はじめる

#恋愛小説

読んでると、
思わず胸がギュッとしめつけられる、
そんなポエムを集めました。

全442作品・

『最後の花火』




これが最後。


君は夏が終われば、許嫁と結婚してしまう。


家庭の差なんか無ければいいのに


そんなどうしようもない思いは捨てて


今日だけはどうか


私だけの君だって


ひとりじめさせてください。










慣れない浴衣は息が苦しい。


いや、慣れより緊張のせいかもしれない。


青くて広い海を紅くて小さい金魚が伸び伸びと漂うような浴衣


その金魚と同じ色の帯を巻いて着飾った。


そっと下駄に脚を通すと、指の間が痛む。


少し歩くだけで足が疲れそうだけれど仕方ない。


最後に玄関の全身鏡と向かい合って身なりを整える。


藍色の巾着


朱色の髪飾り


君の隣に並ぶ笑顔


今日の私は自信を持って君の隣に並べるだろうか。


そっとドアを開けば、浴衣姿の君の後ろ姿が目に入り、心臓が跳ねる。


ドアの音に気づいた君が振り返る。


18時


君は夕焼けのオレンジに照らされていつもより輝いて見えた。


信じられないくらいかっこよくて、その姿を見ただけで頭がおかしくなりそうだった。


「すげぇ似合ってる。可愛い」


恥ずかしげもなくさらりとそんな言葉が飛び出してきて頬が熱くなる。


でもそれはきっと夕焼けが隠してくれる。


「そっちも、似合ってる…かっこいい」


恥ずかしさを飲み込んで告げれば君は嬉しそうに微笑んだ。


いつもと違う君と私


夏の雰囲気に呑まれて


いつも言わないようなことを口走ってしまわないか、けれど口走ってしまいたいような


もどかしい思いを抱いた。


つかず離れず、並んで歩く


カランコロンと下駄の音が耳をくすぐる


花火大会は目前に迫っていた。







会場に着けば、空は暗さを増していた。


蒸し暑い温度が私たちを撫でる。


人混みが祭りの雰囲気を引き立てていた。





2人並んで歩けば


私たちは恋人に見えるだろうか


そんなことを考えて口角が上がる。


屋台の間をゆっくり進む。


人の並が押し寄せて


自然と距離が縮まる


触れる肩がむず痒くて


心臓が破裂しそうだった。


「…腕、掴んでなよ」


右側の君が、左の腕を指さしてそっぽ向いた。


照れてでも居るのだろうか。なんて。


弾む胸を抑えて


そっと、君の左腕を掴む。


「ありがとう…」


手に伝うは筋肉のついた左腕


こんなにがっしりしてたかな なんて考えてまた恥ずかしくなる。



どうしよう


大好きが溢れてしまいそうで


ぎゅっと腕を掴む手に力を込めた。








二人で食べた焼きそばもかき氷も


あまり味がしなかったのは


緊張のせいか君のせいか


冷やしパインの冷たさが少し冷静さを取り戻して


甘酸っぱさを飲み込む。


どの味もきっと


幸せの味だった。






ヒュゥ


と音を立てて花火が上がり始める。


大きな破裂音が闇夜に咲いて、人々は空を見上げその大輪に見惚れる。


隣の君を見上げれば、光に照らされた君の横顔が


あまりにもかっこよくて


また腕を掴む手に力を入れた。


「綺麗だね」


花火の音と混ざりあって聞き取りにくいけれど


きっとそう、言ったのだろう。


私を見下ろす瞳


ぶつかる視線が恥ずかしくて、空に目を逸らす。



ああ、私幸せ


この時間が


ずっと続けばいいのに


君の隣にずっといられればいいのに


そう大輪に願った。



火薬の匂いが宙を舞っていた。











「わっ」


足がもつれて少しコケたところを君が支えてくれる。


慣れない下駄はやはり疲れる

赤く腫れた指は、靴擦れかもしれない。


「大丈夫?」


君は、やれやれ手のかかる奴だ とでも言いたそうな顔でそっと左手を差し出してくれる。


暑さに濡れた手だけれど


それでも君の手に触れたくて手をとる。



汗ばんだ手の恥ずかしさよりも


繋がれた手から


私の想いが全部伝わればいいのにと思った。




遠くで鳴く虫の音も


道路を走る車の音も


からんころんと鳴る下駄も


心臓の音には負けてしまうんじゃないかと思った。








家の前に着いてそっと手がほどかれる


急に生ぬるい風が手を掠めて


寂しさが手を伝う


もっと、触れていたかった。


「…あの…さ、」


君を見上げれば、私の心の中なんて全部読まれているんじゃないか と思わせる大人っぽい笑みで


「またね」


そう呟いた。





ねぇもう終わりなの?


いやだよ。行かないで。


まだ一緒にいたい。


「好き」


溢れた言葉は


咲かない花火のように


空に伸びただけだった。


君は私の頭を優しく撫でて


「…知ってる」


と切なそうに笑った。


ねえ


君も好きなんでしょ?


私だって知ってるよ。




飲み込んで


溢れないように


蓋をして


「…またね」


手を振った。


君の後ろ姿が見えなくなるまで


振り続けた。



きっと闇夜に紛れて


零れる涙は光らないだろう。




触れていた手の感触がまだ残っている


君を照らした花火の音がまだ脳をよぎる


君の好きが、まだ心を抱きしめて離してくれない




来年も再来年も君の隣で花火を見たかった


ずっと君の隣にいるのは私が良かった



ただ、見えなくなった君の残像を追いながら


金魚が泳ぐ海に雫を落とすことしかできなかった。




広い広い海を


泳ぎきることを夢見ることしかできなかった。

Sena❁・2020-07-13
小説
夏恋
短編小説
最後の花火
恋愛小説
叶わぬ恋
花火大会
ただ花火大会の話書きたかっただけ
あっためていた話
やっと投稿できた
自己満
senaの小説
senaの短編

『エンディングノート』




僕と君の出会いは


君のエンディングノートに刻まれただろうか






ガラガラと控えめに音を立ててドアをスライドさせる


「こんにちは」


「あなたは?」


ベッドの上で雑誌を広げる小柄な彼女は不思議そうに僕を見つめる。


初対面でも壁を感じさせない彼女は、とても気さくで人が寄る素敵な人なんだろうと一瞬で察する。


僕は彼女のことをずっと前から知っていたからか、初めて会った気がしなかった。


「君のファンて。…ところで今日は何の日か知ってる?」


「もちろん。今日は七夕」


彼女は窓外に視線を移し、まだ夕暮れのオレンジを眺めてニコリと笑った。


その真っ白な笑顔がオレンジの夕焼けに照らされて儚くて素敵だった。


「だから、逢いに来た」


「へ?」


彼女は僕の目に視線を移すと、首を左側にこくりとかしげる。


「僕が彦星で、君が織姫…なんてどうかな」


「ふふ。面白いこと言うね」


ふわふわ消えてしまいそうな、儚い笑顔


けれど夢と希望を持った力強い瞳を宿していた。


その笑顔を守りたいと


そばにいたいと


力になりたいと思った。


「ずっと、会いたかった」


これは、君が招いた年に一夜の物語とでも呼ぼうか。


僕はそれを語り継ぎたいんだ。


・・・


僕はメイクアップアーティストを目ざしていた。


専門学校に通って


バイトして


平々凡々な毎日を過ごしていた。


なかなか実りそうにない努力を


投げ出したくなって


人をメイクで輝かせることが好きなのに


好きなことが苦しくて


息が詰まる時があってしんどくて


何度も辞めたいと思いながらも向き合っていた。


そんな時、偶然見つけた


ある少女の闘病記という名のブログ。


開いてみれば、白い空間の白いベッドの上でにこりと微笑みピースを向ける少女の写真が目に飛び込んできた。


繋がれた管


細い手首


僕は素直に彼女を可愛いと思った。






彼女はアイドルを目指していた。


けれど突如発症した原因不明の難病により、入院生活を強いられ、思うように体を動かせなくなってしまった。


宣告は悲痛なもので、再びファンの前で踊ることは叶わないらしい。


歌って踊るアイドルが


歌いも、踊れもしない


絶望の縁に立たされた彼女はそれでも諦めていなかった。


まだ、ステージに立つことを夢見て


ただただ前だけを向いてた。


その姿は、ファンやこのブログと出会った人に勇気や力を与えたと思う。僕が与えられたように。


一私はご覧の通り元気ですー


一早くステージに立ちたいー


一ファンの皆さんに会いたいー


―皆と一緒に笑いたい―


頑張るから応援してくださいと


ファンの誰よりも前向きに生きていた。


病気なんかに負けないでと誰もが心からエールを送った。


彼女はどんな屈辱の中で生きているんだろうと考えても考えつかなくて


それでも前を向ける彼女が格好よくて愛おしくてたまらなくなった。


力を貰った


会いたいと思った


僕の手で彼女をアイドルにしたいと思った。










なんでもない日に訪問しても良かったんだけど、なにか理由が欲しかった。


彼女の願いと僕の願いを、叶えたい


そう思ったから、七夕に彼女に会いに行くことにした。


我ながらクサいとも思ったけれど。








彼女はブログの写真で見たよりも綺麗で、小さくて、儚かった。


そして写真で見た通り、アイドルの眼差しをしていた。


「僕は君の願いを叶えるから、君は僕の願いを叶えてくれないかな」


初対面にして、なんとも自己中心的なことを言って見せた。


仕方ない


年に一度の一日なのだ


加えて僕らの出会いは


おそらく最初で最後


「私の願いは、あなたじゃ叶えられないけどどうする?」


彼女は余裕を持った笑みで僕を見つめた


握手会でファンを虜にするような、惹き付ける魅力があってファンの気持ちが手に取るようにわかる。


「それは別にしよう。願いがひとつだけなんて決められていないよ。」


「なるほど」


彼女は顎に右手を当て、考える人の像のように何か考え込む仕草をして見せた。


「僕はメイクアップアーティストを目指してるんだ。君をお姫様に仕上げてもいいかな?」


「…素敵!是非お願い!」


彼女は目をキラキラと輝かせ、喜んで頷いてくれた。


ガサゴソと化粧品を漁り出せば、彼女はゆっくりと目を瞑った。



真っ白な肌


のりのいいファンデーション


大きな瞳


薄い唇


特に僕が力を入れなくとも、十分可愛かった。


「できたよお姫様。鏡で見てみて」


「…可愛い!!アイドルみたい…!」


君は十分アイドルなのに なんて零しそうになる。


鏡で自身と向き合えば、彼女はとても嬉しそうに鏡を上下左右に動かしてキメ顔をしている。


なんとも微笑ましい。


「喜んでくれてよかった」


彼女の喜ぶ顔を見ることが出来て僕は大満足だった。


「その笑顔を見るために僕はここへ来たんだ」


「ありがとう…私の願いはもう叶えてもらったよ」


意思の固いキラキラとした目で、得意げに彼女は頷く


頭の上にはてなを3つ並べた僕に、赤色の短冊を見せてくれた。


―あなたの笑顔が見たい―



ああ、君はどこまでも周囲を大切にする人なんだな


思わず僕は彼女の小さな頭に手を伸ばす


柔らかな髪ざわりが手のひらを伝う


「…私が死んだら、またメイクしてね」


切なそうな、嬉しそうな、複雑な笑顔だった。


「…約束する」


いつの間にか暗くなった室内が、夜を告げる


星々がちらつく夜空は病室からでも楽しめるほど美しかった。


「そろそろ、帰ろうかな」


独り言のように呟き、台上の電気のリモコンに伸ばした手が彼女に引かれる。


ふわり、柔らかな花みたいな匂いに包まれた


愛しさが溢れてゼロ距離の彼女をそっと抱きしめる



「彦星様、会えて良かった」



それが彼女の最後の言葉だったと思う。





きっと織姫と彦星もこうして想いを確かめ合うのだろう。


今宵は僕にとっての織姫を笑顔にできたならばそれだけで僕も満たされた。





それから数日後、彼女は天の川を渡った。


僕は彼女の美しい顔に2度目にして最期の化粧を施した。


きっと次の七夕は君に会えることを願うんだと思う。


彼女が金色の短冊に力強く記した願いを形見のように持ち歩いた。


その短冊を見れば僕はいつだって笑顔になれた。



「私の願いは、あなたじゃ叶えられないけどどうする?」


そんなハキハキとした彼女の声が頭にこだました。



―皆を笑顔に出来ますように―

Sena❁・2020-07-07
小説
七夕の願い事
七夕
7月7日
恋愛小説
恋愛
好き
好きな人
恋愛
短編小説
senaの短編
エンディングノート



『おとしもの』




初の告白は失恋に終わった



けれど諦めの悪い私は



途方に暮れながら放課後の廊下を歩く



想いが涙となってこぼれ出した



君のごめんの言葉が脳に響く



向かいから長身の男子が歩いてきて咄嗟に涙を拭う



ひとつ上の先輩だろうか





すれ違えば



ふわっと



フローラルが香り



大人の雰囲気に呑まれる




「あの、落としましたよ」



低音ボイスが脳内のデータを上書きする



振り返れば



彼は私の頭に手を置いた



「恋心」



ぽっかり空いた心の穴に



新色がはまった気がした

Sena❁・2020-06-16
ぴったり200文字で小説書いてみようチャレンジ
小説
どうよ
クサイ男だ
弱みに漬け込む系男子
響き悪いな
ショートショート
いや
ショートショートショートショート
くらいいってもいい
恋愛小説
恋愛
好き
好きな人
先輩
失恋
片想い
叶わぬ恋
senaの小説
senaの短編
おとしもの

これらの作品は
アプリ『NOTE15』で作られました。

他に442作品あります

アプリでもっとみる

『愛の剣』





雨が窓を叩きつける音が部屋中に響いていた。


ゴロゴロと嫌な音を立てて稲妻が宙を駆ける。


まだ濡れた髪をタオルで拭き取る。


彼の優しい匂いが私を包んでくれた。


自分のシャンプーの匂いと混ざりあって、それだけで満たされた。


「ねぇ、また今日女の子といたでしょ」


「あ?あー今日のはもう会わない」


私の好きな、生まれた時から一緒にいる幼なじみ。


彼は濡れた髪をわしゃわしゃと乾かしながらつまらなそうに呟いた。


こうして彼の家に居るのは毎日のことで、半ば家族みたいなものだった。


幼なじみとの純愛


つかず離れずを繰り返して、両片思いのふたりがようやく結ばれるハッピーエンド


そんなものを夢見ていたのだけれど


おかしなことに、いつからか狂ってしまったのだ。


「今日の女はダメだったなー。明日に期待」


彼はははっと不敵に笑ってグラスに注いだ酒を口に運ぶ


「ねぇ今日の女とその酒、どっちが美味しい?」


「酒」


その不敵な笑みに飲み込まれてしまいたいだなんて
やっぱり私はおかしいかな


なんて思いながらも、羨ましくそのグラスを見つめた。



最初はこんなんじゃなかったんだけどな


彼も


私も


「へぇー明日の子は美味しいといいね

私もまた男に言い寄られちゃってさー」


「へーいいじゃん遊んでやんなよ」


彼は私の話に興味がないようで、スマホに目を落とす。


その姿を横目に、自分も9パーセントのアルコールを口に含む。


今日の女の連絡先、削除しておいたけど気づくかな。



《狂ってる》



自覚はあるんだけど


感情って、コントロール不可能じゃない?


まあ私は『コントロール不可能』をコントロールしてるんだけど。わかる?


「私はあんたみたいな屑じゃないから遊んだりしない」


「言ってくれるねぇ」



ああどうしてこの人は気づかないんだろう


彼に歩み寄り、その頬に触れる


冷たい


この人の心のように


「私だけを見ればいいのに」


「そーゆーのいいって」


苦笑いで私の手をはける


どうして


気づかないのだろう


気付こうとしないのだろう


私がどれだけ貴方のこと好きか


認知しているあなたのスマホのロックナンバー


毎時SNSのログインを確認してること


勝手にたくさんの女をブロ削したこと


乗っ取ったSNS


勝手に共有した位置情報


盗み持っている家のスペアキー


毎年あげるバレンタインのお菓子に自分の血を混ぜていること


ねえ


気づいてよ


そっと彼の首に両手を添える


「なに?」


やってみろよと言わんばかりに挑発的な笑みで私を見上げてくる。


滑稽な。


絞めないと思ってるんでしょうね


「どうして、私を選ばないの」


「お前は幼なじみだろ?」


首に添える手に少し力を加える


幼なじみだから、なに?


少し苦しそうな顔をした貴方が可愛い


もっと見せてよその顔


ねえ


私のモノになってよ



その唇に口付けを落す


ほのかに酒の味がする


余裕のある表情でへぇと口角を上げる貴方


その顔が憎たらしい


憎たらしいほど、愛しい


「一緒に死のう?」


「は?」


右ポケットからライターを取り出して、カチッと火をつけて見せる


オレンジの光が ぼっと燃ゆる


「へぇ、怖いこと言うね」


けれど貴方はまだ表情を濁さない


ニコリと笑って私の髪に触れる


その骨ばった手が愛おしい。


どうしてそんな余裕そうなの?


今すぐこのライターから火種をばらまいたって良いのに


どうして


私を好きになってくれないの?


こんなに


好きなのに



そっと首から手を離し、彼の隣に腰を下ろす


「お前、そんなんだったっけ?」


そんなんて


なに?


「あなたには言われたくないな」


彼がグラスの酒に手を伸ばす


ねえ


気づいてる?



「うっ…ああ…おま…え…っ…うぐ」



そのグラスに


毒を盛ったこと




彼が首元を抑えて苦しそうにもがいている


ふふと笑みがこぼれる


そう、その姿が見たかったの


「貴方が悪いのよ?」


じたばたとうるさい足は滑稽だった


「さっきまでの余裕はどうしたの?」



青ざめていく彼の頬に手を伸ばす



「愛してる」



「お…い…まっ…て」


声にならない声が背中に呼びかかる


そのうちきっと、楽になれるよ


つかつかと真っ赤なヒールを鳴らして


彼の家を後にした


ああ悲しい


きっと今の私は



笑っている




雷雨の中、真っ赤な傘をさして歩いた


今にぴったりの空模様だ



今頃彼はどうしてるだろうか


考えて笑が溢れる


私のモノにならないアナタなんていらないの


ねえわかるでしょ?



これは愛よ



「さよなら」



稲妻が空を駈けた

Sena❁・2020-06-09
小説
愛の剣
恋愛小説
senaの小説
senaの短編
好き
好きな人
狂愛
恋愛

『ROY after』




ーもしお前が1人残されても、孤独を感じないで欲しい。


いつだって心はそばにいるんだ。…なんて言ったって精神論でしかないかもしれない。1人は1人なんだ。


だけどさ、綺麗事じゃなくて本当に心はそばにいると思ってる。お前もそうだと嬉しい。


それでも、お前が社会に溶け込むまで、大人になるまで、見守るために作ったんだ。


…ロイは、父さんでも母さんでもあるんだ。


見つけてくれたかな。


お前は大丈夫


だって俺の息子だから。



・・・


ロイが停止して俺は再び空っぽになった。


それでも世界は回り続けて止まらなくて


だから俺も止まっている訳にはいかなくて


就職して、穢れた社会に飲み込まれて揉みくちゃにされながら生きていた。


生物的に生きていても社会的に死んでいた。


ただ、生きる理由がひとつだけあって


だから死ぬ訳にも行かなかった。


今日AIと人間の共存は現実味を帯びてきている。


父が残したROYの存在もあり、父の周りでAIの研究が進んでいた。


俺は、ロイを生き返らせなければならない。


ちなみにこれが俺の生きる理由ではない。


そのための一歩に過ぎない。


悲しみに暮れている暇はなく


悲しみの体勢もつけて


気づけば俺はまた数年涙を流さなくなった。


ある意味俺は


俺の心は


ロボットのようだった。


ただ淡々と目の前の事をこなし


感情に揺さぶられるどころか


楽しいとも


嬉しいとも


悲しいとも


思わなくなっていた。


職場の人も奇妙に思っていたかもしれない。


言われたことを何でもこなす辺りは都合よく使えるからどうってことない。


けれどロボットのプライベートに付け込む壁を破る人は現れず


孤独を貫いた


父の周りの科学者達と試行錯誤 切磋琢磨


新しい世界を作り出していた。




多忙な日々でも


必ず週に一度は父と母に会いに行った。


今日も生きていますと


父の見据えた世界が近くに見えていると


報告して


力を貰っていた。




仕事を終えては父の作業場を借りて作業に没頭する毎日。


時折、自分は何がしたいのか彷徨いながら


まだ


まだ


目標には程遠い


もっと


もっと


頑張れ自分


そう言い聞かせて


孤独の音の中で


淡々と。



ガシャンと音を立てて手元の器具が床にバラける


呆然と力をなくした器具を見つめていた


もう、辞めたい


はやく



終わりにしたい





本当は


心が悲鳴を上げていた


誰か壁を破ってくれ


俺は孤独が嫌いなんだ


怖いんだ


孤独に慣れるわけなんかないんだ


だれか、聞いてくれ


俺の声を


俺の世界を


見てくれ


誰か


誰か


そう叫ぶ心に蓋をして


考えないように


囚われないように


作業に没頭した


けれど邪念は頭を邪魔して


俺は誰なんだ


俺は何なんだ


そんな葛藤


厭になる


消えてくれ


俺は


俺は




寂しい





・・・



『…本日、アンドロイドが意志を持って故障できるという世界を驚愕させたアンドロイドを生み出した科学者が亡くなりました』


『彼はアンドロイド設計に携わり、アンドロイドと人間の共存世界を作り出した一人で…』


『…故障したアンドロイドを復元した後、複数のアンドロイドを生産し、彼の父が作り出した第1号機ROYと共に亡くなりました』


『心の孤独を癒すアンドロイドは今後も誰かを救い続けるでしょう』



・・・


あとがき


『ROY』読んでくださりありがとうございます

久しぶりの連続。久しぶりのあとがき。果たしてあとがきの需要はあるのか…。

senaの中で新しいものを書きたいと思い書いたものです。
新しいものになったと思います。クオリティは置いておいて…

このような世界
癒しのアンドロイドとは行かないまでも

アンドロイドと人間の共存は何年後の未来か分かりませんが、きっと来ます

想像のつかないことは怖いですが
慣れというのは怖いもので
慣れてしまう日が来るのでしょう…


脱線しました

如何だったでしょうか


前後編で終わりの予定だったので、内容つめつめだったのと、アフターストーリーで補えてない部分多々あると思いますけど

見逃してください…

面白いと思っていただけたら幸いです


これからはまたいつも通りの恋愛小説でも書きます笑


なにかご要望があればいつでもどうぞです


最後まで読んでくださりありがとうございますm(*_ _)m

Sena❁・2020-07-04
小説
ROY
長編小説
連続小説
番外編
アフターストーリー
新しい感じに
なったかな
満足
ということで
senaの小説
アンドロイド
恋愛小説
愛するということ

【僕が愛を知るその日まで】
~プロローグ~


僕には、彼女がいる。
    ケイ
「ねぇ、佳君」
    ハル
「何?華瑠」

僕には勿体ないくらいの

「ふふ、呼んでみただけ」

可愛い彼女。

「なんだよ。…なぁ、華瑠。」

「うん?なーに?」

そんな彼女は、
僕のことを愛してやまない。

「華瑠はさ…僕が彼氏で良かった?」

けれど僕は、

「もちろん!私、佳君のこと大好きだから」

僕は、“彼女のことを愛していない”


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

はい、えーと、

急に小説(?)を書き始めたんですけど

多分びっくりしましたよね?笑

あの…ちょっと勉強しすぎて疲れたので

自分の世界に現実逃避しようと
思いましてね はい()

ただ、今回はあくまで予告編?です笑

予告兼プロローグにしようと
思ってるんですけど、

「これ、読みたいって思う人いるのか?」

って思ったんで、予告編です((()))
↪︎(追記︙プロローグになりましたっ!笑)

読みたいって思った人がもしいれば、

好きを恵んでやってください←

なんなら贈り物でもいいでs((殴

好き30以上、もしくは贈り物で

続きを書こうと思います
(欲張りすぎたげんぱく←)

よろしくお願いします(∩´∀`∩)バィバィ

如月 緋咲_今までありがとう・2020-06-07
【僕が愛を知るその日まで】
予告編
プロローグ
恋愛小説
小説
片想い
ドロドロ系になるかも()
読みたい人いるかな
よろしくお願いします笑
下手くそすぎた
切ない
難しい言葉はあまり使わないかも
読みやすくしたいから
ほんとはめんどくさいからとか言えない


extra小説

「眠り姫」
SEKAI NO OWARI





自室。

隣の机に突っ伏して勝手に寝ている

昔からの幼馴染の可愛い女の子

彼女の名前は「彩音」(あやね)という



今日は彼女が突然家にやって来て

「学校行くよ!」と叫ばれ

それを頑なに拒否したところ

自室に勝手に入ってきた挙げ句、俺に説教をかまし、

諦めるわけでもなく突然寝始めたのだ。




俺の机で。

まぁ、学校に行かない俺も悪いのだが。

勝手に寝られても困る。




ということで

起こすことにする。




彼女の名前を呼ぶ
「あーちゃん、あーちゃん」


返事はない。
彼女は何故か笑顔だ


いい夢でも見ているのかもしれない。
でも、こっちの立場としては悪夢だ。


「あーちゃん、あーちゃん」


返事はない


イライラして来た
「あーちゃん!あーちゃん!」


返事はない。



相変わらずとても美しく、可愛い顔で寝ている


ささやく作戦に出る。
「ぁーちゃん、、ぁーちゃん」


返事はない。






だんだん不安になってきた

もしもこのまま目を覚まさなかったら?

もしもこのまま息を止めてしまったら?

もしもこのまま深い眠りに落ちてしまったら?

彼女は世界そのものだ

いっつもいつでも一緒だった

二人で手を繋いでこの世界を冒険して来た

辛いことも、苦しいことも

幸せなことも、嬉しいことも

でも、まだまだ足りない。

まだまだ見たい景色がある。

まだまだ好きでいる自信がある

まだまだ手を繋いでいたい

俺にはあーちゃんしかいない

真っ当に肯定してくれるのも、

真っ当に否定してくれるのも

彼女しかいない。




寝顔を見ながらそんな事を思っていると
心配になってきたので揺さぶる

「あーちゃん。あーちゃん?」






「ぐーっ。ぐーうっ。」
すると彼女はイビキをかいて夢の中に戻った



 
「なんだよ」
杞憂に終わったので呟いた。



でも、なんだか嬉しいと感じてしまう自分がいた





毛布をかけてあげて
寝顔を見る。


あまりにも綺麗すぎたので

いたずらをする。

まぁ、今日ぐらいはイイよね

唇に「好き」を落とした。









君と僕とで世界を冒険してきたけど

泣いたり笑ったりして

僕らはどんなときでも手を繋いできたけど

いつかは いつの日かは



ある朝 僕が目を覚ますと この世界には君はいないんだね

驚かそうとして隠れてみても 君は探しにこないんだ


Ah 君はいつの日か深い眠りにおちてしまうんだね

そしたらもう目を覚まさないんだね

僕らがいままで冒険した世界と僕は一人で戦わなきゃいけないんだね

ボーっと火を吹くドラゴンも僕ら二人で戦ったね

勇者の剣も見つけてきたよね

Ah このまま君が起きなかったらどうしよう

そんなこと思いながら君の寝顔を見ていたんだ


こんな青空のときでもどんな嵐のときでも
手を繋いできたけど


こんなに嬉しいときもどんなに悲しいときも
いつかは いつの日かは


ある朝 僕が目を覚ますと この世界には君はいないんだね

起こそうとして揺さぶるけど 君はもう目を覚まさないんだ


Ah 君はいつの日か深い眠りにおちてしまうんだね

そしたらもう目を覚まさないんだね

僕らがいままで冒険した世界と僕は一人で戦わなきゃいけないんだね


Ah まだ見ぬ宝も僕ら二人で探しに行ったね
星が降る夜に船を出してさ

Ah このまま君が起きなかったらどうしよう

そんなこと思いながら君の寝顔を見ていたんだ


Ah 君はいつの日か深い眠りにおちてしまうんだね

そしたらもう目を覚まさないんだね

僕らがいままで冒険した世界と僕は一人で戦わなきゃいけないんだね



ボーっと火を吹くドラゴンも僕ら二人で戦ったね

勇者の剣も見つけてきたよね

Ah このまま君が起きなかったらどうしよう

そんなこと思いながら君の寝顔を見ていたんだ
















ここまで読んでくれて本当にありがとうございます
今回は短めです。
一応、前回投稿した物と繋がっています。
感想くれると嬉しいです

今回は僕が世界で一番好きな曲を書きました
楽しんでくれたら嬉しいです

次は決めていませんが、「黒い羊」は候補にずっとあります

何かリクエストあったら教えて下さい
よろしくお願いします

そして、ありがとうございました

fool・2020-07-03
小説
感想
SEKAINOOWARI
歌詞
好きな歌詞
好きな曲の歌詞
眠り姫
短編小説
物語
創作
恋愛
好き
好きな人
恋愛小説
extra小説

『梅雨に惚れる』



ジメジメとした空気に包まれる。じわりと暑さが込み上げてなんとも鬱陶しい。


窓を打ち付ける雨は激しさを増し、地面の水溜まりは湖と化していた。


これでは当分帰れそうにない。


下校時間をとうに過ぎた玄関に座り込み、雨のカーテンを見つめ溜息を零す。


「帰れそうにないね」


隣に座るクラスメイトの少女はもう諦めの表情で外の雨模様を見ていた。


「傘ねぇしなあ」


生憎2人とも傘を持ち合わせておらず、途方もない状態だった。


雨が上がるが先か、日が落ちるが先か。


言うまでもなく、後者だろう。ただでさえ暗い空はいっそう暗さを増してきていた。


日は出ていないが日が暮れてしまう。


そろそろ施錠担当の教師が追い出しに来てもおかしくない。


「これだから梅雨は嫌いだ」


ぼそりと愚痴をこぼす。もちろん、雨に罪はない。


最も、梅雨に傘を忘れるのが悪いのだ。朝は曇り空だったのをいい事に、油断をしてしまった自分を悔やむ。


みんな梅雨にしっかり溶け込んだようで、俺たち以外に雨宿りしている生徒は見当たらない。


「梅雨だねえ」


隣のクラスメイトの少女はつまらなそうに、膝に片肘をつきながら、先程と変わらず雨を見つめていた。


「雨嫌いじゃないの?」


「別に」


君はそんなに嫌そうな顔をしているくせに、雨が嫌いではないらしい。変なの。


ザーという雨の音と共に雨がコンクリートに染み込んだ匂いが鼻をついて嫌気がさす。


雨の音は癒し効果があり、寝る前に聞くこともあるが、こんな土砂降りじゃ癒されることもなければ眠れもしない。


「雨だって悪いことばっかじゃないよ」


相変わらず睨みつけるように雨を見つめる君がつぶやいた。


「例えば?」


「こうして君と居られる」


は? と声が漏れた


急に時が止まったように、雨の音が耳に入らなくなる。


頭が混乱していた。


そんなこととは露知らず君が雨から俺に目線を移し、にこっと笑った。


その笑顔に心を射抜かれた


「どう?」


そう言って俺を覗き込む君が、ただのクラスメイトには見えなくなってしまって焦る。


「…悪く、ない」


誤魔化すように雨に目を逸らす。顔が熱く感じるのは、蒸し暑さの所為だろうか。


君は満足そうに笑って再び雨を見つめていた。


雨の音をBGMに2人は話を弾ませる


なんだか雨の音が愛しく思えた。




この雨が止めば君との時間も止んでしまう気がして


それなら



やまなくてもいいと思った。



もう少し


君の隣にいたい


なんて思うのは


きっと


この雨のせい

Sena❁・2020-06-16
小説
これはきっと雨のせい
恋の始まり
短編小説
恋愛小説
恋愛
自己満にお付き合いありがとうございます
青春
いいな
私もこんな青春したい
このじわじわ始まる感じ
良いですよね
senaの小説
senaの短編
梅雨に惚れる

『真実の魔女』





あるところに容姿がとても美しい姫がいました


姫は隣の王国の王子に一目惚れをしました


なんとか王子と結ばれたい一心で彼に近づきますが、手強い王子はなかなか振り向いてはくれません


どうしてこんなに美しい私に惚れないのかしら


姫は半ば苛立ちながら、王国と王国を繋ぐ森を歩きます


すると、目の前に黒いマントを目深く被った老婆が現れました


「ちょっと、そこ通りたいからどいてくれる?」


美しい姫は自分より身分が低いと判断し、老婆に強く当たります


しかし老婆は一向に美しい姫の前を動きません


「ちょっと聞いてるの?!」


美しい姫が老婆の黒いマントを頭から外すと、白髪で青色の目をした老婆が美しい姫を睨みつけます


美しい姫はその切れた目に恐怖を感じて、息を呑みます


「あなたの願いは何」


老婆は低く、震えた声でそう問いかけます


「願い?」


「叶えてあげましょう」


にわかに信じ難いが、この吸い込まれそうな瞳はきっと本物だと信じ、思いついた願いを口にします


「王子が私だけを見ますように。あと、王子が私に婚約を申し出ますように。あとは…とりあえずそんなところかしら」


美しい姫の願いを聞くと老婆は強い光を放ち、消えました


「魔法はいずれ解ける」


そう言い残して。


「なんだったの…?」


美しい姫は上手く理解できないまま、王子とは別の男の元へと森をあとにします


・・・


あるところに容姿がとても醜い少女がいました


少女は同じ王国の王子の優しさに心惹かれていました


けれど身分の違う王子とお近付きになることなどできず、その想いを秘めていました


ある日醜い少女は、王子が隣の王国の美しい姫に恋をしていると知ります


醜い少女は絶望しました


そして、この醜い容姿と低い身分を恨みました


せめて私が美しければ、お近付きになれただろうか。


醜い少女は強い劣等感を抱きながら森を歩きます


すると、目の前に黒いマントを目深く被った老婆が現れました


「あの…どうされました?」


醜い少女はその老婆のただならぬ雰囲気を悟って、駆け寄りました


老婆はマントを頭から外し、醜い少女の瞳をじっと見つめます


「よかった、何ともないようですね」


醜い少女は綺麗な青い目をした老婆を見て安堵の息を漏らします


「あなたの願いは何」


老婆は低く、震えた声でそう問いかけます


「願い…?」


「叶えてあげましょう」


醜い少女はじっと老婆を見つめます


願いたいことは山ほどありました。
けれどひとつだけ、心から願って止まない想いを零します


「美しい容姿を手に入れたい」


醜い少女は涙を零しながら老婆を見つめます


すると老婆は強い光を放って消えてしまいました


「魔法はいずれ解ける」


そう言い残して。


醜い少女は混乱する頭で王国に帰りました


・・・


「姫、今日も美しい」


森で老婆に出会ってから、隣の王国の王子は美しい姫の虜になっていました


「愛しています。是非、私と婚約して頂けませんか」


「仕方ないわねぇ…わかったわ。あ、ちょっと別の人のとこいってくるわね」


けれど美しい姫は複数の男を手玉にとっていました


王子はその中の一人に過ぎなかったのです


王子は落胆しますが、美しい姫を愛していたので仕方なく受け入れます






数日後、美しい姫がまた別の男の所から、隣の王国の王子の元へ向かう森の道中

王子ととても美しい少女が話し込んでいるのを目撃します


美しい姫は、自分より美しい女を初めて見ました


「王子、私が好きなんじゃないの?」


美しい姫は強い怒りと焦燥感を覚えます


そこで美しい姫は自分が嫉妬していることに気が付きます


美しい姫が目の前の二人の間に割って入ろうと足を踏み出した瞬間


自分より美しい少女が強い光に包まれました


思わず目を瞑って、再び目を開いた時


目の前には先程の美しい少女とは似ても似つかない、とても醜い少女がいました


美しい姫は混乱します


まさか、王子があんな醜い少女を相手にするわけないと踵を返そうとした時


2人は肩を寄せて歩きだしました


咄嗟に美しい姫は2人の前に飛び出します


「ちょっと!この醜い女は誰!?貴方はこの美しい私だけ見てればいいのよ!」


「君は容姿が美しいだけだった。さよなら」


2人は幸せそうに美しい姫の前を去ります


姫は怒り狂いながら、願いを聞いてくれたはずの老婆を探します


「あんた!私の願い叶えてくれたんじゃないの?王子取られちゃったじゃない!」


老婆が美しい姫の頬を親指で拭います
そこで美しい姫は自分が泣いていたことに気づきます


「真実に気づいた時、魔法は解ける」


老婆はそう告げると美しい姫のもとを去っていきました


・・・

醜い少女は、内面を見てくれた王子に自分の本来の姿を打ち明けます。王子はそれでもいいと言ってたくれたのです。


2人は幸せに暮らしました



美しい姫は、手玉に取っていた男を全て捨て

真実の愛を探し始めました





真実に気づいた時


ふたつの魔法は解け


ふたつの物語は異なる方へ動き出したのです

Sena❁・2020-05-30
小説
ファンタジー
容姿
短編小説
恋愛小説
真実の魔女
真実の愛とは
美しい
醜い
senaの小説
senaの短編
どうでしょう
読んでくださりありがとうございます
恋の沼

『やんちゃ君はいつも謎ー気付かぬ恋心ー』



生徒会に属する私は、週に一度の放課後定例会に参加していた。


「…じゃあ今日はこれで。お疲れ様」


会長の締めで無事に書記という役割を終え、すっかり暗くなった外へと向かう。


靴を履き替え、昇降口を出ると涼しい空気が広がっていた。

そしてそこには最近よく視界をうろつくやんちゃ君が壁に寄りかかって立っていた。


なんで居るんだろう

私は気づかなかった振りをしてスルーを試みる。


するとやんちゃ君は私の前へ出てきて、私の動きに合わせて右左と進路を塞いでくる。

ああもどかしいなんだこの人!


「…なに?」


半ば睨みつける気持ちで背の高いやんちゃ君を見上げる。


「これ、間違えて配られた」


ぶっきらぼうに言い捨てながら、黄色いキャンパスノートを差し出してきた。
そこには、佐伯恵那と私の名前が書かれていた。


どうやら配布した人が間違えてやんちゃ君に配ってしまったようだ。席もそれほど近くないのにどんな間違えだよとツッコミたくなる。


「明日でよかったのに。ありがとう」


それにしてもこんな遅くまでここで待ち伏せていたのだろうか。

そこまでしなくても良いのに、親切なんだかお節介なんだかわからない。


「じゃあ」


そう右手をひらひらと振り、やんちゃ君の前を立ち去った。


ザッザッと砂を擦る音が右後ろ斜め45度辺りから聞こえる。やんちゃ君の足音だろうが、なんか異様に近い気がする。


校門を出ても、突き当たりを曲がっても、同じ距離感で足音がする。
さすがに不審に思って咄嗟に振り返る。


「わっ」


ぼふっと やんちゃ君がぶつかってきた。無論、私が急に振り返ったのが悪いのである。


いやいや、私が悪いのか?


「え、ストーカー?」


咄嗟になんとも失礼なことを聞いてしまった。
しかしそう思っても仕方ないだろう。


「送る。俺もこっちだし」


やんちゃ君はつまらなそうに言うと、今度は私の前を歩き出した。


送るなら黙って背後くっついてこないで最初からそう言って欲しい。


その前に、勝手に送ることを決めないで欲しい。


そうは言っても同じ帰路らしいので並んで歩く。
沈黙が流れ、2人の足音だけが響く。非常に気まずい。


少し歩いて駅に着き、丁度いい電車に乗る。
ドアの手すりに向かい合う形で立った。妥当なポジションだ。


ガタンゴトンと電車の音がいつもより大きく耳に響く気がした。


送るってどこまでだろう。
その前にやんちゃ君どこで降りるんだろう。


「あの…私、次で降りるんだけど」


「俺、2つ先」


なんだか会話が噛み合わなくて呆れてくる。
やんちゃ君のペースに飲まれている気がする。


はあ、と気づかれない程度のため息を小さく零し、外の闇夜を見送っていた。


『次はーー次はーー』


女性のアナウンスが車内に響いて、その珍しさとやっと駅に着いたことへの嬉しさが込み上げた。


「それじゃ」


そう言い残し、電車を降りると、なぜかやんちゃ君も降りてくる。


「え」


思わず声が漏れた。


そうしている間にプシューと音を立ててドアが閉まる。


「え、2駅先って…」

「送るって言った」


んあああ!と頭を抱えたい気持ちでいっぱいになる。


もうごちゃごちゃ言ってたって仕方がない。送ってもらおう。




2人並んで歩く道中。安定に沈黙が流れる。


やんちゃ君、本当に何考えてるかわからない。読めなすぎる。


私ははよくクールと言われるけれど、私以上にクールじゃないかこの人。




どこからか、焼き魚のいい匂いがしてお腹がすいてくる。

この時期にしては涼しい気候が心地よい。

車の少ない隙を狙って車道を渡る白猫が可愛らしい。


沈黙を誤魔化すように外観に気を配っていた。




「もう近いから、ここで良いよ」


そう私が切り出すまで、お互い一言も喋らなかった。


「ん」


「ありがとう」


一応送ってもらったのでお礼を言って、やんちゃ君に背を向ける。


「またね、佐伯さん」


思いもよらぬ言葉に、思わず振り返る。


やんちゃ君はひらひらと手を振って見送ってくれていた。


なんだそれ、可愛いことするじゃないか。


きゅっと心臓が締め付けられた気がした。


家に着くまでに、3回、振り返った。
やんちゃ君は同じ場所から1歩も動かず、同じように手をひらひらさせていた。


律儀だなあと思いながら、最後に大きく手を振って家に向かった。


変なの

やんちゃ君も

私の心臓も


何故かどきどきと高鳴る胸を抑えて家に帰るのであった。


この気持ちの名前を
私はまだ知らない

Sena❁・2020-06-02
小説
第2弾
恋愛小説
短編小説
好き
好きな人
大切な人
恋愛
senaの小説
気付かぬ恋心
やんちゃ君はいつも謎

『ROY #1』




22歳で俺は1人になった。


精神論ではない。実質的な話だ。


家族を、失った。


蔑むような冷たい風の中


灰色に淀んだ墓の前で両手を合わせる。


思えば怒涛の1週間だった。


元々幼くして母を亡くしていた俺は、兄弟も親戚も居らず、父と2人、この世にぽつんと取り残されていた。


けれど友達も近所の人も優しかった。


だから精神的に独りではなかったのが救いだった。


そうは言っても、家族はふたりぼっちだった。


父母兄弟と笑い合う友達が


どこからか聞こえてくる家族の笑い声が


羨ましくないはずがなかった。


一方で満足もしていた。


俺にとっては父とふたりきりの毎日が当たり前だったから。


それでも脅えていた。


いずれは本当の1人になるということ。


毎日頭の片隅に不安の腫瘍のような塊が居座っていた。


一人この汚れた世界に残されることを恐れて止まなかった。






しかし恐れていた自体は突然やってきた。


その日父は、いつも仕事から帰ってくる時間になっても


長針が何度回っても帰ってくることは無かった。


父は、不運な事故で突然死んだ。


目の前が真っ暗になる


いや真っ白だったかもしれない。


音を立てて崩れ落ちる何か


焦り 焦燥 唖然 恐怖 無力


いろんな感情が押し寄せて息が切れる。


何故か簡単な呼吸ができなくて


苦しくて仕方ないのに


涙は出なかった。


悲しくて悔しくて苦しくて仕方ないのに


無力だった。


どうしようもなかった。


もう22なんだ


ひとりで


全て


やらなきゃいけない。



役所の人に頼って


友達の親に頼って


近所の人に頼って


大学の人に頼って


哀れみの目にも


同情の目にも


耐えながら


一心不乱に


無我夢中に


必死で


目の前のやるべきことに取り掛かった。


人生で最も濃い1週間だった。


なんとか葬式通夜を終え、疲れきった身体と心で


独り、墓の前に崩れていた。


俺には、もう何も無かった。


空っぽだった。


全てを失ったようなもので


お先真っ暗どころか、盲目の中に断崖絶壁が足元まで迫っていた。


「なあ、堕ちてもいい?」


「そっちにいってもいい?」


記憶にない母にも、世話をかけた父にも


会いたくて堪らなかった


心が負けそうだった。


でもきっと父は


頑張れと言っている気がして


見守ってくれている気がして


ふわっと立ち上がり、静かな帰路へ向かった。


父の温もりがまだ残っている家へ。


匂い





手に取るようにわかる


今も同じようにいるようで



泣きたいのに


けれど現実は俺に突き刺さってくる。


大学の学費はどうしようか


保険は


固定資産税は


生活費は


とてもじゃないけれどバイト代だけではやっていけない。


就活だって目前だ。


ここで辞める訳にはいかない。


ひとり


一人


独り


なんて無力なんだろう。


例えば一日に二言しか言葉を交わさない日があったとしても、父がただそこに居てくれるだけで


存在があるだけで


どれだけ救われていたか


当たり前の幸せがあったか


改めて思い知る。


何よりも大切なものを失った俺は


もう思い残すことも無く、この世界に背を向けても良かった。


むしろ生きてる意味もなかった。


夕暮れ時


徐に、生前父が作業していた倉庫へ足を運んだ。


なにか、両親の元へ向かうのに丁度いい道具があるかもしれない

だなんて頭のどこかで考えていた


そんなこと、選ばない癖に。


ガシャンと鈍い金属の音を立てて倉庫のドアが開く。


埃っぽい匂いと木の匂いが鼻を突いてむせる。


父は建設会社に務めていた


事故当日も、家を建てていた。


倉庫には数多の木材と金属製の道具が散らばっていた。


一言で匠を感じる倉庫だった。


父親の大切な道具でまさか死ぬ訳にはいかない


父の思い出に埋もれて息苦しくて


踵を返そうとした時、工具棚の奥に暗幕を被った物体が目に止まった


物体は自分と同じくらいの大きさをしている


それが何だか気になり、そっと暗幕を取り払うと、人間のような物体が現れた


否、それはほぼ人間だった。


「うわあああ」


比喩ではなく本当に心臓が止まりそうになるほど驚いて腰が抜け、尻もちをつく


冗談じゃなくてお化け屋敷かと疑う


俺を驚かすために作りこんだのかと


そんなわけもなく、よく見れば物体は人造人間、アンドロイドだとわかった。


スイッチは入っていないようでアンドロイドは目を瞑っている。


女性のような顔立ちと体つきで


高い鼻と彫りの深い顔が特徴的だった


黒髪のボブヘアは手入れされたように艶が光っていた


父親の趣味だろうか


それなら遺伝だ


そんなことを考えてなんだか笑ってしまう


好みな顔であった


それにしてもアンドロイドは本当に人間そっくりで、全身に人間味が宿っている

見た目は柔らかかった


流れる前髪の隙間から、なにか文字のようなものが見えて、その前髪を払う


『ROY』


薄い橙色でそう書かれていた


名前だろうか


その文字に触れれば、人間より硬い肌が指に伝わる


「ロイ」


そう口に出した瞬間、おでこのROYの文字が青く光った。


「え」


少々の恐怖で身構える


アンドロイドだなんて、未だかつて見たことない


人間がAIと共存することが予測された世界と知っていても、受け入れ難いものがある。


アンドロイドはゆっくり目を開けて


その黒くて大きな瞳でまっすぐ前を見つめた。


「うご…い…た」


どんな原理だろうか


電池か電気か


彼女の動きは滑らかで、人間そのものだった。


黒い瞳を俺のおでこら辺に向け


「こんにちは」


そう呟いた


再び驚かされる


声は人間のように透き通っていて、電子感は感じない


「こ、こんにちは…」


恐る恐る呟けば、彼女はにこりとぎこちなく笑って


「この日を待っていました」


そう嬉しそうに話すのだった。

Sena❁・2020-06-28
小説
連続小説
長編小説
久しぶりの連続
新しいと思う
とはいえ安定の恋愛
私は恋愛小説家なので(笑)
仕方ない
前後編の予定です
長いのに読んでくださった方ありがとうございます
senaの小説
ROY
恋愛小説
好き
好きな人
人生
大切な人
愛するということ


extra小説


「RAIN」
SEKAI NO OWARI




ー朝ー
教室で忘れていた課題をする
雨が降っている。
土砂降りと言えるだろう
時期は梅雨だ


雨の日は好きじゃない


単純に頭が痛くなるから。







そして何故かもっとイジメられる日だから




普段なら放課後私をいじめている彼女達は

カラオケやゲームセンター、ご飯を食べに行ったりする。

でも、雨の日はそれが出来ないのだ。


雨脚が強ければ強い程。
今日は馬鹿みたいに雨脚が強い。



いじめられるのはいつものことだ

別に特段気にしていない

痛いし、辛いし、寂しいし。

大切だと思える物も、人も私にはいるし。

なんて強がりをしても心は曇る。

物凄い雨模様だ








ー放課後ー


私は教室にいた。


いじめっ子達とたった一人の私で。


悪口を言われ、腕をつねられ、

筆箱は明日へ吹っ飛んでいった。


まぁ、単純に苛烈にイジメられていた



最初は強がっていた

「全然平気」

「痛くも痒くもない」

なんて。嘘をついて




でも、
「いなくていいのに」

「目障りなんだよね」

「悲劇のヒロインでも演じるの?」

「ねぇねぇ、死んで欲しいんだけど」




そんな風に言われる内に心が荒む
心が静寂の悲鳴を上げる
涙腺がストッパーを外そうとする。




もう、
「誰か助けて」
なんてかなわない願いを唱えた時だった





ガタン!!

教室のドアが勢いよく開く。

するとそこに立っていたのは
幼馴染の「月」(つき)だった。


いつも学校に戻ると来ていない
即ち不登校なのに。


彼は怒った口調で言った
「あのさぁ。何してんの?」


彼の真顔は綺麗だ
この世の物と思えない程に。


いじめっ子達はキョトンとしている


彼は続けた
「お前ら何してるか分かってるよなぁ!!!」




普段、無気力だけど温厚な彼が怒っているのは見たことがない。



彼が叫ぶと彼女達は踵を返して教室を出ていった。


走って出ていった。





私はそれを見て安堵し、涙が出てきてしまった。


すると彼は
「帰ろう」
と言って昇降口まで手を引いてくれた






彼は傘を指し、その中に私を入れた。


まるで相合い傘だったので泣き顔で言う
「…なんで?」


彼はまだ怒っている
「いいじゃん別に」


彼は続けた
「あーちゃんなんで俺に言わないの?」


彼は私の名前
「彩音」(あやね)を略称で呼ぶ


「寂しんだけど」


それは嫌われたくなかったんだ。


素直に謝る
「ごめん」


彼は続けた
「あとなんで俺を学校に誘ってくれたの?」、


「自分がつらい思いしてたのに」


私は素直に思いを吐露する
「たまには一緒に行ってみたくて」


その瞬間彼は申し訳ない顔を浮かべた
「こちらこそごめん」


疑問を投げかける
「なんで助けてくれたの?」


彼は真剣な眼差しで答える
「たまたま昼に起きれたから学校に来た。
んで、ちゃんと帰りまでいたから一緒に帰ろうと思った」


「そしたらあーちゃんがイジメられていたから」


「その後は自然と体が動いた」




彼は少し頬が紅潮している。
それを見る私も赤くなっている



「ありがとう」


私が唯一言えた言葉だった。







そこからは二人で雨の中を帰る。
家の方角は一緒だ


いつもの様な感覚が戻ってきて
他愛も無い話をしてる中だった


私は単純な面持ちで呟いた
「なんで私ばっかりこんな目に遭うんだろうね」



すると彼は数十秒熟考したあとに答えた

「虹が架かるため」


フザケてると思ったので返す
「ねぇ。私ふざけてないよ」


すると彼は続けた

「雨が降れば虹が架かるよ
綺麗な、綺麗な、綺麗な」



「"止まない雨はない"なんて綺麗事を言うつもりはないけど、雨が降れば虹が出るよ」



「何が言いたいかって、多分その感情は無駄じゃないよ」



「二人に雨が降り注いで、残酷な程の現状が待っているのなら俺は二人で虹を見たい」



「雨が草木を育てる様に、絶対に無駄じゃないと思うんだ」



「それに、俺はいくらでもあーちゃんに傘を指しに行きたいな。」




そう言われて私の心はスッと軽くなった




彼が言い終わった瞬間。




雨が突然止んだ
降水確率を裏切って


天気予報士を煽るかの様に。


そして、綺麗な綺麗な虹が出た


七色のコントラストが気持ちいい


それを見て彼が優しい声で言った



「きっと、もう大丈夫」




傘を畳んで二人で歩き出した







魔法は いつか解けると 僕らは知ってる

月が咲いて太陽が今枯れた

傘を差し出す君に映る僕は濡れてない

水たまりに映る僕は雨に濡れてた


幸せなような 涙が出そうな

この気持ちはなんて言うんだろう

ファフロツキーズの夢を見て起きた

涙が頬で乾いていた


虹が架かる空には雨が降ってたんだ

虹はいずれ消えるけど雨は草木を育てていくんだ

虹が架かる空には雨が降ってたんだ

いつか虹が消えてもずっと僕らは空を見上げる
 

真っ白な夜に 遠くを走る汽車の影
静寂と僕ら残して過ぎ去っていく


逃げ出したいような 心踊るような

この気持ちはなんて言うんだろう

鏡の前で顔を背けたのは

ずっと昔のことのようで


虹が架かる空には雨が降ってたんだ

虹はいずれ消えるけど雨は草木を育てていたんだ

虹が架かる空には雨が降ってたんだ

忘れないよ こんな雨の日に空を見上げてきたこと


虹が架かる空には雨が降ってたんだ

虹はいずれ消えるけど雨は草木を育てていくんだ

虹が架かる空には雨が降ってたんだ

いつか虹が消えてもずっと僕らは空を見上げる


雨が止んだ庭に 花が咲いてたんだ

きっともう大丈夫

そうだ 次の雨の日のために 傘を探しに行こう

















ここまで読んでくれてありがとうございます
よかったら感想を下さい

今回は手短かつ。報告を

スターライトパレードの小説で二人は違う学校との設定でしたが、変更させて頂きます

書きにくすぎました
すいませんでした

今回はいかがでしたでしょうか
読んでくれたただけでも本当に嬉しいんです

ありがとうございました

fool・2020-07-04
小説
感想くれると嬉しいです
創作
物語
歌詞
好きな歌詞
梅雨
SEKAINOOWARI
rain
学校
いじめ
恋愛
恋愛小説
好き
好きな人
雨の日
extra小説

extra小説
「スターライトパレード」
SEKAI NO OWARI





彼はいつも勝手だ。

私の家を突然尋ねて来ては勝手に帰る。

逆に私が学校に誘うと彼は絶対に応じない。

彼は怠惰なように見えるし、甘えてるように見える。

いっつもワガママで私がどれだけ振り回されてるかを知らない。

彼の無茶にどれだけ付き合い、どれだけ損をしたか、数えられないぐらいだ

「夜寝れないから遊ぼうよ」と連絡が来る

「学校一緒に休まない?」なんて提案されたこともある

そのくせ勉強も、朝起きることも出来ない

勝手過ぎる…



でも、彼はいつも苦しそうだった

何が「正しいのか」をずっと考えているようだった

その不思議な価値観と引力に惹かれるのだった








私が「居場所が欲しい」

と泣いた日だってそうだった


そんな彼は輝いて見えた




「ねぇ、あーちゃんどうしたの?
目の下腫れてるよ?」

「どうかしたの?」


彼は周辺の人間関係で一番近い
だから彼は彩音(あやね)という名前を略して呼ぶ


彼は今日も夜中に突然「暇なんだけど遊ぼうよ」
と声をかけてきた

何故か断るわけにいかず、こっそりと家を出た。

「何でもないよ
それこそ月(つき)だって学校行ったの?」



彼は答える

「行ってないよ。
あんなつまんないとこ行く必要もないよ」

「あーちゃんみたいな奴が行くんだろ」


彼は皮肉を込めて言った
私と彼は同学年で、通ってる高校も同じだ


幼馴染の腐れ縁で今も関係が続いている


…彼はそんな「つまんないとこ」で私が傷ついているのを知っているのだろうか


思い出すだけで涙が出てしまう


「月は何も知らないくせに」


追憶してイジけてしまった


彼は意外にもいつものヘラヘラした皮肉の構えを解いた


「全部、知ってるよ」


彼の顔は真剣だった。




私はその顔に安堵して話を始めた


「私ねどこにも居場所が無いの」


「学校では私の机も椅子も酷いお化粧がされてる。文房具達は私の物じゃなかったみたい。自分で買ったんだけどね」


自分で自分に皮肉を言った。
素直に涙が溢れてきた


「家でも居場所が無いの。親は妹、妹、妹。私なんかきっとどうでもいいんだよ!!」


思わず声を張ってしまった


すると彼が言った


「あーちゃん。見せたい物があるんだけど一緒に行かない?」


彼はそう言うと語を矢継ぎ早に続ける
「きっと、いいものだよ。」


「さ、乗って!」


私は彼の自転車の後ろに乗る


不良みたいだ。


風が気持ちいい


でも、勝手すぎて不安だった
「一体どこに行くの?」


「いいから!」


黙るしかなかった


あまりにも彼がとびきりの笑顔で応えるから



10分程自転車で走るとボロい高台の公園に着いた


「あーちゃんこっちこっち」


柄にもなく彼は案内してくれた


外が見渡せる場所に来た


すると、そこは絶世の綺麗な景色だった






光を灯す深夜の工場

残り灯がつく近くの駅

晴れたから見える無数の星

鮮やかな月

終電の帰宅を待つ団地

夜更しさんの家屋達

暗闇に似合う車のライト

抑えめの灯りの高架橋

誰かの居場所のコンビニ



特に工場の光は「夜光」と呼ばれるらしい

煙を上げて稼働する機会と電照は言葉では表せないぐらいだった



もう、「今日」を終えた人

これから「今日」が始まる人

「明日」がもう、始まる人



そんなそれぞれの「時間」は

夜空にコントラストとして輝く。



彼は笑顔で尋ねた
「全然有名な夜景なんかじゃない。
でも悪くないでしょう?」


私は頷く
「そうだね」


彼は優しく囁いた
「ねぇ、あーちゃん。」

「居場所はここにあるよ」

「だから何回だってここにおいでよ」

「幻想的な世界に連れて行ってあげるよ」


私は満点の笑顔で頷いた




Welcome to the "Starlight Parede"

星が降る眠れない夜に

もう一度連れて行って

あの世界へ


















ここまで読んでくれた方本当にありがとうございます
良かったら感想を下さい


今回は突然スターライトパレードの世界観を再現するんだ!
と突発的に思い立って描きました

大好きな曲過ぎるのです。
幻想的な世界に没入してくれたら嬉しいです


今回は初めてキャラに名前をつけました

決めるときに何故か乃木坂の鈴木絢音の「あやね」っていい名前だなと思ってそれを使いました

あと、「月」はスターライトパレードなので「星」にしようかと思ったんですけど月のほうが良いなと思ってこれにしました


好評であれば欅坂46さんの「黒い羊」、フジファブリックさんの「若者のすべて」で描こうかと思います

黒い羊は僕に合っていると思うんです

なんか、夜の幻想感を表したくてやりました

それを感じてくれたら嬉しいです

好き過ぎるんですよねこの曲

原曲も是非聴いてくださいね

fool・2020-06-29
小説
短編小説
SEKAINOOWARI
スターライトパレード
物語
創作
孤独
居場所
幻想
ファンタジー小説
恋愛小説
extra小説

『かげろう』




ねえ

まだ君が好きだと言ったら

君はどんな顔するかな





去年のアイスの味をまだ覚えている。




暑い暑い炎天下、コンビニで買ったばかりのアイスを縁石に並んで座って頬張った。


目の前の道路で陽炎が揺らいで、暑さを際立たせていた。


一緒に買ったサイダーが音を立てて弾ける。その爽やかさが口の中を潤して抜群に美味しかった。


「もし寒い夏と暑い冬があるとしたらどっちを選ぶ?」


額に光る汗を拭いながら君がこちらを伺った。


「なに?海外の話?」

「違うよ。日本の話」


暑さが鬱陶しいのに、さらに鬱陶しいことを聞くな なんて思いながら考える。


君はいつもそうだ。夏みたいだった。いつも熱くて明るいくせに、たまにゲリラ豪雨みたいなテンションや質問を出してくる。


「暑い冬かな」


寒いより暑い方がマシだからとつけたした。


言ってみて、暑い冬がなかなか想像できなくて笑ってしまった。


君は、そっかとだけ呟いた。


あまりの暑さに、食べきる前にソーダのアイスは溶けてしまった。


溶けたサイダーに群れる蟻と、ベタついた手が鬱陶しくて、私の家に移動することになった。



クーラーの聞いた部屋で、2人ベッドに寝っ転がって、冬の歌を聞いていた。


白い天井を見上げて、先程のソーダを思い出していた。


「寒い夏ってこんな感じかな」


「かもね」


君が言い出したことなのに、他人事だな
でも君らしいなと思った。


しばらく沈黙が拡がってクーラーが、冷えた風を送る音と冬の歌だけが響く。


こんな感じなら寒い夏も悪くない。


そっと目を閉じる。
このまま眠りに落ちてしまいそうだった。


「俺は寒い夏も選んで欲しかったな」


「え?」


君のわけのわからないつぶやきをどこか遠くに聞いていた。


きっと私は夢と現の間にいたのだろう。


次に目を覚ました時に、隣に君はいなかった。





再び君に会ったのは夏休み明けの秋だった。


夏の暑さがまだ残りながらも、乾いた涼しい風が吹いて自然の匂いが漂っていた。


「久しぶり」


いつも通り声をかけると、君は静かにこくんと頷いて空を見上げていた。


今日はゲリラ豪雨かな?


「アイス食べようよ」


前回食べたアイスを食べれば元気になるかもしれないなんて考えて、近くのコンビニへ向かう。


「あ」


夏の終了が告げられたようで、ソーダのアイスはもうなかった。


仕方が無いのでサイダーだけ買って、コンビニ前の縁石に座る。


サイダーが音を立てて弾けた。
夏の爽やかさとは違く、乾いていて、どこか寂しい音に感じた。


「寒い夏はもう終わったよ」


そう呟く君はなんだか冷たく感じた。
声はいつも通り元気なのに、表情が暗かった。


例えるなら、暑い冬のような。


「どういうこと?」


「暑い冬が来たんだ」


なんだか話が見えなくて、呆然と君の横顔を見つめる。


君は


誰?



目の前にオレンジや黄色、緑の残像が光って頭がクラつく。
おかしいな。夏は終わったはずなのに。


炭酸が、舌に痺れた。







目尻から溢れる涙を拭って、あの日と同じ白い天井を見ていた。


君は、もう居ない。


私は気づかなかったんだ。

君は双子で、

病気で、

寒い夏で。



君に瓜二つの片割れも君だと思っていた。
たまに訪れるゲリラ豪雨が君じゃないなんて考えもしなかったんだ。


馬鹿だよね。


一応、彼女だったんだけどな。


君のこと、何も知らなかったんだ。

君は優しいから、気づかせないようにしていたのかな。それならまんまと引っかかっちゃったよ。


今ならわかる。私は暑い冬より寒い夏を選ぶ。もう遅いけれど。


でも私にとってそんなのはどうでもよくて


君が


好きだっただけなんだよ



何にも知らなかったくせにって、怒られちゃうかな




蒸し暑い外を窓越しに感じながら

部屋にクーラーをきかせて

冬の歌を聞いていた。


呆然と


君を


想い続けていた。


アイスはまだ、溶けることを知らない。

Sena❁・2020-06-08
小説
恋愛小説
短編小説
恋愛
好き
好きな人
大切な人
双子
senaの小説
senaの短編
かげろう

『ROY#2』




「今夜はカレーでいいですか?」


「う、うん」


ロイのいる生活に段々と慣れていく


いや、慣れたと言ってもまだほんの30パーセントくらいで


この非現実はなかなか夢心地であった。


今日は平日の朝、彼女は玄関までしっかり俺を見送って口角を上げる


ぎこちない笑顔がなんとも愛くるしいと思った


彼女は人間そのものだった


アンドロイドだなんて嘘なんじゃないかと思う


感情すらあるように感じる


否、あるのだろう


なにが人間と違うかと問われれば、子孫を残せないことくらいだろうか。


「いってらっしゃい」


「いってきます」


まだこの温かさに複雑でありむず痒さを感じながらも


父の倉庫で出会ったあの日から徐々に


俺は彼女に惹かれていた


救われていたんだ


彼女をひとり家に残し、俺は学校と就活とバイトを並立させる。


大変じゃないと言ったら嘘になるけれど


どれも自分ひとりでは不可能だったことで


ロイには感謝してもしきれない思いでいっぱいだった。


これも父親の目論見なのだろうか。


そんなことを思えば父親に会いたくなる


かき消すように咄嗟にロイのことを頭に思い浮かべた。


1日頑張ればロイの手料理が待っている


ロイの手料理はいつも美味しくて、毎食楽しみなのである


そうわくわくを募らせれば、多忙な日常にも幸せを見つけられ、胸がいっぱいになる。


どん底の果てに堕ちていた自分を救ってくれたロイは俺の希望でしかなかった。


彼女がアンドロイドだなんて事実、忘れてつつあった。


ただ今は先程離れたばかりの彼女に会いたくてたまらなかった。


彼女にとっても自分が希望であればいいだなんて考えていた。




・・・




「いただきます」


2人、父の作った桧の机に向かい合い、カレーを口に運ぶ。


「んーしー!」


幸せが口いっぱいに広がる。


「それは良かったです」


一日の疲れが吹っ飛んでしまうほど、心に染みるものだった。


そう言えばロイは食べたものはどこへ行くんだろう。
いや、そんなのはどうでもいいや。


このカレーが美味しい それだけでいい。


「隠し味は愛です」


だなんて冗談を彼女が言うもんだから、暖かくて優しくて涙が溢れそうになった


人は悲しみよりも愛しさで涙するのかもしれない
なんて思った。





「なあロイ、親父に会いに行かない?」


「是非、行きたいです」


彼女はとても嬉しそうに笑い、その笑顔で俺は安堵する


父はロイを見たらなんて言うだろうか
待ちわびていた時が来たと笑ってくれるだろうか




・・・


寂れた墓石


2人で両手を合わせれば


線香の匂いが鼻をつく


匂いは記憶を呼び寄せるもので、胸がキリキリと痛む


ぎゅっと強く目を閉じれば


背中に暖かな感触がして

父を感じた


はっと目を開ければ、隣でロイが俺の背を摩ってくれていた。


「私がいますよ」


そのロイの言葉で


おそらく数ヶ月ぶりに


泣いた


馬鹿みたいに


赤子のように


喚いた




ああ


あの時俺は泣けなかったんじゃなくて


堪えてたんだな


頑張らなきゃ


しっかりしなきゃって


耐えて耐えて


辛かった


苦しかったんだ


ロイに抱きしめられ


その中に父の温もりを感じて


ただ俺は


ひたすらに泣いた


「ありが…とう」


親父、ありがとう


ロイに出会わせてくれてありがとう


俺を育ててくれて


だれよりも理解してくれて


ありがとう



涙が枯れるまで


ロイは傍にいてくれて


この温かさにずっと浸っていたいと思った



・・・




「ロイ、今日帰るまでに合格かどうかわかるんだ。そしたら、美味しいものでも食べに行こうよ」


「自信満々ですね」


ロイはにやとり笑って俺の背中を押してくれる


ロイの存在のおかげもあり、長期戦に耐え抜いた俺は就活に一区切りつけていた。


「行ってきます」


「行ってらっしゃい」


このやりとりもなんだか新婚さんみたいな空気が出来上がってきたななんて浮かれながら家を出る。


やっと就職の内定を貰って、安定した収入を得て


ロイと、幸せに暮らせたら…


そんな幸せなことはない


上がる口角と逸る鼓動を抑え、卒論のために学校へ向かう



・・・


毎日へのご褒美に


ケーキを買った


艶やかないちごの乗ったショートケーキふたつ


感謝の思いも込めて


きっとロイは喜んでくれる


早く彼女の笑顔が見たかった


自信通り内定を決め、軽やかな足取りで家路を歩く


カチャカチャと


あかりの灯る我が家の鍵をひねる


ドアを開ければ、ただいまよりも先に


ロイの姿が目に入った


「ロイ!?」


床に倒れたロイの姿


手に持つケーキもカバンも放り出して駆け寄る


「ロイ!ロイ!!」


ゆらゆらと彼女を揺すっても、彼女は電池が切れたようにビクともしなかった


冷や汗と動悸が止まらない


どうしようどうしよう


彼女のおでこのROYの文字が赤く点滅している


エラー


そうだ


彼女は


人間じゃない


「ロイ!頼むよ起きてくれよ!俺はお前しか居ないんだよ…!」


その声に、ガシャガシャとロボットのような音をたてて彼女がゆつくりと瞼を開けた


「ロイ!!どうしたんだよ!!」


「…幸せ…でしたか?」


「幸せだよ ロイが居てくれたから これからもロイがいてくれたら俺は幸せだよ」


「私も幸せでしタ」


どうしてか、ロイの目に涙が浮かんでいる


「ひとりにすんなよ…!」


「ひとリ…じゃナイ」


俺の涙の雫がロイの頬にこぼれ落ちて


自分が泣いていることに気づく


「ソバニ…イル…カラ」


目の前のロボットはガタガタと音を立てあげる


傍にいるなら、いなくならないで



「…アイシテ…イマス」



「ロイ!!!!」



プシュー



空気の抜けるような


電車の発車音のような音を立て


ロイは


止まってしまった


壊れてしまった


俺はただ、喚くでもなく静かに


涙を零し続けた


いつか終わる


それでもその道のりに幸せは零れ落ちていて


それを教えてくれたのは


父で


ロイで


俺は


幸せだった


「…愛してる」


俺の人生はきっと


ここから始まるのだろう




彼女は泣いた



涙は


愛しさと共に


あるのかもしれない


fin

Sena❁・2020-06-30
小説
ROY
長編小説
senaの小説
反省すべきことはただひとつ
なぜ前後編にした
キツキツやんけ
もっと伸ばしても良かったね
あとがき書けないじゃん
ぴえん
恋愛小説
感動
したかな
したらうれしい
悲しい
切ない
そんなお話
前後編……
マジで読んでくださりありがとう

他に442作品あります

アプリでもっとみる

その他のポエム

独り言
567991件

268450件

ポエム
327370件

それでも君と
3147件

好きな人
138638件

辛い
73063件

片想い
143455件

自己紹介
41279件

恋愛
109240件

好き
141327件

片思い
122778件

死にたい
36416件

45978件

大好き
63524件

トーク募集
23371件

失恋
62282件

幸せ
34750件

歌詞
95145件

先生
68344件

友達
43536件

21022件

すべてのタグ