愛ってなんなんだろう
ふたりで愛し合った記憶って
どこでそう呼べるんだろう
君があの子と近くのショッピングモールから腕を組んで出てきたあの日から私たちの関係は終わっていた?それとも、私たちが出逢って、目を合わせて、会話をして、連絡先を交換して、何回かカフェでお喋りして、君が海に連れて行ってくれて告白してくれたあの日も、全部全部幻だったのかな
結翔がトイレに席を立ってから数分、置いていった鞄の中で小さくバイブレーションが鳴った。今日は昨日ドタキャンされたデートの立て直しをしていた。
見るつもりはなかったが、やはり誰からだろうと気になって、隙間から中を覗いてみると、画面に映っていたのは、見覚えのある名前とキラキラしたメッセージ。"ゆいくん、昨日楽しすぎて、疲れて今の時間まで寝ちゃってた笑笑また遊ぼうね 💕︎"
少しして、トイレから戻ってきた結翔を座らせてから問いただす。
「ちょっとこれ、どういうことよ!まだあの子の連絡先消してなかったの!?てかなにこのメッセージ、昨日、実家に帰るって言ってたじゃない!!!」
急に声を荒らげられて困惑する結翔の目の前に、彼のスマホを置いた。全てを察したのか、はぁ、と少し大きめなため息をついて口を開く。
「そうだよ、昨日、お母さんが腰を悪くしたみたいで病院に行くために実家に帰った。言っただろ?美彩とは幼なじみなんだ。地元も一緒。だから会ってお茶するくらいする。」
呆れたとでも言いたげなその表情に、説明するのも面倒くさいとでも言いたげなその態度に、悲しさを覚えた。
「会ってお茶するくらいで、疲れてこんな時間まで寝過ごすってどんなに楽しいお茶会だったのかしら。そういえば帰ってきたの、30分前って言ってたよね。実家まで1時間くらいしかしないのに、そんなに楽しむ余裕があったのね」
多分、私が何を言っても無駄なことは分かってた。結翔と美彩ちゃんは保育園からの幼なじみで、実家も近い。結翔が大学に通うためにこっちに来てから、離れたらしいけど、ちょくちょく連絡を取りあっているようだ。私と付き合ってても、お構い無しに。
時刻は14時32分。結翔がこっちに帰ってきてから、昨日の立て直しということで、カフェで待ち合わせしようと誘ってきてくれてから、楽しいデートになるはずだったのに、こんなんじゃただの喧嘩してるだけの苦痛な時間だ。
「電車が遅れたんだよ。てか別にいいだろ、俺が誰と遊ぼうが。美彩はただの幼なじみだよ。優希がそんなに心配しな」
「ただの…幼なじみ、、?……1年前の元カノでしょ?」
ただの幼なじみ、結翔のその言葉に居ても立ってもいられなくなって、話しを遮って、席を立った。頼んだもののお金を確認し、財布から2000円を出して、カフェを出ていく。その間、結翔からは何も言われなかったし、止められることもなかった。