※この物語はフィクションです
※長編小説
※読まないで好き押すのNG
運命が残酷だなって感じるのは
きっと、きっと君のせい
#死神サマ/中編
Episode 1,
「なんでハトちゃんが、」
《わからない
朝起きてリビングに行ったら
ソファーで死んでたんだ…》
「どうして同じ部屋で
寝なかったんですか!?」
《女の子と同じ部屋で
寝るなんてできないだろう、
生徒と教師の関係だぞ?》
「そして、警察を呼んでる間に
ハトちゃんが消えたと?」
《そうだ》
「死体が消えるなんて、
ありえません」
《先生が嘘をついてるっていうのか?》
「そうじゃありません
見間違いとか、
そういうことはないんですか?」
《この目ではっきり見た
胸を3箇所刺されてて、
手首にGrim Reaper(死神)と
彫られていたのを》
「警察に通報するのに
何分かかったんですか?」
《2、3分だ》
「そんな短時間の間に
周囲に飛び散った
血液を全て拭き取り、
40キロ以上の女の子を
連れ去るなんて
無理に決まっています」
《でも、事実なんだ》
「私は信じません」
《信じなくて結構だ
俺は同じことを
警察にも話しているからな》
「 死神サマ を絶対に捕まえます」
先生は返事をしなかった
Episode 2,
「先生にあんなことを言ったけど
1人で成し遂げるなんて
無理だよね、」
教室に戻って机に突っ伏す
「誰か頭のいい人いないかなぁ…」
『おい』
「こういう時に現れる人が
実は一番カッコよかったり_」
『おい、聞いてんのか』
「…えっ、私?」
『お前以外いないだろ』
「何よ」
『ここ、俺の席』
「あっ、ごめんなさい」
急いで立ち上がる
気が動転してるせいで
一つ前の席に座ってしまっていたらしい
『お前の友達、残念だったな』
「ハトちゃんのこと?」
『ああ』
「私、絶対に 死神サマ
見つけるって決めたの」
『…協力してやってもいいぞ』
「?」
『 死神サマ を突き止めることだよ』
「本当に?」
『俺も違う学校に行った
友達が殺られて恨んでるからな』
「ありがとう」
『お前のことなんて呼べばいい?』
「なんでもいいよ」
『じゃあ、あひるで』
「ん?」
『俺が声かけて振り向いた時、
お前唇をとんがらせてるせいで
あひるみたいだったから』
「ひどいなぁ笑
まあいいや、
私はなんて呼べばいい?」
『逆に何が似合うと思う?』
「肌が白くて髪が真っ黒だから
ぱんだ、とか?」
『いいよ、ぱんだ嫌いじゃないし』
「よろしく」
『おう』
Episode 3,
放課後の教室で_
『俺も自分なりに調べてたんだ
最近この近辺で事件が多発するのは
死神サマ が行動を
起こしやすいからだと思う』
「つまり?」
『鈍感だなぁ、
死神サマ はもう俺らの
すぐ近くまで来てるってことだよ』
「確かに
テレビでも話題になってて、
あんまり
いいことだとは言えないけど
殺人の依頼も増えてるはず
それなのに
わざわざここら辺でしか
事件を起こさないのは
不自然だもんね」
『どうする?もし 死神サマ が
俺らのよく知る人間だったら』
「私は自分の
知らない人だって信じてるから」
『まあいい
問題なのは目撃情報がないことだ
この街にだって何台もの
防犯カメラがあるはずなのに
1回も映ってない』
「故意的に避けてるってこと?」
『そう考えないと、辻褄が合わない』
「随分とこの街に詳しいってことか、」
『性別さえも分かってないんだぜ、
一体どうやって捕まえる?』
「ねえ、 死神サマ は
この街内の依頼だったら
多分受けるよね?」
『絶対っていう確証はないけど
可能性は高いと思う』
「それなら、私にいい考えがある」
Episode 4,
『気は確かか?』
「危険なのはわかってる
でもなんとしてでも
突き止めたいの」
『だからって…』
私が提案したのは
以下のようなものだった
まずスマホで 死神サマ の
サイトにログインし、
依頼ボタンを押す
そして依頼者の欄に
偽名を入力し、
殺してほしい人の
名前記入欄に私自身の名前を入れる
つまり、わざと自分を狙わせて
死神サマ を捕まえる方法だ
『危険どころじゃない、
かなり危険だ
命に関わる』
「それでもいい
ハトちゃんと約束したの
必ず 死神サマ のフードを取って、
その正体を暴く って」
『フード?』
「悪役ってなんかフードを
かぶってるイメージあるじゃない」
『そうか?
俺なら単純に 死神サマ の
正体を暴いてくれって言うぜ?
わざわざフード
なんていう単語使う?』
「どうしてだろう
あの時は気にもしなかった」
『もしかして 死神サマ の正体を
知ってしまったから
殺された、とか?』
「でもそれなら
私に教えてくれたはずよ」
『教えられない理由があったとか』
「それって」
『「 死神サマ 本人が
近くにいたから?」』
Episode 5,
「いや、でもそんなはずない」
『周りには誰もいなかった?』
「ハトちゃんの
お母さんが殺された件で
家にお邪魔したのは
私ともっちーと彼女の
3人だけだったはず」
『ハトちゃんに何か
変わった様子はなかったの?』
「そういえば最後に会った時、
死神サマ の正体を一緒に
突き止めようとは
言ってくれなかった
どっちかというと
正体突き止めてね、頑張って、
みたいな感じで
ちょっと突き放したような
言い方された気がする
いつもだったら必ず
私に任せきりにしなかったのに」
『自分の命がもう長くないことを
もしかしたら悟ってた?』
「そうとも読み取れるけど、
だったら尚更
正体を教えてくれたはず」
『難しいな、その後は?』
「私は家に帰って、
ハトちゃんは
もっちーの家に泊まった
彼女、母子家庭だから
身寄りがいなくなっちゃって」
『で、次の日の朝には…』
「冷たくなっていたって
もっちーの家の
リビングルームで
胸を3ヶ所刺されて、
手には Grim Reaper と
彫られていたらしい」
『Grim Reaper、死神か…
戸締りとかは
バッチリだったのか?』
「まだ聞いてないの」
『鍵が開いていたのなら
他殺の可能性も疑えるが、
閉まっていたとなると…』
「もっちー?」
『ハトちゃんが
正体をバラせなかったのは
第3者がいたからか』
「本当に、もっちーが?」
『さあ?
でも、今のところ一番怪しい
まだ疑うのは早いけどな』
「うん、」
『もうそろそろ校門が閉まる時間だ
教室を出よう』
「私が提案した作戦はどうするの?」
『ちょっと考えさせてくれ
俺も色々調べてみる』
「そっか」
『ほら、また唇をとんがらせる
まるで本物のあひるだな笑』
「うるさいわよ、ぱんだ笑」
キャッキャ言いながら
教室を後にする2人を
ある人物がこっそり覗いていた
《俺が怪しい、か
なるほど、面白い》
唇の端を持ち上げて笑うその姿は
形だけ微笑んではいるが
目は氷のように冷たかった
次回予告
ゴーサインをもらえると
思っていた作戦が
あろうことか却下された
それでも諦めきれなかった私は
単独行動に踊り出る