#＂あーん＂の魔法

付き合いたての私たちは

あーんなんてしたことがなく

二人とも言い出せない状態にいた


すると君が

＂…君のかき氷、食べたいな＂

沸騰しているかのように

顔を真っ赤に染めあげながら

私の目を見て言ってきたのだ


私も恥ずかしくなって

＂い、いいよ…＂

と俯きながらも答えた


少し間を開けて

緊張しなくなった君が

＂あー＂

と口を開けて待っていた


すごい速さで鳴る心臓は無視して

ストロースプーンで一口分掬った


＂あー…ん＂

＂…んへへ、美味しいね＂


見るだけでも味なんて

分かりきっているはずなのに

まるで初めて食べたのような

笑顔で"美味しい"という君は

とてつもなく可愛かった



そのあとの花火も

二人とも少し照れながら

恋人繋ぎで手を繋げたので

二人とも満足したのだった