来世では、君と___。
君の髪の匂いがいつもと違う。
_嗚呼、またあの人に会いに行くのか。
僕と会う時とは違う、
別の香りが妙に鼻につく。
気付いてるんだ。
でも、認めたくないんだ。
君の手の上で踊らされていることを。
携帯の画面を見た君は
僕に「じゃあ、また」と声をかけた。
_ねえ、行かないでよ。
そう言おうと開いた口は
結局何の音も出ず、
静かに首元のマフラーへと埋まる。
いつから僕は、こんなに
我慢出来るようになったのだろうか。
前は言いたい放題で、
こんなに臆病な僕ではなかった。
子供の頃なんて、都合が悪くなると
すぐ泣く、とても面倒な奴だと
よく馬鹿にされていたのに。
「内緒にしていてね。」
ずるいな。そうやって僕を口止めする。
隠さないと、だめ?
誰かにバレたら、なにか困るの?
当時の僕はまだ、何も知らない幸せ者だった。
ただ、本音は言えず、
走って駅へと向かう君の後ろ姿を見ながら
『うん、分かった』と1人呟く。
_だめだな。僕。
少し前までは
すぐそこに落ちていたはずの“未来”が
今ではとても遠く感じて。
君との未来はもうないって分かって、
やけに悲しくなった。
駅のホームで1人佇む。
僕の“声”はもう、
あいつの“心”には響かない。
そんなこと他の誰より僕が1番分かってるよ。
それでも僕はまだ、君が好きなんだ。
でも『好き』と声に出してしまえば、
君がどこか行ってしまいそうで、
君に好意を持つ僕とは会ってくれなさそうで。
_会えなくなるよりは、まだまし。
そう自分に言い聞かせ、
再び僕は、君と身体の関係に縋る。
毎日の不安が、君と重なることで、
どんどんかき消されていく。
ただ、互いを交わすその時だけは。
届きそうで届かないもどかしい距離。
そんな距離に思いを馳せながら
今日も1人、外の風に当たる。
_君と一緒に生きていきたかった。
何気なく発した言葉。
空を見上げる僕の目には
少しだけ、涙の様なものが溜まっていた。
気が付けば僕は、
人に合わせるようになっていた。
【自分は後回し】【人が最優先】
いつしかそう、心の中で定義されていた。
人から「優しい」と言われるようになり、
いつしか、
_誰かに嫌われるのが怖い。
と思うようになった。
だから僕は、君との“それ”だけの関係でも
守りたかったのだろう。
内緒にしていたら、
まるで最初から無かったみたいだね。
『ありがとう、ばいばい』
そんな言葉ではもう終われない。
忘れられないほど、君への想いは募って
余計、苦しくなって。
どうせ、君には分からないだろ。
きっと好意を持ってるのは僕だけ。
僕の気持ちなんて分かってくれないよ。
いつも通り行為を終え、ホテルを出る。
勿論、何も起きていないような
白を切るような顔で。
だってそれしか無かったんだ。
君に会う口実は。
“浮気”だと知っていても、
“好き”の気持ちは抑えられなかったんだ。
君が求めてくると、僕は再び反応してしまう。
僕の“モノ”にはならないし、
君には、ちゃんとした恋人もいる。
それでも僕と縁を切らない君は、、、。
そう自惚れる僕は最低。
こんな僕にはもう、うんざりだよ。
僕だって、変われるものなら変わりたいさ。
こんなこと知りたくなかった。
最初から出会わなければよかった。
“浮気”という事実を隠してまで、
君と身体を重ねる僕を否定したくなかった。
悪いことって知ってた。
自分がとても情けないと感じた。
だけど、こんなに人を好きになるのは初めてで
どこかで
“浮気じゃない”と信じていたかった。
誰に聞かなくてもわかる。
君と僕が結ばれることなんてないんだ。
僕は君を幸せになんて、出来ない。
それでも、君が僕に教えてくれたもの、
何の意味もない様な事ばかりじゃないから。
毎日の不安がかき消されるほど
僕を狂わせた“君の嘘”が
嬉しくて、苦くて甘くてずっと頭に残ってる。
_さよなら、僕が初めて愛した人。
そんな過去も、いつかは忘れられるように
1歩踏み出した僕を
少し暖かい冬の風が静かに撫でた。
こうして、僕の“初恋”は幕を閉じた。
それでも あいつがくれたもの
何も無かった訳じゃないから
毎日の不安をかき消すほど
ずるい嘘が
嬉しくて消えない
変わりたい__
Shout Baby/緑黄色社会