『愛故殺人者』# 1
By藤守。
「俺アイツの事、嫌いなんだよね。」
私には好きな人がいる。
彼がモテているかはわからないけど、
個人的にはものすごくモテてる。
いつもは冷たくて
でも勉強の事になると優しくて
彼が勉強好きってわけじゃない
ただ彼の頭が良すぎるだけ
それに友達とも仲がいい
友達となら、すごく楽しそうにしてる
そんな所がすごく好き
そんな彼がある日
こう言った
「俺アイツの事、嫌いなんだよね。」
アイツとは
別のクラスの奴
陰キャとも陽キャとも言えない
よく女子と戯れてる
それを聞く前は
特に何とも思ってなかったけど
それを聞いてからは
私もアイツが嫌いになった
日に日に
彼のアイツに対しての悪口が
本格的になっていった
私は反対しなかった
反対したくなかった
彼に嫌われたくないから
どうすれば
振り向いてもらえるんだろう
そう考えた時はいつも
決まってアイツの表情が浮かんでくる
どうすればいいんだろ
ある日
テレビを見ていた時
あるニュースが流れていた
「○○容疑者は、殺人の疑いが、、、」
「、、、そうか
殺せばいいんだ」
恋というものは必ず
最終的には
死が選択肢となってしまう
朝早い時間
私はアイツのことを待ち伏せしていた
制服のポケットの中に
小さなナイフを隠して
「ねぇ。ちょっといい?」
「ん?君は、、、」
馬鹿げた顔してる
後で殺されるってのに
「今日の放課後って時間ある?」
「あるけど、どうしたの?」
「屋上に来て欲しい。」
(告白だと勘違いされてないだろうか…)
「えっでも、鍵は、、」
「大丈夫、鍵は壊れてる。」
「え壊れてるの?!」
「うん。」
「じゃあ、先生に言った方が、、、」
「そんなことはどうだっていい
ただ屋上に来てくれればそれでいい
言わなくていい
むしろ言わないで、お願い。」
「、、、はい、わかりました。」
「ありがとう。」
そう言って
私はすぐ後ろを振り返って
自分のクラスへ戻って行った
こんなにも緊張するとは、、、
放課後の時間になった
だいたいの人はみんな
玄関の方にいる
「、、、よし。」
行こう
私は早足で屋上への階段を登った
そして勢いよく
屋上の扉を開けた
アイツはまだ来ていないみたい
よかった
そう思った途端
少し下の方から足音が聞こえてきた
少しずつ近づいてくる
私は軽く深呼吸をして
屋上へ入った
扉を閉め、
アイツの視界に入らない所に隠れ
ポケットの中からナイフを取り出し構えた
心臓がものすごい速さで動いている
これで私は、、、
ゆっくりと扉が開いた
「来たよ」
私はアイツを目掛けて走った
グチャ
嫌な音がなった
腕が強く震えて、その振動で
刃が動いてしまった
アイツを突き飛ばし、バランスが崩れ
私もアイツと一緒に倒れた
走りすぎたのと、
倒れた時にぶつけたのとで、
足がものすごく痛い
アイツが少しだけ目を開けて言った
「どうして、、、」
私は動揺した
そして深呼吸して、言った
「全ては、あの人のため
本当にごめんなさい」
私はそっと手を合わせ、拝んだ
「神様、どうかこの人が
来世で幸せになれますように、、、」
私は扉から離れ
屋上を囲っているフェンスの前に立ち、
スマホを手に取った
「1、、1、、0、番、、、」
私は警察に電話をかけた
「、、、、、、はい。110番です。」
「私、人を殺しました。」
「、、、えっ?」
「人を殺したんです。私。」
震えはもう無くなっていた
その代わり
何か冷たいものが頬を伝っていた
藤守。・2022-03-02 #藤守。 #小説。 #『愛故殺人者』 #続きあります
