アルペジオ・1日前
泡沫恋愛教
深い深い海の底へ
人魚姫に会いにやってきました
会えるかどうか分からなかったけど
どうしても聞きたい事があったから
やってきました
泡となった人魚姫、どうして
貴女は泡になる道を選べたのですか
私はね、ダメでした
彼を刺してしまった
どうしても彼が欲しくて刺してしまいました
あゝ泡になる事を選べば
私は美しいままでいられたのに
彼を手放す事が出来ずに刺すなんて
彼の幸せよりも自分の欲に負けたのです
私は真っ黒な人間になりました
真っ黒な人間はつまらないですよ
くる日もくる日も、後悔しかありません
だから私は決意したのです
美しい人間に戻るのだと
今からでも泡になれる方法はないだろうかと
たとえ死んでしまってもいい
美しい人間に戻れるならば、それがいい
その事を聞きたくて
海の底までやってきました
どのくらい深く潜ったでしょうか
辺りは真っ暗で何も見えません
耳もキーンと痛いです
その環境にジッと耐えていたら
なんとなく貴女の気配が感じられたのです
暗闇の中から少しずつ貴女が見えてきました
貴女を見て驚きました
貴女は真っ黒な鱗の人魚になっていました
貴女は黒い涙を流して泣いていました
あゝなんて事でしょう
貴女も同じだったのですね
恋に敗れた女の道は
悲しみしか残されていないのですね