はじめる

#✡✡✡✡

読んでると、
思わず胸がギュッとしめつけられる、
そんなポエムを集めました。

全2作品・



今日もまた、敵を倒した。

仲間内で魔法のステッキと呼ばれるそれは
実際は魔法なんてこれっぽっちも使えないゴミだ。

この世に魔法なんてなかった

だから今日もこうして私達はステッキを鈍器のように振り回して敵を殺す。


「せっかくかわいいデザインなのに…もったいないなあ」


ハートや天使をモチーフにされたピンク色のステッキは私の好みそのもので

この役職に就いて良かったと思える数少ないところだった。
だからこそ、そんな可愛いものを汚すことに最初のうちは抵抗があった。

今は、もう無いけれど。


「お疲れ様、今日も頑張っているね」


敵の死体を処理していると、どこからともなく現れたのは一人の青年。
私の、大好きな人。


「今日も来てくれたんだね、嬉しい!」


一目散に駆け寄れば、優しく頭を撫でてくれた。
私の知る唯一の温もりを彼がいつもこうして与えてくれる。


「あれ、頂戴」


不意に手のひらをこちらに向けて差し出してくる彼。


「はい!あげる!」


その手のひらにキラキラと輝く欠片を落とせば彼は今日一番の笑顔を見せてくれた。

私が彼に渡したのは、ステッキを使い敵を倒すことで敵から得られるエネルギーの塊のようなもの。

私達魔法少女はそのエネルギーを摂取しないと死んでしまう。
だから皆そのために毎日こうして戦っているのだ。

でも、私は違う。


「いつも助かっているよ」


私は、私に愛と温もりをくれる唯一の存在である彼のために戦っている。

彼がなにを返してくれる訳でもないけれど、存在してくれるだけで充分だった。


「僕は君の敵なのに、こんなにしてくれて…」

「ううん!関係ないよ、そんなの。君のためなら私なんだってするもん」


彼は、私達魔法少女の敵である組織の幹部だ。

そしてそんな彼に私は毎日エネルギーを渡し、衰弱しきった身体を彼に温めてもらう。

大好きな彼に利用されているという喜びは、どうしようもなく私をつき動かしていた。


「君が欲しいものなんでもあげるよ」


それが、私の愛だから。
与えるだけでは埋まらないその隙間は見ないふりをして、彼を愛するためだけに生きている。

本当は"君が欲しい"だとか、そういう甘いセリフのひとつでも言ってほしかったりするけれど。

あくまで彼が欲しいのは私じゃなくて、
私の渡すエネルギーだ。

いくら夢を見ても揺るがない現実を受け入れる以外に道はない。


「それじゃ僕はこれで」


はぐらかすように笑って立ち去る背中を、ただ愛おしく思いながら見つめていた。

もし私達が、敵同士じゃなかったら。
立ち去る彼を引き止めることくらいできたのかもしれない。

越えられない一線はこんなにも私を苦しめる。



それから来る日も来る日も、彼は敵の返り血で汚れた私を抱きしめてくれて

私がエネルギーを渡せばあっさりと離れていく。
そんなことを続けていた。

いっそのこと嫌いになれたらどんなに楽だろう。

しかしこの頃にはもう、私の彼への愛は執着へと変わっていて、好きだとか嫌いだとかの話ではなくなっていた。

そんなある日


「君が欲しい」


ずっとずっと欲しかったその言葉が、彼の口から紡がれる。
まっすぐに私を捕えるその瞳から目が離せない。


「ほんと、に…?」


声が震えていた。だって、永遠に手に入らないと思っていた彼の愛を今この瞬間に感じることが出来たから。


「本当だよ、こんな体になるまで僕のために頑張ってくれる子なんて他にいない」


甘やかな彼の声が私の思考を溶かす。
嘘だと疑うこともできないほどに、彼の言葉を強制的に信じてしまう。


「こんなにやつれてしまって…本当に君は頑張ってくれたね」


今までになかった労いの言葉。


「愛しているよ」


今までくれなかった愛の言葉。


飢えた心を蝕むその言葉達に浸っているうちに、彼は私の背後にまわっていて
それから壊れ物を扱うように優しく抱きしめてくれた。


「だから、君のそんな姿はもう見たくないんだ」
「──────もう終わりにしよう」


私が何かを言う隙を与えずにそれだけを告げると、いつの間にか奪われていた私のステッキを掴んで。
彼は、それを私に向けて振り下ろした。


「あああああっ!!!!」


瞬間、激しい痛みが走る。
彼から与えられる、初めての痛み。

その痛みさえも愛おしいと思えるほどに毒された私は抵抗せずにそれを受け入れた。




「チッ、これっぽっちかよ。使えねえな」


青年はこの日初めて、彼女に向かって暴言を吐いた。
まだ温もりの残った彼女を抱きしめる訳でもなく、涙を流す訳でもなく。

敵を倒した際に得られるエネルギーは、その絶望が深いほど大きなものになる。

彼は、それを、それだけを求めていた。

予想だともっと莫大なエネルギーを彼女は持っていると思っていたのに、少しやりすぎたかもしれない。

彼女は最後の最後まで抵抗をしなかった。
きっと、死の間際まで絶望に呑まれずに彼を愛していたからだ。


「だからこれしかエネルギーが出ねえって訳か。こんなに苦労したのによ」


彼女は少し特殊なタイプだったかもしれない。
数多の数の魔法少女を絶望で壊してきた彼はそう思った。


でも、それだけだ。





「頂戴」


地を這うような男の低い声が部屋の中に響く。


「ボスの仰せのままに」


真っ直ぐに男の目を見てそう告げる青年の声色は、少女達を誑かす時よりずっと甘かった。

そして男の前に膝をつき、キラキラと輝くエネルギーの欠片をその手のひらに落とす。


「いつも助かっているよ」


顔色ひとつ変えずに青年に告げる男は、傍から見れば冷たい人だと思われるかもしれない。

けれどそんなことを思わないほどに、思えないほどに、青年の思考は愛に蝕まれていた。


「勿体ないお言葉です」


青年は男の言葉を噛み締めるように胸に手を当て、そして深々と頭を下げる。


「お前ももう、出会った時よりやつれてしまったね」


心配するように男は青年の腕を掴む。
服で隠されていたがその体は骨のように細く、ろくにエネルギーを摂取できていないことを痛いほどに感じさせた。


「そろそろ頃合だね。
────終わりにしようか」


男の低く冷たい声が、部屋の中に響いた。

(^._.^;)՞ ՞・2022-02-11
魔法少女
小説
かわいい
創作
思いつきなので色々雑です!!!
✡✡✡✡

꒷ ͝ ͝͝͝ ꒦魔法少女の甘い恋心を溶かして꒷ ͝ ͝͝͝ ꒦

꒰ঌ♡̸᩠︎ ︎❤︎・7時間前
魔法少女
✡✡✡✡
バレンタイン
チョコの渡し方

これらの作品は
アプリ『NOTE15』で作られました。

他に2作品あります

アプリでもっとみる

他に2作品あります

アプリでもっとみる

その他のポエム

バレンタイン
12827件

伝えたい想い
4817件

独り言
942744件

好きな人
294486件

チョコの渡し方
2541件

429417件

自己紹介
82865件

ポエム
503354件

トーク募集
72072件

恋愛
182215件

片想い
215605件

辛い
165462件

ほっと一息
2420件

片思い
174609件

フィクション
13220件

死にたい
86508件

バレンタインデー
2593件

好き
191528件

先生
104475件

54016件

失恋
100379件

すべてのタグ