短編
「目に留まるのは」
「先輩、好きです!」
「ずっと前から好きでした!」
「どうか僕と!」
絶えず響く声はあの人に、
齢16にして「高嶺の花」の呼び名を持つ
君に向けたものだった
ある時は花束を、
ある時は手紙を、
またある時はサプライズを、
しかし、君はいつも丁寧に断っていた
傷を付けないようにそっと
何故か優しくしていた。
僕は、そんな君を気になりはじめていた
きっかけはほんの些細な出来事の為
割愛しておこう
ただ、些細な出来事と 同じ学校というので
高校に入ってからはよく話すようになった
同じクラス効果、というやつだろう
向けられる嫉妬は痛い程感じていたが
いつも君から話しかけてくれていた為
いじめの類は起こらなかった。
思えば、恋心を抱くのは自然なことだと
今更思っていた。
高嶺の花の君が、
わざわざ話しかける意味を
話を終えた後にずっと考えていた
だけど解決するはずもなく
毎回、「ただの暇つぶしだろう」と
自己完結させていた
話だけじゃない。
不意に見せる笑顔も
あどけない所も
なにかあれば僕を呼んでいたことも
全てが恋をする口実とまで思えてきた
我ながら変な人だと実感してしまうが
また今日も、君と話していた
だけど、そんな片思いも終わりを告げた
君から始まったメールで
「1番に報告したい」なんて言われたら
淡い期待を抱いてしまうのも必然だろう
次のひとことで、悲しむことも知らずに
「あのね、彼氏ができたの!!!」
嬉しそうなスタンプと共に送られた
1件のメールを
何度見返したことだろうか
何度ドッキリかと考えたことか
誤送信でもドッキリでもなく
嬉しそうなスタンプが、事実を語っていた
決して初めての恋ではなかったし
違う人を想うことはあった
だけど君と会ってからは
君だけになっていた
仲も良かったはず、話していたはず
学校も同じだったのに
1番、僕が知っていると思っていたのに
そんな想いは乏しくて
心から言えたか分からなかったが
僕は、君の幸せを願った
1度でも、君の目に留まりたかった
でも、君の目には
アノヒト
彼氏しか写っていなかった