったし
お互い気性も荒かったし
喧嘩だって何度もしたけど
わたしは
「恵ちゃん」
ってあなたの名前を呼ぶとき
幸せや喜びが心から湧き出たよ
あなたが好きだった
ずっとずっと好きだった
名前に込められた恵みは
今もね、きっと
与えられている気がする
あなたとのエピソードを
ひとつ思い出したとき
胸に広がるのは
決して苦しさや切なさや
悲しみだけじゃなくて
優しさや
温かさだったりもするから。
恵ちゃん
今も、いるね
ここに
ちゃんといてくれてるね
心強いよ
ありがとうね
姉様と愛する彼は
夜な夜な夜のお江戸へ消えていく
それが寂しくて悲しくて
大好きな姉様に行って欲しくなくて
幼い私は姉様の袖を掴んで
私も連れて行ってとせがんだ
姉様は困ったような顔しながら
微笑み私にこういった
「あなたにも愛する人ができたらね」
その時わかってしまった
嗚呼、姉様の愛する人は私じゃないのだと。
真っ赤な着物を着て真っ赤な紅をつけた
優しくて残酷な私の姉様
愛する彼の隣を幸せそうに歩く
大好きで大嫌いな私の姉様
ねぇ姉様
私よりもあの人の方が大切?
私が姉様に1番に愛される日はないの?
小さな私は膝を抱えて泣いていた
暗闇の私
照らしてくれたのは
輝くあなたの存在