駄文です(小説)
感想くれると喜びます
いつも、貴方をみていたから。
誰よりも見ていたから。
分かっていたんだ。
貴方がどんなに隠そうとしていても
笑って違うよ、と否定してても
貴方が羽ばたきたがっていたのを。
# 嘘吐きでごめんね
土砂降りの雨の日だった
君は屋上に立って深呼吸をしていたね
直感で逝く気なんだって分かった
そしたら居た堪れなくなって
傘を放り出して追いついて
俺はその細い腕を掴んだんだ
自分の余命も忘れて
1,
『え、』
「ねえ、死ぬの…?」
彼女は小さく頷いた
「なんで」
『疲れたから』
「ねぇ、一緒に生きてよ」
『なんで』
「理由なんて必要ある?」
『あるよ』
「…俺と一緒だからさ」
『何が?』
「死にたいって思う所」
『…』
「でも不思議だよ
目の前で死のうとする君を見ていると
助けたいって思うんだ」
『変なの笑』
君が初めて見せたその笑顔は
俺は死ぬまで忘れられないと思う
「お互いを生きる理由にしよう」
『私を大切にしてくれる?』
「するよ」
『一生?』
「一生」
『なんか結婚式みたい笑』
「ねえ、名前教えて」
イロハ
『彩波。君は?』
タカヒサ
「貴久」
『よろしくね』
「よろし_へっくしゅっ」
『風邪ひいた?』
「かも。俺ん家来る?」
『じゃあお邪魔しようかな』
俺はこの時何でこんな事を
口走ってしまったんだろう
2,
『お邪魔します』
「どーぞ、汚いけど」
『意外と綺麗じゃない?』
「ありがと。そこら辺に適当に座ってて
珈琲いれるよ」
『え、先シャワー浴びて来なよ
着替えどこ?ここ?』
「あっ、そこは……」
彩波は近くの
タンスの引き出しを開けた
ガラ
『えっ…何これ』
「それは…」
『この薬と診断書は何!?』
「………余命半年の報告書と
病気の薬…」
『ふーん、
さっき一生 一緒に生きるとか
言っておいて、
簡単に突き放すんだね。
見損なったよ』
「その時は必死で…」
『言い訳なんか聞きたくない!
貴久の嘘吐き!』
彩波は叫ぶと玄関を飛び出して行った
「彩波!!」
急いで後を追って外に出た
でももうそこに彩波の姿は無い
「俺はなんて事を…」
必死にマンションの手摺りから
下を見るも、
彼女を見つけることは出来ない
マンション? マンション…
まさか!
俺は上を見上げた
「屋上か…?」
考えるよりも先に体が動きだしていた
螺旋階段を1段飛ばしで駆け上がって
非常口のマークがついてる扉を
乱暴にこじ開けた
そこは相変わらず土砂降りの雨だった
彩波はフェンスを乗り越えて
マンションの端に立って
下を見ていた
「彩波!」
『来ないで』
「俺が悪かった」
『今更遅いよ』
「危ないから」
『貴久の命の方が危ないでしょう?』
「もう軽い気持ちで
言葉を発さないから」
彩波はやっとこちらを向いた
目が赤くなっているのが分かる
俺は拳を握り締めた
「だから、もう1回___」
『ねぇ、貴久は一生なんて言った?』
「彩波と一緒に生きるって…」
『お互いを生きる理由にしようって
言ったよね。
そう言われた時、
この18年間の人生の中で
1番嬉しかったんだ』
「………」
『生きる理由=死ぬ理由
にもなるんだよ』
「彩波…?」
『貴久が死んだら私の生きる理由は?』
「…それは」
『無いでしょう?
つまり貴久が死んだら
私も死んでいいって事なんだよ』
「落ち着けって」
『落ち着いてるよ』
「お前が死んだら悲しむ人がいる」
『そんな言葉、聞き飽きたよ』
「お願いだから…」
『さよなら、貴久』
彩波は跳んだ
俺は急いでフェンスを乗り越えると
その腕を掴んだ
「まだ死なせっかよ」
『なんで…』
力づくで引き上げた
『なんでよ!』
「俺さ、お前じゃなかったら
あの時 声掛けてなかったよ」
『?』
「お前を見た時、
この18年間生きてきて
初めて【好き】っていう
感情に気づいたんだ」
『えっ…』
「好きだよ、彩波」
『貴久、ごめ、ごめんね…』
「あと半年だけの命だけど、
一緒に生きて欲しい」
『貴久が死ぬなんてヤダよ…』
「これ、俺が1番大切にしてる指輪、
彩波にあげる」
そう言って自分の薬指にはめてた指輪を
彩波の中指にはめた
『ブカブカだよ笑』
「ほんとだな笑」
空の上には、7色に輝く大きな虹が
2人を祝福するように
マンションの周りを囲っていた___
# 嘘吐きでごめんね
END