#私だけの思い出記録

私はまだ忘れてないよ

貴方がいた冬の思い出を。

貴方と見た初雪を。

この席から見える貴方は、
小さいけど大きかったな

貴方は背が高いから、
後ろの席の方がよく目が合ったよね

貴方が廊下を通る時も、
私はいつもガン見してたよね

貴方がこっちを向いてくれたとき、
貴方と目が合う瞬間、
私の世界は きらきらと輝いたの

私はいつも貴方のこと見てたから
きっと他の人よりも沢山目が合ったね

いつもすぐに目を逸らす貴方だけど、
なかなか目を逸らさないときがあった

あのとき私は、貴方の瞳に吸い込まれて
貴方以外見えなくて、聞こえなくて、
貴方と私 ふたりだけの世界に感じてた。

貴方のその瞳が 好きでした。


でももう全部、終わりなんだなぁ…
寂しいし、悲しい。

だけど貴方との思い出は素晴らしくて
思い出す度に 私の心を明るくしてくれる

だから大丈夫。
もう会えなくても、話せなくても、



すっごく、幸せだった

出会えてよかった

先生、本当に ありがとう。

どうか、いつまでもお元気で

そしていつまでも、幸せでいてね





✡

終業式が終わったら、

泣くかなーと思っていた。

「私泣くと思うから、慰めてあげて。笑」

って、事前に 友達に言っておいた。

だけど意外と、涙は出なくて。

でも 貴方の顔を見た時に、

やっぱり 好きだなぁって思ったら

少しだけ、泣きそうになった。



放課後は友達と遊んで、

少しだけ上の空になっちゃった時もあったけど

一生懸命楽しんで、みんなと別れを惜しんだ。

寂しさはかなりあったけど、

みんなとは来年も会えると思えば 平気だった。

最後まで涙は出なかった。




「ただいま」

家に帰って、お風呂に入って、ご飯を食べて…

いつも通りだった。

今日の楽しかったお話を 母とした。




「うん、おやすみ」

電気が付いてるのは 私の部屋だけ。

私は机の上のライトを付けて

渡された通知表を見ていた。

貴方の担当教科を一番に見た。

評定は......『 』

静まり返った家で、私はなんだか、

今まで張っていた糸が切れる感覚がした。

ぽろぽろと、自分の服の上に涙が落ちてきた

1年間の思い出が 一瞬で蘇った。

楽しかった、つらかった、大好きだった…

想いが溢れて止まらなくなった。

涙も、溢れて止まらなかった。

貴方に触れるように、文字をなぞった。

…そろそろ 息ができなくなってきた。

家族のそれぞれの部屋から一番離れていて

声も届かないはずの部屋に、通知表と

お気に入りのクッションを抱えて移動した。


扉を閉めて座り込んで、

すぐに私は声を上げて泣いた。

自分の想像していた以上に涙が溢れた。

溺れるんじゃないかと思うくらい泣いた。

貴方への大きな想いを 認めざるを得なかった。


泣いて、泣いて、泣き疲れて、

睡魔が襲ってきた。

気付けばもう 日付が変わっていた。

立ち上がって ふと鏡を見たら

それはそれは酷い顔だった。笑

思わず吹き出してしまった。

そしてまた、涙が零れた。




✡

終業式が終わったあとは、

友達と遊びに行った。

みんなが楽しそうに談笑してるなか、

私は下を向いて みんなの後ろを歩いていた。

考えていたのは、貴方のこと。

もう、最後なんだ。

その事実を噛み締めて、

噛み砕こうとするけれど

なかなか実感がわかなくて…

会えなくなるわけじゃない。

ただ…話せなくなるだけ。

貴方の声を聞けなくなって、

その笑顔を見れなくなるだけ…

ただ、それだけなのに……



川の上にある橋を歩いていて、

やっぱり綺麗な景色だなーって思った。

学校の近くまで続く川を見ながら、

この川の流れに乗って

貴方に会いに行けたらいいのにって考えた。


…ふと1粒、涙が零れた。

でも強い風が拭ってくれた。

おかげで 誰にもバレずに済んだ。


寂しいし悲しいけど、

なんだか温かい気持ちになった。

私はきっと大丈夫。

前を向いて進んでいける。

自分を信じて、今は、

目の前のことに集中しようと思って

前を向いて みんなの元へ駆け足で行った。




✡

1年前は 会うと避けられていたのに、

今では 会うと笑いかけてくれる。


あの時挫けなくて良かった。

好きでいさせてくれて、ありがとう。