七色お菓子・2020-02-15
一夜の彼
TWO
小説
バッテリーは100%
減らすことも保つことも
自分で決められる
余命は3年間
減らすことも保つことも
"延ばす"ことも出来はしない
「相席していい?」
顔を上げると金髪の男性がいる
「ドタキャンされちゃってさ」
いつもの私なら
声をかけられた時点で
逃げ出してた はずなのに
「…どうぞ」
相席なんか許しちゃって
あの 宣告 に振り回されてる
「カンパーイ!」
初対面の彼とグラスを合わせて
口にお酒を流し込む
さっきまでと変わらないお酒は
どうしてか初めて美味しいと思えた
「俺のことはミツって呼んで」
「うん」
"私のことは…"
頭の中で言いかけて止めた
彼の目が
そう言ってるみたいだったから
「よくひとりで飲むの?」
「たまに」
「じゃあ会ったことあるかもね」
初対面なはずなのに
ミツという彼は懐に入ってくる
「いくつ?」
「…29」
「へえ」
「なに?」
「答えちゃうんだなって」
聞いたのはそっちなのに
不思議な表情を浮かべながら
観察するみたいに真っ直ぐ見てきて
「大丈夫、俺より下だから」
え?
私より上だったんだ
どう見ても違って見えるのに
「これでも気にしてるんだけど」
彼は 童顔 を気にしてるらしい
「2つ上だからな」
「…見えない」
「だから言うなって」
童顔もあるんだろうけど
髪が明るいからなのもある気がする
「その髪が若く見せてるんだよ」
「似合うでしょ?」
すごい自信満々だけど
自分の悩みの原因ですよ
それに仕事とか大丈夫なのかな
まあ 人それぞれか
叶うならあの指を柔らかなあの声を
誰も知らない世界へ奪い去りたい
叶わないこの胸の痛みを抱き締めてく
それだけが僕にできる優しさだから