牡丹・8時間前
牡丹、崩る
散文
ジジ...と
少し耳障りな電子音を立てて
天使が広げた羽は
ブルーライトの後光で
淡く輝く
あなたと共に生きられるのならば
微笑む天使はあの頃の君だ
代償を払って
得た記憶など
偽物に過ぎないのに
僕はまだ君に恋をしている
紛い物だって
君の声と君の姿ならば
きっと、きっと
そう、結局なんだって良かったんだ。
この心臓の空白を埋められるならば。
汚れたの
私、汚れたの
人混みで
喧騒で
夜の街で
甘い言葉で
夜の世界で
蕩けるような
時間に浸かって
愛したの
1人を、たった1人を
愛したの
お父様が馬鹿な子だねって
溜息をついたのも
聞かないふりをして
穢れたの
私、穢れたの
ごめんなさいお父様
どうか返して
私の在るべき場所
私が私で在れたはずの場所へ
人の言葉なんて
もう、聞きたくないの
話したくないの
どうか返して、どうか戻して
私が天使だった
あの頃に