#ねるねるねるね

連休最終日の、快速列車。

練りたいのに練れなかった人たちの、嘆きの声が聞こえた気がした。

練ることになんの意味があるのだろう。

落ち込んでいるときは、そういうことを考えてしまいがちだ。

練る意味は人それぞれで、時と場合によっても変化する。

ねるねるねるねの色が変化するように、練る意味もまた、変化するものなのだ。

14ー2

キミはボクの部屋で

袋を逆さまにします

ドサドサと音をたてて

たくさんのお菓子が

床にちらばります

どれも同じお菓子

でも見たことは

ありません

なんのお菓子

キミにたずねると

キミは得意げに

このお菓子は

魔法のお菓子だよ

そう言います

14ー1

日曜日の午後

キミは紙袋を抱えて

ボクの家に来ました

紙袋の中身が

気になるけど

またいつものように

何かむずかしいことに

巻きこまれそうなので

つい言ってしまいました

ゴミ箱はあっちだよ

キミは食べ物を粗末にしたら

ダメなんだよと

どなります

どうやら中身は

食べ物のようです

最後まで練りやめなかった者の勇気を称えて

あの魔女は

色が変わる魔法をかけたのだ。

14ー3

これを食べると

算数のドリルが

したくなるの

そうたずねたら

そんなものは

お菓子じゃなくて

毒薬なんだよ

キミは怒ります

そしてこのお菓子の

説明をします

このお菓子は

色が変わるんだよ

説明がそれだけなので

よく分かりません

キミはじれったくなって

さっさと作るよ

そう言ってボクに

水を持ってくるよう

言いつけます

初夏の早朝、鮮やかな空の色が、

却って僕の惨めさを引き立てた。

こんなときのために、

ダークカラーに変わるねるねるねるねがあればいいと

思った。

15ー5

キミはそのお菓子をひとつ

袋から出します

銀色の小さな袋が三つあって

番号が書いてあります

その他には

容器と小さなスプーンが

入っています

まずキミは

1番目の袋をやぶって

中身の白い粉を

容器に入れます

次に水を入れて

スプーンでねります

粉が水にとけて

ドロドロになります

これお菓子だろうか

そんな風にながめていたら

青い色に変わります

ねるねるねるねの練り方なんて

誰も

教えてくれなかった。

母に感謝の意を込めて、赤いカーネーションとねるねるねるねを贈ろうと思った。

母は、言葉だけで十分だと言った。

感謝の気持ちは、物質でなくても、示すことは可能である。

ネルネ検定の記述問題は不条理だ。

「色の変化を述べよ」という問題について、
何か書いたら無効答案、白紙で提出したら0点とみなされてしまうのだ。

「明けない夜はない」

だからといって、練り終わらないねるねるねるねがないとは、言い切れないのだ。

それでも私は、色が変わると信じて、明日も練るだろう。

練り始めがあんなに待ち遠しかったのに、
練り終わりが近くなると、今度はさみしい。

ネルネの魔女は、私に幸福の色を、見せてくれないのだ。

ネルネ全国大会。

勝ち続けるためには練り続けなければならない、その過酷な世界で、あの魔女はひときわ輝いて見えた。

色が変わったからといって、

練り止めていいということにはならない。

「ネルネに関する法律」には、

練り止めるタイミングについては

明記されていないのだ。