君と2人きりの世界で Ⅱ
~プロローグ~
好きがわからなかった俺に
好きとはなにか
教えてくれたのは君でした。
もう逢うことは無いけれど
俺は君の事を忘れない。
第一章:好きってなに
“航くんのこと好き、です”
そう小3のとき初めて告白をされた。
もちろん、小3だったから
好きとか付き合うとか分からなくて
“ごめん”
て言ってとりあえず振った。
俺に告白してきた叶葵(トア)は
小3の時に初めて同じクラスに
なった、隣の席の女の子だった。
初めは俺に怯えてるのかなんなのか
話す時の声は小さいし
あまり笑顔は見せないから
つまんなくて
早く席替えしないかな
とばかり考えていた。
だけど、掃除をするときに
2人きりだったことがあって
その日を境に話すようになった。
たまに見せる笑顔とかが
いいなって思うようになった。
それがどういう感情なのか
名前をつけるにはまだ
早い気がして。
気付かないふりをしていた。
…
席替えが少し寂しいと思っていた前日に
俺は叶葵から告白された。
正直びっくりしたし、
恋とか両想いとか片思いとか
どこかのストーリー内の話だと
思っていた。でも、少し恥ずかしそうに
照れて好きだと言ってくれる叶葵は
可愛くて。
でも付き合う
という考えにはならなかった。
振ったあとは席が遠くなったこともあり
あまり話さなくなった。
好きとはなにか
ずっと自問自答し続けても
答えはでないままだった。
第二章:付き合うということ
気づいたらもう小6
あと少しで小学校卒業になっていた。
あれから特に何も変わりのない
平凡な生活をしていた。
好きな人が出来るわけでもなく
恋の こ の字も掠らないくらい
恋愛に関しての変化は何も無かった。
唯一言うとしたら、
遠くの県から引っ越してきた男子、
あっきーが
俺の親友となったくらいだ。
ぼーと日々をすごしていた時
ふと、叶葵のことを思い出した。
“航くんっ休み時間外いこー”
“なんで先生に怒られてたん笑
なんか悪いことでもしたのー??”
しょうもない話をしたり
笑いあったりあの頃が
どれだけ楽しかったか
思い知らされる。
小6にもなると、
彼氏できたーとか好きな人いる
とかの話をよく耳にする。
みんな好きな人とか
なんでできるかなと
好きな人いてすごいなと
他人のように考えてる自分がいる。
今、付き合ったとしても
結婚する訳でも無いのに
なんで付き合うのだろう
そう思っていた。
あのことが起きるまでは。
第三章:告白
ある日の掃除時間終わり。
“航”
聞き慣れた声に足を止めた。
“やっほ元気にしてた??笑”
そう俺に笑いかけているのは
叶葵だった。
“おう、元気だった
なんか話すの久しぶりやねどしたん”
“あぁ、えぇと…笑”
珍しく叶葵が戸惑っていた。
いつもならすらすらと会話が続くのに。
“…航はさ好きな人いる??笑”
“うーんおらんかな”
“じゃあさ、知っとると思うけど
小3からさ航のこと
ずっと好きだったんよ。
私と付き合ってほしい”
“(え…付き合う…?俺が叶葵とが)”
何故だろう、あの時は
俺はどうにかしていた。
“(いつもなら恋愛なんて)”
って思って断るのに。
“うん、いーよ噂にならなければ”
なのに、なんでだろう。
気づいたらそう、OKを出していた。
…付き合うとか分からない癖に。
第四章:彼氏彼女
こうして俺と叶葵は彼氏彼女になった。
お互い彼女が彼氏ができるのは
初めてで付き合ったら何をする
とかがまだ分かっていなかった。
そして、俺は付き合いながらも
叶葵のことを好きになれずにいた。
たまに休み時間に話したり
途中まで一緒に帰ったり。
友達となんにも変わらない生活をした。
付き合う条件は“噂にならないこと”
もし、噂になったら
別れるということをなんとなく
お互い理解していた。
小学校の過程が終わったあとの
春休み。俺たちは初めて
2人きりでデートに行った。
お金が無い俺たちは
住んでる都市じゃなくて
電車とかを乗り継いで広い公園に行って
ただ歩いて
自分の家族や入りたい部活とかを
ただずっと話しまくる
というデートと呼べるのか
と疑うくらいの一時を過した。
でも、無言にならないくらい
お互い会話が続いて
終始笑いあっていた。
帰るときの時間
お互いが時計を読み間違えたのか
なんなのか
バスが来ない時間に
バス停に着いてしまった。
そして、まだ少し叶葵と一緒に
居たかった俺は
“お金ないからさ歩いてく??笑”
“うんっいーよ笑たまには
時間かけてバス停から
歩くのもいいかもね笑”
そう叶葵から許可を貰って
バス停を頼りに家まで歩いた。
公園で話しながら散策していたとき
でさえ4時間くらいは歩いていたのに
バス停からまた2時間かけて家まで歩く。
その時間は歩き疲れていたけど
それと同時にとても楽しい
笑い話にできるような思い出となかった。
ねぇ叶葵
覚えてるかな、
途中でバス停見失ってさ
迷子になったことあったよね。
その時なんだか不安そうな叶葵を見て
笑わせたいって
傍に居たいって思ったんだ。
まだちゃんと好きって
言える程じゃなかったかも
しれないけれど、
トキ
叶葵と過ごした時間は
とても大切な想い出です
手を繋いだりすることは無かったけど
特別な時間を過ごせたと思う。
このデートで近づいた距離。
中学校になっても
この関係が続くと思っていた。
第五章:別れ
時は流れて俺たちは中1になった。
中学校に入った途端
俺はなんだか好きになれない罪悪感から
叶葵を避けるように
無視するようになった。
どう接したらいいのかも
分からなくて。1学年で人数が
多いから噂になると
一気に広まってしまう。
その怖さから何も出来ずにいた。
時々は叶葵を含めたメンツで
遊びに行くことはあったけど
小学校のときよりは話すこと
一緒に帰ることがなくなった。
バレンタインはもらったから
姉貴と一緒に作ったケーキを
叶葵の家に渡しに行った。
泣きそうな顔でありがとう
と笑う叶葵は儚くて
俺を苦しい思いにさせた。
中2の夏俺たちの関係は
呆気なく終わった。
夏休みに入って間もない時
部活終わり久しぶりに
叶葵に話しかけられた。
“…航”
“ん、なに”
“私と別れたい??”
“なに急に”
“別れた方がいいんかなって思って”
“今のままじゃ俺もだめだと思う”
“じゃあ、、、別れる、?”
“うん”
あっという間に俺らは
彼氏彼女から他人になった。
最後の最後まで俺はくずだった。
完全に両想いになることも
叶葵に、好きと伝えることもなく
関係は終わった。
同じクラスじゃなかったから
クラスメイト
という関係にもなれなかった。
同じクラスじゃなかったことを
恨んだ。でもそれと同時に
同じクラスじゃなくて
良かったって思った。
第六章:卒業
今日俺たちはたくさんの思い出が
詰まった中学校を卒業する。
“先生今までありがとう”
“さようならっ!”
今日でこのメンツで授業を
することも行事をすることも
無くなると考えると
少し寂しいような気持ちになった。
今日で全部最後なんだな。
叶葵に会うことも
話すこともなくなってしまう。
最後くらいは君と___
話したい。
あっきーと話していると
“あの…”と遠慮がちな声が聞こえた。
だれか即わかった。
…叶葵。
“卒業おめっと叶葵、どした??”
“おめっと、笑写真撮ろー”
“ん、わかった、撮ろう”
パシャッ
“ありゃーと航”
“いーえ笑”
“えっとね、航?最後だから
もう逢えなくなっちゃうから
想い伝えたくて。”
“うん”
“付き合ってくれてありがとう
遊びに行ってくれてありがと、
同じ委員会、3年間
してくれてありがとう。
それと、たくさんたくさん
迷惑かけてごめんね。
私は、っ!!
航のことが好き”
“ありがとう、でも、ごめん。
付き合えない
付き合う気はない
前みたいに傷つけたりしたくない。
俺、好きとか分からないから、
だからごめん”
“あっううんっ気にしないでっ
とあ伝えたかっただけだからさ、
ちゃんと振ってくれてありゃーとね
でも、とあずっと待ってるから。
きっとさ、高校生になっても
大人になっても
航のこと、過去にできないと思うんだ。
だからさ、
もしとあに会いたくなったら
連絡とか逢いに来るとか
してほしいな。
すぐ両想いになれるからさ笑”
“りょーかい笑”
“でもいつか、ちゃんと
好きって思える人と
幸せになってね??笑”
“ん笑、いつか、ね笑”
“成人式で逢おうね航ッ!!”
“そやね、成人式で”
“じゃあっばいばい、
高校がんばれ”
“ありがとう、ばいばい叶葵”
“航ーなにやってんのーもう行くぞー
打ち上げ時間間に
合わなくなるだろっ笑”
“ちょ待ってよーあっきー笑
もう行くからさああー”
振ったことに対する苦しさと
悲しみとまだ俺を想ってくれてる
叶葵の優しさが嬉しくて
頭がぐちゃぐちゃで。
歩きながらでも聞こえる
叶葵の泣き声に胸が締め付けられた。
逢えなくなったら
大切さに気づくっていうけど
本当だと思う。
叶葵に会えなくなってから
考えることが増えた。
“元カノ”から
気づいたら“好きな人”になっていて
叶わないって分かっていくうちに
“忘れられない人”となっていた。
…ちゃんと逢いに行ってたら
何かが変わったのかな。
第七章:未来
中学校を卒業してから10年
俺たちは25歳になった。
成人式で再開した叶葵には
最愛の恋人がいた。
そして、成人式のときには俺は
結婚していた。
俺の妻は小学校のときから仲が良く
中学校、高校とも
同じ学校だったため
仲が深まり、妻のほうから
告白を、受けて付き合い
そして結婚した。
だけれど、ふと
叶葵のことを考えてしまう。
どこにいるのかも分からない
叶葵のことを。
“…とあ、元気にしてますか
前話していた晴琉ってひとと
幸せに暮らすことができていますか。
おれは、妻のこと好きだけど
叶葵に片想いしてた高校生のとき
よりは想いが弱い気がしてます。
ずっと待ってるって言ってくれてたのに
勇気なくて家に行けなくてごめん。
電話も出来なくてごめん。
もう遅いなんて言われるのが怖くて
行動できなかった。
振られるのがさ怖かったんだ。
どうしようもないくらい
俺はくずだろ笑…
俺すごく弱かったんだなって
叶葵と離れてから気づいたんだ。
他の人を想いながら結婚なんて
あの頃は想像もしてなかった。
感情を表に出すのが苦手な
俺は叶葵にたくさん
迷惑かけたと思う。ごめんな。
いまは前よりは少し強くなってさ
叶葵の幸せ願えるようになったんだ。
強くなっただろ俺笑
だからさ、またいつか
どこかで会ったら
前みたく話しよーな”
~エピローグ~
好きがわからなかった俺に
好きとはなにか
教えてくれたのは君でした。
もう逢うことは無いけれど
俺は君の事を忘れない。
いま精一杯の気持ちを伝えよう
もう逢えないであろう
君を想いながら
“君の事を愛していました_”
そして、
“あいつと幸せになってね”と。
だけど本当は君と___。