#遺影

心惹かれた瞬間にシャッターを切る。

画面の空に記憶の儚さを垣間見た。

記憶は共に霞みゆく。

この瞬間のコーヒーの美味さだって

カメラには映らない。

その悲しさも君は知らないまま。

小さな機械の中に収まった君は

酷く優しい笑顔で僕を見つめている。


小さな紙切れに収まった君は

いつだって飽きるほどに綺麗な顔をしている。

尊敬する人､
愛している人､
生命を捧げたい人｡




たったひとりのあなたに
３種類すべてが結実したので､
わたしとしては満足なんだ｡
いつだって死にたいわたしは
どうにかして死なずに生きるためには
生命を捧げたくなる相手が絶対に必要だし､
息をするよりも自然に愛しているし､
尊敬できない人にはそもそも興味を向けない｡



愛しているよ｡
生命を捧げたいくらいに｡
なにより深く尊敬している｡



でもあなたが
わたしを受け容れられるようになるのは
当分先のことだろう｡
それまで
(自˙殺˙の場合も含めて)
わたしの寿命が持つかどうかはわからない｡
いまさら好きじゃないとか､駆け引きをしている場合じゃないし､そういう趣味はないし､時間も惜しい｡
だからわたしは書きたいことを書き遺す｡
遺言であり､遺作｡言の葉の醸し出す遺影｡

とくにあなたに対して抱いている絶対的な敬意は､いまのあなた自身の自己評価と噛み合っていなくて厳しい｡もし生前に意を汲んでもらえることがあったのなら奇跡だ｡愛よりも深い敬虔さが伝わる日は来るか｡

腐り切った体。
でも君との縁は切りたくない。

ごめんね。
ずっと好きだからさ。

脳ミソぐちゃぐちゃでも
嫌いになってもいいからさ。

「お願い、忘れないで。」

どんなにあなたに笑いかけても

笑い返してはくれない

どんなにあなたに泣き叫んでも

抱きしめてはくれない

どんなにあなたに助けてと言っても

話を聞いてもらうことは出来ない

どんなにあなたに寂しいと言っても

二度と声を聞くことは叶わない

どんなにあなたに逢いたいと願っても

生きたあなたに会うことが出来ない


でもね写真の中のあなたの前だと

本当の自分に戻れる気がするんだ

泣くことを忘れたはずの涙が

沢山こぼれ落ちてくる


出来る事ならもう一度あなたに逢いたい


天寿を全うして

私がおばあちゃんの姿で

あなたの前に現れても

どうか驚かないで私の話を沢山聞いてね


あなたに逢えた時

恥じることがないように

精一杯生きるから

咲き乱れた花に包まれて

額縁の中には笑顔の貴方