時々ね、前の自分を思い出すの。
                            
                            私の大嫌いな私のことを。
                            ただ泣くことしかできなくて
                            向き合おうともせずただ逃げてた私。
                            トラウマを言い訳に
                            人の目を見て話さなかった私。
                            常に逃げることだけを考えて
                            自分の意見を言わない私。
                            争うのが怖くて
                            笑ってるふりをしてた私。
                            
                            力のなかった私には
                            あの頃何も無かったと思う。
                            
                            家族はバラバラになって、
                            感情の制御が出来なくなって、
                            ただひたすらに泣いてるだけだった毎日。
                            
                            私はあの頃の自分が今でも嫌い。
                            ただ泣くことしかできなかった私。
                            
                            そんな私なのにさ、
                            私の大嫌いな大人は私を見捨てないでいてくれた。
                            
                            何人かの大人には見捨てられたし、
                            すごく哀れな目で見られたりもした。
                            この子は父親に捨てられた可哀想な子って言われた。
                            確かに私は父に捨てられた。
                            目の前ではっきりと、いらないって言われた。
                            悲しかったな…
                            
                            でもね、今はちっとも覚えていないの。
                            父親の顔、声、容姿、全て思い出せない。
                            身体が父親をシャットアウトしたんだって。
                            自分を守るために。
                            
                            薄情って思うでしょ?
                            でもそうでもしないと私の精神が壊れてしまってたんだ。
                            
                            高校生になって音楽を始めた。
                            音楽は私のずっと隠して閉じ込めてた感情の全てを
                            表に出すことができたんだ。
                            だから先輩によく言われたな。。。
                            「あなたの音はとても悲しいね」って。
                            でも私は初めて自分を見つけられた気がしたんだ。
                            感情表現を音楽ですると自然と笑えるようになった。
                            それがとっても嬉しかったんだ。
                            それでも人の目を見て話すことはできなかった。
                            
                            今のバイトを始めたらさ
                            店長夫婦がまっすぐ目を見て話してくれるの。
                            そしたらなぜか自然と私も目を見て話せるようになった。
                            この大人は信じていいんだって思えるようになった。
                            先輩たちと遊ぶと知らない世界を知れた。
                            新しい世界が広がっていくと
                            いっぱいだったはずの心の不安の瓶が
                            割れた気がしたんだ。
                            
                            
                            大学生になったらさ
                            色んなお友達ができた。
                            みんな個性豊かでいつまでも飽きない。
                            そんな子達と出会えた。
                            
                            人ってすごいなって本当につくづく思うよ。
                            その人といるだけで今まで閉じこもってた心の扉が自然に開いて外に出ちゃうんだもん。
                            
                            だからね。私もいつかそんな人になりたいな