アイリス 第一話
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「――最後までおまえが、大好きだったよ」
それは穏やかな、春の出来事だった。
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4月1日
今日も俺、紺野 空(こんの そら)は、病室で退屈な時間を持て余していた。
俺は重度なガンを患っていて、もう長い時間を病院と共にしている。
まあ、今更学校に行きたい。とか思いもしないし、友達が欲しいわけでもない。願わくばここで一人で死ぬのが一番の幸せだと思う。
4月2日
朝、俺はいつも通り病院のベッドで目を覚ました
。すると俺の横のベッドでは…知らない奴が寝ていた。
少し驚くものの、すぐに思い出す。この病室は、相部屋だった事を。
相部屋と言っても、もう長いこと人が入って来てかったので、そこそこ広いこの病室は、俺が占領していた。
俺はとりあえず、相部屋の真ん中にあった、カーテンを締めた。
いくら相部屋とはいえ、俺は他人と仲良くなる気はない。
なぜなら俺は、別れの悲しさを、身を持って知っているからだ。
この病院は、かなり大きい病院で、軽い病から重い病――、様々な人が入院している。
そんな所で友達なんて作っても、結局は悲しい思いをするだけ――。
この時までは、そう思っていたのだ。
4月3日
「――ねえ、他には?他にも空くんのお話聞かせて!」
そう楽しそうに言ってくる相部屋の奴。
さて、なんで俺は相部屋の奴と話なんてしているのだろうか。
昨日俺は、相部屋の奴と顔を合わせたくなくて、病室を飛び出した。
飛び出したはいいものの、特にすることも無かったため、病院内をぶらぶらしていると
「ねえ君、もしかして私の相部屋の人?」
と、声をかけられたのだ。
もっともなことを言われて、反抗する気力も無かった俺は、適当に相づちを打ってその場を立ち去ろうとした。
だがその時、
「この本さー、君のベッドの近くに落ちてたんだけど、君もこの作者さんの本、好きなの?」
そう言いながら文庫本サイズの少し分厚い本を俺の前に突き出してきた相部屋の奴。
ちげーよ。と否定して、俺はその場を立ち去った――はずだったのだが…
俺は気付けば病室で、相部屋の奴との話に夢中になっていた。
全く俺も単純な奴だ。と、自分に呆れる。
好きな本の作者が同じだった。というだけで、気付けば和気あいあいと話をしていたのだから。
それと同時に、俺は戸惑った。
家族や看護師以外の人間と話しをするなんて、久しぶりのことだったからだ。
でも―――。
「あ、今空君笑った」
少し驚いた様に言う相部屋の奴。
「笑ってねーよ」
そう言い返す俺の声は、少しだけ、はずんでいる様に聞こえた。
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…何となくノリで作ったやつです。
読みにくいのは許してください。
居ないと思うけど、良かったって思う人は贈り物下さい。
好きとか贈り物多かったら続き出すかも。