夏野 栞・2024-10-27
8万年後の君へ。
短編小説
8万年後の君へ。
「8万年も経ったら、
世界はどうなってるんだろうね。」
「…えっ?」
僕には川上星奏という幼馴染がいた。
彼女は生まれつき、
ある病気を持っていた。
けれど詳しくは教えてくれなかった。
物静かで、
第一印象は怖いと思われることが多い。
友達は多い方だが、
あまり関わらないようにしているらしい。
「ねぇねぇ」
「どうしたの?星奏」
「今日、アトラス彗星が見えるんだって」
「アトラス、彗星?」
「そう。次見れるのは
8万年後なんだって。」
「8万年!?」
「だから、一緒に見たいなって。」
「…もちろん!」
「ほんとに?よかった。」
星奏は昔から、
星について詳しく、
よく一緒に星を眺めていた。
「せっかくなら、屋上で見ようよ。」
「いいね!
てか、屋上あるっていいよなー」
「あたしのお父さんが
星を見るのが好きなの。」
「へー!」
「じゃあまた屋上で、」
「うん!」
「絵、かくの?」
「うん。アトラス彗星って、
意外とゆっくり流れるらしい。」
「それなら、絵もバッチリかけるね。」
「ほんとに見えるのかな?」
「うーん…てか、調べてないの?笑」
「見えるって聞いたからさー」
星奏はいつも人の事を信じすぎで、
よく騙されていた。
同い年の男子の些細な嘘で
振り回されている所も目が腐るほど見た。
「…」
「ねぇ、」
「ん?」
「8万年後も経ったら
世界はどうなってるんだろうね。」
「…えっ?」
「あたしさ、
もうすぐ星になるの。」
「それってどういう…」
「大丈夫。」
「…」
「人はどうせ消える運命なんだから、
いつなくなっちゃったって
何も変わらないよ。
なーんて。嘘、だよ。」
「…」
それは何故か、
どうも嘘には思えなかった。
「星になれたら、いいのになー」
「星、か」
「星って数億年生きれるんだって。」
「星に寿命あるんだ。」
「小さい頃教えてあげたじゃん。」
「そうだっけ、ごめん。」
「見えないねーアトラス彗星。」
「ねぇ、ほんとに嘘?」
「…何が?」
「ほんとに、まだ生きれるの?」
「…笑
察しのいい君のことは騙せないか。」
「…8万年生きよう。」
「え?」
「8万年後、
アトラス彗星が見れる場所まで、」
「そ、そんな笑。私のためにまで、
というか、8万年後の世界だなんて
あたし、考えられないよ。」
「…」
つい、先走ってしまった。
君のいない未来なんて、
考えられなくて。
「8万年生きよう宣言。」
「…」
「一緒に生きよう?」
「…うん!」
君に、少しでも前向きに生きて欲しくて、
僕を犠牲にしてでも、
君に生きて欲しくて。
「ずっとそばにいるから。」
そして、この世界に終止符を.