はじめる

#月の本棚

読んでると、
思わず胸がギュッとしめつけられる、
そんなポエムを集めました。

全27作品・

あなたは行きつけの喫茶店に着きました



カランカランとベルが鳴り


顔見知りの店員があなたの顔を見て


「こちらへどうぞ」と、


いつもの席へ案内してくれた


「ご注文はお決まりですか?」


お決まりの質問に対してあなたは


『いつものをお願いします』


と、にこやかに答えた


「かしこまりました」


店員さんはペコりと頭を下げ


注文の品を作りに行った



さぁ、注文を待つまでのほんの少しの時間


こんなお話を読んでみませんか?




【蝋燭の火が消えるまで・短編集】

灯彩_hiiro・2020-08-20
蝋燭の火が消えるまで
小説
短編集
これから始まる新しい物語
月の本棚

君のいない世界に意味は無い


"虚無"なんだ


灰を噛むような日々が


無力な僕を責め立てる


あの時、苦しんでる君の


そばにいることすらできなかった自分を


僕は、許せなかった


だから死のうとした


ただ、それだけのことだったのに__





















【この灯りが消えるまでは】

ランプの灯りはまだ強い




















少し落ち着きを取り戻してから

シラユキ
僕は白雪と向き合った


日に当たることが少なかった


ただでさえ白い白雪の肌が


月に照らされ青白く光る



半透明でもなく


くっきりとした輪郭を持つ白雪は


生きている僕と遜色がないように思えた



でも、



(冷たい…)



抱きしめた時に、生前は感じられた温もりが


今では微塵も感じない


ひんやりと冷たい肌が


白雪の死を突きつけてくる



「ホントに…死んだんだな…」



『うん、ゴメンね』



悲しそうに顔を歪める白雪


(違うよ…)


白雪が悪いわけじゃない


守ると豪語しておいて


守れなかった自分が憎いだけ


だから



「そんな顔、するなよ」



ハエの鳴くような声だった


また目頭が熱くなる


でも白雪の手前、泣いてる姿は見せたくない


気を抜けば流れる涙を必死に堪える



『うん、ゴメンね』


白雪はまた謝った


どこか寂しそうな白雪を


また、僕は抱きしめた


もう、一時も離したくはない


『ふふ、どうしたの?甚、
随分甘えん坊になったね』


と、白雪に頭を撫でられる


前まで照れくさくて嫌がっていたが


今はそれが心地いい








『……ねぇ、甚…

何でここへ死にに来たの?』



白雪が腕の中で気まずそうに聞いてくる




躊躇った



言ってしまえば、


きっと白雪は自分を責める






「……どうしても、知りたい…?」





『うん、知りたい』



即答



白雪の瞳は揺るがなかった








「…白雪がいなくなってから僕は、



自分が生きているのか死んでいるのか



分からなくなったんだよ



何をしていても、どこへいても



何も感じないんだ





それだったら、死んで



白雪と一緒にいる方がいい」


白雪を腕から解放して


僕は白雪の目を見た



「えっ…!」



雫が、白雪の頬を伝う



「な、なんで白雪が泣いてるの?」



顔を真っ赤にして涙を流す白雪



それなのに、こんな時でさえ


久しぶりに見る白雪の涙を


綺麗だと思ってしまう




『…こうなるって、思ってたの
甚が、死ぬんじゃないかって……』




涙を丁寧に拭いながら白雪が言う




白雪のその言葉に、僕は何も思わなかった




『私、死んだ後ね、すぐに

甚の所に行ったの』




僕は白雪を見つめたまま、黙って聞いた





『そしたら、ね、甚、泣いてた…



お墓の前で…1人で、ずっと…




それ、見てたら、私まで泣けてきて



横で、私…泣いてたの、



知らなかったでしょ…?』






知らない、分からないよ



あの時は、白雪が死んだことで



頭がいっぱいだったんだから






『私、後悔してるの…

私のせいで…甚が、死んだらって…



そんなの、そんなの絶対ヤダよ…!』





(白雪、そんなふうに思ってくれてたんだな)





白雪の優しさが心に染みる






(でも、違うよ、白雪は悪くない…)




本気で、そう思っていた




今もそれは変わらない








『甚』




「…何?」




『死なないで』




「…どうして?」




『甚には、幸せになってほしい』




「僕は、白雪と一緒にいられれば
それだけで幸せだよ」




『ありがと、…でもそうじゃないよ

私は甚に生きて、幸せになってほしい』




「…生きてたって、白雪はいない」




『そうだね、私は死んじゃったから

でも、甚は生きてる』




「僕は、白雪と一緒がいい」




『ダメだよ甚、お願い、死なないでよ』




「嫌だよ、そのお願いは、聞きたくない…」




堪えていた涙が零れて


地面にシミを作っていく


2人とも黙り込んで少しの沈黙




ランプの灯りは

最初より少し弱くなっている気がした





















最初に沈黙を破ったのは、白雪だった


『甚』



「…何…?」



『生きてよ』



「……」



『生きていたら、そりゃ失う事だってあるよ


私みたいに身近な人が亡くなったら


本当に辛いと思う


私も、お母さんが死んだ時、


本当にしんどかった…




でもね、生きていたら


その傷を癒してくれる人に出会えるんだよ



新しい大切な人も…出来るかもしれない』




「無理だよ、白雪以上の人なんて、いない」




『…ありがと


甚が私の事好きでいてくれるの


すごく、すっごく嬉しいよ




でもね、そのままだと甚が前に進めない



だったら…、私の事は……忘れてほしい』





「え…?」





『私は、甚に幸せになってほしい


ね?お願い、甚』



辛そうに、悲しそうに、白雪は言った


こうなってしまった白雪は頑固だ


僕がどんなに反論しても無駄だろう


今までも、ずっとそうだった


今回も、きっとそういうこと




「………分かったよ…」





『うん、ありがと

ワガママ言ってゴメンね』



また白雪から真珠のような雫が零れた



この時の白雪はいつになく綺麗で


"忘れて"って白雪は言ってたけど


僕は一生、忘れることは出来ないんだと


改めて思い知る




ランプの灯りが少しづつ弱くなっていく


白雪と話せるのも、あと少し





















『光、弱くなっているね…』



白雪も僕と同じ事を考えていた


「そうだね」



静かな時間が流れる


寂しさと悲しさに僕の心が溺れていく



「離れたくない…」


不意に本音が空に落ちる


『うん、私も…』


白雪は泣いていた


白雪の心も僕の本音に重なる


ヒラヒラと宙に舞ったそれは


輝きながら澄んでいた



白雪の細い体を包み込む


温もりは感じられなくても


寂しさを紛らわせられれば、と思った




『そろそろ、終わりみたい……』


腕の中で白雪が言った


それでも僕は離さなかった


今離してしまえば、


すぐに消えて無くなりそうで怖かった



すると白雪が僕の腕を優しく振りほどいた



見ると、白雪は光を纏っていた


雪のように細かい光の粒が


白雪のくっきりしていた輪郭を


朧気にしていった



(ホントに、これが最後なんだな…)



頬を伝う涙を白雪のしなやかな指が


ゆっくりと拭う



白雪はもう、泣いていなかった


覚悟を決めたのだ



『じゃあね、甚

幸せになってね』



足元から光の粒に溶けていく白雪は


そう言って、笑った



最後に1つだけ、


「白雪、」




『ん、何?』







白雪の柔らかい唇に僕の唇が触れる


生前は交わしたことのないキスを、今は


躊躇う間も惜しいと言うように白雪を求めた





しばらくして唇と唇が離れた


その頃には光の粒が


白雪の肩くらいまで来ていた


白雪は顔を真っ赤に染めて


あわあわしていたが


最後は恥ずかしそうに



『ありがと』



とだけ言った



それが、僕の最後に見た白雪の笑顔だった






















月明かりの下、一人取り残された僕は


月を見上げていた


すると



『さぁ、どうだったんだい?』



あの人は、手すりの上に立っていた



「ありがとうございます
白雪と、ちゃんと話が出来ました」




『そっかそっか、
死ぬのはやめにしたのかな?』




「えぇ、白雪の為にも死ねません」




僕は真っ直ぐにこの人を見て言った



一点の濁りもない意志を持って




『そっか、良かったね』




あの人がふっと笑った





優しい笑みに意識が遠のく





『ジンは、シラユキちゃんの分も
しっかり生きるんだよ…』





































目が覚めると、そこは病室だった


真っ白なベッドの上で


僕は3日間、眠っていたんだそうだ


あの日、陸橋から落ちて



(夢、だったのか…?)



思い出そうとするも頭痛が酷い



もしもあれが夢ならば、



なんて無責任な夢なんだろう




目を閉じると新しい記憶の中で



白雪が笑っている




「白雪…」




口に出すと溢れる涙が抑えられない




(ホント…かっこ悪いな…)




そう思い、涙を拭おうとすると







「あ、」










決して、あれは夢などではなかった






僕の手にはあの日、白雪に渡した


鍵のネックレスが握られていた









『幸せになってね、甚』





そんな白雪の声が聞こえた



気がした








END



__________________















おまけ














『ありがとうございます
最後に甚と、話をさせてくれて』



『いや、いいんだよ あの子の魂は、
まだ狩るべきじゃなかった
ただそれだけの事だからさ』



『でも、いいのですか?
死神が死ぬはずの魂を残しておいたら』


『いいんだよ
ジンは生きたいって願ったから
…あの子と違ってね…』



『…そうですか…、ありがとうございます』



『どういたしましてー
あとの見守りは、頼んだよ』



『はい!』




END

夜永_yonaga・2020-11-29
小説
感想ほしい
この灯りが消えるまでは
この灯りが消えるまでは(後編)
月の光が届くまで
月の本棚
愛した人
会えない人
守りたいと思った人
守れなかった人
また会いたい
願っても遠くて
いつかきっと
幸せとは
この僕に愛を
変わりゆく人生の中で
最後に1つだけ

人間は脆く、弱い


傷口から入る細菌程度で命を落とす


目に見えない、言葉の暴力にも弱い



でも、君は違った__























【刹那の灯火】






















僕の仕事は、



生者の魂を肉体から分離させること



簡単に言えば"死神"だった























毎日、毎日、僕の目の前で魂が消えた



真夏の花火が美しく爆ぜるように、



木枯らしに揺られ地に落ちる木の葉のように





それが僕の"日常"だった






















そんなある日だった




君に出会ったのは





















『君は死ぬのが怖くないのかい?』



僕ら死神は死期の近い人間には



姿を見せることが許され、



多少の会話や触れ合いも許可されていた




「ううん、全然怖くない
むしろ早く天国に連れてって!」
























ハクラ スズネ
彼女は、名を羽倉鈴音と言う



彼女は死ぬのが怖くない



それどころか"死"を切望していた





















「ねぇ、早く私を連れてってよ
こんな世界、生きてても仕方ない」



これは鈴音の口癖だった



鈴音はあと1週間で死ぬ



遅かれ早かれ確実に死んでしまう



そこまでせがむ必要なんてないのに



鈴音は、ただひたすらに望んだ



























初めは興味本位だった



今まで見た人たちは



「死にたくない」「なんで自分が」と



僕を責め立ててきた



わんわん泣き喚いて、結果



死期が早まった人もいた



そんな、どの人達とも違う



鈴音は、僕にとって特別な存在だった



























鈴音は嫌われていた



クラスから、家庭から、社会から



この世の運命から






















鈴音は心が綺麗だった



お年寄りや小さい子には



自分がどんな状況だろうと手を差し伸べた



下心を隠そうともしない男にも



寛容に施しを与えた



親がどんなに暴力を振るおうと



反抗のひとつも見せずに耐えていた



虐待も、虐めも、気付いていながら



無視をし続けた地域の人や先生たちにも



笑顔を向け続けた



ただただ優しく素直で



醜い僕からすれば、



鈴音は眩しいくらいに輝いていた






















鈴音の命日の前日、僕は彼女に問うた



『君は死ぬのが怖くないのかい?』






















またいつもみたいに、



怖くないと言われるに決まってる






それでも心のどこかで



否定してほしいと願っていた






















でも、彼女は言った




「怖くないよ」






















僕は思う



"鈴音に生きてほしい"、と




見てほしい



こんな世界だけど、まだ鈴音の知らない



綺麗な部分もあるということを









知ってほしい



こんな世界だけど



君に寄り添って歩いてくれる人が



きっと、いることを





だから__






















『僕は…嫌だよ




君に、鈴音に、生きてほしいって思う




だから、死にたくないって言ってよ




僕に、どうにかしろって言ってよ




君が死ぬのを、僕は、見たくない……!』





















本当は、抗うことの出来ない運命で



どうしようもないことだって分かってる



でもそれでも、もし、鈴音が



"生きたい"って少しでも望んでくれれば



生きる、術はある、かもしれない






















「私は…







どうしたいのか…分からない」




















ホンネ
それは鈴音が見せた、初めての涙だった











「私は、どうしたいのか、分からない」






鈴音は泣きそうな顔をしていた



泣きそうに、笑ってた




人間は、脆く、弱い



でも、君は違った



こんな、心まで、ボロボロになって



それでも、まだ、僕に笑顔を見せた



もう、涙まで枯れてしまったのだろうか



こんな、こんな……



































































僕は日付が変わる前に



彼女の命を狩った




これ以上、泣き笑う彼女を見たくなかった




『ゴメン…』












「大丈夫だよ…こちらこそありがとう


















今度こそ、幸せになるね」







END

夜永_yonaga・2020-11-22
小説
感想ほしい
刹那の灯火
月の光が届くまで
月の本棚
運命
死神の僕
生者の君
交わることのない2人
虐め
虐待
性犯罪
無視
優しさ
強さ
本音
笑顔
苦しい
辛い
悲しい
生きてほしい

これらの作品は
アプリ『NOTE15』で作られました。

他に27作品あります

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出来心で登った陸橋の手すり


お月様に見守られながら


手すりに腰かけ


明日の風が吹く方へふらり



手に持つランタンのフィラメントが


ガラスの中で光を纏う


すると



『おやおや、先客がいたみたいだね』



と、声が聞こえてきた__





















【この灯りが消えるまでは】





















『隣は空いているかな?』



その声は男性とも女性とも聞こえる声で


不思議な安心感をもたらしていた



「空いてますよ、僕1人なんで」



僕は僕の隣をランタンで照らしながら言った



『そりゃどーも』



そう言ってこの人は軽くジャンプして


手すりに降り立って見せた


1.3mあるくらいの手すりを


軽くジャンプして乗る様子は


ハッキリ言って違和感しか無かったが


今はそれを気にしないことにした



『今宵は月が綺麗だね』



そう言われて僕も月を眺める


今日は満月


欠けたところが見当たらない完璧な満月



「本当に、綺麗ですね…」



僕は手元にあったランプの灯りを消した





















『君は何故ここへ来たのかな?』



「…死にに来たんです、ここへ……」



『そうかい…人間は大変だねぇ』



「ホントに、大変でした、今まで」



『まぁ、最後くらいゆっくりすればいいよ』



「はい、そうします」



日々の騒がしい空気を


ここは全く感じさせなかった



暖かく、静かな時間の流れがここにはあった


全てを忘れさせて、闇に呑まれて


このまま消えられればなんて


考えてしまうほどに


この空間は僕の張り詰めた心を解いていった






















『そういえば君は
どうやってここまで来たんだい?』



「え?」



『いや、ここに来る人間は
珍しいもんだから気になってさぁ』



「どうやってていうか普通に…

……あれ…、僕、どうやって…」



記憶がぼんやりと霞がかっている


思い出そうとすると


煙をまくように白い影が頭の中で渦巻く



「ホントに、どうやって来たんだっけ…」



『…あぁ、ははっ、そうか君は…』



「…?」



『いやぁ、すまない、気にしないでくれ
君、名前はなんて言うんだい?』


ハクラ ジン
「名…前……、羽倉…甚…」



『そうか、ジン、か…良い名前だね』



「あ、ありがとうございます
あなたのことはなんと呼べば…?」


ワタシ
『我かい?んー、名前、かぁ…』



「名前、無いんですか?」



『んー?あるにはあるけど、ありすぎて
どれが我の本当の名前か
分からないんだよねぇ』



「たくさん名前が…木戸孝允みたいですね」



『んー?それは誰だい?』



「あ、歴史上の人物なんです
ついこの間、テストで出てきて…」



『テスト…ジンは学生さんなんだねぇ』



「よく言われます…身長が高いし
老けて見えるから…」



『そういうつもりは無かったんだけど
気を悪くしてしまったならゴメンね』



「いいんです、慣れているので…」




『ところで、ずっと気になってたんだけど
ジンが首から下げている物は何だい?』



「…?あ、あぁこれですか…」



服に隠れていたネックレスを外して


この人の目の前に垂らす



『鍵、かな?』



「えぇ、鍵のデザインのネックレスです」



『ほぅ、綺麗だね』



「そうですね」






『…外れていたらすまないのだけれどこれ
2つでセットになっていたのかな?』



「え、どうして…」



確かにこれは、ペアになっていたものだが


単体でそれを見抜くのは難しいはずだった



『いやぁ、少し前にね
これによく似たネックレスを持った子が
ここに来たことがあるんだよ
それで、もしかしたらと思ったんだよ』



"これによく似たネックレス"


その言葉が喉に引っかかった



このデザインのネックレスをもった子



もしかするとそれは



僕の死にたいと思う理由と同じかもしれない






『名前は、確かね……あぁ、そうだ

しら__』


「言わないでください…!」



つい大きな声が出てしまった


今は、その名前を、聞きたくない



やっぱり、そうだった


その名前は__



「すいません、大声を出してしまって」



『いや、いいんだよ
我の配慮も足らなかった、ゴメンね』



「いえ…」


そう言って僕は手に握った鍵を見る


少し後ろめたくなって


首にかけ直す



この人が言った名前は間違いなく


僕がこのネックレスの片割れを渡した相手だ

























カサイ シラユキ
葛西白雪は僕の恋人だった




白雪と僕は幼馴染で家族だった



まだ小さい頃、孤児だった僕を


白雪のお父さんが拾ってくれて


僕らは血の繋がりの無い家族になった



体が弱く、寝たきりだった白雪を


僕は、幼いながらに守りたいと願った



高校生になってもその願いは変わらず


"僕が一生守るから"と白雪に


鍵のネックレスを渡した



鍵のネックレスの意味は


"心の扉を開く" "心の距離を縮める"


つまり、これはプロポーズだった



白雪は泣きながら喜んでくれた


"早く元気になるね"って笑ってた



それなのに、白雪は__





















「…事故だったんです」



『……』



「白雪が、……亡くなった時…
僕は試合に行ってて、剣道の…」



『立ち会えなかったんだね』



「はい…白雪を、守れなきゃ
強くなった意味が無いのに…」



無意識に涙が零れる


手の甲で拭うもすぐに零れてくる



『そっかそっか…』


少しの沈黙の後


この人は月を見つめて言った


























『じゃあもう1度会ってみるかい?』






「……え…?」






『シラユキちゃんに、会いたいんだろう?
少しだけなら会わせてあげられるよ』



この人は不敵な笑みを浮かべて言った


甘い毒を含んだこの笑みは、まるで、


悪魔から枝分かれした妖精のようだった




でも、




「…、会いたい、白雪に…!」



どうしても、会いたい


会って、伝えたい、絶対に



涙を無理にでも止めて


真っ直ぐにこの人を見た




『分かったよ、時間は限られてるけど
それでもいいなら』



「構わないです、会わせてください」



僕の意思は固く、


この人を映す瞳に魂を込めた




『じゃあ、ちょっと借りるよ』



そう言ってこの人が手に取ったのは



「ランプ…?」



『ん、あぁ、時間を測ろうと思ってね』



そんなこと言っても、そのランプに


タイマー機能はない



それでもこの人はランプに灯りを灯した


月の光に慣れていた目が少し眩んだ



そして、気付くよりも前に声がした



『甚』






















声のした方を向く


見間違うはずはない


ずっと、1番近くで見てきたんだ


もう二度と、会えないと思っていた


愛おしくて、愛おしくてたまらない


白雪の姿がそこにあった





言葉よりも先に体が動いた



手すりから降りて駆け出す



『わぁっ…!』



白雪がいなくなってからもうすぐで2年


随分と大きくなったこの体で


白雪を抱きしめる


白雪の体は細く、弱くて


病気の頃と少しも変わらず


力を込めるとすぐに折れてしまいそうだった



『久しぶりだね、甚
背も伸びたし、体も大きくなったね』




言葉に、ならない





久しぶりに聞く白雪の可愛らしい声


相変わらずの落ち着いた話し方


生きていた頃はハグすら恥ずかしくて


躊躇っていたはずなのに


今は少しも離れたくない、離したくない





『あぁ、言い忘れていたけど
制限時間は灯りが消えるまでだからね

じゃあ、後はお2人でどーぞ』


あの人が手をヒラヒラさせて


僕らから離れていくのが見えた



この時の灯りはまだ強くて


その暖かい光が心を落ち着かせた



そして、僕らは向き合った






be continued

夜永_yonaga・2020-11-28
小説
感想ほしい
この灯りが消えるまでは
この灯りが消えるまでは(前編)
月の光が届くまで
月の本棚
愛した人
会えない人
守りたいと思った人
守れなかった人
また会いたい
願っても遠くて
いつかきっと
幸せとは
この僕に愛を
変わりゆく人生の中で

イルミネーションが輝く夜の街


冬の冷たい風が懐かしい声を運んだ



『___ 』



聞きなれたその少し掠れた君の声が


私じゃない、他の誰かの名を呼ぶ




もしあの時、


私が君の手を取っていたら



今でも君の呼ぶ名は__






















【名残り雪】

























その日はいつもと同じ


代わり映えしない日常の中にあった





















君と出会った日も今日みたいに


雪の降る日だった


不登校生徒の集まる補習授業で


私と同じ机に着いたのが君だった


サトシ
私と君_慧はお互いの心を隠して生きていた


深い傷を負った心を見えないように


慣れた手つきで笑顔を創り隠してきた



それは、出会った瞬間に解った


あぁ、"同じ"だって






















「慧と私は、なんだか似てるね」



『俺も、そんな気がする』




2人で笑いあった時間は儚く、


時には強く、鎖のように2人を結び付けた


それから私たちは、


よく連絡を取るようになった
























そこから数年後


ナ ツ
「奈津、この人が君の婚約者だよ」



そう言って紹介された人は


落ち着いた雰囲気のある爽やかな


少し年上の男性だった

イチカワヒロト
名前は壱河裕翔さん



「よろしく、奈津さん」


見飽きた上辺だけの笑顔


この笑顔に裏がある事を私は知っている



(いつまでもつかな…)



そんな心を隠して



「こちらこそよろしくね」



貼り付けた笑顔を崩さずに


私はまた笑った




また1つ嘘を重ねて






















既読 22:48〈慧、私結婚するみたい




これまた急だね〉22:48 既読





既読 22:48〈慧は応援してくれる?




そうだね、応援するよ〉 22:49 既読





既読 22:49 〈そっか、ありがとう





今日の会話はこれだけ



本当は否定してほしかった



慧だけに、私を求めてほしかった
























裕翔さんは、純朴な人だった



真っ直ぐに私を求めてくれて、


"忘れられない人がいる"と言った私に


"それでもいい"と言ってくれた優しい人



慧の応援もあって


私たちの婚約は定かとなった






















奈津、俺、結婚する〉16:05 既読



そう言われたのが去年



慧は同い年の女性と結婚するらしい

























過去に、1度だけ



紹介されたことがあったその女性は



柔らかい空気を纏う"花"のような人だった



彼女は慧の親戚の人で、



私と出会うよりも前から



慧を支えていた人だった



既読 16:57〈おめでとう



ただそれだけ言った



LINEで、良かったと思った



もし、慧が私に直接言ってきたら



笑顔で、おめでとうって



心から言えたか分からない






それでも私は慧たちの結婚式に出席した



夫の裕翔さんと一緒に






















幸せそうに笑う2人が、羨ましかった



慧の隣で笑うのは私じゃない




私には、夫がいて


慧にも、奥さんがいる





それが、今の私たちの距離感だった























それからすぐに


私たちは連絡を取らなくなった







私が、連絡を辞めた



未練を、少しでも残さないように






優しくて酷い慧の事を



少しでも早く、忘れられるように






















イルミネーションが輝く夜の街


冬の冷たい風が懐かしい声を運んだ



『___ 』



聞きなれたその少し掠れた君の声が


私じゃない、他の誰かの名を呼ぶ



すぐに、誰か分かった



私たちの横を通り過ぎる2人は


紛れもなく、私の最も愛していた人と


その彼を幸せにした彼女だった




言葉を交わすことも


目を合わせることもない



何年か経って少し大人びた彼は


私の知っている彼の面影を残しながら


愛する人へ嘘偽りのない笑みを向けていた




私へは、向けてくれなかった



それが現実








「奈津…?」



心配そうに裕翔さんが私の顔を覗き込む




「…懐かしい人に会ったの」



"見た"じゃなくて"会った"


未練のある言い方に自嘲する



「さぁ、行きましょう…」



手馴れたはずの笑顔が少し強ばる



それに気づいたのか私のかじかんだ手を


裕翔さんの温かい手が包み込む




そうだ…よね…



今ある"幸せ"を大事にしよう






彼への思いを夜に溶かし


私は本心を騙したまま彼を見送った





「バイバイ、慧」





届くはずのない、この思いは


雪に吸い込まれて消えていった







END

夜永_yonaga・2020-11-25
小説
感想ほしい
名残り雪
月の光が届くまで
月の本棚
変わりゆく人生の中で
この僕に愛を
届かない
雪のように
伝える事も出来ないまま
あなたへの思い
好き
愛してる
最愛の人
いつかきっと
叶うと信じて
バイバイ

『ふう、お前は巫女なんだ



大人になったら神様の元へ嫁ぐんだ



そうすれば、誰よりも幸せになれる』




私は、そうやって教えられてきた




幸せとは何か、本当の愛も知らずに__






















【風吹く丘に咲花よ】























私は、親の顔を知らない



物心ついた時から



私を育ててくれたのはじいやだった




『ふうは将来、神様の元へ行くんだよ』




じいやはそう、よく言っていた




「どうして神様の元へ行くの?」




『そういう掟なんだよ


ふうのお母さんも、おばあちゃんも


ずっとそうやって幸せになって来たんだ』




「神様の所へ行ったら


ママに会えるの?」




『会えるかもしれないね』




「そっかぁ!私、神様のとこ行く!」




小さい頃はそれが、



"幸せ"なんだって信じてた























『ふう、この子は今日から


ふうの身の回りの世話を担当する

ヒヅキ
緋月君だ、挨拶なさい』



そう紹介されたのは


少し年上の男の子だった



「初めまして、ふうです


よろしくお願いします」



『嗚呼、よろしく…』



彼は無愛想で無口だった























『危ない!何してんだよ!』



初めて彼に怒られたのは12歳の誕生日



巫女の家系に受け継がれる



"烙印"の最中だった



元は刑罰として行われていたが



この村では神に嫁ぐ前に、



身を清めるために行っていた




「緋月、なんで怒ってるの?」



『なんでじゃねぇよ!』




そう言って緋月は私の手から



金属板を奪い取った




『お嬢はもっと、自分の体を大事にしろ!』




こんなに怒られたのは初めてだし



いつも無口な緋月が、



こんなに声を荒らげるのが



本当に信じられなかった






















「ねぇ緋月、見て」



『……なんですか…?』



相変わらずの無愛想にも流石に慣れてきた



緋月が家に来て8年



出会った時に比べて、緋月は



私に心を開いてくれるようになっていた



「このお花の花言葉、知ってる?」




『知りませんよ、


……花に意味があるんですか』




「うん、…知りたい?」




『どちらでも…』




「えぇ、何それー」




緋月と話していると、楽しい



自分が巫女である事を忘れられた



緋月は、私の事を"大事な巫女"だから



一緒にいてくれる



でも、私は__



「この花の名前はね、


"リナリア"って言うの」



『そうなんですか…』



「もぅ!少しは興味の無さを隠してよ」




私がそう言うと、ふっと緋月が笑った



その不器用な笑顔が好きで、



もっと笑ってほしくて、



どうしようもなく、"愛"してた






















それから2年__
























『お嬢、お時間です』




コンコンとノックの後、



ドア越しに緋月の声がした




「えぇ、分かったわ」




長いスカートをなびかせ、扉を開ける



差し込む光が美しかった



暖かな春の風が結った髪を撫でる



真っ白なドレスに身を包み



あの日と同じ花を持って歩く







今日は私の結婚式だった







『お嬢、お綺麗ですね』




緋月の社交辞令に柔らかく微笑む



本心から言ってくれれば、



どれほど嬉しかったか




『…行きましょう』




緋月のエスコートに身を委ね



会場に向かった

























会場への道のりは長かった



2人で歩くのは慣れているはずなのに



足取りが重く、沈黙が冷たい





「ねぇ、緋月」




『はい…』




「この花、覚えてる…?」




自分の苦し紛れの質問に苦笑する



落ち着きがなくて、



じっとすることが出来ない



私らしい、間のとり方だった




『……覚えてますよ


確か、リナリア、ですよね…』




意外だった



興味無さそうな反応をしていたから



てっきり忘れているのだと思っていた




「うん、そうだよ


覚えてくれてたんだね」




『まぁ、…一応』









会話が止まる



また静かな時間が過ぎる




すると、




『そう言えば、…花言葉


なんだったんですか…?』




と、緋月から話しかけられた




「えぇ?知りたい?」




内心、すごく嬉しかった



いつも私ばっかり話しかけていて



ずっと寂しかったから




『まぁ、…知りたい…ですかね』




「んー、どうしよっかなぁ」





そんな会話をしているうちに



会場に着いた











ここは、風の祠



神様の元へ繋がる、神聖な祠だった




『では、行ってらっしゃいませ…』




ここから先は、



巫女だけが入ることを許されている




付き添いの緋月は、ここまで



これが、緋月と話すことの出来る



最後の機会だった




「ねぇ、緋月」




『はい…なんですか』




「このブーケ、もらってくれない?」




『え…?』



「これ、あげるよ あと、これも」



そう言って渡したのは



私の髪を結っていた結紐だった




「これを、私だと思って、大事にしてね」




じんわりと目頭が熱くなる



これが、最後だと思うと



急に不安になる



もう、緋月と話すことも出来ない



2度と会うことも出来ない























私は、知っていた



神の元へ行くということが



"幸せ"とイコールでは無いことを




























生贄なのだ



私たちの家系は



























お母さんも、おばあちゃんも、みんな



この村を、厄災から守るために



死んだんだ

























「じゃあね、緋月」





『…待っ__』





バタン




重たい、扉の閉まる音が響く




あれ以上一緒にいれば、私は




巫女としての自分を捨ててしまう




あれ以上一緒にいれば、




緋月と、もっと一緒にいたくなる




溢れだしそうな気持ちを抑えて前を向く




その部屋には階段があった




地下へ通づる、深い深い階段が






振り返るも、緋月の気配はない






彼は知ってるのかな








私が、緋月にあげた花の意味を


























"私の愛に気付いて"




まぁ、知らなかったから



連れ出してくれなかったんだよね








零れる涙を拭って



階段を1歩ずつ、歩いていった




END

夜永_yonaga・2020-12-17
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愛した人
会えない人
また会いたい
願っても遠くて
いつかきっと
幸せとは
この僕に愛を
変わりゆく人生の中で
最後に1つだけ
この想いを聖夜の彼方へ

振られる予定だった






3年間思い続けてきたこの思いを



"終わり"に出来ると思って



勇気を出して、君の靴箱に



手紙を入れたんだ



"放課後、屋上に来てください"って__


























【恋と秘密と約束と】
































手紙通りに放課後




屋上に来た君のポニーテールを




風が優しく撫でた



カヤノ
『あ、茅野君、あの手紙は君が?』




おっとりした声で君が聞いた




「ゴメン、話があって…」




腹を括ったはずだったのに



いざとなると言葉が出てこない






「え、…えっと…その、


ずっと、ずっと前から…」




喉まで出かかった"好き"が



ゆっくりと下がっていく




既に頭の中は真っ白で





「……相談、したい事があったんです…!」






なんて、思ってもない言葉が


勢いをつけて飛び出していった




































「恋愛相談…!?」




次の日、僕の唯一の相談相手で



リョウ
友達の亮が声を荒らげて立ち上がった




「お前、好きな人に恋愛相談とか


馬鹿じゃねぇの…?」




昨日の放課後の出来事を




一通り話し終わった後




呆れた様子で亮が僕の頭に肘を乗せる




「そんなこと、


言われなくても分かってるよ…」








あの時、とっさに口から出た



"相談"という言葉が頭の中で反芻される




『なんの相談なの?』



と、不思議そうに首を傾げた


ミクニ
君_三国さんの曇りのない瞳が



僕の良心にヒビを入れる








「今日の放課後から、


その…、作戦会議…らしい…」




「なんだそれ…」




「だから、僕の、告白の……」




「ハハッ、最高じゃん」




亮の笑い様と言えば



大爆笑もいいところだった




「他人事…」



「そりゃ他人事だからな


まぁ、頑張れよ」




少しも嬉しくない応援をもらうと


チャイムがなった




放課後になったのだ
























『茅野君!』



教室に響き渡る声で三国さんが



僕の名前を呼んだ




三国さんと僕はクラスが別で



普段はほとんど会話をしない




そんな僕らだからこそ



周りの人達の視線が痛かった



でも三国さんはそんなことお構い無しに



僕の腕を引っ張って図書室に行った



亮のにやにやした顔が僕らを見送った



(アイツ…後で覚えとけよ……)























『へぇー、茅野君の好きな人って
ルイ
類ちゃんなんだね』



図書室の窓側の向かい合った席



三国さんが窓側で



僕がその反対側




「そ、そうですね…」



正直、好きな人に嘘をつくのは気が引けた




でも、それを言ってしまえば



"相談したい事があった"



と言ってしまったことも



今ここで2人で話していることも



全部"嘘"になってしまう





『ねぇねぇ、類ちゃんの

どういうとこを好きになったの?』



僕の心の内を知らない三国さんは



好奇心旺盛と言わんばかりに



質問をしてきた




僕が"嘘"の好きな人に選んだのは

アクツ ルイ
同じクラスの阿久津類さん




クラスの中でも大人しい分類の人で


言葉遣いも礼儀も正しくて


少ししか話したことが無いけれど


充分魅力的な人だった




でも、


「どこが好きって聞かれると…

ちょっと難しいですね…」



僕の言った"魅力的"はあくまでも


"友達"として、の話で


"恋愛対象"となると少し違った



『好きなところ、分からないの?』



三国さんはキョトンとした顔をした



(好きなところ…か……)



そういえば、僕は



自分が何故、三国さんを好きか



考えたことがなかった




『まぁでも、いいなぁ』




頬杖をついて三国さんが言う




「え、何が?」




『分からないけど好き、みたいなの

なんか、ちょっと憧れる』



三国さんは、ちょっとした秘密を


打ち明けるかのように言った



『私さ、誰かを好きになったこと

人生の中で1度もないんだよね…』



「意外…、そうなんだね」



『自慢じゃないけど、私

小学校の頃モテてたんだけどさ』



それは意外でもなかった



三国さんは容姿も綺麗だし



性格も明るくて周りからも人気がある



『誰が、誰を好き、とか

全然分かんなくて…



告白もされた事はあるんだけど

曖昧にしか、返事出せなくて



だからね、茅野君の事は

全力で応援したいって思ってる…!』



三国さんの瞳がキラキラと輝いている



多分、三国さんの事だから



嘘はついてないと思うし



本気で応援してくれてるんだと思う




でも、少しだけ、ほんの少しだけ


心がチクッと傷んだ




『あ、良いこと思いついた』




「ん?」




『これからさ、もし私に


好きな人が出来たら


今度は茅野君が相談乗ってね!』



そう言って三国さんは右手を差し出した




ニコリと笑う三国さん



その笑顔を見て、僕は思う




「うん、分かった」




多分、その時が来たら



僕は死ぬほど辛いんだろうな




三国さんの右手を優しく握る



柔らかくて、暖かい掌だった




『約束だよ』




「うん」






そうして、僕たちの関係は始まった





To be continued

夜永_yonaga・2021-01-11
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変わりゆく人生の中で
最後に1つだけ
この想いを聖夜の彼方へ
好き
叶わない
届かない
ぼくときみ

目が覚めると知らない場所




真っ白な箱の中に知らない顔が2つ




2人とも眠っていて




起きる気配はない





寝ていたからだを起こすと




身体中が痛い




固い床で眠っていたせいだろうか





体を起こし、立ち上がってから





箱の中をじっくり見回す






この場にあるのは




1つのロッカーと天井付近にスピーカー




そしてその反対方向に扉




向かい合うロッカーと扉の大きさは




ほとんど同じくらい




スピーカーはロッカーの真上




真っ白な壁よりも




少し灰がかった白をしていた






ここは、どこなんだ




そして、この人たちは誰なんだ




そんな疑念の上に伸し掛るように






『キーンコーンカーンコーン』







チャイムがなった__






















【殺神鬼】























予想外のチャイムに思わず体がすくむ




そのチャイムは



スピーカーから流れたもので



部屋全体に響き渡った





『あー…あー、聞こえてるー?』




ザザッとノイズが入った後



子供のような幼い声が聞こえてきた



俺は反射的に




「聞こえてるぞ」




とスピーカーに向けて言った




すると




『そっかそっか、それは良かった


これで滞りなくゲームができるね』




と、無邪気に笑う声がした



こちらの声は向こうに



マイク無しでも届くらしい




「ゲーム…?ゲームって何の話だよ」




いきなりこんな場所へ来てゲーム?



状況への理解が追いつかない




『んー?あーそっか



君たち何も伝えられてないんだよね



ふふっ、じゃあ教えてあげる



今から始めるのは"人狼ゲーム"だよ』




「はぁ…?人狼…ゲーム……?」





『今君のいる部屋の中に1人だけ



人間に化けた"人狼"がいる



君は、誰が人狼で、どんな目的を持って



人狼になったのかを当てて



そいつを殺してしまうの



そうすれば君の勝ちだよ



簡単でしょ?』




何の悪気も無い、天真爛漫に笑っている




「そうじゃない!ルールを聞いたんじゃない


なんで俺がここで


人狼ゲームなんてしなきゃ行けないのか


って聞いてんだよ…!」




俺は怒りを込めた言葉を放った



それなのにコイツは




『んー、ボクの気まぐれかな?』





「は?」





何を、言ってるんだ?




言葉が通じてない




いや、それ以前の問題か?




(冗談じゃねぇよ…!)




俺はスピーカーに背を向けて




扉を開けようとドアノブを握った




『あー、言っておくけど


ゲームをリタイアするなら


君の命は、ボクが貰うからねー?』




ドアノブを握った手の力が一瞬抜ける




「…どういう事だよ」




振り返らずに聞いた



手は、まだドアノブにかけたままだ




『そのまんまの意味だよ


ゲームはこの部屋の中だけで行っている


そこから強制的に出ようとするなら


"リタイア"って形で、


ゲームを諦めることになる』




「じゃあなんで__」



ゲーム
『人生を諦めた人間に


命なんていらないでしょ?』




幼い、子供のような無邪気な声



その中にある悪戯に満ちた蔑むような感情



部屋の空気が凍る



温度が一気に下がる



冷たく伸びた手が俺の首を絞める



息が、出来ない




思わずドアノブから手を離す





『だから、部屋から出ようとするなら


命の保証はない、…覚えておいてね』






冷たい手が俺の首から離れる



温度は元に戻り、



空気は温かさを取り戻した



酸素が俺の肺を満たす




この空間全てがアイツの思うがまま



逆らわないほうが身のため、か…




「お前は、…何者なんだ…?」





『んー?ボク?そうだなぁ……













神様、かな?






















君たちを生かすも殺すも



ボク次第























さぁ、ゲーム始めよっか』







To be continued


_________________






どーも、夜永です



最近小説のアイディアが



驚くほど減って



軽くスランプ状態ですね



書く表現力も衰えてまして



今回の作品もボロボロでしたね



ホントに酷いもんですね((前からですが



という事で、今回の作品と



前回の作品は、もしかすると



続編が書けないまま



終わってしまうかもしれません



なので、楽しみにしてくれていた方



万が一いましたら



大変申し訳ありませんでした



できる限り、最善を尽くします



ですが、投稿されなかった場合は



本当にすいません



これからも応援してくれると



すげぇ嬉しいです



では、感想お待ちしております



また会いましょう




夜永_yonaga

夜永_yonaga・2021-01-24
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神様
逃げられない
逃れられない
さぁ、ゲームを始めよう

【ズットイッショ】













「好きだよ」




この届かない声を、諦められなかった





どうしても伝えたかった





どうしても、どうしても…
























もう会えないと知った時






多分僕は、酷い顔をしてたんだろうな






あんなに困った君の顔を





幼馴染の僕でも初めて見たんだから










ゴメンね





離れたくなかったんだよ

































だから、走った





君の乗った車の後ろを





必死に走って追いかけた





走って、走って、走りまくって





それでも追いつく事なんて





ウサイン・ボルトでも出来ないけど





僕は走った

































そしたらさ、






視界が急に真っ暗になったんだ







僕、車しか見てなかったから





信号とか、無かったし





横からトラック突っ込んできてるのに





全然気付かなかった

















あぁ…、痛かったな…






頭が酷くズキズキする






腕も、足も動かない






流れる赤い血が視界を狭めていく







痛い…、頭が割れそう…






























でも、君と会えなくなる方が






何倍も、何十倍も、何百倍も痛かった






「 」








君の名前を読んだ僕の声が







生前に発した、僕の最後の声




























でも、良かった






僕の最期を





君で終わらせられたんだから



























それにさ、








こうやって僕が死んだら






君は、一生僕の事を忘れないでしょ__






END

夜永_yonaga・1日前
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君が好き
ずっと一緒
君の記憶に残るなら
病み愛
アイシテル
覚えていて

【世界が終わったその日から】














赤と青が入り交じる




光と闇の真ん中で




世界が終わりを告げました

























一瞬にして、





シャボン玉が弾けるように





世界は、消えていきました





僕らの生命を乗せたまま

































前触れがあった訳では無いのだから






誰もが、世界の破滅を知ったのは






全てが爆ぜた後でした






産まれたばかりの赤ん坊も






もうすぐで100歳になるご老人も






みんな、みんな、みんな






泡沫の如く散りました































小さな生命が芽吹いた春












人々は命の儚さと脆さを知りました















愚かさや、醜さも















美しさも、愛おしさも、全て
















0から学んだのです



































世界は、綺麗でした





































何も無かった世界では







全てがありのままを映し出し







着飾ることもありません








余計なものを取り除いた世界は









言葉では表せないほど美しかった































僕が見た世界は、












ここではない、別の世界






















ここにはない、未来の話































君も、見てみたいと思わない?










美しさの先にある、新しい世界を__





END

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