#続かんな多分。四は5話くらいで氏ぬタイプのキャラクター。

『沸騰』






「え、お前味噌汁にキャベツ入れんの？」


　冷蔵庫からキャベツを取り出そうとしたが、驚かれたのでやめた。一瞬、自分の頭に血が上るのが分かった。


「私の家ではそうでした」

「やべえな」


　朝から口が悪い。傍観しているだけじゃなくて手伝って欲しい。


「四さんは何入れてました」


　ガスコンロの火を弱めながら、背後の四に言った。


「具なし」

「そういえば四さんも貧乏でしたね」

「デリカシー無いな」


　デリカシー、初めて聞く言葉だ。でも意味は聞かずに適当に返す。


「そうなんですかね」

「九、ご飯炊いたか？」


　久しぶりに名前を呼ばれ気がする。正確に言えば、名前ではないが。


「はい。四さんが来る前に」

「さすがだな。じゃ、全員叩き起して来る」

「いや、まだ早いですし、いいですよ」


　後ろの廊下へ歩いていく四を引き止める。


「暇なんだよ」

「四さん？」

「いや」


　珍しく四は焦ったように言った。足が小刻みに揺れている。


「なんでもねえ」


　四はそのまま再び歩いていく。私はそれを止めず、再び朝食を作ろうと台所へ向く。

　味噌を入れたばかりのステンレスの鍋が、ぐつぐつと鳴っていた。

　味噌汁は沸騰させてはいけない。風味が飛ぶからだ。


「何回目だっけ」


　またみんなに、まずい味噌汁を出すことになる。