#OneNightOnly

過ぎ去った時間に

『もし』や『だったら』は

虚しさを増すだけ

時間には限りがある

ならばいっそ

悔やまぬように生きる

『花束』

風に舞う長い髪を

翼のように広げて

飛べたらいいのに

野の花を摘みながら

心は少女のままに

絶不調のなか
死んだように眠り続け
時間の感覚が麻痺してる

ひと口運んだスープの中に
小さな野菜があった
その花のエピソードを思い出す

マリーアントワネットが好んで
髪に飾ったらしい美しい花

いまも何気にいただく食物は
人知れず美しい花を咲かせてる
古の花々に思いを馳せ
夢にまどろむ

深夜　皆が寝静まり
静寂の中　包丁を握る
山盛りのプルーンを
一つひとつ、割って種を出す

おおよそ3kgほど処理して
適量の砂糖を加えグツグツと
原型がなくなるまで煮込む

限りなく黒に近い濃い紫に
レモン汁を数量垂らすと
たちまち鮮やかなワインレッドに
様変わりする姿は女神のようだ

などと思いながら火を止めて
殺菌消毒した瓶に流し込む
後は自然に冷めるのを待つだけ

一息ついて珈琲豆を挽き
暫し深呼吸して贅沢な時に悦し
脳裏をかすめるのは彼等の事

入院中に知り合った仲間たち
皆、血が足りなくて貧血で
ただ奇跡や幸運を待つ身体は
宝くじの当選より遥かに遠い

プルーンは貧血に良いんだってさ
その言葉で毎年エールを贈る
気休めでもいい
神様に気づいて欲しい

どうか彼等の灯火を消さないで