ぐらぐら・2022-08-08
靴磨きの青年
小説
【靴磨きの青年】 2話
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くつみがきのせいねん
〜オリジナルフィクション
2022.8.8執筆
「良ければ靴を磨いてかないかい?時間はとらせませんよ」
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そこでひさはやっと、
その青年が靴磨き職人の格好を
していることに気が付いた。
ナンパじゃ、なかったんだわ。
自分が恥ずかしい誤解をしたと知って、
ひさは黙ってしまった。
「足元が綺麗だと幸運になれますよ。どうだい?」
そう言われて
今度こそひさは顔を赤くした。
革靴の端が汚れてしまっている。
ひさは今朝のことを思い出した。
本当は、新しい靴も用意していたのだ。
でも、もしたくさん歩くのなら
履き慣れた靴が良いと思い直して、
出る直前でいつもの靴に替えてきたのだ。
汚れに気が付かないなんて、
浮かれていると思われたかしら。
だらしない女と思われた?
ひさは、その時自分でも不思議なほど
酷く悲しくなったのだが、
青年は朗らかで
少しも自分を責めているようではなかった。
待ち合わせまでには
まだ随分時間がある。
「すぐ済むのなら…」と
ひさは青年の申し出を
受け入れたのだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜おそらく続く