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#雰囲気小説

読んでると、
思わず胸がギュッとしめつけられる、
そんなポエムを集めました。

全11作品・







目玉焼きは、半熟よりやや固め。


朝は珈琲を1杯。ミルクを入れて、角砂糖は2個。

サラダのドレッシングは、この頃ハマっている玉ねぎのやつ。


全ての具材がトロットロになるまで煮込んだコンソメスープ。


ヨーグルトに蜂蜜をかける。甘いものが好きな君に合わせて、たっぷりと。




君の好みに合わせた朝食。


丁度よく焼けたパンをあちあち言いながら取り出し、その上に先程の目玉焼きをのせる。


プレートに全てを乗せてキッチンを出た。君の喜ぶ様子を想像して、頬が緩んだ。



朝の柔らかな光が窓から射し入る。


風を受けてカーテンが揺れる。君が一目惚れたカーテン。


「綺麗な水色だね」と言ったら「これは秘色だ」と怒られた。君のその感性がたまらなく愛おしいと思った。


「朝ご飯だよ」


テーブルにプレートを置く。食器がぶつかり合う音で、ソファに寝ていた君は起きたようだ。



「いい匂い」


「早く食べよう?」



寝ぼけ眼を擦りながら、ぺたぺたと歩いてくる。


2人がけのテーブル。壁側が君で、その向かい側が僕。いつもの定位置だ。


壁側の椅子を軽く引いてあげると、大人しくそこに腰を下ろした。



「ソファで寝ないでよ。身体に悪いよ」



「だって、」



僕も椅子に腰掛ける。気まずそうに目を逸らし、言い訳を探す彼女に微笑みかける。



「言い訳は、ご飯食べながらゆっくり聞いてあげるよ」



彼女がゆっくりと手を合わせ「いただきます」を言う。「どうぞ」と僕が言って、君はまず珈琲に手を伸ばした。



「あのね、やっと小説が書けたんだよ」



甘めの珈琲を1口飲んでから、君は嬉しそうに笑った。


思わぬ言葉に、サラダを食べようとしていた僕の手は止まった。


「え、」


「でもね、どうしても納得できてないところがあって」



カップを置き、トーストに手を伸ばす彼女。


カプリとかぶりつく。君のその、見ていて気持ちいい食べっぷりは大好きだけど、今はそんなこと言ってる場合じゃない。



「短編なんだけどね。書けただけで大きな進歩だよね」



呑気に君は「この目玉焼きの固さ好みー!」なんて言っている。そりゃそうだ、君の好み似合わせて作ったんだから・・・って違うくて、



「君、小説書いたの?」


「う、ん。まだ完全復活ってわけじゃないけど」



恥ずかしそうに笑う君。カサカサと原稿用紙を数枚取り出した。



「読んで、ほしい」
















『書けなくなった小説家である君と、君の小説が好きなあまり君を誘拐してきた僕の話』

舞雪・2019-08-25
1話
小説
リハビリ
第1作
創作
小説
と言い張る
note文庫
短編小説
自作小説
小説家
雰囲気小説
舞い落ちる雪のように
小説家の君と、君を誘拐してきた僕の話

読み終えた原稿用紙を君に返す。


食べ終えたのに、律儀に僕の目の前に座ってソワソワしていた君が恐る恐る顔を上げる。



「どう、だった?」



君の小さな喉仏が上下した。



「・・・面白かったよ、すごく」



素直な感想を口にする。面白かった、なんて一言じゃ、僕がどれだけ感動したかなんて伝わらないだろうけど。



君は嬉しそうに頬を染め上げる。



それどころか興奮して、椅子を倒して勢いよく立ち上がった。



「ほんとにほんと?嘘ついてない?」


「ついてないよ」



「神さま仏さまに誓って!?」



「うん。誓って」



テーブルに手をついて、君が詰め寄ってくる。


ほのかにシャンプーの匂いがした。君が好きなフローラル系のシャンプー。


同じシャンプーを使っているせいで、僕も女の子のようにいい匂いを漂わせるようになってしまった。



君が僕の瞳をじっと見つめてくる。



君の瞳は綺麗だ。いや、キザなセリフを言いたかったわけじゃなくて、僕は客観的事実を言っただけで・・・


その瞳で、いつも何を見ているのだろう。


僕はいつも気になっている。


君の書く文章は美しい。細やかに映し出される映像に、思わず酔ってしまいそうになる。


君の見ている世界は、君が書く小説の世界のように美しいのだろうか。



「よかったぁあ」



不意に君が、大きな声を発する。


そのままストンと椅子に座り込み、テーブルに顔を伏せた。



「これで面白くないなんて言われたら立ち直れないところだったー」


「僕が、君の小説を面白くないなんて言うわけないでしょ」



君の織り成す物語が好きで、こんなことまでしてしまっているんだから。


「そうだよねぇ。私の書く小説が好きすぎて、私のこと誘拐したんだもんねぇ、君」



満面の笑みで話すことですか、それ。


少なくとも、自分を誘拐した誘拐犯に向ける笑顔じゃないと思いますけど。



「いやぁ、人気者って困っちゃうなぁ」



満更でもなさそうに君は笑う。なんとも気まずくなった僕は、「珈琲のおかわりいる?」と下手くそな話題転換を試みた。



「今度はココアがいい!あまーいやつ!」



君のカップを手に取って、そそくさとキッチンに逃げ込む。



これでココアを作るまで、僕の心の平穏は保たれる。


キッチンの壁に寄りかかって、胸を撫で下ろしていると



「それで、次の作品について相談なんだけどさ」



僕の心の平穏を乱すことが大得意な君が、ひょっこりとキッチンに現れた。


危うく、手に持っていたカップを落とすところだった。


そんな僕の心情など知りもしないであろう君は、ご機嫌な声色で話し続ける。



「誘拐された少女と、誘拐犯が徐々に惹かれあっていく、みたいなのどうかな!」



鬼ですか、君は。














『ちょっとずつ書けるようになってきた小説家の君と、
そんな君に翻弄される僕の話』

舞雪・2019-08-25
2話
小説
前回の続き
第2作
題名つけるの手伝ってください
この前の続き
創作
リハビリ
雰囲気小説
note文庫
舞い落ちる雪のように
小説家の君と、君を誘拐してきた僕の話


『薄明の逢瀬』




ごめんなさい。


君はそう言った。沈みかけの夕日が、君の横顔を照らす。


「君との逃避行は魅力的な提案だけど、受け入れることは出来ないんだ」


「どうして、」


「私が私であり、君が君であるから。理由はそれだけだよ」


君は立ち上がり、僕に笑いかけた。


日は沈むけれど、沈んですぐ暗くなるわけではない。

この僅かな時間、僕たちは逢瀬を重ねてきた。



「じゃあ、また。昼と夜が交わるときに会おう」




僕の指先は、君に触れる前に溶けた。












『昼と夜の僅かな交わり』

舞雪・2020-01-07
小説
舞い落ちる雪のように
ずっと真夜中でいいのに。さんにハマってる今日この頃。
カッとなって書いた
雰囲気小説
深く考えたら負け
ぴったり200文字で小説書いてみようチャレンジ

これらの作品は
アプリ『NOTE15』で作られました。

他に11作品あります

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『孤月の思惑』





この世の美しいものは全て、彼女の引き立て役なのかもしれないと思った。

なんとしてでも手に入れたいと、醜い欲望を抱いたのもその時だ。


「私が欲しい?」


形のいい眉が跳ねた。


「どうしても、貴女を僕のものにしたい」


僕を突き動かす欲望を、彼女は全て見透かしているだろう。


「一生の贅沢を約束する。貴女が僕のものになるのならば、どんな浪費も惜しみはしないよ」


酷いことを言っている自覚はあった。


彼女が目を細めて、笑った。























『「無一文になる覚悟はお有りで?」』

舞雪・2021-01-26
違うアカウントのやつを再投稿
ぴったり200文字で小説書いてみようチャレンジ
雰囲気小説
小説
創作
舞い落ちる雪のように

【君の影】







『私はずっと貴方の側にいるから』

微笑んだ君の笑顔を、僕は未だに忘れられない。


         サソ
あの日、妖艶な蝶に誘われて
      イザナ
鈴蘭の音色に誘われ、


僕は、君に呪われた。



恋という甘い蜜が全身を巡り、麻痺させる。



好きだと言う言葉は君を亡くし余計、僕に付き纏う。



もういいだろう…?




「これ以上、僕の中に居るのは辞めてくれ…」


未来を見たい、忘れたい。

けれど、君がそうさせてくれない。








君は毒花だ。











僕を蝕み、脳内を犯す。





















君の影が、狂い咲く。

琉・2020-08-18
君の影
星巡り
ぴったり200文字で小説書いてみようチャレンジ
ポエム
創作
短編小説
あなたのそばに
雰囲気小説

【僕を選んだ君と】




『人生の要というのは、何か分かる?』

「…いや」

廃れた駅の構内。君は一点を見つめる。

『生に…しがみつくことよ』

すとんと君は線路へ降りた。

白いワンピースが揺れる。

「じゃあ君は、人生の要を捨てたのかい?」

『えぇ。貴方と一緒になると決めた時には、もう既に』

少しだけ、苦しそうに君が笑う。

『それほどまでに、愛しているのよ』


君がホーム上の僕に手を伸ばす。









生と愛が僕らの間で歪に跳ねる。






















僕は、君の手を取らなかった。

琉・2022-08-28
僕を選んだ君と
雰囲気小説
ポエム
星巡り
ぴったり200文字で小説書いてみようチャレンジ

助手席で座ってるだけのわたしにはきみが隣で何をしているのかはよくわからなかった。運転免許を取ろうとすら思った事がないわたしは、たぶんずっときみに甘え続ける気でいる。

「水。飲みたい」

もう半分くらいに減っているペットボトルを取った。ストローをさすために空きっぱなしのそれをこぼさないように。きみはストローを口で捕まえてほんとに一口飲んだのかもわからないくらいの量を飲む。わたしには水はただ揺れただけに見えたけれどストローから離れた口にありがと、と言われたから飲んだのかなと思うしかない。

高速道路も車がぎゅうぎゅう詰めならば一歩一歩踏みしめて進む人並みの速度でしか進めない。わたしもきみも夜ばかり起きてるような生活をしているから眠たくはなかった。眠くてもきみをひとり夜に取り残して眠る訳にはいかなかった。夜ばかり起きてるわたしは夜に弱い。きみがいなければきっとどんどん気持ちが沈んでって過去の失敗と現在進行形の失敗(夜眠らないこと)に蝕まれ続けていた。きみがそうとは限らないけど、それでも起き続けなければとは思っていた。目の前を走る車の光は目が痛くなるほど眩しいから横に目をそらす。月はきみのほうの窓にいて見えないから代わりに街の灯りっぽいものを見る。あっおなかすいた。飴しかないけどポテトとかしよっぱいものが食べたい気分だ。どうせそのうちサービスエリアにつくし、と思う。一応きみには飴いる? と聞いておく。いる、と言われたから飴の封を切って喉につまらないようと考えながら口に入れた。考えてるだけだったから指はきみの唇に触れることもなかった。きみもおなかすいてるのかな。りんご? と聞かれたからたぶんとゴミ箱を見てみたけど飴のゴミは見当たらなかった。

「次のサービスエリア寄りたい」

「うん。トイレ?」

「ごはん」

「あっ、僕も」

でももう高速出るからサービスエリアないかも、ファミレスでいい? 地理を把握してないわたしと違ってきみは頭に地図が入ってるみたい。どこでもいいよと返したらじゃあ一番近いところにしよ、と言われる。こういうときにきみに甘えてるなと思う。車はまだ一歩ずつしか動かない。

「あー、音楽とか聞く?」

そう言うときのきみは音楽が聞きたい。だから何聞きたい? と聞く。なんか適当に、と言われるからほんとうに適当にスマホで音楽を流す。充電は50%もなかった。こういうときはきみを甘やかしてると思う。実際にわたしはきみに甘えなくてもたぶん生きていけるからこそきみを甘やかすことだってできた。運転免許を取ればわたしは運転ができて、地図を覚えればわたしはサービスエリアでもファミレスでもどこへでも行けて、眠ってしまえばわたしよりもずっと強い夜からだって逃げ出すことができた。それでもきみにいてほしいからきみがいないとなにもできないままでいようとする。車も地図も夜もいらないからきみだけにそばにいてほしいと願って、

taya・2021-05-28
創作
雰囲気小説

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