《愛する人が亡くなった》
~彼女の家~
"あいつの部屋、相変わらず綺麗だな"
"もう疲れちゃったな。"
"俺もいっそ……ん?"
「俺への…手紙?」
『あなたがこの手紙を読んでいるという
ことは、私は死んでしまったのですね』
『私はたくさんの事を
やり残してしまいました。どうか、
私のやりたかったことを、
君が変わりに
成し遂げてくれませんか。』
『あなたに、私の願いを叶えて欲しい』
『満足するまで寝てみてください。』
『お腹いっぱい美味しいものを
食べてみてください。』
『趣味が無いあなた。何か没頭出来る
趣味を見つけて明一杯楽しんでみて
下さい。』
『私の所持していたものは、全て
捨ててください。
※パソコンのデータは見ないで下さい』
「めちゃめちゃ気になる…」
『いつか使うかも知れない空き箱を
取っておくのは辞めてください。』
「だって使うかもしれないんだもん…」
『新しい家に引っ越して下さい。』
『やりたいことたくさん挑戦して下さい』
『友達でもいい、家族でもいい。
愛する人と沢山笑って、』
『愛する人と、最後まで
幸せに生きて下さい。』
~数十年後、海辺で~
「なぁ…聞こえるか。」
「俺さ、お前の願い…全部叶えるつもり
だったんだよ。」
「でも、どうしてもひとつだけ
叶えられなかった。」
「ばかだよな。お前の事だから
それを叶えたら
俺が幸せになれると思ったんだろ?」
『 "私のことを、忘れてください。" 』
「違うんだ。」
「お前を忘れられなかったから、
俺は幸せになれたんだ。」
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End。