#泡沫に去った婚約指輪の簪

『私を、連れて、逃げてくれない？』

そう、彼に言ったくせに、私は嘘を吐いた

『＿＿＿本気か？』

私と彼は一緒には居られない。

"叶うはずがない恋"

だから＿＿＿＿＿＿＿＿

『＿＿＿冗談ですよ。』と。

今夜、これから、彼女の"躯"に教え込む

僕が、どれだけ彼女を"愛している"か

"忘れさせないから"

僕が、僕が、こんなにも＿＿＿＿＿
＿＿＿君の事が、好きだって事。


僕の、僕だけの女。

『もう、俺の顔を見たくないか？
指一本触れて欲しくないのか？＿＿』

"お願い、もう、私に近づかないで"

（盲いていく女など、邪魔なだけ＿＿
＿＿だから、嘘を吐いた＿＿＿＿＿）

"貴方の婚約者にはなれないわ"

それなのに、貴方は＿＿＿

『もう二度と、俺に『愛している』と
＿＿＿＿言われたくないのか？。』

"＿＿＿＿＿＿＿＿"。

私には、好きな人が居ました。

どれだけ、時間が経っても＿＿＿
＿＿＿＿＿＿＿忘れられない人です。

きっと、一生、忘れられない恋。

"愛している、と言えなかった"

"消えたくなったら、俺を思い出して"

あなたは、私に美しい"簪"を渡して＿＿
＿＿＿遠く、何処か＿＿＿＿＿
＿＿＿＿＿＿＿遠くに逝ってしまった。

あなたに触れたいです、逢いたいです

もう一度、私に『 愛してる』と言って。

去り際に、ほんの一瞬だけ

彼が、私の髪に指を絡めた

ひどく、甘く、ふしだらな＿＿

ほんの一瞬だったのに＿＿＿＿

彼の指の感触が＿＿＿＿＿＿
＿＿＿＿まだ、私の髪に鮮明に残っていた

私が好きだった沈丁花を＿＿＿＿＿＿
＿彼は摘みに行って、小さい花束を手にし
＿＿＿＿彼は、よく渡しに来てくれた。

けれど、海辺に、私は、一人きりで

＿＿＿＿＿あなたを、空葬い＿＿＿＿＿。

もう、愛し合う事も、触れ合う事も

"愛している"と伝え合えないけれど

それでも、私は、また＿＿＿＿＿＿
＿＿＿＿＿あなたに、巡り逢いたいな。

"こんな嘘吐きな女＿＿
＿＿＿何処がいいの？"

"全部、僕は、その嘘ごと、君を愛す＿
＿＿＿だから、今度こそ＿＿＿＿
＿＿＿この、簪を、受け取ってくれる？"

彼の指が、私の頬に触れ＿＿
＿私の髪に、青の綺麗な簪をさし＿＿。

"愛している"。

彼の声に、眼差しに＿＿
＿＿＿＿こんなにも胸が高鳴る。

何故、こんなにも、愛おしい、と＿＿
＿＿＿＿想ってしまうの。

"やっと、僕のこの手で＿＿＿
＿＿＿＿＿抱きしめる事が出来た"


"やっと、君とキスが出来た"



"今度こそ、離してはいけない
＿＿＿＿＿＿＿＿離すつもりもない"

『俺は欲しかった、ずっと』

彼の言葉、声色、表情にも＿＿＿
＿＿＿＿＿＿迷いが見えなかった

深く口付けながら、彼の指先が＿＿＿
＿＿＿＿＿＿私の髪を、そっと梳く。

＿＿それが快くて、でも甘くて＿＿＿
＿＿＿私は、応えるように＿＿＿
＿＿＿＿＿彼の頬を、指でなぞる。


『私も、ずっとあなたが欲しかった』

＿＿＿君に、"愛している"と
＿＿＿＿＿＿＿＿伝える事が出来た。

永くかかったけど＿＿＿＿

＿今度、今度こそ＿＿


＿＿＿＿＿＿僕の婚約者になってくれる？

その女性の事を、想って泣くなんて

きっと、その女性とは＿＿＿＿
＿＿もう、逢えないのね。

他の女性を想い＿＿＿＿＿＿＿＿
＿＿こんなに愛しげに微笑む彼を

どうして私は好きになってしまったの？

躯も心も総てがあなたを求めている｡

あなた以外何もいらない｡

もう、何が何だか分からなくなっていた

ただ､熱気のこもった"寝室"が＿＿
＿＿＿"荒い呼吸"とスプリングの軋む音
＿"甘い声"に包まれていたのは確かだ｡

"お互いを呼び合い"

"お互いを求め合い"

ただ、快楽の海に深く深く溺れていった｡