蓮華草・2022-12-09
いろは詩
藺草の香りに包まれる
雪のちらつく朝なのに
藺草の匂いに包まれる
涙をひとつ
私にください
涙をふたつ
抱きしめて眠るから
徐に頁を捲ると
そこが唯一の居場所であるはずの言葉たちは
待ち兼ねたようにふわりと浮いて
白い空へと
溶けていった
理解したつもりが
誤解だったなんてこと
生きていれば
何度もあるの
山を越えるたび
そそり立つ壁に阻まれるなんて
この人生も
捨てたもんじゃない
狂った時計が好きな私へ
針のない腕時計をくれた貴方を
ふと想い出しては
哭き微笑っています
辛い時ほど微笑うのは
もう
癖なんです
動き出したのは世界地図で
わたしはただ
立ち止まっているだけで
返事の元気な君が
心も元気とは
限らない
ラナンキュラスを抱え込む
その笑顔の中へ閉じ込めた
君の秘密に
気付けなかった
橋の袂で向かい合う
繋いだ両手を離せずに
私は貴方のつま先を
貴方は私のつま先を
繋いだ両手を離さずに
橋の袂で見つめ合う
手鏡の中の私は
きっとホンモノ
姿見の中の私は
いつもニセモノ
無作為に選びました
なんて
選んでいるのだから
無作為じゃないんでしょう
微笑うほどに哀しくなるなんて
知らないまま
生きていたかった
のらりくらりと
躱す日々を
楽しめるほどには
なっているの