慧兎・1日前
虚ろう影法師
「誰も傷つけたくない」だって?
それは「誰も愛してない」のと同じだよ
「誰も愛してない」だって?
それは「愛されるのが当たり前になった甘ちゃん」だからだよ
応えるそいつが憎くてたまらなくて
思いっきり殴った
拳から滴り落ちる深紅に染まり
床に這いつくばって僕を見上げると
そいつは高らかに嘲笑った
僕は殴り続けた
砕け散った鏡の中に
無数のそいつを見つけては殴り続けた
真夜中の雨飛沫が窓ガラスを叩く中、僕が拳を振り下ろす音とそいつの嗤い声だけがいつまでも、いつまでも止まなかった