礼音・2022-07-27
貴方へ贈る愛の色
グループリレー合作やる人
・涼、
・碧
・礼音
順番
1、涼、
2、礼音
3、碧
リレー合作タグ
#貴方へ贈る愛の色
開始日
2022年8月1日
いつからかは分からない、
ただ
私の日々にはいつも貴方がいた。
それを思い返す度
どうしようもない愛おしさが
言い表せない高揚感が、
私の中にあった。
これが俗に言う『恋』なのか
はたまた違うものなのか、
私には分からなかった。
ただそこに
誰にも言えない『愛』が
誰にも理解されぬ『愛』がある
それだけは、
自分だけが理解していた。
「菜奈(なな)ー、帰んねーの?」
1人で教室の掃除をしている私にそう話しかけたのは、
小学生の頃から何かと同じクラスになる事が多かった友達の唯斗(ゆいと)。
『帰っても暇だし、
それくらいなら学校いた方がマシだからw』
「なんだそれw
てか暇なら遊ぼ、ゲーセン。」
『お、いーね、行こ。』
皆からは付き合わないのか聞かれたり、
唯斗を好きにならないか聞かれたりはする。
だが、私も唯斗も【好き】という感情を知らない。
ただ
こいつと一緒にいると安心する、
それだけはお互い理解していた。
時計の針が進む音と、
紙に文字を綴る音。
そして、咀嚼音。
その3つの音だけがよく聞こえる部屋。
私は課題を進めていた。
『……んー…!
疲れた…。』
『てかここわかんな、
なんだこれ。』
『……そーだ。』
「もしもーし、聞こえる?」
『ん、聞こえる。
ありがと。』
「いーえ、急にどした?」
『分かんないとこあるから教えて。』
「それだけかよw
どこ?てかまず教科なに?」
『数学、今日から新しいところじゃん?
それの応用がわかんなくて。』
「あー、それか、んーっと……、」
『ありがと、だいぶ分かってきた。』
「はーい、じゃそろそろ切るわ。」
『え?』
「んー?」
『……あー、いや、
なんもない、今日はありがとね。』
「あーい、またあしたー。」
『また明日…。』
なんで私、
【どうして通話切るの】って、
思ったの。
次々と生徒が教室に入ってきて、
最後に先生が来る。
ホームルームを終え
授業の準備をする者や友達と話す者、
教室を出ていく者がいる。
そんな中、私も席が近くの友達と話していた。
話途中に友達から目を離し、
教室を見渡す。
すると、合う目が2つ。
唯斗だった。
唯斗は私に気付き手を振った後、
こちらに移動してきた。
「なー、
今度の三連休遊び行かね?」
「お、おはよー、
お前いつも早いじゃん。」
『私より早く来てるお前に言われても。』
「なんて事をw
てかあいさつ、ちゃんと返しなさい。」
『おかんかお前はw
おはよ、唯斗。』
「ん!おはよ。」
早く来たせいでまだ唯斗と私しかいない教室。
いつも通りなのに、
今日はどこか違うように思えた。
いつもよりも綺麗に見えるというか、
明るく見えるというか。
なかなか言い表せないこの教室の感じ。
違和感こそあるが、いつも以上に安心できた。
「お前今日はよく寝れたん?」
『……?なんで?』
「いつもは朝機嫌悪いのに、
今日は凄い良い感じだから?」
『だから?ってw
よく眠れてはないけど、機嫌はいーよ。』
「なんかいい事あった?」
『ちょっとだけね。』
「え、何があった?」
『誰が教えるか。』
「はー?ww」
『ww
他の人とか先生来るから早く準備しよw』
「えーお前すぐはぐらかすーw
分かったけど今日の帰り絶対教えろよw」
『覚えてたらねw』
今日も一緒に帰れると思うと、
口角が上がりそうになる。
こいつと一緒に帰るために
私はいつも最後まで教室に残っているのかもしれない。
『はー……なんなんだろ。』
自分の部屋の椅子に座り、
ため息をついた。
今日の帰り道、
唯斗と話した<恋愛の話>が頭の中に残る。
普段はあまり話さないような事なのに、
急にどうしたのか。
もしかしてそういうのに興味が出てきたのか。
告白でもされたのか。
聞かなければ分からないような疑問が、
ぐるぐると回る。
『私らしくねーなー……。』
どうして唯斗が急に恋愛の話をしたのか、
なぜ私がこんなにモヤモヤと考えているのか、
全部が分からなくて、自分が少し嫌になる。
『…疲れてんのかな、
お菓子取ってこよ。』
「そういえば菜奈ってさ、
誰かと付き合いたいとかは思わんの?」
『別に思わないかな、
楽しければなんでもいいし。』
「変わんねーなw」
『唯斗もでしょw』
「だって付き合うとかめんどいじゃん、縛り付けられるのやだし。」
『確かにねぇ。』
「だから俺は付き合うとか別にいーの。」
『ww』
中身のない会話をしながら歩く、
ゲーセンからの帰り道。
私はあまり男子と話した事がないけど、
やはり唯斗だけは別だ。
どこか安心感があり、楽しめる。
その安心感は、家族のようなものとも
親友や恋人に抱くであろうものとも違う。
絶対的な安心感の裏にある、灰色に似た言葉に表せない感情。
苦しくて、不安定で、泣きたくなるような。
楽しくて、面白くて、笑ってしまうような。
自分の中に潜んだ『自分だけの感情』が、どこか異様な事。
それだけは理解していた。
『はー…。』
昨日の事がイマイチ分からなくて、
もやもやしながら通学路を歩く。
なぜ唯斗との通話が切れて、
唯斗から通話を切られて、
あんなに、呼吸が苦しくなったのか。
あんなに、せつなくなったのか。
『昨日のより、
分かんないじゃん……。』
答えが分からない事を考えても仕方がないと思い、考える事をやめ
いつも通りの道を歩く。
このまま行けばまたあいつに会えると思ったら、少し心が踊るような感覚がした。